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論文データベース(最新論文順)

イラン戦争とサウジ
―― アメリカ後の中東と新多国間枠組み

2026年6月号

マリア・ファンタッピー イタリア国際問題研究所 地中海・中東・アフリカ・プログラム責任者
バリ・ナスル ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院 教授(国際関係、中東研究)

サウジアラビアは、イランであれ、イスラエルであれ、地域覇権国が出現することは望んでいない。一方で、アメリカの安全保障関与はもはや信用していない。引き続きアメリカに一定の支援を求めつつも、サウジは、今後、エジプト、パキスタン、トルコとの地域的連帯を深化させ、中国への依存度を高めていくと考えられる。ペルシャ湾の安全をめぐるイランとの合意も模索するだろう。自国の路線に、対イラン強硬派のアラブ首長国連邦やバーレーンを含む、湾岸協力会議(GCC)メンバーの立場を集約できれば、サウジは、イラン戦争後に、地域および世界的な影響力の低下に直面するのではなく、むしろ、それを拡大させるチャンスを手にできるかもしれない。

米国に背を向けたアラブ諸国
―― 中ロと欧米の逆転

2026年6月号

アマネイ・A・ジャマル アラブ・バロメーター 共同創設者
マイケル・ロビンス アラブ・バロメーター ディレクター

アラブ諸国政府はすでにアメリカとの関係を遮断し始めるか、ワシントンとの取引の一部を国内社会に伝えず、隠すようになった。イランでの戦争に先だって、湾岸諸国の指導者たちは、ワシントンにさらなる攻撃をしないように警告したが、ワシントンは相手にしなかった。アメリカとイスラエルが、イラン戦争を始めた結果、湾岸諸国は大きな被害を受け、一部の指導者はアメリカの金融機関からの資金引き揚げを検討している。いまやアラブ世界では、中ロの方が、欧米よりも道徳的優位をもつと考えられている。アメリカは、正統性を喪失している。

ハンガリーを超えて
―― 世界の民主化運動が学ぶべき教訓

2026年5月号

ロリーヌ・レーデイ テキサス大学オースティン校 公共政策大学院准教授(国際関係論)

「政府に友好的なオリガルヒを通じて経済的影響力を行使し、党に忠実な支持者を責任者に任命して社会・文化・メディア組織を支配する」ビクトル・オルバンの権力システムは、国内で「競争的権威主義」体制を築こうとする世界の独裁者たちのモデルとされてきた。だが、この支配体制にも、権威主義政権の与党に有利な選挙の区割りと制度にも、落とし穴は存在した。民主派は、野党勢力を結集し、与党が作り出した社会的分断を逆手にとり、その政治腐敗、悪化する行政サービスや高インフレへの対応に失敗したことを選挙の争点に据えた。ハンガリーでの民主派勢力の成功は、競争的権威主義体制下にある各国の野党が学ぶべき教訓を示している。

国家資本主義の時代
―― 地政学的混乱と政府の経済介入

2026年5月号

ジャミ・ミシック 元キッシンジャーアソシエイツ会長
ピーター・オルザック ラザード 最高経営責任者
セオドア・ブンゼル ラザード地政学 アドバイザリー マネージングディレクター

貿易戦争、重要鉱物の輸出規制、そして大西洋同盟の亀裂を含む、地政学的混乱が、新たな経済手段を迅速に整備することを政府に迫り、すでに各国は国家資本主義へ深く足を踏み入れている。国の経済安全保障のために、企業行動の変化を強制する必要性があると考える政府は、輸出管理制度、投資審査メカニズム、補助金制度を駆使している。ますますホッブズ的な国際環境になる現状では、これまで以上に政府介入が必要なのかもしれない。しかし、経済ルールを政治家の恣意的な気まぐれに完全に置き換えるのは、大きな地政学的過ちにつながる。強権的で不安定な国の介入は、経済活動や競争を急速に萎縮させてしまう恐れがある。

強大化するドイツパワーの危うさ
―― 欧州の分裂と大国間競争リスク

2026年5月号

リアナ・フィックス 米外交問題評議会 シニアフェロー(欧州担当)

このままの流れが続けば、2030年までにドイツは再び軍事大国になる。ヨーロッパは「ロシアの脅威に対抗してドイツが再軍備軌道にあること」を全般的に歓迎しているが、慎重に考えるべき部分もある。ドイツの軍事的優位は、いずれ安全保障のジレンマを引き起こし、大陸内に分断をもたらすかもしれないからだ。特に極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が政権を握れば、そのような悪夢が現実になる危険は大きくなる。ドイツは自らの強さに伴うリスクを認識して、より深く統合されたヨーロッパの軍事構造に自らの防御力を組み込むことで、自制しなければならないし、近隣諸国は、どのような防衛統合を望むかを明確に示す必要がある。

