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アジアに関する論文

CFR Interview
北朝鮮の衛星発射実験後、何が起きるか
――2009年の悪夢の再現か

2012年4月

スコット・スナイダー /米外交問題評議会シニア・フェロー (朝鮮半島問題担当)

国際社会が北朝鮮の衛星発射実験を懸念しているのは、衛星打ち上げに必要な技術を大陸間弾道ミサイルにも応用できるからだ。この技術を洗練していけば、核ミサイル能力も強化される。衛星実験は既定路線であるだけでなく、現在、権力移行期という政治的に微妙な時期にあるために、実験を取りやめるとは考えにくい。要するに、ピョンヤンは国内のリーダーシップ強化に必要なことが、国際的にはネガティブにとらえられてしまうというジレンマに直面しており、この意味で、国際社会で譲歩を示せば、国内政治面ではマイナスに作用する・・・今後何が起きるかを考えるには、2009年の展開を思い起こすべきだ。北朝鮮の衛星発射は国連で問題として取り上げられ、なんらかの声明か決議が採択され、北朝鮮はこれに否定的に反応する。その後、核実験を試みた。これが3年前に起きたことだ。

対中関係をめぐる 台湾コンセンサスの形成を

2012年3月号

ダニエル・リンチ 南カリフォルニア大学准教授(国際関係論)

1月の総統選挙で、台湾の有権者たちが民進党政権では両岸関係が悪化し、台湾経済が深刻なダメージを受ける危険があると心配したのはおそらく間違いない。経済格差、雇用減少、住宅コストの高騰を含む社会経済問題が選挙の争点だったが、有権者は、これらの争点と中台関係が不可分の関係にあることを理解していた。台湾企業の中国進出によって、いまや、台湾の人口2300万のうち100万人以上が中国で生活している。だが、中国との友好的関係を心がける馬英九が総統に再選されたとはいえ、北京が台湾の事実上の独立状態を永遠に許容することはあり得ないだろう。今後、北京での指導層の交代を終えれば、中国は台湾に対する要求を強め、不安定な新時代の幕開けを迎えることになるかもしれない。実際、北京は台湾に対してアメリカからの武器購入を停止し、ワシントンとの軍事的つながりを弱めて「92年合意」を法制化することを要求してくるかもしれない。今後、馬英九は台湾の国内的分裂を修復し、中国との関係をめぐる「台湾コンセンサス」を形作る必要に迫られるだろう。

CFR Expert Brief
アウンサンスーチーと軍の現実主義が支える
ミャンマーの変化

2012年3月号

ジョシュア・クランジック /CFR東南アジア担当フェロー

ミャンマーの軍事政権はなぜ改革を認めたのか。その理由は今もはっきりしない。将軍たちは、自分たちが信用するテインセインに段階的な改革を進めさせれば、報復を伴う民衆蜂起を回避できると考えたのかもしれない。あるいは、中国との関係を強化したことが、逆に中国に依存することへの警戒感を高め、欧米へのアクセスを求めてミャンマーを変革路線へと向かわせた可能性もある。政府はいまも問題を抱えているが、アウンサンスーチーは、今回が国のために貢献できる最後のチャンスであることを理解しているためか、政府に積極的に協力している。いずれにしてもアウンサンスーチーを変革プロセスの中心の据えることが不可欠だ。困難な現状を乗り切るのに必要な道義的正統性をもっているのは彼女だけだ。一方、現状で、過去の犯罪を暴いて高齢の将軍たちを政治の道具にすれば、ミャンマーのチャンスは潰され、改革の流れは潰えることになるだろう。

The Clash of Ideas
アジアのナショナリズムと革命思想(1950年)

2012年3月号

ジョン・K・フェアバンク ハーバード大学教授(中国史)

1930年代初頭、毛が引き継いだ共産党は衰退途上にあった。事実、1937年に日本が中国を侵略するまで、共産党は中国政治ではまったく目立たない存在だった。しかしその後共産党は、中国北方における愛国主義運動の指導的役割を担うようになった。外国の専門家が彼らを愛国主義者と呼んだのは間違いではなかった。外国の侵略者が家屋に火を放ち、虐殺行為を行っているさなかに、農民を組織するのは簡単ではなかったが、日本軍の行動が、結果的には中国北部の農民を中国共産党の懐へと送り込んだ。共産党側は準備万端調えて、農民が自分たちのところへ転がり込んでくるのを待っていればよかった。重要なポイントは、あえて地主階級への反対を前面に出すより、むしろ抗日戦への愛国主義を訴えるほうが、国内の青年知識層が呼びかけに応じる可能性が高いことを共産主義勢力が理解していたことだ。

