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ヨーロッパに関する論文

銀行が破綻する国としない国
――銀行システムを左右する政治文化とは

2014年1月号

チャールズ・W・キャロミリス/コロンビア大学 ビジネススクール教授(金融制度)
スティーブン・H・ハーバー/ スタンフォード大学教授

銀行危機に直面しても、多くの人は、予見できない経済ショックが、そうでなければスムーズに運営されてきたシステムを不安定化させたと考える。だが、この認識は間違っている。これでは、何度も銀行危機を経験する国がある一方で、ほとんど、あるいはまったく銀行システムの危機が起きない国があるという現実を説明できない。実際には、銀行制度は政治によって形作られる。ここで言う政治とは、個人の一時的かつ特有な結びつきではない。政府、バンカー、銀行の株主、預金者、借り手、納税者のインセンティブを形作る社会の基本的統治システムのことだ。法律、政治、規制を、自分たちの都合が良いものへと--しかも多くの場合、他を犠牲にする形で--作り替えようとする連帯が形成される。こうして、政治権力の分配を統治する制度と一体性のある、その国に特有な銀行システムが出現する。・・・

Foreign Affairs Update
グリーンランドの資源開発ブーム
―― 開発と汚染リスクに揺れる島民たち

2013年12月

アンナ・カタリナ・グラブガード フリーランスジャーナリスト

オーストラリア、カナダ、中国を含む各国の投資家が、鉱物資源開発をめぐって、グリーンランドに押し寄せている。大きな資源が存在すると長く言われながらも、これまではグリーンランドの資源開発を阻む障害が存在した。ごく最近まで氷床が資源豊かな大地を覆い尽くし、しかも、ウランの掘削が禁止されてきたからだ。潤沢なウラン資源と混在する形でレアアースその他の資源が存在するため、事実上、すべての鉱物資源開発ができなかった。だがいまや氷床は溶け出し、グリーンランド自治政府はウラン掘削を禁止する法律を撤廃している。資源開発に異を唱える人はいない。だが、ウランが掘削されることを現地の多くの人が心配している。注意深く掘削しなれば、ウラン掘削によって土地や水が数世代にわたって汚染されるリスクがあるからだ。・・・

メルケルもオランドも「友人が友人を対象にスパイをしていること」は知っていた。一方、市民たちが色をなして怒ったのは無理もない。欧米という家族内で盗聴が行われていたことは一般には知られていなかったからだ。この事態を前に、ヨーロッパの指導者たちは、強硬な姿勢をとらざるをえなくなった。もちろん、指導者たちの個人的な怒りもある。自分の携帯電話の通話が緊密な同盟国によって盗聴されていたメルケルが「自分は冒涜された」と感じているとしても無理はない。政治的反応と感情的怒りが重なり合って、アメリカ政府にもっと明確な対応を示すように求める圧力が生じている。・・・必要なのは行動ルールを協議すること、大西洋同盟内部での情報収集の枠組みを定める新しいルールを導入することだ。非常に微妙なバランスが必要になる。ヨーロッパが政治的にかなり苛立っている以上、アメリカは、「これまでもやってきたことだ」と言う以外に、何か別の対策を示す必要がある。

EU脱退という愚かで危険な火遊び
―― キャメロン英首相の危険なゲーム

2013年10月号

マティアス・マタイス
ジョンズ・ホプキンス・ポール・ニッツスクール准教授(国際政治経済学)

キャメロン首相は2013年1月、イギリスの欧州連合(EU)との関係を規定する条約内容を再交渉し、2017年末に国民投票を実施してEUへの残留か離脱かを決定すると発表した。イギリスのEU懐疑論は、国家主権という時代遅れの概念にしがみつく英保守党内グループの、ブリュッセルに対する理屈抜きの嫌悪感に根ざしている。合理的な政治的・経済的計算をすればロンドンがEUとの関係を絶つというシナリオが出てくるはずはない。キャメロンは、時代遅れの孤立した国への軌道にイギリスを載せようとしている。イギリスがヨーロッパと関係を絶つ可能性、つまり真のパワーを捨てて国家主権という幻想を選ぶ悲劇的な過ちを犯す可能性は、いまやかなり現実味を帯びてきている。

CFR Interview
迷走するフランスとヨーロッパの未来

2013年9月号

ドミニク・モイジ/フランス国際関係研究所特別顧問

いまや重要なポイントは、フランスが、すでに危機を脱したかに見える北ヨーロッパの軌道を離れて、南ヨーロッパの近隣諸国の軌道に入りつつあるかどうかにある。フランスが明らかに、そして不幸にも、ギリシャやスペインの軌道に入りつつあるとすれば、EU(欧州連合)にネガティブな衝撃が走る。・・・これまでヨーロッパにとって独仏が一定のバランスを保つことが重要だった。だが不幸にも、フランスはもはやドイツと同じレベルの国ではない。・・・アメリカが関心をもつのは強いヨーロッパで、いまやアメリカは弱いヨーロッパへの関心を失いつつある。そして、弱いヨーロッパを前にアメリカが恐れているのは、欧米世界を構成するのがアメリカだけになってしまうことだ。必要なのは、ヨーロッパがよりヨーロッパ的になること、ヨーロッパの統合をさらに進め、よりダイナミックなヨーロッパになることだろう。

