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中東に関する論文

パレスチナ、イラクとアメリカの戦略

2003年3月号

マイケル・スコット・ドーラン プリンストン大学助教授

アラブ政治における「パレスチナ」というスローガンは、抑圧、失業など、アラブ世界の不満、西洋の文化的覇権に対する抵抗を表明するツールにすぎない。
アメリカが、現在の中東秩序を維持していくつもりなら、「パレスチナ」に惑わされずに、サダムやアルカイダという敵を倒し、その後、不満の元凶である中東の社会経済問題を解決するための持続的な作戦を実施すべきだ。今後の中東秩序は、中東の民衆が、アメリカや欧米世界のことを「よりよい生活を実現するためのパートナー」とみなすかどうかに左右される。

米外交問題評議会リポート
ーーイラクの戦後構想の指針

2003年2月号

共同議長:エドワード・ジェレジャン ライス大学ジェームズ・ベーカー公共政策研究所・所長、フランク・ウィズナー AIGグループ副会長
共同ディレクター:レイチェル・ブロンソン 米外交問題評議会シニア・フェロー、アンドリュー・S・ウェイス 米外交問題評議会フェロー

アメリカその他の諸国は、イラクとの戦争に踏み切るかどうかをめぐる運命的な決断を迫られつつある。このリポートは、戦争に踏み切るべきかどうかについてのわれわれの判断を下すものではない。だが、アメリカ政府が、米本土に対する報復テロ攻撃の危険に備え、戦後イラクにおいて、アメリカとイラクを始めとする各国が何をなすかについて現実的な計画をとりまとめずして、戦端を開くことはあり得ない。米本土の安全保障について、米外交問題評議会はすでに、ゲリー・ハート、ウォーレン・ロドマンを共同議長に迎え「アメリカの備えはいまだ十分ではなく、危機にさらされている」というタイトルのリポートをまとめている。米外交問題評議会とライス大学ジェームズ・ベーカー公共政策研究所がまとめた今回のリポートは、二番目の懸念であるイラクの戦後構想をテーマとする。この研究が、より包括的な戦後構想の見取り図となることを期待する。
レスリー・ゲルブ(米外交問題評議会会長)

サダムが大量破壊兵器で反撃に出れば

2003年2月号

リチャード・K・ベッツ コロンビア大学戦争・平和研究所所長

アメリカは、蛇が攻撃してくるかもしれないと恐れるあまり、蛇をつつこうとしている。だが、つつかれた蛇がすぐさま反撃してくる危険をほとんど無視している。抑止や封じ込めを継続することの危険を大げさに言い立てる予防戦争論者は、戦争によって対米報復攻撃という惨劇が起きる危険を軽くみている。
報復攻撃の脅威に備えるとともに、報復攻撃を誘発するような戦争を始めること自体を再検討すべきだ。予防戦争が「死を恐れるあまりの自殺」になりかねないことを認識し、封じ込めの強化を始めとする、イラク侵攻策に代わる策を検討すべきである。

米外交問題評議会リポート
世界的反米感情の高まりとイラク侵攻策

2003年2月号

スピーカー
マドレーン・K・オルブライト クリントン政権国務長官
ブレント・スコークロフト ジョージ・H・W・ブッシュ政権 国家安全保障問題担当大統領補佐官
ティモシー・ガートン・アッシュ オックスフォード大学 シニア・リサーチフェロー
報告者
アンドリュー・コート ピュー世論調査センター(PRCPP)ディレクター

以下は二〇〇二年十二月に米外交問題評議会で行われたミーティング・プログラム議事録の要約・抜粋。議論は、ピュー世論調査センター(PRCPP)が二〇〇二年に世界四十四カ国の三万八千人を対象に実施した、世界におけるアメリカのイメージに関する世論調査結果を踏まえて行われている。世論調査の結果はhttp://people―press.org/から、討議の全議事録はwww.cfr.orgからアクセスできる(ともに英文)。聞き手は、ジョー・クライン(ニューヨーカー誌記者)。

サダムが大量破壊兵器で反撃に出れば

2003年2月号

リチャード・K・ベッツ コロンビア大学戦争・平和研究所所長

アメリカは、蛇が攻撃してくるかもしれないと恐れるあまり、蛇をつつこうとしている。だが、つつかれた蛇がすぐさま反撃してくる危険をほとんど無視している。抑止や封じ込めを継続することの危険を大げさに言い立てる予防戦争論者は、戦争によって対米報復攻撃という惨劇が起きる危険を軽くみている。報復攻撃の脅威に備えるとともに、報復攻撃を誘発するような戦争を始めること自体を再検討すべきだ。予防戦争が「死を恐れるあまりの自殺」になりかねないことを認識し、封じ込めの強化を始めとする、イラク侵攻策に代わる策を検討すべきである。

