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テーマに関する論文

グローバル化に対する 反動にどう対処する

2007年3月号

ラウイ・アブデラル ハーバード大学ビジネススクール助教授
アダム・シーガル 米外交問題評議会(CFR)シニア・フェロー

いまや、資本、商品、労働力の国境を超えた自由な移動を意味するグローバル化の流れが今後も続いていくと楽観できる状況ではなくなってきた。最大の懸念材料は、市民のグローバル化への猜疑心が高まり、グローバル化が国家間、国内の双方で格差を助長していることへの人々の不満が増大し、状況への反発として各国で保護主義が台頭しつつあることだ。技術革新領域についてはグローバル化の流れがよどむことは今後もあり得ないが、ドーハ・ラウンドの決裂からも明らかなように市場開放の流れはよどみ始めているし、2国間合意の増大によって国際的な貿易ルールも損なわれ、グローバル化を支える制度そのものが形骸化しつつある。各国が状況にどのように対応するかで、グローバル化の今後は左右される。

復活した日本と現実主義外交の伝統

2007年3月号

マイケル・グリーン
戦略国際問題研究所(CSIS)日本部長

日本の最大の強みは、国力を構成する軍事、経済、文化その他の要因を時代に即してうまく再定義してきたことにあり、小泉政権以降の日本政府は、アジアにおける主要なプレーヤーとしての地位を維持していこうと、新たな国力構成領域での強さを培いつつある。若手政治家たちは、日米同盟が両国にとってもっとうまく機能するようになることを願っており、より多くの役割を引き受け、その代わりにより多くを求めることについても躊躇しない。こうした状況にある以上、ワシントンが東京を犠牲にする形で北京との和解路線をとれば、東京は自主路線の度合いを高め、その結果、アジアの安全保障環境はますます不透明になる。ワシントンが中国との緊密な経済的絆に加えて、安定した戦略関係を築くことについて日本を過度に刺激しないようにするには、あくまでも東京との同盟関係を基盤に中国への関与策を進める必要がある。

Classic Selection
核の優位を確立したアメリカ
――核抑止時代の終わりか

2007年2月号

ケイル・A・リーバー  ノートルダム大学政治学助教授 、 ダリル・G・プレス  ペンシルベニア大学政治学準教授

近いうちに、アメリカが核の先制攻撃によってロシアや中国の長距離核のすべてを破壊し、反撃能力を一度に粉砕できるようになる日がやってくる。この核のパワーバランスの劇的なシフトは、アメリカが核システムを持続的に改善し、ロシアの核兵器がしだいに時代遅れになり、中国の核戦力の近代化がゆっくりとしたペースでしか進まなかったことの帰結である。われわれのシミュレーションでも、ロシアの戦略核のすべてを一度の核攻撃で破壊できるという結果が出ている。相互確証破壊の時代、核抑止の時代は終わりに近づきつつある。今後、問われるのは、核の優位を手にしたアメリカが、国際的にどのような行動をとるかだろう。

2006年7月、世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンドは再開の目処が立たぬままに凍結され、もはや今回のドーハ・ラウンドが目的に掲げた、踏み込んだ貿易自由化は永遠に陳腐化したとする見方もあった。しかし、ダボスで2007年1月に開かれた世界経済フォーラムに集った30カ国の閣僚たちは、数カ月以内に交渉を再開することに合意し、2月9日には、農業自由化交渉が再開された。だが、交渉の今後を楽観できる情勢にはない。ドーハが失敗に終われば、貿易自由化の進展が望めなくなるだけでなく、グローバル化は停滞し、世界は保護主義の時代に突入する危険もある。無論、WTOの力は損なわれ、富裕国市場へのアクセスを求める貧困国の願いも絶たれることになる。とはいえ、これまでのすべての貿易ラウンドも膠着状態を経て、土壇場で合意形成にいたっていることも事実だ。今後を考えるうえでの懸念材料は、保護主義が高まりをみせるなか、各国が「多角的貿易ラウンドに代わる選択肢として」2国間貿易合意路線へと傾斜しつつあることだ。

テロリストはインターネットを いかに利用しているか  
――オンラインテロの脅威と対策

2007年2月号

エヴァン・F・コールマン
グローバル・テロアラート・コム運営者

テロリストによるデジタル版パールハーバーを警戒する各国政府は、仮想空間上の「ドアを閉める」作戦を展開しているが、欧米のコンピューターシステムに対する直接的なサイバーテロの危険はそれほど大きくない。テロ組織も、普通の組織と同じようにインターネットを利用しているだけで、テロ組織によるネット利用が脅威なのは、ひとえに彼らの意図と目的の部分にある。アルカイダやこれに準じたテロ組織は、インターネットを利用してテロ要員のリクルートを行い、資金提供者に接触し、世論に訴えかけ、テロ決行者へ指令を伝え、戦術や知識を蓄えては拡散し、テロ攻撃を組織化している。これらをすべて取り締まるのは事実上、不可能である以上、むしろ、それらのウェブサイトやフォーラムを好きにさせて、テロリストのイデオロギーや動機を理解するうえでの重要な洞察をもたらしてくれる貴重な情報源とすべきではないか。

CFRブリーフィング
米ロは衝突コースにあるのか?

