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論文データベース(最新論文順)

CFR朝鮮半島タスクフォース・リポート Part1
北朝鮮に対する巻き返し策を

2010年7月号

共同議長
チャールズ・プリチャード 朝鮮半島経済研究所会長
ジョン・H・ティレリ 元在韓米軍・米韓連合軍最高司令官
ディレクター(リポート執筆者)
スコット・スナイダー 米外交問題評議会非常勤シニア・フェロー

われわれタスクフォースは、アメリカと韓国は、一体感のある同盟の形成に向けた議論を深め、この枠組みができたら、北朝鮮の政治的不安定化に迅速に対応できる態勢を強化するために、日本、中国、ロシアを取り込んで枠組みを拡大させていくことを提言する。朝鮮半島の将来を議論するために、アメリカは中国との戦略対話を試みる必要もある。

これまで北朝鮮は、核実験を含む、アメリカが定義するレッドラインをことごとく公然と越えてきたが、それでも懲罰措置の対象とされることはなかった。・・・残された唯一のレッドラインとは、「北朝鮮がNPTの枠組みに復帰しない限り、非国家アクターによる核テロが起きた場合に、アメリカは北朝鮮のことを主要な容疑者とみなし、アメリカの即時報復攻撃の対象とする」と警告することだ。・・・オバマ政権にとっての課題は、アメリカの警告の信頼性をいかに高めるかにある。

テッド・ターナーとの対話
― HBOヒストリーメーカー・シリーズ

2010年6月号

スピーカー
テッド・ターナー ターナーエンタープライズ会長
プレサイダー
デビッド・G・ブリンクレー アトランティック・メディア・カンパニー会長

「大きな目的を持つように」と私は父から教えられた。「自分が生きている間には実現できそうにない目的を定めるんだ。そうすれば、つねに前向きでいられるぞ」。これが父の教えだった。私はこの教えを今も守っている。世界から核兵器をなくすことに努力している。世界がもっと真剣に気候変動問題に取り組み、石炭や石油の消費を段階的に減らしていくにはどうすればよいかを考えている。さらに、世界の人口を安定させ、国連がミレニアム開発目標として掲げるように世界から貧困をなくすことも目的にしている。たしかに、どこから手をつければよいか分らない手に負えない目的かもしれない。(笑い) しかし、自分にはもう何もすることがないと心配する必要だけはない。この意味では、私は幸せだと思う。(テッド・ターナー)

欧米のソフトパワーとハードパワーを融合させよ
―― EUとNATOの連携強化を

2010年6月号

ウィリアム・ドロズディアク ドイツ・アメリカ評議会会長

NATOは軍事同盟だが、EUは軍事力の行使には否定的で、むしろ、開発援助、教育その他の領域への支援、つまり、ソフトパワー路線に価値を見いだしている。これは、NATOのハードパワーにEUのソフトパワーをまとわせれば、地球温暖化、破綻国家、人道的悲劇といった今日的課題に米欧が協力して対処していけるようになることを意味する。そのためには、EUとNATOの連携を強化しなければならない。そうしない限りEU、NATOという欧米のもっとも重要な二つの機関も、今後、時代に取り残された凡庸な存在と化し、最終的には無力化していくだろう。この2つの機関の連携を強化して大西洋同盟を新たに再生することが、(中国とインドという)台頭するアジアパワーを前に、アメリカとヨーロッパがグローバルな影響力を強化していくためのもっとも効果的な方法だろう。

「遠征経済学」の薦め
―― 軍は紛争・災害後の社会と経済をいかに立て直せるか

2010年6月号

カール・J・シュラム ユーイング・マリオン・カウフマン財団 理事長兼最高経営責任者

現在の紛争の多くが、経済が弱く、停滞している国で起きているのは偶然でない。軍隊は軍事介入をして社会を安定化させることしか考えていないが、紛争後の安定に必要なのは、紛争前を上回る経済レベルへと相手国を引き上げることだ。イラク、アフガニスタンでの米軍による経済再建努力が成果を上げていないのは、一つには、軍が開発経済学の間違った前提を受け入れているからだ。先進国であれ、途上国であれ、経済成長は、新たに立ち上げられた企業が雇用を創出し、経済全般を刺激することで実現する。しかし、起業が経済復興に果たす役割が、開発経済学ではほぼ無視されている。米軍の軍事計画立案者たちが、戦争や自然災害によって荒廃した国々に活気ある経済を再生したいのなら、硬直的な思考パターンにとらわれている国際開発・援助機関にばかり目を向けるべきではない。むしろ、成功企業を立ち上げた実績を持つ起業家や投資家など、市場での実務経験豊かな専門家に相談すべきだろう。

バーゼルⅢを阻止すべき理由
―― 国単位の規制で多様な危機回避メカニズムを

2010年6月号

マーク・レビンソン 米外交問題評議会 国際ビジネス担当シニア・フェロー

金融危機の余波のなかにある現在、国際機関が規制調和に向けたアプローチを再定義しようと試み、バーゼルⅢが誕生するのではないかという憶測も飛び交っている。だが、国際的な金融規制は合理的対策とはなり得ない。それどころか、金融規制をめぐる国際合意が規制・監督の所在を不明確にしたために、危機を深刻化させてしまった部分がある。国際協調をつうじて金融機関を規制・監督しようと試みるのは重要だが、この試みを、国家レベルでの厳格な規制・監督の実施の代替策にはできない。各国がうまく考案された規制を導入するほうが、国際合意よりもはるかに大きな意味を持つ。むしろ、金融規制をめぐる各国の「多様な」取り組みを国際合意が阻害しないようにしなければならない。金融規制に関しては、国際合意が少なければ少ないほど良い。これがこの35年間の経験からわれわれが学ぶべき教訓だろう。