アジアにおけるアメリカと中国
―― 相互イメージと米中関係の未来

2012年3月号

ヘンリー・キッシンジャー キッシンジャーアソシエーツ会長

中国のアジアでの覇権確立に対するアメリカの懸念、そして、包囲網を築かれてしまうのではないかという中国の警戒感をともに緩和させることはできるだろうか。必要なのは冷静な相互理解だ。中国がその周辺地域において大きな影響力をもつようになるのは避けられないが、その影響力の限界は中国がどのような地域政策をとるかで左右される。アジア諸国はアメリカが地域的な役割を果たすことを望んでいるが、それは(中国に対する)均衡を保つためであり、十字軍としての役割や中国との対決は望んでいないことも理解しなければならない。強固な中国が経済、文化、政治、軍事領域で大きな影響力をもつのは、北京にとっては、世界秩序に対する不自然な挑戦ではなく、正常への復帰なのだ。むしろアメリカは、現状の問題を想像上の敵のせいにしてはならない。米中はともに相手の行動を、国際関係における日常として受け入れるだけの懐の深さをもつ必要がある。

先の読めない 北朝鮮の権力継承プロセス

2012年2月号

スコット・A・スナイダー  米外交問題評議会アジア担当シニア・フェロー

北朝鮮は、アメリカと韓国に異なる姿勢をみせて、米韓を離反させたいと考えているようだ。・・・北朝鮮の国防委員会は、金正日の葬儀が終わった直後に、韓国との関係、特に李明博政権との対話路線について非常に高圧的で強硬な声明を出し、一方でアメリカや日本との個別交渉には前向きな姿勢をみせた。・・・6者協議の再開にはまだ時間がかかるだろう。・・・(平壌が)もっとも重視しているのは、権力継承をスムーズに進めることだ。だが、(日本で出版された著作で)金正恩を批判する金正男の発言が引用されている。常識的に考えて、北朝鮮のエリート層内で対立が起きていない限り、彼がそうした批判的なコメントを出せたはずはない。身辺に危険が及ぶ可能性がないと確信しない限り、金正恩を公然と批判する発言をするとは思えない。・・・・

2012年、 われわれは何を心配すべきか
――世界のマクロ政治・経済リスクを検証する

2012年2月号

デビッド・ゴードン  ユーラシアグループ・グローバルマクロ分析部門ディレクター

・ ヨーロッパがソブリン債務危機を克服することはあり得ないが、ユーロゾーンの崩壊も、ヨーロッパ主要国が2012年に信用危機に陥っていくこともない。だが、ギリシャは非常に深刻な事態に直面する。
・ アメリカ(とドル)が安全地帯とみなされる限りは、ワシントンは経済を前に進めることができる。
・ 中東地域では歴史的なスンニ派とシーア派の対立が再燃しつつある。シリア、イラク、そしてイランもこの宗派対立にとらわれている。
・ インドは今後大きな危険にさらされることになる。インドのことを南アジアにおける欧米の前哨基地とみなすテロ集団の標的にされる恐れがある。
・ 急速に北朝鮮が崩壊へと向かった場合に何が起きるか。米軍と韓国軍は核施設の安全を確保するために北へ向かい、一方で、中国軍も自国への難民流入を阻止するために、鴨緑江を越えて現地に入り、秩序を確立しようとするかもしれない。・・・

CFR Interview
せめぎ合う米中とアジア諸国の立場

2011年12月号

サイモン・タイ シンガポール国際問題研究所(SIIA)理事長

いまやアジアの現実は大きく変化している。変貌を遂げたアジアは統合度を高め、中国の経済的役割が地域的に広く受け入れられている。だが、北朝鮮をあからさまに擁護する路線にはじまり、尖閣諸島、南シナ海の領有権問題にいたるまで、北京は外交的失策を重ね、ワシントンは「同盟国としてのアメリカの価値」を相手国に認識させるような戦略を表明することで、これに対処してきた。・・・ワシントンは、アジア太平洋関与戦略の中枢であるTPPのことを、アジアにおいて中国と影響力を競い合うための試金石とみなし、一方の北京はこれを「中国を除外してアメリカがアジア経済にエンゲージするための枠組み」と警戒している。アジア地域内でも中国が主導するFTA(自由貿易協定)に参加するか、それとも、TPPに参加してアメリカを重視するかという構図ができつつある。・・・

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