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テーマに関する論文

キャンペーン2008
大統領選挙の争点としてのイラク

2007年5月号

ジェームズ・リンゼー テキサス大学ロバート・ストラウスセンター・ディレクター

ヒラリー・クリントン上院議員やジョセフ・バイデン上院議員のような中道派の候補者たちも、しだいに現政権の路線を敵視する民主党左派の立場に歩み寄りつつある。その理由を、前米外交問題評議会(CFR)研究部長で現在テキサス大学のロバート・ストラウスセンターのディレクターを務めるジェームズ・リンゼーは、「民主党指導層がイラクからの米軍撤退をはっきりと求め、イラク情勢が改善していないどころか、悪化しつつある以上、党内左派の立場に中道派の候補もすり寄っていくしかない」と説明する。しかし、本質的には「民主党指導層の共感を勝ち取りつつも、より広範な市民層にアピールするようなメッセージをいかに考案するか、つまり、予備選で党内の支持を取り付けつつも、指名を受けた後の本選挙で不利にならないようなバランスのあるメッセージをどのように考案するかという課題に直面している」と同氏は言う。誰が大統領になろうと、イラクからの米軍の大幅な撤退はもはや既定路線であり、「今後18カ月間のうちに、これまでにわれわれがイラクで犯した間違いの余波を封じ込めるために軍事的、外交的、経済的に何をすべきか、何を準備しておくかを考えなければならない」と指摘し、イラクを中心とするペルシャ湾岸地域の地政学的安定をどう確保するのか、石油資源へのアクセス、人権問題をどうするかを考えておく必要がある」と語った。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
流動化するパキスタン情勢
――国内暴動で追い込まれたムシャラフ大統領の選択

2007年5月号

ダニエル・マーキー 米外交問題評議会シニア・フェロー (インド、パキスタン、南アジア担当)

「大統領と軍参謀長を兼務したままで再選を目指しているムシャラフの行く手を、チョードリ最高裁長官が法的に遮ろうとするのではないかとムシャラフ政権が懸念したことが、彼を停職処分にした本当の理由ではないか」。3月にチョードリ長官を停職処分としたことに端を発するパキスタン国内の暴動の背景をこう説明する米外交問題評議会(CFR)の中央アジア専門家、ダニエル・マーキーは、「ムシャラフが軍参謀長、大統領ポストのいずれかを辞するか、憲法の改正、修正を目指すかのいずれかしか道はなくなってきている」と指摘する。もっとも好ましいのは、「軍参謀長ポストを辞することだが、パキスタンの場合、むしろ、権力の中枢を担ってきたのは、大統領よりも軍の参謀長だった」とこの問題が極めて複雑であることをマーキーは示唆する。心配なのは、カラチで40人を超える人々が犠牲になった今回の暴動が、今後制御できない状況へと陥っていくことで、「私はこの点での懸念を、パキスタンに行ってますます強めた」と同氏は語っている。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター

CFRディベート
パキスタンは国境地帯の
安定確保に手を尽くしているのか

2007年5月号

◆混乱の責任はパキスタンにある◆
ビル・ロッジョ ジャーナリスト
◇混乱の責任はパキスタン、アフガンの双方にある◇
キャシー・ギャノン 元AP通信アフガニスタン・ パキスタン支局長

アフガニスタンが混迷から抜け出せずにいる理由は何か。アフガニスタンと国境を接するパキスタンの国境地帯(部族地域)にタリバーンやアルカイダが聖域を持つことをパキスタンが事実上認めているからなのか、それとも、アフガン政府が統治体制を確立できていないことが、この国が無法地帯と化している根本の原因なのか。専門家の間でも意見は分かれている。アフガンに展開する北大西洋条約機構(NATO)軍がいくらアフガン国内でタリバーンやアルカイダをたたいても、武装勢力はパキスタン国内に一時的に撤退し、態勢を整えて、再度国境線を越えて攻撃してくることが問題だとみる専門家もいれば、アフガン政府が事実上軍閥たちに支配されていることを問題視する専門家もいる。「アフガンを失わないため」には何が必要か、タリバーンが攻勢を強めるなか、国際社会は大きな決断を迫られている。