Review Essay
ナチス分析をワシントンに伝えたマルキストたち
―― フランクフルト学派と戦争

2013年9月号

ウィリアム・E・ショイアーマン
インディアナ大学政治学教授

ルーズベルト米大統領にナチスドイツに関する情報分析機関を立ち上げるように求められたウィリアム・ドノバンは、フランツ・ノイマンを筆頭とする「マルキストのユダヤ系ドイツ人思想家」たちにその分析を依頼した。彼らによれば、「ナチスの急進的反ユダヤ主義は、可能なかぎり多くのドイツ人をナチスによる犯罪の共犯者にすることが狙いだった」。彼らは「自分の手が血にまみれていることをドイツ人が認識していれば、連合国と最後まで戦い抜く」とナチスは考えている、と分析していた。こうして、ノイマンと彼のチームは「反民主的な集団が残存するのを許さない絶対的な勝利でない限り、結局は先の敗戦の再現になる」と提言した。ナチズムの基盤をいかに根絶するかについては、「まず連合国が連帯を維持することが不可欠だ」と指摘した上で彼らは次のように提言した。「ドイツを占領し、第三帝国の犯罪の責任を負うべきエリートたちを去勢し、ナチス党を非合法化し、その指導者は裁判にかける。そして、ドイツには二度と軍事力をもたせるべきではない」。だが、彼らの左派的ビジョンが、ドイツのリモデリングに、小さな影響しか与えないことは運命づけられていた。・・・

CFR Interview
メルケルの勝利はヨーロッパにとって何を意味するか

2013年9月号

チャールズ・クプチャン
米外交問題評議会シニア・フェロー

ドイツ総選挙の結果は、「中道左派と右派がより中道へと収斂する一方で、欧州統合に懐疑的な小政党が台頭するというヨーロッパの全般的政治的トレンド」を覆したとみなせる。ユーロ周辺国の救済を明確に拒絶する「ドイツのための選択肢」は、議席確保に必要な得票の5%さえ得られなかった。他のポピュリスト、反移民、反EUの立場をとる政党もドイツではそれほど支持を得ていない。メルケル率いるドイツの新連立政権は今後もEU志向を維持していくことになるだろう。但し、南ヨーロッパへの緊縮路線を求める路線を見直していくとは考えにくいし、シリア、イランその他の地政学的な課題をめぐって積極的に動くとも考えにくい。・・・

CFR Briefing
欧州市場は再び不安定化へ
―― ディセンバーサプライズ?

2013年8月号

ロバート・カーン/米外交問題評議会国際経済担当シニア・フェロー

多くの人が指摘するように、ヨーロッパでは危機への対応疲れがみられる。これは、ユーロゾーン全域でみられる各国政府に対する批判の高まり、緊縮財政への反発、あるいは反エスタブリッシュメント政党の台頭などからも明らかだろう。・・・さらに、9月に予定されるドイツの連邦議会選挙が終わるまで(そして、ECBの資産購入プログラムに関する独憲法裁判所の判断が示されるまでは)、依然として困難な状況にあるヨーロッパの周辺諸国に支援が提供されることはあり得ない。今後、銀行と政府に対する圧力がさらに高まっていけば、ECBの債券購入計画はたんなるブラフにすぎなかったという疑問が出てくるかもしれない。ユーロメンバー国がECBによる債券購入の条件(コンディショナリティ)をめぐって、スムーズに合意できるとも考えにくいし、ECBが独自に条件を緩和できるとも考えにくいからだ。・・・秋には、ヨーロッパの金融市場の小康状態は終わり、再び変動期に突入することになるかもしれない。

ヨーロッパ連邦の形成を
―― 次なるヨーロッパプロジェクト

2013年8月号

ニコラス・バーググルーエン バーググルーエン統治研究所理事長
ネイサン・ガーデルス ニューパースペクティブ・クォータリー編集長

「世界の人口の7%が暮らし、世界の経済生産の25%を担う現在のヨーロッパは、世界の社会関連支出の50%を拠出している」。メルケル独首相のこの発言が示唆するとおり、(この人口・経済生産・社会保障支出間の不均衡を)改革を通じて是正していかない限り、ヨーロッパの福祉国家を財政面で支えていくのはますます難しくなる。より踏み込んだ制度的改革も必要だ。EU(欧州連合)を構成する欧州委員会、欧州理事会、欧州議会の正統性を強化し、EUを、単一通貨を支える共通の財政・金融政策をもつヨーロッパ連邦へと進化させていかない限り、ヨーロッパはこれまで同様に未来においても不安にさいなまれることになる。さまざまな不確実性のなかでヨーロッパが直面する課題に対応していく唯一の方法は、ヨーロッパの指導者と市民が、前に踏み出すのを嫌がって機能不全状況のなかに身を置き続けるのではなく、ヨーロッパ連邦の形成という壮大な変革ビジョンにコミットし、前に歩き始めることだろう。

金融政策と財政政策の間
―― イギリスの失策から何を学ぶ

2013年8月号

◎スピーカー
アダム・ポーゼン ピーターソン国際経済研究所所長
J・ブラッドフォード・デロング カリフォルニア大学教授
◎プレサイダー
ギデオン・ローズ フォーリン・アフェアーズ誌編集長

「バーナンキは金融緩和に向けてこれまですぐれた措置をとってきた。だがいまでは、われわれは非伝統的な金融政策からは可能な限り、手を引いていくという立場を示唆している。これは、(われわれ金融当局は十分に手を尽くしたのだから)依然として経済が停滞しているのは議会と大統領のせいだと言っているようなものだ。経済の停滞という現状は、財政当局(政府)に責任があり、いまや金融当局としては、長期的な金融の安定に配慮しなければならない。これがバーナンキの本音だろう」。(B・デロング)

「スペイン同様に、イギリスが自国の経済を袋小路に追い込んでしまったのは、中途半端な金融緩和をとり、一方で財政緊縮策をとってしまったからだ。現在、日本は、当時のイギリスとは全く逆のことをしている。日本銀行はついに、われわれが求めてきたような、大胆な量的緩和策をとり、経済は回復しつつある」。(A・ポーゼン)

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