1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

アジアに関する論文

朝鮮半島は依然として緊張している。北朝鮮は、早ければ2011年の夏にも3度目の核実験を実施する可能性があるし、韓国に対してさらに大きな攻撃をする恐れもある。北朝鮮は、「おとなしくしているかと思えば、次に挑発行動をとるというサイクル」で動いていることを忘れてはならない。一方、韓国では、チョンアン号事件、ヨンピョン島砲撃事件以降、政府だけでなく、市民も北朝鮮に対する強硬路線をとるように求めるようなった。すでに、韓国が核開発を試みるべきかどうかも議論の俎上(そじょう)に載せられている。独自に核開発を試みるべきか、あるいは、アメリカの戦術核の再配備を求めるかどうかをめぐって熱い論争が起きている。かたや北朝鮮はますます核兵器を維持していく路線を固めつつある。リビアでの事態の展開が、核兵器が必要だとみなす金正日の確信をいっそう強めていると考えられる。実際、リビアをNATOが空爆した後、北朝鮮政府は、リビアのケースは「核を解体すれば、いかに危険な事態に直面するかの具体例だ」と表明している。

1930年代の悪夢が再現されるのか
―― 高まる保護主義の脅威

2011年4月号

リアクァト・アハメッド ピューリッツァー賞受賞作家

1930年代の教訓からみて、失業率が高止まりし、通貨供給、為替、財政政策上の選択肢が失敗するか、選択肢にならない場合、国は貿易障壁を作り出す可能性が非常に高い。・・・しかも、20世紀の初頭同様に、いまや世界はグローバル経済のリーダーシップをめぐる大きな移行期にある。アメリカのパワーは大きく弱体化し、ワシントンには、もはや単独でグローバル経済のリーダーシップを担う力はない。一方で、中国がリーダーシップを果たすとも考えにくい。輸出ばかりを重視する重商主義的な貿易アプローチをとっている限り、北京が困難な状況にある諸国からの輸出を受け入れる開放的市場の役目を果たすことはないだろう。G20もまとまりを欠いている。1930年代と現在の類似性が表面化しつつある。経済は回復しているが、失業率が高止まりし、多くの製造部門は過剰生産能力を抱え込み、通貨問題をめぐる緊張が高まりつつある。1930年代のような深刻で大規模な経済停滞に陥るリスクを回避できたと言うのに、現在の指導者が、1930年代の近隣窮乏化政策を今に繰り返すとすれば、悲劇としか言いようがない。

災害と政治

2011年4月号

アラステイアー・スミス ニューヨーク大学教授
アレジャンドロ・クイロズ・フローレス ニューヨーク大学政治学助教授

40年前、マグニチュード7・9の地震によってペルーでは6万6000人が犠牲になった。2001年にペルーはさらに大きな地震に見舞われたが、このときの犠牲者は150人未満だった。最初の地震の震源地の人口密度が2度目に地震が起きたときのそれの半分程度だったのは事実だが、それだけでは、これほど大きな犠牲者の違いを説明できない。・・・大きく違っていたのは政治の質だ。2001年のペルーは民主国家だったが、1970年当時は、そうではなかった。・・・民主国家の政治指導者が権力を維持していくには、市民の大多数の信任を得なければならない。そのためには、建築基準を徹底し、官僚制度を有能な行政官に指揮させることで、天災の被害から市民を守らなければならない。政府がこの点での備えを怠り、多くの人が犠牲になれば、政治家は職を失う。

CFRミーティング グローバルな資金の流れを考える
―― ラリー・サマーズとの対話

2011年1月号

ローレンス・サマーズ 国家経済会議議長
ティム・ファーガソン フォーブス・アジア、エディター

資本管理策に眉をひそめるムードがあるが、私は、流入する資本に課税したほうがいいと特定国が判断するとしても仕方がないと思うし、資本管理策をそれほど大きな問題だとは思っていない。完全なアナロジーにはなり得ないが、資金の流れを人の流れに例えることもできる。人々が外国に移住するのを認めない国は全体主義的で問題があると考えられる。一方で、国家が慎重に移民の流入を規制するのは所与のこととして受け入れられているではないか。・・・妥当な範囲での資本の流入を制限することにそれほど問題があるとは思わない。・・・一方で、通貨の切り上げを拒み資金があふれかえる状況が続けば、バブルが形成されるかもしれない。・・・中国経済が今後どうなるかわからないという見込みが高まっているために、不透明感が増している。(L・サマーズ)

非国家アクターとしての宗教の台頭
―― グローバル化時代の宗教

2011年1月号

スコット・M・トーマス バース大学上席講師(国際関係)

新しい世界が形成されつつあり、そのおもな担い手は途上世界を構成する国と人々、そして宗教コミュニティだ。そして、昨今の宗教の興隆の大きな特徴は、イスラムの台頭だけではなく、ペンテコステ派と福音主義プロテスタント(福音派)が中国やインド、途上国で大きな広がりをみせていることだ。また宗教系非国家アクターの台頭にも注目する必要がある。世界最大のイスラム組織「タブリギ・ジャマート」、中国の法輪功なども、カトリック教会や東方正教会のように、国際関係に影響を与えるグローバルな宗教プレイヤーの仲間入りを果たしている。しかも、途上世界では社会奉仕ネットワークとテロネットワークの多くが重なり合っている。また、途上国の人々がわれわれと同じ宗教を受け入れても、欧米における(保守やリベラルといった)政治志向をそのまま映し出すことにはならない。グローバル化がいかに宗教を変貌させるかは、テロや宗教紛争といった安全保障上の脅威が今後どう推移するかさえも左右することになるだろう。

CFRミーティング
アフガン撤退戦略の見直しを

2010年12月号

リチャード・アーミテージ / アーミテージ・インターナショナルL.C.

