1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

ヨーロッパに関する論文

まかり通る不正とポリクライシス
―― インピュニティで世界を捉えると

2023年4月号

デービッド・ミリバンド 元イギリス外相

ロシアのウクライナ戦争から世界的な食糧不足、気候変動に至るまでの、多層的な脅威を前に、いまや「ポリクライシス(複合危機)」という表現をよく耳にする。問題の一つは、インピュニティ(不正が咎められないこと)が、現在のグローバルな危険を拡大させ、その余波があらゆる人に及んでいることだ。そして、ポリクライシスの原因と対応を考えるとき、民主主義対独裁主義、北対南、右対左といった対立構図の議論はあまり役に立たない。むしろ、グローバルな課題を、民主主義と独裁主義の闘いではなく、「インピュニティ」対「説明責任」の闘いとして位置づけ直せば、グローバルな聴衆に対して、問題をもっと包括的に語りかけることができる。インピュニティの指標には、紛争と暴力、人権侵害、説明責任を果たさない統治、経済的搾取、環境破壊という五つの指標がある。

大国間競争とドルの命運
―― 制裁と地政学とドル秩序の未来

2023年4月号

カーラ・ノーロフ トロント大学教授(政治学)

中ロは、アメリカによる経済制裁の痛みから逃れようと、自国通貨での決済を増やして、ドルシステムへの対抗バランスを形成しようと試みている。一方、安全保障の視点からドル支配体制の強化を望む国もある。不安定な国際環境のなか、各国は「友好国との地政学的経済関係」を重視しており、これが、世界最大の安全保障ネットワークの中枢に位置するアメリカとその通貨であるドルに新たな優位をもたらしている。もちろん、ワシントンが経済制裁を乱用すれば、ドルに代わる通貨を模索する各国の動機が強化される。アメリカはリベラルな国際秩序の公共財を強化する形で経済外交を展開しなければならない。主要な同盟国や国際社会の多くを離反させれば、アメリカはドル支配体制を維持できなくなる。

ウクライナ難民を支えるヨーロッパ
―― 人道的支援と難民疲れの間

2023年4月号

ダイアナ・ロイ ライター@www.cfr.org

欧州連合(EU)は、ロシアによる侵攻直後の2022年3月上旬に、ウクライナ難民のためにEUの一時保護指令を発動した。これは、難民申請がなくても、ウクライナ難民に最長3年間、EU諸国で生活・労働する権利を認める措置で、現在、480万人以上のウクライナ人がEUの一時保護プログラムまたは同様のプログラムに登録している。これはウクライナ難民全体の60%に相当する。一方、米政府関係者によると、ロシア軍は2022年9月時点で最大160万人のウクライナ難民をロシア領に強制移住させている。強制移住は国際法では戦争犯罪だが、ロシアはその行為を人道的避難と位置づけている。専門家は、戦争が続き、ヨーロッパはエネルギー価格の高騰、住宅不足、雇用難、財政難に直面しているために、今後1年間で「難民疲れ」が進むのではないかと懸念している。すでに反移民感情の高まりもみられる。・・・

欧米の対ロシア制裁を検証する

2023年4月号

ノア・バーマン アシスタントライター@www.cfr.org
アンシュ・シリプラプ ライター@www.cfr.org

欧米の対ロシア制裁は、金融からエネルギー、軍事技術までの広範な経済部門をターゲットにしている。しかし、中国やインドはロシアの石油や天然ガスの輸入を逆に増やし、ロシアの近隣諸国の一部は、中継貿易国の役割を担い、欧米の製品を輸入してはロシアに再輸出している。一方で、石油、肥料、小麦、貴金属など多くの重要なコモディティの輸出国として極めて重要なロシアは、制裁を課すのが難しいターゲットだと指摘するアナリストもいる。実際、国際通貨基金(IMF)は最近、ロシアの国内総生産(GDP)は2023年に0.3%成長するとの予測を示した。・・・

国益と自由世界擁護の間
―― ウクライナとアメリカの国益

2023年3月号

ロバート・ケーガン ブルッキングス研究所シニアフェロー

オバマ大統領(当時)は、「ウクライナは、アメリカよりもロシアにとって重要であり、同じことは中国にとっての台湾についても言える」と何度も語っている。一方で、第一次世界大戦、そして第二次世界大戦から今日までの80年間、アメリカがそのパワーと影響力を行使して自由主義の覇権を擁護し、支えてきたのも事実だ。ウクライナの防衛も、アメリカではなく、自由主義の覇権を守ることが目的なのだ。「アメリカはウクライナに死活的に重要な利益をもっている」とみなす米議員たちの発言は、ウクライナが倒れれば、アメリカが直接脅威にさらされるという意味ではない。(関与しなければ)「リベラルな世界秩序が脅かされる」という意味だ。アメリカ人は、再び世界はより危険な場所になったとみなし、紛争と独裁に支配される時代に向かいつつあるとみている。

