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アジアに関する論文

CFRインタビュー
カシミール問題を考える
――パキスタンの対テロ戦争を左右する
インド・パキスタン関係の試金石

2008年10月号

ハワード・B・シェーファー 元南アジア問題担当米国務次官補

 カシミール問題をめぐってインドとの関係が緊張すれば、パキスタンはタリバーンやアルカイダよりも、むしろインドを主要な敵対勢力とみなすようになり、対テロ戦争にはますます本腰を入れなくなる。この意味において、カシミール問題は、今後のアメリカの政策にとっても重要なファクターとなる。状況をこう分析する南アジアの専門家、ハワード・B・シェーファーは、次期大統領は、インド、パキスタン双方にカシミール問題への自制を求めて、対話の継続を促すとともに、ワシントンはより多くの関心をこの問題に寄せていく必要があると指摘した。ただし、カシミール問題は、インドとパキスタンの国家アイデンティティーに関わってくる微妙な問題であるため、問題を解決しようとするよりも、それをうまく管理していくことを心がけるべきだと示唆した。
 聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

「私はアメリカの相対的地位が低下する一方で、ヨーロッパやアジアが台頭するといったとらえ方はしていない。アメリカの相対的な立場が低下し、他の多くの諸国が混乱のなかで競い合うようになる。これが現実に起きていることだ」。むしろ、国がパワーを独占した時代は終わっていることを認識する必要があるとR・ハース米外交問題評議会(CFR)会長は強調している。「ドルの流れという点ではシティ・グループやメリルリンチなどがより大きな役割を果たしていくようになるし、政府系ファンド領域ではアブダビ投資庁(ADIA)、グローバルな公衆衛生領域ではゲイツ財団などのプレーヤーが台頭している。中東の武装集団も、パキスタン西部に隠れているテロ集団も無視できない存在になる」。もはや、脅威やアジェンダがかつてのようにはっきりとしたものでない以上、国だけでは問題に対処できないし、京都合意のような包括的な国際合意の形成も、もはや期待できないとハースはみる。必要なのは、かつてのような同盟関係ではなく、是々非々の多国間主義であり、これまでの多国間主義とは異なる協調のスタイルを考えていく必要があると指摘した。邦訳文は5月にワシントンで開かれたCFRミーティングの質疑応答からの抜粋。

アジアの世紀の到来と 欧米秩序の運命
――秩序の進化を阻む欧米のダブルスタンダード

2008年6月号

キショール・マブバニ  国立シンガポール大学公共政策大学院長

自分たちが主導する時代が終わりつつあること、そして、アジアの時代が到来しつつあることを欧米の指導者はなかなか受け入れられずにいる。国連安保理、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、主要8カ国(G8)などの主要なグローバルフォーラムにおける特権的な立場にしがみつき、いかに自分たちがアジアの世紀に対応していくべきなのかを考えようとはしない。アジアの目標はアメリカとヨーロッパが成し遂げた成果に続くことだ。欧米の成功を自分たちが再現したいと望みこそすれ、アジアは欧米を支配したいとは望んでいない。アジア諸国が地域レベル、グローバルレベルの課題への対応能力を強めつつあることを欧米世界は歓迎し、受け入れるべきだろう。

CFRインタビュー
アジア太平洋諸国は次期米大統領に
何を期待しているか

2008年4月号

アラン・ギンジェル  ローウィー国際政策研究所所長

「アジア・太平洋地域は、世界的にみても、グローバル化、自由貿易の価値と意志をもっとも切実に感じている地域であり、アメリカがしだいに保護主義へと傾斜しつつあるかに見えることをわれわれは懸念している。健全で開放的なグローバル貿易システムは、アメリカの支持がなければ、その存在が危うくなる」。豪ローウィー国際政策研究所所長のアラン・ギンジェルは、民主党の大統領候補たちの保護主義的な貿易レトリックにこう懸念を表明した。
 少年期をインドネシアで過ごしたオバマであれ、ベトナム戦争期に捕虜として北ベトナムに抑留されていたマケインであれ、東南アジアを理解する人物が、米大統領になるとすれば画期的なことだ、と東南アジアが米大統領選挙に大きな関心を寄せていると指摘した同氏は、それでも、21世紀の秩序を形作る非常に重要な関係はもっと北の中国とアメリカの関係になるとコメントしている。
  聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

中国とインドはアフリカをめざす
 ――中印との貿易をアフリカの経済開発につなげるには

2008年4月号

ハリー・G・ブロードマン  世界銀行アフリカ地域経済顧問

 アフリカと中国、インドの貿易がこれまでにないペースで拡大しており、アフリカの指導者は、現在の中国とインドとの経済関係をもっとうまく利用して成長に弾みをつけるべきだろう。中国とインドのアフリカへの進出拡大は、アフリカ諸国が限られた一次産品への極端な依存状況から脱し、労働集約的な軽工業品とサービス産業へとシフトしていく大きな機会を提供している。
 この機会を生かすには、改革を通じて市場競争力や統治の質を高め、インフラを整備し、好ましい投資環境を整備しなければならない。改革がきちんと実行されれば、中国とインドのアフリカへの経済進出は、世界の最貧層の3億人が暮らし、最も困難な開発上の問題を抱えるアフリカの発展と世界経済への統合を実現するためのかつてない呼び水になるかもしれない。

