1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

ヨーロッパに関する論文

かつてギリシャやイタリアは「競争力が低下している」と感じたときは、自国通貨を切り下げたものだ。その手段を奪われたユーロ導入後も、周辺国はユーロ建て国債の発行を通じて資金を借り入れることで、増税策をとることなく高い歳出レベルを維持した。だが、その結果、周辺国の多くが莫大な債務の山を築き、いまや破綻の危機に直面するリスクは限りなく高まっている。ここからどうユーロゾーンを守り、立て直していくか。財政統合やユーロ共通債では、目の前にある火事は消せない。それよりも、インソルベンシーによる危機と資金不足による危機を区別することだ。インソルベンシー危機に直面しているギリシャ、アイルランド、ポルトガルに管理型ディフォルトを認める一方、資金不足に派生する危機に陥っているイタリアとスペインには改革の意思を確認した上で、資金を供給する。こうすれば、経済のバランスが回復され、ヨーロッパは世界経済において再び大きな役割を果たせるようになる。

ユーロゾーンの再構築を
―― インソルベンシーと資金不足を区別した危機対策を

2011年11月号

ヒューゴ・ディクソン ロイター・ブレイキングニュース  エディター

かつてギリシャやイタリアは「競争力が低下している」と感じたときは、自国通貨を切り下げたものだ。その手段を奪われたユーロ導入後も、周辺国はユーロ建て国債の発行を通じて資金を借り入れることで、増税策をとることなく高い歳出レベルを維持した。だが、その結果、周辺国の多くが莫大な債務の山を築き、いまや破綻の危機に直面するリスクは限りなく高まっている。ここからどうユーロゾーンを守り、立て直していくか。財政統合やユーロ共通債では、目の前にある火事は消せない。それよりも、インソルベンシーによる危機と資金不足による危機を区別することだ。インソルベンシー危機に直面しているギリシャ、アイルランド、ポルトガルに管理型ディフォルトを認める一方、資金不足に派生する危機に陥っているイタリアとスペインには改革の意思を確認した上で、資金を供給する。こうすれば、経済のバランスが回復され、ヨーロッパは世界経済において再び大きな役割を果たせるようになる。

アラブ世界では、中東和平プロセスへのヨーロッパの介入を求める声が高まっており、ヨーロッパも和平プロセスへの介入に前向きだ。問題はEU(欧州連合)にもメンバー国にもその役割を果たす力がないことだ。中東和平に関する限り、ヨーロッパは常にアメリカの脇役に甘んじるしかない。和平調停をめぐってアメリカと競い合うことへのこだわりを捨て、むしろ、ヨーロッパにふさわしい役割に特化すべきだろう。それは、パレスチナの国家建設を支援し、イスラエルとパレスチナの起業家を交流させる既存のプロジェクトを支援することに他ならない。EUは新興国に対して、パレスチナ国家支援の道筋を示すモデル国家の役割を果たすこともできる。また、和平交渉プロセスではなく国家建設支援に焦点を絞れば、ヨーロッパはアメリカとの間で緊張が生じるリスクを排除できるだけでなく、EU内部の駆け引きに煩わされることもなくなる。もっとも重要なのは、このアプローチによってEUがイスラエル、パレスチナとの関係の再定義を実現できることだ。

最終的にヨーロッパの主要銀行が破綻し、ギリシャがディフォルトに陥れば、リーマンブラザーズ破綻後のような状況が再現される。この場合、グローバル経済に大きな衝撃がはしり、堅調な成長を続けている新興国も無傷ではすまない。

ベルルスコーニ劇場の終わりとイタリアの未来

2011年11月号

ジャンニ・リオッタ ラ・スタンパ紙コラムニスト

ベルルスコーニにとどめを刺したのは、イタリアを率いるには彼が不適切であることを説いたエコノミスト誌のカバーストリーではなかった。その失策、オバマ大統領にどなったこと、イギリス女王の不興を買ったこと、あるいは、リビアのカダフィやロシアのプーチンとパーティをしたことの問題を問われたわけでも、アンゲラ・メルケル相手に「いないいないバー」をして彼女を驚かせたからでもない。彼は「自分は市場の申し子だ」と自負していたが、問題は、それが彼の政党、連帯相手、そして閣僚に富をもたらすだけの市場だったことだ。・・・結局、ベルルスコーニのイタリアは20年をかけて2兆6000億ドルもの債務の山を築いただけだった。モンティと欧州中央銀行(ECB)総裁に最近就任したマリオ・ドラギは今のところイタリアの英雄だが、明日には、ロビー団体、既得権益層、そして組合の要求を粉砕する戦士にならなければならない。この闘いに敗れれば、ドイツの植民地になるのでない限り、イタリアはリラの時代に舞い戻ることになる。・・・