イランショックとエネルギー安全保障
―― 国際市場とエネルギー自給の間

2026年5月号

ジェイソン・ボルドフ コロンビア大学 気候変動研究大学院 共同学院長
ミーガン・L・オサリバン ハーバード大学 ケネディスクール 教授(国際関係論)

ホルムズ海峡危機を前に、多くの国が、統合されたエネルギー市場を脆弱性のルーツとみなし、エネルギー自給を模索するようになるだろう。協調的な世界秩序がほころぶにつれて、相互依存よりも、地政学が優先され、エネルギー不安が高まっているからだ。長期的には、各国が国内のエネルギー市場を保護しようとする試みが、世界のエネルギーシステムを再編していくのかもしれない。だが、エネルギー自給を高めるために、国境の内側に後退することでエネルギー安全保障を強化できると考えるのは幻想に過ぎない。むしろ、破綻することなく、ショックを吸収できるだけの強靭なシステムを構築することを目標にしなければならない。

核使用リスクと現代の戦争
―― ウクライナ戦争の教訓

2026年4月号

レベッカ・リスナー 米外交問題評議会 シニアフェロー
ジョン・K・ウォーデン マサチューセッツ工科大学 国際問題研究所 シニアアナリスト

「核使用のリスクを無視できない国際環境のなかで、高度に破壊的な通常戦争を長期的に戦い、戦闘のなかで、エスカレーションの引き金となるレッドラインを常に探り、しかも、同盟国やパートナーとのリスク許容レベルやエスカレーション管理を調整しなければならない」。これがウクライナ戦争の教訓に他ならない。この環境のなかで、同盟国やパートナーとともに、ともに核を保有する大国間戦争をいかに管理していくかが、今後問われることになる。あらゆるケースで、長期戦に勝利するために、(エネルギーや戦略資源の)国家備蓄、防衛産業基盤、そしてサイバー攻撃や経済ショックへの国家としてのレジリエンスを強化するための投資が必要になる。

トランプ外交の本質
―― 国内政治問題と対外路線

2026年5月号

マイケル・カーペンター 国際戦略研究所 上級研究員

いまや国内の政治問題が国際行動に影響を与えることは多く、アメリカも例外ではない。マドゥロを排除することに成功した作戦と同様に、テヘランのアヤトラ・ハメネイを殺害した空爆作戦も、アメリカの国内政治というレンズで捉える必要がある。実際、支持率の低迷や国内のスキャンダルが、手っ取り早い対外戦争へつながっていくことも多い。しかも、ベネズエラやグリーンランドのケースは、トランプ政権が国際法を無視していること、そうすることがアメリカにとって都合が良ければ同盟国やパートナーを犠牲にすることも厭わないことを示している。いまや米外交は、非自由主義・民主国家のスタイルへ近づきつつある。

現代における戦争の本質
―― 消耗戦を回避するには(2026/3/27)

2026年5月号

ジェームズ・F・ジェフリー ワシントン近東政策研究所 特別研究員

現代戦争において、重要なのは武力を超えた部分にある。生産能力、経済コスト、市民の士気や政治的ムード、そして国際社会の懸念が、国が用いる軍事的な選択肢を制限する。ワシントンも、原油価格の高騰によってイラン戦争の余波にさらされている同盟国やパートナー諸国が離反しないように配慮しなければならない。アメリカが同盟国やパートナーの立場を完全に無視すれば、彼らは国内における米軍基地の存続を拒絶し、地域的な軍事協調から手を引く可能性もある。ロシアがウクライナで直面している悲惨な状況に陥らないようにするには、アメリカは出口を模索しなければならない。妥協が必要だ。

イランの戦略目的は何か
―― 戦闘ではなく、戦争に勝利する(2026/3/26)

2026年5月号

ナルゲス・バヨグリ ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際関係大学院 准教授(中東研究)

イランは、アメリカとイスラエルの空爆を生き延びているだけではない。戦略レベルで、敵対国を深刻な経済的・政治的問題に直面させている。テヘランの最終的な戦略目的は、米軍が湾岸地域に駐留し続けることの政治的代償を、維持できないほど高くすることにある。イラン・イラク戦争の経験から、テヘランは攻撃を耐え、戦力を分散し、再編成する能力を強化してきた。多くの高官が殺害されたにもかかわらず、革命防衛隊が機能を維持できているのもこのためだ。すでに、湾岸諸国は対米連携の価値について真剣に疑問を抱き始めている。

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