なぜ民族は国家を欲しがるか
――歴史を規定しつづけるエスノナショナリズムの力

2008年4月号

ジェリー・Z・ミューラー 米カトリック大学歴史学教授

「(いまや世界各国で)都市化が進み、識字率が上昇し、政治的に民族集団を動員することも容易になっている。こうした環境下で、民族集団間に出生率や経済成長の格差が存在し、これに新たな移民の流れが加われば、今後も、国の構造や国境線がエスノナショナリズムによって揺るがされることになる。……エスノナショナリズムは、近代国家の形成プロセスが表へと引きずり出す人間の感情と精神にかかわる本質であり、連帯と敵意の源である。形は変わるとしても、今後長い世代にわたってエスノナショナリズムがなくなることはあり得ないし、これに直接的に向き合わない限り、秩序の安定を導き出すことはできない」

アメリカはアジアの台頭にうまく対応できるのか
――問題をつくりだしているのは欧米世界ではないか

2008年4月号

スピーカー
キショール・マブバニ/国立シンガポール大学公共政策大学院長
司会
エレン・L・フロースト/ピーターソン国際経済研究所客員研究員

いまや誰もがアジアをはっきりとしたモデルとみなしている。そしてアジアにおける新しいストーリーとは、アジアが一つにまとまりつつあることだ。人の自由な流れがアジアでは起きている。……新しいアジアの形成は、世界にとって大きな貢献となる。その理由は、これが、安定した世界秩序に利益を見いだし、グローバル秩序の混乱を望まず、西洋と協調したいと望む責任ある利害共有者を大幅に増やしていることを意味するからだ。……若いイスラム教徒たちにとっては、「西洋を模範とする道を歩むか、それともオサマ・ビンラディンに従うか」しか道はなかったが、いまでは、「自分たちも中国やインドに続こう」と考えだしている。

CFRインタビュー
馬英九総統の誕生で
中台関係はどう変わるか

2008年3月号

アラン・D・ロンバーグ
ヘンリー・スティムソセンター東アジア研究ディレクター

次期台湾総統に選ばれた馬英九は、かなり早い段階で、中国との経済合意を結びたいと考えているし、すでに運行されている中台間のチャーター便の数を増やし、定期便も就航させたいと考えている。そして時間をかけて、彼が「生活様式」と呼ぶ和平協定に向けた了解をとりまとめ、台湾の国際社会への参加に向けた道を開きたいと考えている。
 馬英九の対中路線をこう予測するアジア問題の専門家、アラン・ロンバーグは、「一つの中国」の解釈をめぐって馬と北京の間には意見の違いがあるが、馬も北京も、それはそれで現状として受け止め、状況を先へと進めようとするだろうとみる。「中国はこれまでの台湾との対決的ムードを早く変えたいと望んでおり、「一つの中国」という概念を箱に押し込んで、台湾民衆の人心を勝ち取れるような関係を築き、経済開発に専念したいと考えている」。

内からの崩壊を恐れる平壌
―― なぜ平壌は経済改革路線の導入を拒絶するのか

2008年3月号

アンドレイ・ランコフ 韓国国民大学准教授

北朝鮮のエリートたちは、彼らが直面している最大の脅威が、国の外ではなく、内側にあることを理解しており、改革を拒絶することが、民衆を管理するうえでもっとも好ましい政策であることを理解している。中国や韓国による改革導入の要請に平壌が耳をかさないのもこのためだ。たしかに、国境の南にいる同胞たちが北朝鮮では考えられないような物質的な豊かさと社会的自由のなかで暮らしていることを次第に理解するようになれば、早晩、北朝鮮民衆の多くは、韓国市民同様に繁栄を手にしたいと考えるようになり、そのためには、でたらめな政策をとっている政府を排除したいと考えるようになる可能性はある。しかし、これを回避するために北朝鮮の指導者は改革の導入を拒絶し、情報統制を強化するとともに、自国の国益からみて北朝鮮の不安定化を望まない中韓からの支援を引き出すことに成功している。この構図が短期的に変化するとは思えない。

CFRミーティング
改革路線の継続こそ
インド経済発展の試金石
 ――ムンバイを国際金融センターに

2008年2月号

スピーカー ヘンリー・M・ポールソン   米財務長官
司会  ピーター・アッカーマン    ロックポート・キャピタル社マネージング・ディレクター

「アメリカ財務省が、インドと協力して改革と包括的な経済成長を促進することを望んでいる二つの分野について述べたい。一つは、物的なインフラ整備の資金を提供し、インドの一般家庭の生活に恩恵をもたらし、経済を活性化させること。もう一つは、ムンバイを国際金融センター(IFC)に発展させて、インドの金融システムを強化・拡大することだ。これら二つの目的を達成するには、国際的なスタンダードを受け入れ、政治的なリスクを冒してでも経済改革を積極的に前進させるという強いインド側の決意が必要になる」
 「いまやバンガロールに拠点を置くインド企業は、多国籍企業のバックオフィス業務にとって欠かせない役割を果たしている。この領域では、インド企業が世界のビジネスのやり方を革命的に変化させている。次のステップはムンバイに金融センターをつくり、地域を超えて企業と投資家に金融サービスを提供することだろう」(H・ポールソン)

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