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ロシアに関する論文

ウラジーミル・プーチンはシリア紛争とチェチェン紛争を同列にとらえ、シリア紛争のことを「国家を標的にし(国家解体を狙う)スンニ派の過激主義勢力の、数十年におよぶ抗争の最近の戦場にすぎない」とみている。アフガン、チェチェン、数多くのアラブ国家を引き裂いてきたスンニ派の過激主義勢力と国家の戦いがシリアで起きているにすぎない、とプーチンは考えている。だからこそ、彼は「自分がチェチェンで成し遂げたことをアサドがシリアで再現し、反体制派の背骨を折ること」を期待し、シリアに対する国際介入に反対してきた。仮にプーチンがアサドを見限るとしても、その前に、「体制崩壊に伴う混乱の責任を誰がとるのか」という問いへの答を知りたいと考えるはずだ。誰がスンニ派の強大化を抑え込むのか、誰が北カフカスその他のロシア地域に過激派が入り込まないようにするのか。そして、誰が、シリアの化学兵器の安全を確保するのか。プーチンは、アメリカや国際コミュニティがアサド後のシリアに安定を提供できるとはみていない。だからこそ、シリアという破綻途上国を支援し続けている。

Foreign Affairs Update
プーチン・ドクトリン

2013年4月号

レオン・アーロン アメリカン・エンタープライズ研究所 ロシア研究ディレクター

「ロシアは核の超大国、国際的活動のすべての側面における大国としての地位を維持し、政治、軍事、経済をめぐる地域的リーダーとしての役割を守り、地域的覇権国として君臨しなければならない」。プーチンは、ロシアで広く共有されているこのコンセンサスに「ソビエト解体によって失われた経済、政治、戦略地政学上の政府資産の回復」をアジェンダに加えた。これがプーチン・ドクトリンの概要だ。こうしてロシアが権威主義に回帰していくと、モスクワは、対外的な脅威を強調するようになった。こうして、米ロ関係のリセットを経た現状では、ロシアとの交渉の余地は失われつつある。この状況では、再び関係のリセットを試みのではなく、対話チャンネルを維持しつつも、対ロエンゲージメントを低下させる「戦略的休止」が、もっとも賢明なワシントンの対ロシア戦略かもしれない。

BRICsの黄昏
―― なぜ新興国ブームは終わりつつあるのか

2012年12月号

ルチール・シャルマ
モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント
新興市場・グローバルマクロ担当ディレクター

これまで「途上国経済は先進国の経済レベルに近づきつつある」と考えられてきた。この現象と概念を支える主要なプレイヤーがBRICsとして知られるブラジル、ロシア、インド、中国という新興国の経済的台頭だった。だが、途上国と先進国の間で広範なコンバージェンスが起きているという認識は幻想にすぎなかった。新興国台頭の予測は、90年代半ば以降の新興国の高い成長率をそのまま将来に直線的に当てはめ、これを、アメリカその他の先進国の低成長予測と対比させることで導き出されていた。いまや新興国の経済ブームは終わり、BRICs経済は迷走している。「その他」は今後も台頭を続けることになるかもしれないが、多くの専門家が予想するよりもゆっくりとした、国毎にばらつきの多い成長になるだろう。

変ぼうしたロシア社会と「ロシアの春」?
―― 都市と地方の不満が一体化すれば

2012年10月号

ミハイル・ドミトリエフ 戦略研究所(モスクワ)所長 / ダニエル・トレーズマン カリフォルニア大学 ロサンゼルス校(UCLA)教授(政治学)

ロシア政治の未来にとって最大の試金石は、デモを展開している政治意識の高い都市部の「少数派」が、モスクワとサンクトペテルブルグ以外に住む「サイレントマジョリティ」の共感をどの程度得られるかにある。たしかに、地方で生活するロシア人は、騒がしい街頭デモや抽象的なスローガンには関心がない。だが、彼らも「現在の政治システムは絶望的に腐敗しており、基本的な行政サービスさえ提供できない」と考えている。地方でもプーチンを支持する声は小さくなる一方で、今度大きな経済危機が起きれば、彼らも大規模な抗議行動に参加するかもしれない。ロシア全土でデモが起きるようになれば、企業やメディア、それに法執行当局でさえも、クレムリンから距離を置くようになり、自分たちが生き残るには、政治の変革が必要だと判断するだろう。ロシアの民主活動家の課題は、都市部と地方の二つの不満、つまり、変化への希求をひとつにまとめあげることだ。もちろん、クレムリンは、それを阻止することが最重要課題であることを理解している。

