1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

ヨーロッパに関する論文

ヨーロッパの独自防衛は実現するか

2000年9月号

フィリップ・H・ゴードン  ブルッキングス研究所 米仏センター長

ヨーロッパ諸国はコソボ紛争の顛末から、自分たちが軍事的にいかにアメリカに依存しているかを思い知り、大きな変革なしには状況を変化させられないことを認識した。EUによる自立的防衛力を整備すれば、アメリカはヨーロッパにおける重荷を軽減できるし、ヨーロッパはより高い能力を持つパートナーになれる。しかし今回の構想が、ヨーロッパの軍事力の不備を補うような軍事能力の向上ではなく、たんなる官僚制の強化につながり、NATOとの関係を複雑にしてしまうだけなら、ヨーロッパが全般的にいい方向に向かうとは思えない。

米国エコノミスト徹底討論
日米欧 経済危機のシナリオ

2000年7月号

ブルース・スタインバーグ メリルリンチ証券チーフ・エコノミスト

構造改革も道なかばの日本、労働市場の硬直化が成長を妨げるヨーロッパ、IT産業への過度の依存と中南米諸国の窮状がリスクとなるアメリカ。二〇〇〇年一月、ニューヨークに集まった著名エコノミストたちが、世界経済の未来を大胆に予測する。

ユーロ圏 財政危機の全貌

2000年7月号

ニオール・ファーガソン オックスフォード大学講師 ローレンス・J・コトリコフ ボストン大学経済学教授

ユーロ各国は深刻な財政問題を抱えている。税負担の世代間格差が、単一通貨ユーロの存続を大きく脅かしかねないのだ。しかも、財政改革を実行できる政府は今のところ見当たらない。

デイトン後のボスニアの現実

2000年1月号

アイヴォ・ダールダー ブルッキングス研究所上席研究員

デイトン後のボス二アがなんとか生きながらえているのは、ひとえに国際援助のおかげである。現地勢力による自力再生の見込みはまったくたっていないし、援助もいずれ打ち切られる運命にある。しかも、世界の関心はすでにボスニアではなく、コソボの再建へと向かっている。国際社会は、敵対行為の抑止だけでなく、デイトン合意のもう一つの目的である、安定した経済基盤を備え、民主的で多民族から成るのボスニアの実現という野心的な課題を、もはや放棄すべきなのだろうか。それとも、その実現にむけて関与を再度強化させるべきなのだろうか。

バルカン経済にニューディール政策を

2000年1月号

ベン・ステイル 外交問題評議会シニア・フェロー スーザン・L・ウッドワード ロンドン大学国防研究センター上席研究員

南東ヨーロッパに長期的な安定と非民族主義的な政策が根づくかどうかは、この地域の「経済」がどうなるかによる。欧米が、バルカン危機の本質を修正可能な政策上の破綻としてではなく、この地域に特有な民族主義による紛争、民族間の敵意という構図でとらえ続ける限り、現地の改革が前進することはあり得ない。必要なのは、「南東ヨーロッパの欧州化」に向けた欧州連合(EU)の柔軟で明確なコミットメントだ。バルカンの欧州化とは、すでにEU内に根づいている、国境を超えた通貨・貿易・投資のアレンジメントをヨーロッパの南東部へと広げることで実現する。これによって育まれる南東ヨーロッパの内的統合とヨーロッパとの一体化への希望こそが、腐敗に彩られ、投資も呼び込めず、とかく民族主義に振り回されがちなバルカン地域での改革努力を喚起する唯一の処方箋である。

NATOのコソボ作戦を総括する

1999年12月号

ハビエル・ソラナ   前NATO事務総長

北大西洋条約機構(NATO)は突然、コソボ空爆を開始したわけではない。空爆は、すべての外交的手段がうまく機能しないのを見届けたうえで実施された。一方、この作戦を実施すれば、民間人が犠牲になり、ロシアとの関係が悪化し、コソボへの長期的なコミットメントが必要になるかもしれないという「リスク」の存在も、NATOは当初から理解していた。だが、行動を起こさなければ、大西洋コミュニティーがセルビアによる民族浄化作戦を事実上容認することになるため、リスクを引き受けても行動を起こす価値があると判断した。そして、作戦は「成功」した。難民は故郷へと再入植し、国連の参加によってコソボの復興も進んでいる。「無関心を決め込むことの最終的コストのほうが、エンゲージメント(穏やかな関与)が必要とするコストよりも、はるかに高い」という教訓を、われわれは再び学んだのである。

ヨーロッパの壮大なる駆け引き

1999年11月号

パトリック ・マッカーシー  ジョンズ・ホプキンズ大学教授

国が主権を超国家機関へ委譲する動機は一体何だろうか、そして、ヨーロッパ十一カ国はなぜ自国の通貨を捨てユーロ導入を選択したのか。「ヨーロッパ」の今後が先行き不透明であるにせよ、確固たる足取りで経済統合へとすすんでいるのは間違いない。ヨーロッパを統合へと向かわせたのは、国益を重視する冷徹な経済ロジックだったのか、それとも、理念とリーダーシップが、政治、経済、文化、歴史と連動しながら地殻変動をおこしたのだろうか。

イギリスの選択

1999年10月号

デヴィッド・フロムキン  ボストン大学教授

「大陸ヨーロッパ」と「アメリカ」のいずれをパートナーに選ぶかという、古くからの命題にイギリスはどのような答えを出しつつあるのだろうか。「イギリスは欧州共同体、英連邦および大英帝国、そしてアメリカ(英米関係)という三つの輪の中で中心的役割を果たすべきである」。このチャーチルの遠大な戦後ビジョンは、半世紀の歴史を経て、どのような現実に遭遇しているのだろうか。ブレアの登場とともにイギリスは純然たるヨーロッパの一部になってしまうのか、それとも大陸ヨーロッパの統合運動に参加しつつ、英米関係を温存していくのだろうか。

オランダの麻薬対策の挫折

1999年10月号

ラリー・コリンズ  ジャーナリスト

麻薬問題は多くの国にとって悩みの種だが、麻薬を合法化しているオランダの現実も理想からはほど遠く、到底成功とは見なし得ない。オランダ議会は二十三年前、マリフアナやハシシュなどの「ソフト」ドラッグの「コーヒーショップ」での販売をあえて許可した。これによって社会の表舞台へと「ソフト」ドラッグを引きずりだし、ヘロイン、コカインなどの「ハード」ドラッグの利用へと中毒者がエスカレートしないようにと試みたのだ。これがオランダの「麻薬による害を減らす」アプローチである。だが、「ソフト」ドラッグが実質的に「ハード」ドラッグ化しているし、「ソフト」ドラッグの合法化が「ハード」ドラッグ使用の抑制に効果をあげたわけでもない。しかも、いまやオランダは海外において「西ヨーロッパの麻薬の中心地」、ドラッグディーラーの巣窟というありがたくない評判を得ている。オランダの政府高官自身、自国の麻薬政策が意図した効果を発揮していないことを認めているが、有効な対策を見いだしていないという点ではアメリカやイギリスも同じである。われわれは、オランダの経験からどのような教訓を引き出すべきなのだろうか。

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