CFRインタビュー
パレスチナ危機のなか、
なぜ中東和平への機運が高まっているのか

2007年5月号

マーチン・インディク ブルックングス研究所 セバン中東研究センター・ディレクター

国際社会の支援をバックに治安能力の整備を進めていたファタハに危機感を募らせたハマスは、「ファタハが力をつける前に相手を粉砕しておく必要があると考え、その結果、ガザでハマスとファタハ間の内戦が起きてしまった。ハマスは、ファタハを攻撃するとともに、ガザ地区からのロケット弾によるイスラエル攻撃を激化させ、一方ではガザの民衆にイスラエルという敵対勢力に対して団結することを呼びかけている」。現在のイスラエルとガザの間で起きていることをこう分析する中東問題の専門家、マーチン・インディクは、ハマスによるイスラエル攻撃は、「本当の問題に目がいかないようにするためのハマスの陽動作戦だった」と指摘する。だが、こうした危機のさなかに、中東和平の機運が高まっている。「イラクの混迷が続いているためにイランが強大化することへの懸念が高まり、その結果、中東和平への機運が高まっている部分がある」。サウジアラビア、エジプト、ヨルダン、その他のスンニ派国家は、イランの強大化に対抗するためにも、イスラエルとの関係を修復していくのは、自分たちの利益になると考えだしたからだ。インディクは、中東和平に向けたすぐれた戦略環境が存在すると指摘しつつも、「パレスチナ側に、信頼でき、力を持つパートナーが誕生しない限り、こうした戦略的好機を生かすこともできない」と語った。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
サルコジはフランスをどう変化させるのか

2007年5月号

セルジュ・シュメマン インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙 論説ページエディター

「今回のフランスでの大統領選挙の投票率が、85%という西洋民主国家では異例の高さとなり、候補者の論戦に有権者が熱くなったこと自体、フランスが大きな岐路にさしかかっていると有権者が強く感じていたことを意味する」。サルコジがうまく政治を運営し、移民問題や労働組合との対立に足を取られなければ、大きな変化をもたらせるとみるシュメマンは、サルコジは、「より積極的に働くことにフランス人がもっと価値を見いだせるようにしたい」と考えていると指摘する。一方対米関係については、「サルコジが親米派であり、アメリカを尊重し、アメリカ流のやり方を好んでいるのは事実としても」、これまでのフランスの外交路線を踏み外すようなことはないと同氏はみる。「外交のスタイルやトーンは変化してくるとしても、フランスの対外政策路線の変化につながるとは思わない。ただし、これまでのようなアメリカとの大きな摩擦は起きなくなるかもしれない」と語った。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

エタノール燃料は本当に人と地球に優しいのか

2007年5月号

C・フォード・ランゲ ミネソタ大学応用経済学・法学教授
ベンジャミン・セナウアー ミネソタ大学応用経済学教授

原油価格が高いレベルで推移し、一方で環境問題への関心が高まるなか、世界的に代替燃料としてのエタノールが注目を集めている。しかし、トウモロコシや大豆を原料とするエタノール生産は世界の穀物供給を逼迫させ、価格を高騰させている。メキシコのトルティーヤ粉だけでなく、サハラ砂漠以南、その他のアフリカ、アジア、ラテンアメリカの貧困地域の主食であるキャッサバの価格も2010年までに33%、2020年までに135%上昇すると考えられている。バイオ燃料の需要増によって主要産品の実勢価格が1%上昇するごとに、世界で食糧難に苦しむ人々の数は1600万人ずつ増えていく。しかも、栽培・生産のために多くのエネルギーを必要とするトウモロコシや大豆は、環境を汚染する作物だ。エタノールを真にグリーンで持続可能な代替燃料とするには、木や草のセルロースからの生産の実用化を期待するしかない。

CFRインタビュー
なぜパキスタンは タリバーン対策に
乗り気ではないか

2007年4月号

ダニエル・マーキー 米外交問題評議会シニア・フェロー (インド、パキスタン、南アジア担当)