米外交問題評議会インタビュー
イラクと北朝鮮への対応はなぜ違うのか

2003年2月号

マイケル・マンデルバーム 米外交問題評議会シニア・フェロー、ジョンズ・ホプキンス大教授

以下は、マイケル・マンデルバーム(米外交問題評議会シニア・フェロー、ジョンズ・ホプキンス大教授)の対イラク・北朝鮮戦略についてのインタビューからの抜粋・要約で、一部順序を入れ替えてある。(聞き手は、www.cfr.orgのコンサルティング・エディター、バーナード・ガーズマン)

北朝鮮とイラクに対してブッシュ政権が異なる政策をとっているのは、両国が異なる環境にあり、これまでの対外行動の歴史も違うからだと私は判断している。もちろん、こうした外交路線の使い分けが、政治的に支持されるかどうかはわからない。イラクとの戦争をするのなら、なぜ北朝鮮を放置しておくのかと言い出すアメリカ人がいずれ数多く出てくることになるだろう。

イラクとアラブ世界の将来

2003年1月号

フォアド・アジャミー ジョンズ・ホプキンス大学教授

アラブの指導者たちは、心のなかでは「砂漠の嵐」を超える「完全な嵐」の到来を待ち望んでいる。短期間で決着がつき、サダム・フセイン追放の機会がつくり出されるような戦争を望んでいる。だが、これを「正義の戦争」と納得するアラブの民衆はほとんどいないだろうし、戦後には厄介な現実が待ち受けていることをアメリカは心しておくべきだ。
アラブ世界は、アメリカの罪をあげつらうことも、改革派を「外国勢力の手先」と切り捨てることもできる。それだけに、戦争をいかに戦うか、大いなる慎重さをもって臨まなければならない。

米外交問題評議会リポート
イラクに侵攻すれば、世界はどう反応する

2002年12月号

スピーカー パトリック・ジャロー (フランス)ルモンド紙ワシントン支局長 ヒシャム・メルヘム (レバノン)アッサフィル紙チーフ・コレスポンデント ジャスティン・ウェブ BBC(イギリス放送協会)ワシントン特派員 司会 フランク・セスノ ジョージメイソン大学教授

アラブ世界では、アメリカがイラクを粉砕したいのは、イラクが中東地域でのイスラエルの覇権確立を阻む唯一の力を持つ国だからだ、という考えも流布している。民主主義を相手に押しつけることはできない。だが、人権を尊重するような政権をイラクに樹立するというのならまだ話はわかる。ジェファーソン流の民主主義者を中東に見いだそうとしても無理だが、政府の説明責任、透明性、市民の政治参加、マイノリティーの尊重、女性の権利の確立などの基本的価値をアメリカと共有している人材なら見いだせる。(ヒシャム・メルヘム)

論争
サウジ石油の政治・経済的価値とテロ後の戦略地政学

2002年12月号

シブリー・テルハミ  メリーランド大学政治学教授  フィオナ・ヒル ブルッキングス研究所研究員   アブドラティフ・A・アルオスマン サウジ・アラムコ渉外担当役員

二〇〇一年九月の米同時多発テロ事件以降、サウジアラビアとアメリカの関係は政治的に微妙となり、流動化している。加えて、アメリカのサダム・フセイン追放作戦をめぐる米・サウジアラビア関係のきしみも取りざたされる。こうしたなか、世界でクローズアップされているのは、イラク侵攻後の中東情勢、サダム後のイラク再建、さらには、石油の価格と安定供給がどうなり、それが世界経済にどのような影響を与えるのか、シーレーン防衛が見直されることになるのか、そして、これらが世界の安全保障地図にどのような影響を与えるのか、という大きな問題だ。これらのすべてにおいて、サウジアラビアが重要な鍵を握っている。
「テロ後の世界が、ロシア、アメリカ、石油輸出国機構(OPEC)にとって、まったく新たな地政学の見取り図をつくり出していること」を踏まえた戦略をとることの必要性を説いた「石油をめぐるロシア対サウジの最終決戦」(The Battle for Energy Dominance, Edward L. Morse, James Richard, Foreign Affairs 2002 March/April,「論座」二〇〇二年五月号)は、世界で、また石油の九九・七%を輸入に依存する日本でも大きな話題となった。論文の筆者であるエドワード・L・モースとジェームズ・リチャードは、ロシア政府がテロ後の「エネルギーをめぐる新たな地政学状況を政治・経済的に立ち直る好機」ととらえていること、ロシアの石油企業が国際化、市場経済化しつつあることに注目し、ロシアとカスピ海周辺地域などの旧ソビエト地域における市場経済型の石油開発計画が実現すれば、「今後四年のうちに旧ソビエト諸国からの石油輸出の合計は、サウジアラビアの輸出にほぼ匹敵する規模になる」と指摘した。ここに掲載するのは、「石油をめぐるロシア・ファクターを考慮した、テロ後の石油戦略及び地政学の見直しの必要性」を説いた同論文に対する反論と、筆者たちによる再反論。

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