ユーロゾーンの再構築を
―― インソルベンシーと資金不足を区別した危機対策を

2011年11月号

ヒューゴ・ディクソン ロイター・ブレイキングニュース  エディター

かつてギリシャやイタリアは「競争力が低下している」と感じたときは、自国通貨を切り下げたものだ。その手段を奪われたユーロ導入後も、周辺国はユーロ建て国債の発行を通じて資金を借り入れることで、増税策をとることなく高い歳出レベルを維持した。だが、その結果、周辺国の多くが莫大な債務の山を築き、いまや破綻の危機に直面するリスクは限りなく高まっている。ここからどうユーロゾーンを守り、立て直していくか。財政統合やユーロ共通債では、目の前にある火事は消せない。それよりも、インソルベンシーによる危機と資金不足による危機を区別することだ。インソルベンシー危機に直面しているギリシャ、アイルランド、ポルトガルに管理型ディフォルトを認める一方、資金不足に派生する危機に陥っているイタリアとスペインには改革の意思を確認した上で、資金を供給する。こうすれば、経済のバランスが回復され、ヨーロッパは世界経済において再び大きな役割を果たせるようになる。

アラブの春の進展を阻む石油の呪縛

2011年10月号

マイケル・L・ロス カリフォルニア大学ロサンゼルス校 政治学教授

石油資源の国有化によって産油国政府は資金力を持つようになり、かつてなく強大なパワーを手に入れた。圧倒的な資産と経済パワーが政治家の手に移り、中東地域の支配者たちは公共サービスを向上させ、民衆をなだめるための社会プログラムのために石油資産の一部を使用するとともに、その多くを自らの富と権力のために用いた。リビアのカダフィはその具体例だ。仮に豊富な石油資源を持つ中東の独裁者が選挙で選出された指導者に置き換えられたとしても、権威主義が復活する不安はぬぐいきれない。中東諸国の独裁者と王族は石油マネーを利用して体制の支援者だけでなく、潜在的な反体制派もカバーする巨大なパトロンネットワークを形成しているからだ。その結果、独立系の市民社会集団が社会に根を張るのが構造的に難しくなっている。

ノルウェーのイスラム教徒 ―― 脅かされるイスラム教徒と多文化主義

2011年9月号

ショアイブ・サルタン 前ノルウェーイスラム評議会事務局長

イスラム・コミュニティのノルウェー国内における成長がノルウェー社会の緊張を高めていた。近年では、男児の割礼、イスラムの教えに従った食肉処理、女性がまとうヒジャブなど、イスラムの伝統と習慣が国内で実践されていることに対する懸念と反発が高まっていた。ノルウェー人にとって異質な、これらイスラム的習慣に対する懸念と反発に右派政党は目を付け、「ノルウェーの生活様式がイスラムによって浸食されている」と主張し、社会を反イスラムへと扇動した。しかも、イスラム批判は、次第にノルウェーの多文化主義批判へと姿を変えていった。この社会環境のなかで起きたのが、アンネシュ・ブレイビクが決行した反イスラムテロだった。・・・

食糧危機、ドル安、金融危機に翻弄される人道援助
―― なぜ支援がそれを必要としている人々に届かない

2011年9月号

ローリー・ギャレット 米外交問題評議会グローバルヘルス担当シニア・フェロー

飢饉がアフリカ東部を襲い、緊急食糧支援、人道支援が必要とされているにも関わらず、必要としている人々のもとに支援がうまく届いていない。理由は多岐にわたる。2002年と現在の価格を比較すると、米の国際価格は204%、小麦は164%、トウモロコシは260%上昇していることからも明らかなように、穀物価格が軒並み上昇している。しかも、援助が通常ドル建てで行われるために、昨今におけるドル価値の低下は、同じドルで調達できる穀物の量が小さくなっていることを意味する。さらに、人道的危機に対しては大規模な援助をしてきたイタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、アイルランドなどは、国が破綻するのを避けるために対外援助を打ち切らざるを得ない状況に追い込まれている。しかも、武装勢力が人道支援活動にとって障害を作り出している。これらは、アフリカの角地域でかつてなく大規模な飢饉が起きているにも関わらず、食糧援助の対象にできる人々の数が大きく減少していることを意味する。問題は、こうした複合危機解決の糸口が見えないことだ。・・・

パリとベルリンの経済官僚たちは、「この10年にわたって、周辺国は生産性が伸びていないにも関わらず、賃金レベルを引き上げたのが間違いだった」と批判するが、考えるべきは、周辺国がその資金をどこから調達したかだ。資金の出所はフランスとドイツの銀行だ。つまり、(ギリシャ、アイルランド、ポルトガル)などの周辺国の一つでも債務を履行できなくなれば、危機はEUの主要国へと瞬く間に広がりをみせていく。そして、ヨーロッパの危機はMMFとCDSのエクスポージャーによって、アメリカの銀行にも非常に深刻なダメージを与え、ヨーロッパとアメリカのリセッションはますます深刻になる。ここで、中国は何をするだろうか。のどから手が出るほど欲しがっているあらゆる技術、宇宙工学技術、金融資産をヨーロッパから非常に安い価格で入手するかもしれない。中国が台頭し支配的な影響力を持つようになるのが間近なのか、遠い将来なのかはともかく、欧米はグローバルな金融システムを、自分たちにダメージを与え、中国を大きく利することになる装置へと変貌させてしまっている。

Page Top