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中国に関する論文

ロシア・北朝鮮同盟と中国の立場
―― 不安定な権威主義連合の行方

2024年4月号

オリアナ・スカイラー・マストロ スタンフォード大学 国際問題研究所 センターフェロー

ロシアは平壌が長年望んできた高度な軍事技術を北朝鮮に売り渡すことを選んだ。中国がオファーしない利益をロシアが進んで提供してくれるために、平壌はモスクワに近づき、いまや北京は北朝鮮に対する手だての多くを失っている。一方、ロシアが北朝鮮に軍事支援を求めたという事実は、モスクワが北京から受けている物的援助がいかに少ないかを示している。実際、北朝鮮やロシアと連帯しているとみなされることのリスクを認識している北京は、むしろ、公の場では、この2カ国から距離を置こうとしている。中露・北朝鮮関係の歴史から現状を分析すれば、何がみえてくるか。

南シナ海に迫る危機
―― 中国との危機を機会に変えるには

2024年3月号

マイケル・J・マザー ランド研究所 上席政治学者

習近平国家主席は、停滞する中国経済の再生と国内での政治的管理体制の強化に躍起になっているし、アメリカとの緊張緩和への期待も示している。しかし、南シナ海での衝突や挑発行為がより頻繁に発生するようになれば、それが危機につながっていくのは避けられないし、そのような事態に直面すれば、アメリカの対中戦略は大きな転換点を迎える。北京の能力と影響力を抑える障壁を積み上げることであれ、抑止力の強化であれ、中国の力と野心に対抗するだけでは、今後10年にわたって存続できる戦略関係を形作ることはできない。むしろアメリカは中国に対抗しつつも、一方で、北京との安定した関係を築き、いつかは相互に尊重できる共存へと移行できるような基盤を築いていくべきだろう。

米中戦争と台湾・第一列島線
―― 戦争の長期化・広域化と多領域化に備えよ

2024年2月号

アンドリュー・F・クレピネビッチ ハドソン研究所 シニアフェロー

アメリカとその同盟国は、核兵器によるエスカレーションの可能性は小さいとしても、何カ月も何年も続き、経済、インフラ、市民生活に莫大なコストを強いる中国との大国間戦争が何を意味するかを考え始めるべき段階にある。中国と米主導の連合軍との通常戦争は長期化し、地理的に広域化するだけでなく、その対立は、世界経済、宇宙、サイバースペース等の多くの領域に飛び火する危険がある。しかも、中国が第一列島線に沿った主要な島嶼を占領した場合、アメリカとその同盟国が許容範囲に近いコストでそれらの島々を奪還するのは非常に難しい。どちらの側にとっても決定的な軍事的勝利の見込みがない以上、この戦争は数年以上にわたって続く危険がある。・・・

スマートな指導者がなぜ愚かな判断をするのか
―― 外交政策は合理的か

2024年1月号

カレン・ヤルヒ=マイロ コロンビア大学教授(国際関係論)

リアリストが考えるように、国の外交決定の多くは合理的なのだろうか。指導者にとって合理的なことが、なぜ国にとっても合理的とみなせるのか。指導者の判断は、感情や心理、歴史にも大きな影響を受けるのではないか。実際には、選択によって問われているものが大きいからこそ、大国とその気まぐれな指導者は計算を誤ったり、不合理で神経質な行動をとったりするのではないか。ワシントンは、北京にどう対処すべきか考えるとき、この事実を忘れるべきではない。プーチンのウクライナに関する決断同様に、習近平は自らの目標が達成不可能であることを示唆するエビデンス、行動のコストが途方もなく高くなることを示唆するエビデンスを無視する危険がある。・・・

本当の対中抑止力とは
―― 米台が中国を安心させるべき理由

2024年1月号

ボニー・S・グレーザー 米ジャーマン・マーシャル財団 マネージングディレクター
ジェシカ・チェン・ワイス コーネル大学 教授(中国・アジア太平洋研究)
トーマス・J・クリステンセン コロンビア大学教授(国際関係論)

「あと一歩踏み込んだら撃つぞ」という警告が抑止のための威嚇になるのは、「踏み込まなければ、撃つことはない」という暗黙の了解が一方に存在するからだ。潜在的な敵を思いとどまらせるには、「保証」を示して、相手を安心させる必要もある。ワシントンと台北は抑止力の強化に努めながらも、武力行使を控えれば、懲罰の対象にはされないと北京を安心させなければならない。一部の米政府高官たちが主張するように、台湾を主権国家として承認し、台湾防衛のための明確な同盟コミットメントを示せば、北京の安心感は損なわれ、抑止力も低下する。この場合、ワシントンが地域的な軍事力強化にいくら力を注いでも、戦争を防ぐことはできなくなるかもしれない。

