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アジアに関する論文

Foreign Affairs Update
ロシアのアジアシフト戦略という幻想

2013年10月号

フィオナ・ヒル
ブルッキングス研究所 シニアフェローボボ・ロー
英チャタムハウス アソシエートフェロー

アメリカに続いてロシアもアジアへと軸足を移そうと試みている。伝統的なヨーロッパ市場ではなく、アジア太平洋市場との関係を強化することで、ロシアの経済成長を刺激したいとプーチンは、考えている。モスクワのアジアシフト戦略は、アジアに影響力を行使したいという願いだけでなく、極東ロシアの人口がまばらであることへの恐れにも突き動かされている。この意味で、その鍵を握るのが中国との関係だ。だが、モスクワにとって中国との貿易関係は、次第に(中国による)新植民地主義的な様相を帯びてきている。ロシアからの主な輸出は原材料で、中国からは製品や消費財を輸入しているからだ。北京は、兵器を別とすれば、ロシアから工業製品を輸入することに関心はなく、武器輸入でさえも、近年は低調で、2006年以降、大がかりな武器貿易契約は交わされていない。アジアシフト戦略をとれば、いずれロシアは「自国の帰属しない東」と「うまく適合できない西」の間で漂流していることを見いだし、失望することになるだけだろう。

アメリカか中国か
―― 韓国のジレンマ

2013年10月号

スコット・スナイダー
米外交問題評議会シニア・フェロー(朝鮮半島担当)

中国の台頭を前に、韓国は戦略ジレンマに直面している。経済成長の多くを中国との経済関係に依存しつつも、安全保障領域では依然としてアメリカとの同盟関係を必要としているからだ。ソウルは、ワシントンと北京のいずれかを選択するような事態を回避するのが戦略的に好ましいと考えているようだ。当然、韓国は、良好な米中関係が維持されることに大きな利益を有している。だが、仮に韓国がアメリカではなく、中国との関係強化を戦略的に優先させるとすれば、それはどのような環境においてだろうか。

インドを支える州経済の台頭
―― 経済再生を主導する州経済の躍進

2013年9月号

ルチル・シャルマ/モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント 新興市場・グローバルマクロ担当ディレクター

グローバル経済が低迷するなか、ニューデリーは政治的な機能不全に陥っているかにみえる。二桁台に達していたGDP成長率も、いまや5%に落ち込み、インドの首都は政治腐敗、停電、無能な警察といったスキャンダラスなニュースで埋め尽くされている。だが、ダイナミックな州が急速かつ持続可能な経済成長を遂げ、いまやインドは力強い地方によって成り立つ国であることが再認識されつつある。主要な州経済がいまでも二桁近い経済成長を実現していることは、中国、ブラジル、インドネシア、メキシコなどの他の新興諸国とインドが競争していく上での大きな力になる。州指導者が中央に対して連邦構造を受け入れさせ、経済政策上の権限をさらに州政府に委譲させることに成功すれば、インド経済は再度復活の道のりを歩み始めるだろう。

CFR Update
TPPと米韓FTAの教訓
―― 経済もパートナーシップも強化する

2013年9月号

シーン・コネル/在ワシントン東西センターフェロー(日本担当)

日本にとってのTPPと、韓国にとっての米韓自由貿易協定(KORUS)には多分に重なり合う部分がある。実際、TPPが時に「KORUSプラス」と呼ばれることからも明らかなように、TPPの交渉アジェンダの多くがKORUSを下敷きにしている。TPPは新たに経済成長を刺激するだけではない。KORUSが米韓関係を刷新したように、TPPは日米パートナーシップを刷新するポテンシャルも秘めている。TPP交渉を通じて、日米は相互認識を刷新し、その経済的つながりからいかに大きな恩恵を引き出しているかをより的確に理解することになるはずだ。強いリーダーシップ、困難な決断を下す気概、貿易交渉者によるクリエーティブなソリューション、両国で合意を支える利益認識を形成する努力、これらのすべてがKORUSを成功へと導いた。日米の政策決定者が、TPPのポテンシャルを十分に生かして、両国のパートナーシップを強化し、新たな成長領域を形作るには、こうしたKORUSの教訓を認識する必要がある。

変貌した東南アジアへ帰ってきた「古い日本」

2013年9月号

ジョシュア・クランジック 米外交問題評議会フェロー

いまや東南アジアにおける日本の存在感は大きくなっている。アベノミクスに啓発された東南アジア諸国はヨーロッパ流の緊縮財政でなく、景気刺激策をとろうと試みている。さらには、タイ、ミャンマー、インドネシアにおける政治的混乱、タイにおける大気汚染、ベトナムでの深刻な経済停滞を前にしても、中国企業とは違って、日本企業が投資の約束を守ることへの認識と評価も高まっている。経済停滞と援助予算の削減とともに衰退した日本の東南アジアへの影響力がいまや回復しつつある。すでに東南アジアを3度訪問した安倍首相の努力は、東南アジアとの貿易交渉や投資、現地の世論において着実に実を結びつつある。しかし問題もある。援助、インフラ投資、戦略的つながりに焦点を合わせるだけで、民主主義や市民社会について日本が言及することはほとんどない。日本は、かつてスハルトその他の独裁政権に用いたのと同じ戦略を安易に踏襲してしまっている。・・・