2007年2月号

Lionel Beehner (Staff Writer, www.cfr.org)

プーチン大統領率いるロシアとアメリカは、これまでも協調と対立を繰り返す微妙な関係にあったが、ここにきて、双方は相手を明確に批判するようになった。アメリカの弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの離脱、北大西洋条約機構(NATO)の拡大、かつてロシアの勢力圏だった旧ソビエト諸国における民主化運動への欧米の支援などをめぐって、米ロはこれまでもことあるごとに対立してきたが、それでも大きな対立局面にいたることはなかった。だが、プーチンは、最近ドイツのミュンヘンで開かれた国際安全保障をめぐる国際会議で、「アメリカは単極世界の構築を試み、核の軍拡レースを復活させ、国際的紛争の解決に無節操に武力を用いている」とワシントンを痛烈に批判し、これに対してロバート・ゲーツ国防長官は、「ロシアの批判を聞くと、まるでわれわれが冷戦時代にあるかのような錯覚に陥る」とコメントしている。米ロはこのまま衝突コースを歩み、世界は再び米ロの対立を軸に切り分けられることになるのか。それとも……。

イランのエネルギー産業はしだいに崩壊しつつある。サウジアラビアに次ぐ世界で2番目に大きな石油資源を持ちながらも、イランはいまや市場へのガソリン供給を配給制に切り替えつつあるし、大規模なインフラ投資を行わない限り、イランの石油輸出は2015年までに停止すると予測する専門家もいる。イランの石油産業が衰退したおもな原因は、石油インフラへの投資不足による油田の老朽化、そして国内での無節操なエネルギー消費を促しているエネルギーへの補助金制度にあるとみる専門家は多い。グローバル市場でのエネルギー価格がしだいに低下していけば、すでに国連の制裁下に置かれて苦しんでいるイラン経済は、政治的余波を伴うような大きな経済的ショックに直面するかもしれない。イラン側は、中国やパキスタンなどとの契約を通じて、投資をてこ入れしようしているが、一方で、国連の経済制裁が効き始めているのも事実だ。石油産業の不振を前にテヘランは核開発にますます力を入れだし、一方、イランは電力生産ではなく、核兵器の開発を目指しているとみる欧米の専門家はますます危機感を募らせている。

CFRインタビュー
なぜアメリカは北朝鮮に妥協したのか

2007年2月号

ゲリー・サモア 米外交問題評議会(CFR) 上席副会長・研究部長

「ホワイトハウスにしてみれば、6者協議における交渉が進展しなければ、北朝鮮が核実験を再度試みる危険があることを憂慮したと思われる。そのような事態になれば、中東、特にイラクで数多くの問題に直面するなか、東アジアでも危機が誘発され、対応を余儀なくされる」。2月の6者協議での合意の背景をこう分析するゲリー・サモアは、核兵器のことを国の存続を保証する切り札とみなす平壌には核を解体するつもりが全くない以上、外交で状況を安定化させ、東アジアで危機を誘発するのを回避するには、今回のような曖昧で、核心部分を先送りした合意で手を打つしかなかったとみる。サモアは、今回の合意を、「賢明な路線」とブッシュ政権を評価しつつも、妥協と見返りに関する連鎖の詳細が合意で定義されていない以上、今後、非常に難しい問題を交渉していかなければならなくなると語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

「ブッシュ政権は、平壌がそう望むのなら、北朝鮮を改革・開放化へと向かわせるような道筋を築き、そのうえで、朝鮮半島の安全保障問題、ひいては北東アジアでの大国間関係のための枠組みをつくろうと、中国、日本、韓国、ロシアの4カ国との協調路線を試みている」。2月の6者協議での合意は、「こうした壮大な計画の序章にすぎない」と語るロバート・ゼーリック前国務副長官は、北朝鮮が開放路線を選択するかどうかは、はっきりとしないとしながらも、今回アメリカが描いた道筋は「金正日が改革と経済開放路線を推進していけば、北朝鮮がさまざまな機会を手にできるように設計されており」、これに北朝鮮への安全の保証、和平条約の締結を組み合わせれば、「改革・開放路線をとれば、体制の崩壊につながる」とみる平壌の危機感を緩和させて、北朝鮮の核問題に対処していく広範な枠組みにできると指摘した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

中国のパワーを検証する
――軍事、経済、ソフトパワーの実態と課題

2007年1月号

デビッド・M・ランプトン 米中関係全米委員会前会長

アメリカを含む世界各国は、中国の軍事パワーを過大評価し、経済面でも、売り手、輸出業者としての中国の役割を過大評価し、買い手、輸入業者、投資家としての中国の活動を過小評価している。そして、中国のソフトパワーの拡大はおおむね無視されている。一方の中国は、経済成長を持続させることこそ、現在の共産党政府の政治的正統性を維持していくうえでの不可欠の要因とみている。そのために、(技術、投資、戦略物資などの)資源を可能な限り国際社会から調達し、対外的脅威を緩和させようと心がけている。だが、国内での政治的緊張に直面すると対外的ナショナリズムのカードを切ろうとする傾向があるし、経済パフォーマンスが低下すれば、政府の正統性も、中国のソフトパワーも損なわれていく。状況が流動的であるがゆえに、中国のパワーの実態を明確に把握しておく必要がある。

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