大きすぎてつぶせない銀行を分割せよ

2010年6月号

スピーカー
リチャード・W・フィッシャー ダラス地区連邦準備銀行総裁
司会
ジョアン・E・スペロ CFRファウンデーション・センター客員研究員

巨大銀行は、産業と地理の境界を越えるコネクションを作り出し、経済や金融市場と様々な方法でつながっている。巨大銀行は他の銀行や金融機関とも深く広く関係している。このため、本当に巨大な銀行が破綻すれば、金融システム全体に問題が波及する。世界中で不良債券のスパイラル的な拡大、多くの雇用と企業を消滅させる信用収縮を引き起こす危険がある。これら巨大金融機関が金融システム全体に有害なウィルスを拡散させてしまうリスクを考えると、予防的なアプローチが好ましいと私は思う。つまり、巨大金融機関を経営陣にとっても規制当局にとっても管理可能なサイズに分割する国際合意を形成すべきだと思う。

米政府はこれ以上の「外交の軍事化」を避ける必要があるし、そのためには、「パートナー国の軍事能力を整備すること」を重視していかなければならない。自ら防衛する国を助けるか、必要なら、相手に装備、訓練、その他の安全保障援助を与えて、米軍の傍らで戦う相手国の戦力を整備していくべきだ。問題は、米軍が外国の軍隊を粉砕することを目的に組織されており、(同盟国やパートナー国に)助言や訓練を与え、装備を調えるのを手伝うようには組織されていないことだ。安全保障をより包括的にとらえ、国務省と国防総省の連携をさらに強める必要がある。(外交を含む)国家安全保障システム内部の不均衡を是正しなければ、アメリカの外交政策の「軍事化」がさらに進む。パートナー国が自ら安全保障を強化できるように支援することは、アメリカ自身の安全保障を強化していく上でも重要な意味を持つ。この重大な任務への取り組みを改善していくことを、アメリカの重要な国家優先事項に据える必要がある。

論争 台湾は中国の軌道に入りつつあるのか?

2010年6月号

ヴァンス・チャン 駐米台北経済文化代表処・情報部ディレクター
ハンス・モウリゼン オランダ国際研究所 シニア・リサーチフェロー
ブルース・ジリー ポートランド 州立大学行政大学院准教授(政治学)

エネルギーの利用効率の改善ペースが石油資源の枯渇ペースを上回り続ければ、いずれ石油は低価格であっても市場で見向きもされない資源になる。利用効率の改善によって節約される資源は、いまや米国内のエネルギー供給の五分の二に匹敵する規模に達しており、これこそもっとも急速に拡大している新しい「資源」だ。石油価格を引き下げ、安定させることができるのは、唯一需要サイドでのエネルギー利用効率の改善促進だけだし、利用効率レベルをほんの少し引き上げるだけでそれは実現する。石油の供給を増やすのではなく、使用効率の改善に重点を置いた需要管理措置とクリーンな代替エネルギー促進策を政策の基盤に据えるべきだ。

ウィレム・ブイターが語る先進国の
財政問題とソブリンリスク
― アメリカも日本も潜在的リスクに
さらされている

2010年6月号

◎スピーカー
ウィレム・ブイター
CITIグループ チーフエコノミスト
◎プレサイダー
マイケル・エリオット
タイム・インターナショナル エディター

2~3年後に、アメリカは財政緊縮路線をとらざるを得なくなる。これが、ブッシュ前政権が導入した高額所得者向けの減税措置の打ち切りとタイミングが重なるとしたらどうなるだろうか。この場合、米国債はAAAの格付けを失い、金利の上昇、ソブリンスプレッドの拡大によって、米経済は市場に試されることになる。・・・(日本はどうだろうか)。人々が巨大な政府債務があっても(大きな金融資産を持っているのだから)問題は起きないと考えているうちは、大きな変化はないだろう。だが、多くの人々が、デフォルトに陥ると考えだしたら、どうなるか。この場合、リスクは限りなく大きくなる。投資家が、状況が持続不可能だと懸念するようになれば、現実に、状況は持続不可能になる。・・・いかなる国にも逃げ場はない。(ウィレム・ブイター)

大中国圏の形成と中国の海軍力増強
―― 中国は東半球での覇権を確立しつつある

2010年6月号

ロバート・カプラン アトランティック誌記者

陸上の国境線を安定化させ、画定しつつある中国は、いまや次第に外に目を向け始めている。中国を突き動かしているのは、民衆の生活レベルの持続的改善を支えていくのに必要な、エネルギー資源、金属、戦略的鉱物資源を確保することだ。だが、その結果、モンゴルや極東ロシアに始まり、東南アジア、朝鮮半島までもが中国の影響圏に組み込まれ、いまや大中国圏が形成され始めている。そして、影響圏形成の鍵を握っているのが中国の海軍力だ。北京は、米海軍が東シナ海その他の中国沿海に入るのを阻止するための非対称戦略を遂行するための能力を整備しようとしている。北京は海軍力を用いて、国益を擁護するのに軍事力を使用する必要がないほどに、圧倒的に有利なパワーバランスを作り出したいと考えているようだ。しかし、中国の影響圏の拡大は、インドやロシアとの境界、そして米軍の活動圏と不安定な形で接触するようになる。現状に対するバランスをとっていく上で、今後、「米海軍力の拠点としてのオセアニア」がますます重要になってくるだろう。

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