それぞれのウクライナ戦争
―― 大国、主要国、途上国

2023年3月号

シブシャンカール・メノン 元インド外務次官

世界の多くの地域では、2022年のもっとも重要な問題は、ウクライナ戦争とはほとんど関係がなかった。途上国の多くはコロナ禍の大混乱から立ち上がろうとしている局面にあり、債務危機、世界経済の成長減速、気候変動などのさまざまな難題に直面している。中国にとっても、ウクライナ戦争は大きな足かせとなった。戦争は世界経済、中国のエネルギーと食糧の輸入、そしてロシアとの事実上の同盟関係に影響を与え、世界における中国の影響力は制約された。一方、日独は新しい道を歩み始めている。世界の多くの地域にとって、ウクライナ戦争は、世界秩序を再定義するよりも一段とさまよわせ、国際的な緊急課題にどう対処するかについて、新たな疑問を浮上させている。そして、現在の大国間対立に代わる第3の道はまだ視野に入ってこない。

クリミアを取り戻すべき理由
―― ウクライナの立場

2023年2月号

アンドリー・ザゴロドニュク ウクライナの政治家で企業家。現在はウクライナ国防戦略センター会長。2019–2020年にウクライナ国防相を務めた。

これまでの軍事的成功をみれば、ウクライナにクリミアを解放する力があるのは明らかだろう。クリミアにはロシアの一部にとどまることを希望する人もいるが、それ以上に、モスクワの支配から逃れたいと考える人が多い。ロシアは、国土を奪い、勢力圏を拡大し、帝国を復活させることに夢中だ。相手に弱さを感じとれば、飛びかかってくる。欧米の一部の専門家が言うように、和平と引き換えにクリミアを差し出してはならない。そんなことをすれば、プーチンの侵略行為に報い、さらなる侵略のインセンティブを与えるだけだ。クリミアがロシアの支配から解放されるまで、ウクライナの安全は期待できず、経済再建もできないだろう。当然、ウクライナは、クリミアを奪還するまで戦いをやめない。

戦争を終わらせるには
―― ロシアのリアリストに和平の条件を示せ

2023年1月号

タチアナ・スタノバヤ カーネギー国際平和財団スカラー

戦争を終わらせるには、ロシアにおけるリアリストの台頭が必要になる。現在ロシアが破滅の道にあること、このまま残虐行為や資源の浪費を続ければ、すでに追い込まれているロシアの立場がさらに悪化することをリアリストたちは理解している。欧米が、ロシアのリアリストが平和主義者へと立場を変えることを望むのなら、「和平がロシアの体制や国家の崩壊につながらないこと」を明確にモスクワに対して示さなければならない。そうしない限り、国内政治の流れは戦争継続へ向かう。ロシアのリアリストにウクライナとの和平がロシアの崩壊に直結しないと理解させることが、モスクワに壊滅的な侵略戦争を止めさせる唯一の方法だろう。

紛争が長期化する理由
―― 理想主義対現実主義

2023年1月号

クリストファー・ブラットマン シカゴ大学教授(国際関係論)

なぜウクライナ戦争は長期化しているのか。「敗北すれば自分の政権が終わるかもしれないと考えれば、それがロシアにとってどんな結果をもたらすとしても、プーチンは戦い続けるインセンティブをもつはずだ」。しかし、この他にも重要な理由がある。ウクライナがロシアに抵抗し、戦争を速やかに終わらせるための不快な妥協を拒絶していることは、地政学対立において理念と原則が作り出す不変のメカニズムの作用を示している。ウクライナの指導者と市民は「いかなるコストを支払おうとも、ロシアの侵略に屈して、自由や主権を犠牲にすることはない」と決意している。ロシアにとっても、これはイデオロギー戦争でもある。ウクライナ戦争は、戦略的ジレンマだけでなく、双方が妥結という考えを嫌悪しているために、戦いが長期化している。

変化したグローバルな潮流
―― 多極化時代の新冷戦を回避するには

2023年1月号

オラフ・ショルツ ドイツ連邦共和国首相

ツァイテンヴェンデ(時代の転換、分水嶺)は、ウクライナ戦争や欧州安全保障問題を超えた流れをもっている。ドイツとヨーロッパは、世界が再び競合するブロック圏に分裂していく運命にあるとみなす宿命論に屈することなく、ルールに基づく国際秩序を守る上で貢献していかなければならない。われわれは民主国家と権威主義国家の対立は模索していない。それでは世界的分断を助長するだけだ。その歴史ゆえに、私の国はファシズム、権威主義、帝国主義の流れと闘う特別な責任を負っている。同時に、イデオロギー的・地政学的な対立のなかで分断された経験ゆえに、新たな冷戦の危険を直接的に知っている。多極化した世界では、対話と協力を民主主義世界のコンフォートゾーンを越えて広げていかなければならない。・・・

Page Top