CFR Interview
TPPをどうとらえるか
―― 貿易交渉か経済統合の試みか

2013年9月号

ミレヤ・ソリス
ブルッキングス研究所
北東アジア政策研究センター シニアフェロー

TPPの際だった特色は非常に野心的なハイレベルの目的を掲げ、知的所有権、労働基準、環境問題など(貿易領域を超えた)あらゆるものを交渉テーブルに載せると表明していることだ。こうした「WTOプラスアジェンダ」が取り上げられているのは、WTO(世界貿易機関)の交渉ラウンドが事実上停止していることの裏返しに他ならない。ウルグアイラウンドで貿易と投資ルールの見直しが前回行われてからすでに20年近くが経過している。当然、WTOで定義されている以上のルールが必要になっている。・・・TPPを貿易交渉ととらえるか、経済統合の試みととらえるかが人によって違ってくるのはこのためだ。私は、TPPは経済統合へと向かっていると感じている。なぜ貿易以外のルールが議論されているかは、それが経済統合の試みととらえられているためだ。・・・これまでは、日本が交渉に参加するには、一連の条件を満たす必要があるとアメリカが一方的に要求を突きつける立場だった。しかし今後、日本はアメリカ市場の障壁を特定して、これを問題として指摘することになるだろう。事態がどのように展開し、どのようなギブアンドテイクが試みられることになるのか非常に興味深い。

北朝鮮は経済改革を模索している
―― 崩壊か経済改革か

2013年8月号

ジョン・デルーリー 延世大学国際関係大学院准教授

北朝鮮は2030年までに崩壊すると予測する専門家もいるが、平壌はすでに中国流の経済改革導入への道を歩みつつあるとみなすこともできる。これを理解するには、中国はどのような手順で改革へと歩を進めたかを考える必要がある。1960年代に核兵器を獲得した北京は、1970年代に対米デタントによって体制の安定と安全を確保した上で、経済改革路線を優先させるようになった。つまり、今日の北朝鮮は1970年の中国同様に、経済改革に着手する前に、まずワシントンから体制の安全に関する保証を取り付けたいと考えている段階にある。金正恩は「経済建設」の次の局面に進みたいと考えていると示唆し、4月1日には実務派テクノクラートの朴奉珠を首相に登用して、経済成長の舵取りを委ねている。朴奉珠が北朝鮮の首相に抜擢されたこと自体、金正恩が経済を重視し、改革志向を持っていることの現れとみなせる。平壌の穏健派に力を与えるためにも、アメリカは強硬策ではなく、北朝鮮の安全を保証し、経済改革にむけた環境整備に手を貸すべきだ。体制を揺さぶり、崩壊を待つ路線を続ければ、偶発事件によって次なる朝鮮戦争が誘発される恐れがある。

なぜインドは大国とみなされるのを嫌がるか
―― 戦略なき新興大国の苦悩

2013年6月号

マンジャリ・チャタジー・ミラー/ボストン大学アシスタントプロフェッサー(国際関係論)

大国の地位を手にいれたいと望む国は、戦術的な課題を越えて、自国の利益にもっともフィットする世界をイメージし、そのビジョンを現実にしようと試みるものだ。だがインドの外交指導者たちはそうした大国へのビジョンをいまだに描いていない。その理由は、「影響力が拡大すれば、そのパワーに応じた責任を果たさなければならなくなる」と警戒しているからだ。大国になれば大きな責任を引き受けなければならなくなることをインドは嫌がっている。この状況が続く限り、多くの人が期待するような国際舞台での役割をインドが果たすようになることはない。自国の具体的な利益がかかわる狭い領域での国際的役割程度なら受け入れるかもしれないが、よりグローバルな役割を果たすように求める抽象的な呼びかけに、インドが耳を貸すことは現状ではあり得ない。

第二次朝鮮戦争の悪夢に備えよ

2013年05月

ケイル・A・リーバー
ジョージタウン大学准教授
ダリル・G・プレス
ダートマスカレッジ准教授

戦争が始まれば、訓練も装備も十分ではない北朝鮮軍は、どうみてもCFC司令部(米韓連合軍)には太刀打ちできない。北朝鮮軍は総崩れとなって敗走し、CFCが短時間で国境線を越えて、北へと進軍する。この時点で、北朝鮮指導層は「サダム・フセイン、ムアンマル・カダフィに持ち受けていた忌まわしい運命を回避するにはどうすればよいか」という重大な選択に直面する。金正恩とその家族や側近たちは中国に脱出して保護を求め、そこで余生を送るつもりかもしれない。だが、このオプションをとれないとすれば、平壌に残された唯一の方法は、「核によるエスカレーション策」という切り札を持ち出して停戦に持ち込むことかもしれない。金正恩は、CFCが攻撃を止めない限り、その段階で、いまだ手つかずのまま残されている、片手では数え切れない韓国や日本の都市を攻撃すると恫喝するかもしれない。・・・

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