「カルザイ政権とのパートナーシップが不安定で、パキスタンとも部分的なパートナーシップしか結べていない以上、われわれは何度も同じことを繰り返して、異なる結果が出るのを期待してはならない。やり方を変える必要がある。・・・・さらに、ラシュカレトイバのことも忘れてはいけない。これまではカシミールを拠点にインドを攻撃してきた・・・ラシュカレトイバは、ハッカニ・ネットワーク同様に、インドだけでなくアメリカを敵視している。私があえてハッカニ・ネットワークについてここで述べたのは、今度、ムンバイタイプのテロが起きれば、インドは(パキスタンに対して)具体的な反撃に出ると考えるからだ。しかも、ラシュカレトイバはアルカイダの同盟勢力だ。アルカイダにとって、インドとパキスタンを戦わせることにどのような利点があるかを考えるべきだ」(R・アーミテージ)

新興国という無責任な利害共有者 ―― 時代は「協調なき、多極化」へ

2010年12月号

スチュワート・パトリック / 米外交問題評議会シニア・フェロー

アメリカのパワーが衰退していくにつれて、台頭する新興国は既存の制度を試し、弱め、改革して自分たちの目的に合致するように作り替えようと試み始めている。既存の大国と新興大国の間だけでなく、新興大国どうしの戦略的ライバル関係も高まりをみせている。各国が演じているゲームは一つではない。金融改革や対テロでは協調するかもしれないが、市場シェア、戦略資源、政治的影響力、軍事的優位をめぐっては競いあっている。問題は、アメリカを含む先進国が、パートナー、そしてライバルとしての二つの顔を持ち、国際社会での発言権を強化したいと望みながら、一方では自国を途上国と定義する新興諸国との関係をどのように管理していくかだ。新しい国家を制度に取り込む一方で、可能な限り、これまでの秩序を維持していくには、2世紀前のヨーロッパの大国間協調がそうだったように、常に綱渡りをしているような細かな配慮が必要になる。

アジアは多極化し、中国の覇権は実現しない

2010年12月号

キショール・マブバニ シンガポール国立大学行政大学院院長

アジアの国際環境は多極化していく。中国が台頭しているとはいえ、誰もがアメリカがアジアでの強固なプレゼンスを維持していくことを願っているし、インドもパワーをつけて台頭しているからだ。この環境では、中国は地政学的に非常に慎重な行動をとらざるを得ない。中国にとっての悪夢のシナリオは、あまりに高圧的な路線をとって反発を買い、アメリカ、日本、ロシア、インド、さらにはベトナム、オーストラリアを結束させてしまうことだ。当然、中国はこの悪夢のシナリオが現実と化すのを避けようとするだろうし、自国の行動をもっと慎重に考えるようになると思う。誰もが唯一の超大国として中国が台頭してくるのではないかと心配しているが、私はそうはならないと考えている。(K・マブバニ)

CFRインタビュー
コレラ流行はパンデミック化している

2010年12月号

ローリー・ギャレット / 米外交問題評議会グローバルヘルス担当シニア・フェロー

大地震が発生してまだ一年も経ってないハイチでコレラが発生し、感染が大きな広がりをみせている。汚染された水によって人間に感染するコレラは、適切な水分補給と抗生物質投与によって治療できる感染症だが、ハイチがこれまでも水道と公衆衛生インフラをうまく整備できていなかったこと、そして地震後のインフラ再建が遅れていることが災いして、問題がさらに深刻になっている。コレラが発生した場所に適切な公衆衛生、清潔な飲料水供給システムがなければ、感染は瞬く間に広がっていく。ハイチだけでなく、ナイジェリアでも、パキスタンでも同じタイプのコレラが流行している。「実際には、これはパンデミックだ」とギャレットは言う。今回のコレラ発生は、世界各地で実施されている平和維持活動、危機地域を移動する人道支援活動にとっての新たな課題を浮上させている。平和維持活動、人道支援活動が実施されるのは、往々にしてそうした公衆衛生インフラが存在しない地域だからだ。聞き手は、デボラ・ジェローム (Deputy Editor, CFR.org)

欧米とアジアの相互依存は成立するか
―― 中国、インド、欧米の相互作用とアジアの未来

2010年10月号

サイモン・タイ シンガポール国際問題研究所(SIIA)理事長

中国とインドを中心とするアジア経済は、このままめざましい成長を続け、欧米世界からは距離をおくようになるのか、それとも、依然としてアジアは欧米を必要としているのか。経済・金融危機が起きるまでは、アジア経済の統合が進めば、アメリカの消費者に頼らずとも、アジア経済は成長を維持できるという立場の「ディカップル論」に合理的な根拠があるようにも思えた。しかし、危機が深刻化するにつれて、アジア経済と欧米経済のディカップルなどあり得ないことが明らかになっていく。アメリカの需要が急速に落ち込むと、アジア全体、特に中国の生産がすぐさま打撃を受けた。だが、アメリカ市場への依存を抑えようとするアジアの取り組みも始まっている。内需を高め、アジアの貯蓄を米国債の購入にばかりあてずにアジアにとどまるようにするための、新しい金融メカニズムの構築が試みられている。流れはどちらへと向かうのか。そして、地域的、そして世界的に経済モデルとして注目されるのは中国経済、インド経済のどちらなのか。

Page Top