アフガニスタンとの国境地帯にあるパキスタンの部族地域は、いまやタリバーンやアルカイダの聖域とされている。イスラム過激派は、この部族地域を拠点にアフガニスタンへの攻撃を繰り返しており、アフガニスタンだけでなく、アメリカも部族地域をうまく管理できないパキスタンに対する不満を高めつつある。一度は国軍を部族地域に投入したパキスタンだが、現地での駐留が長引くにつれて、部族地域の住民の反発を買うようになったため、「政府の代理人と部族長の交渉」という従来の路線に戻る一方で、「部族地域の治安部隊を強化して、こうした部隊がテロリストや民兵を取り締まることを期待している」。だが、「地方に配備されているパキスタンの治安部隊は装備も貧弱で、自動小銃で武装したアルカイダがジープで走り去るのを、50年前の銃を抱えて見逃すしかない状況だ」。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
北朝鮮との外交交渉の行方

2007年4月号

ドン・オーバードーファー
ジョンズ・ホプキンス大学ポール・ニッツスクール 朝鮮研究所理事長

「私は北朝鮮の核実験は(外交交渉へと流れを向かわせる)ある種の『触媒』の役目を果たしたと考えている」。実験後の状況が危険な対立状況、武力衝突の危険によって支配されたわけではなく、アメリカ、アジア諸国、そして世界の関係国は比較的冷静な対応をみせた。実際、核実験後には、北朝鮮と各国の対立よりも、むしろ、外交路線が活性化した。核実験から6者協議での北朝鮮との合意へと向かった流れをこう描写するオーバードーファーは、「アメリカとの外交関係の正常化が実現するのなら、北朝鮮は核開発計画を部分的、あるいはすべて解体することにも否定的ではない」としながらも、「行く手には大きな困難が待ち受けている」と指摘し、「どちらが先に行動を起こすか」「どのような手順を踏んで合意を履行していくかをめぐって暗雲が立ち込めだしている」と語った。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
ロシアは天然ガス版 OPECの形成を試みているのか

2007年4月号

フィリップ・K・バレジャー PKバレジャーLLC社長

石油や天然ガスを含む資源へのクレムリンのアプローチは一貫している。それは、「資源から最大限の利益を引き出すという重商主義路線」にほかならない。ロシアが天然ガス版のカルテルを短期的に組織することはあり得ないとしても、長期的に考えると天然ガス輸出のカルテルが形成される可能性は高い。状況をこう分析するエネルギー問題の専門家、フィリップ・バレジャーは、「中国への輸出インフラ、ヨーロッパへのさらなる輸出インフラを整備すれば、気に入らない国には供給を止めるなどの資源戦術をロシアはとれるようになる」と指摘する。ヨーロッパにとって、ロシアに代わる供給源はイランしかないが、これは政治的に魅力的な選択肢とはなり得ないとみる同氏は、ヨーロッパが政治的リスクを減らすには、(ロシア、イランの天然ガスを)トルコ経由のパイプライン供給に頼るしかないが、このやり方も、トルコの欧州連合(EU)加盟問題に絡んでくるので、不安定化のリスクを抱えることになると示唆した。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

トルコとイラク北部のクルド人との対立がここにきて再燃しており、イラク北部とトルコの国境地帯で紛争が起きる危険が指摘されている。問題は、トルコからの分離独立を求めるクルド労働者党(PKK)の武装勢力が、イラク北部を聖域にトルコへの攻撃を行っていることに派生している。最近ではトルコ軍の高官は、「イラク北部におけるPKKの反乱勢力を一掃するためなら、イラク北部への軍事侵攻も辞さない」と発言している。この他にもアンカラは、イラクのクルド人がイラクからの独立を試みれば、トルコ国内のクルド人分離独立運動を大きく刺激することになると懸念している。そして、これら一連の流れの鍵を握るのが、イラクの石油都市キルクークの帰属問題だ。キルクークの帰属を問う住民投票が、2007年末に予定されているが、すでに、トルコとスンニ派アラブ国家は住民投票の実施に反対し、一方、イラクのクルド人勢力は、投票が実施されなければ、イラクからの独立も辞さない可能性も示唆している。クルド人地域がキルクークとともにイラクから独立すれば、イラン、イラク、トルコ、シリア、アルメニアに広がる広大なクルディスタン地方のクルド人がどう反応するか。悪くすれば、中東はこれまでとは全く別次元の大きな問題に直面する恐れがある。

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