プーチン主義というシステム
―― ロシア社会の変化にプーチンは適応できるか

2012年9月号

ジョシュア・ヨッファ エコノミスト誌モスクワ特派員

現在のロシア市民には一連の自由が与えられている。イケアで安い家具を買ったり、外国で休暇を過ごしたりと、いまやロシア市民はヨーロッパ中間層と生活の特質の多くを共有している。野心と才能のある者にとっては、モスクワはキャリアを築く大きな舞台だ。政治に関わらないかぎり、ありとあらゆる場所で選択肢が用意されている。この仕組みゆえに、プーチンのロシアには国を否定する者がいなかった。不満があるならいつでもロシアを離れることができた。プーチン主義は、ソビエト時代の硬直した管理システムよりもずっと狡猾で現代的なのだ。だがプーチン体制は共産主義とは違って、一貫した世界観を示しているわけではなく、安定と権力を維持するためにつくられている。逆に言えば、現状に不満を持つ新しい政治家や政治運動は、「根深いイデオロギーの壁を乗り越える」必要がない。これが、今後プーチン体制を脅かす最大の問題を作り出すことになるだろう。

CFR Interview
イラン・シリア問題に揺れるロシア外交
――なぜプーチンは中東を歴訪したか

2012年7月号

スティーブン・セスタノビッチ 米外交問題評議会シニアフェロー

(シリア問題をめぐって)「欧米とアラブ世界が連帯し、その一方にロシアとイランがいる」という構図ができあがってしまっている。これまでシリアのバッシャール・アサドを支持してきたために、ロシアは非常に厄介な状況に追い込まれている。プーチンが最近中東を歴訪したのは、まさしく、ロシアの中東外交が手詰まり状況にあるからだ。彼はロシアの立場を中東の指導者に説明する必要があったし、なぜ中東諸国の批判に耳を貸そうとしないかについて弁明を試みる必要があった。いまや、シリアへの路線ゆえに、中東におけるロシアのイメージは大きく失墜し、アラブ諸国は「ロシア政府は経済的、地政学的思惑絡みでアサド政権を支持しており、中東地域の政府と民衆が気に懸けている人道問題を無視している」と批判している。

Foreign Affairs Update
ガスプロムの衰退とプーチンの政治的黄昏

2012年6月号

アハマド・メフディ NATO加盟国議員会議リサーチフェロー

2000-2008年当時、プーチンはロシアという国家の現実を形作るだけの圧倒的な権力をもっていた。彼はその権力基盤の多くを、国家的な覇権企業としてのガスプロムの存在に依存していた。ガスプロムが優遇策を受け、許認可をクリアーし、パイプラインの使用権を独占できたのは、権力との共存関係にあったからだ。だが、プーチンの政治的配慮が予期せぬ形で天然ガス市場の事実上の自由化を促してしまった。いまや新興の天然ガス企業・ノバテックがガスプロムの地位を着実に脅かしつつある。すでに、クレムリンはノバテックを「次なるガスプロム」のように扱い始め、市場も同社を天然ガス産業の大手プレイヤーとみなし始めている。ガスプロムが市場からクラウドアウトされていくにつれて、プーチンは何か別の権力基盤を探さざるを得なくなる。そうしない限り、プーチンもまた追い込まれていく。・・・

Z・ブレジンスキーとの対話
――イラン抑止、ロシアの欧米化、 アジア外交の非軍事化を

2012年5月号

ズビグニュー・ブレジンスキー カーター政権大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、サム・ファイスト CNN 副会長

われわれがかつてソビエトを抑止し、現在も北朝鮮を抑止できているとすれば、イランを抑止できないと考える理由はあるだろうか。イランに対しては空爆ではなく外交と抑止路線を重視していく必要がある。・・・一方、ロシアについては、この国で市民社会が台頭していることに注目すべきだろう。帝国としての過去にこだわるプーチンも、市民社会が作り出す圧力の前に、路線を見直さざるを得なくなるはずだ。・・・・東アジアについては、中国との衝突を避けるべきで、アメリカはこの地域の軍事紛争には関与すべきではない。必要なのは、紛争を阻止するために介入することだ。もちろん、今後も維持していくべき軍事的利益も残されているが、こうした路線の前提として日本と中国の和解を促す必要がある。われわれの極東政策における軍事的色彩を弱めていく必要がある。・・・・

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