AI統治と軍備管理の教訓
―― 壊滅的事態を回避する米中の責務

2023年12月号

ヘンリー・A・キッシンジャー キッシンジャー・アソシエイツ会長
グレアム・アリソン ハーバード大学教授

この2年にわたって、AI革命の最前線にいるテクノロジーリーダーたちと問題を検証してきたわれわれ二人は、「AIの無制限、無節操な進化はアメリカと世界に破滅的な結果をもたらす」という見通しには大きな説得力があり、「各国の指導者はいますぐ行動を起こさなければならない」という結論に達した。そうする上で、われわれは冷戦期の核管理の歴史から教訓を学ぶことができる。大国間戦争が80年近くもなかった国際秩序を形作るなかでわれわれが学んだ教訓は、いまAIと対峙する指導者にとって最良の指針となる。AIのもっとも危険な発展と応用を防止するためのガイドラインを作成する機会を手にしている米中は、この機会を早い段階で生かす必要がある。

ロシアの反欧米連合
―― アメリカの敵を束ねると

2023年11月号

ハンナ・ノッテ ジェームズ・マーティン不拡散研究センター ユーラシア不拡散プログラム・ディレクター

ウクライナでの戦争が「ロシアのパワー、利益、影響力を大きく低下させている」と欧米の高官が状況を捉えているのなら、それは考え直す必要があるだろう。ベネズエラから北朝鮮まで、ロシアは、アメリカやヨーロッパを敵視する多くの国々との軍事協力を強化し、深化させている。これらの国々には、欧米という敵を共有している以上の共通点はあまりないかもしれないし、特に強力な国もない。しかし、これらの国々が一緒になれば、モスクワがウクライナとの戦争を続けるのを助けることができる。アメリカはこの「ロシアの枢軸」に対するバランスをとるために、欧米のパートナーシップと同盟に再投資する必要がある。

中露に挟まれたモンゴルの選択
―― アメリカは何をオファーできるか

2023年11月号

トゥブシンザヤ・ガンチュルガ 元モンゴル大統領補佐官(外交政策担当)
セルゲイ・ラドチェンコ ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学 特別教授

中国とロシアにほぼ全面的に経済を依存する内陸国のモンゴルは、それでも、二つの隣国の違いを利用し、あるいは欧米との関係を強化することで、中露から距離を置こうと試みてきた。だが、いまや中露はますます接近し、モンゴルが両国の立場の違いを利用する余地は小さくなっている。アメリカは、モンゴルとの貿易・投資関係を促進し、教育・訓練プログラムを通じてモンゴルへの長期的なコミットメントを示すべきだし、モンゴル側は、外国人投資家を安心させ、透明で予測可能な経済環境を整備する試みを強化する必要がある。必要とされているのは、ロシアの高圧路線や中国の執拗な覇権主義に直面しているモンゴルへの手堅い経済関与だろう。

機能不全のアメリカ
―― 中露を抑止できるのか

2023年11月号

ロバート・M・ゲーツ 元米国防長官

アメリカは、ひどく危険な状況にある。攻撃的な敵対国に直面しつつも、相手を思いとどまらせるのに必要な団結と強さを結集できずにいる。米市民は内向きになり、議会は言い争い、大統領もアメリカの役割について十分な説明をしていない。習近平やプーチンのような指導者をうまく抑止するには、確固としたコミットメントと一貫した対応を示さなければならない。だが現実には、機能不全がアメリカのパワーを不安定で信頼できないものにしている。リスクを冒しやすい独裁者を、潜在的に壊滅的な事態をもたらす、危険な賭けに向かわせようとしている。・・・

台湾海峡で中国を抑止するには
―― アメリカの能力と決意を示せ

2023年11月号

デビッド・サックス 米外交問題評議会フェロー
イヴァン・カナパシー 元国家安全保障会議 ディレクター

いまや、外交は綻びをみせ、抑止力は形骸化している。しかも、中国のリスク許容レベルは高まり、台湾海峡における不安定化要因は増える一方だ。ワシントンは、対中抑止力が低下していることを認識した上で、武力行使が破滅的な結果を招くことを習近平に理解させるために、さらなる措置を講じなければならない。そのためには、北京との摩擦が大きくなることを受け入れ、台湾の戦闘能力を高め、台湾軍の訓練や米軍アドバイザーの派遣を含めて、台湾のために軍事介入するアメリカの能力と決意を示さなければならない。アメリカとパートナーは、武力行使が解決策にはならないことを中国に認識させる必要がある。

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