Focal Points

2022.5.7. Sat

<5月号プレビュー>
何がプーチンを侵略に駆り立てたか
―― 米ロ関係とアメリカのパワー

ウクライナでの「特別軍事作戦」が計画通りに進み、数日でロシアがウクライナを制圧していたら、世界はプーチンの非人道的な暴挙を非難するよりも、むしろ彼の「慧眼」と「非凡な才能」について再び語り始めていたに違いない。そうはならなかったが、ロシアに何が起きたかを検証する必要がある。戦後秩序に組み込まれたままでは、ロシアはうまくいっても二流国家としての地位に甘んじることになるとエリートたちは考えていた。平和は保たれ、繁栄するチャンスは残されるかもしれないが、ヨーロッパや世界の運命を左右することはあり得ないことを理解していた。・・・(ケーガン)

侵略者が国際秩序を破壊しようとするときは毅然と対決しなければならないが、一方で、非常に大きな経済国家に対するペナルティは、制裁の余波への支援策なしには遂行は難しくなっていく。家庭の物質的な豊かさが維持されない限り、制裁に対する政治的支持は時の経過とともに崩壊していくからだ。政治的反発のリスクを管理しつつ、ロシアに最大の圧力をかけることなら、現在の圧力レベルが政治的に実現可能な最大限の圧力なのかもしれない。だが、経済戦争がこの強度でさらに長期化するようなら、世界は経済制裁が誘発する不況に陥っていく危険がある。コストがかからず、リスクもなく、予測可能な制裁の時代はすでに終わっている。(モルダー)

ウクライナを侵略することで、プーチンは「つい最近まで崩壊に向かうとみられていた国際秩序を再建するための歴史的な機会をアメリカと同盟国に与えた」とみる専門家もいる。だが本当にそうだろうか。ロシアの侵略を非難する国連決議に141カ国が賛成したのは事実だ。しかし、5カ国が反対し、35カ国が棄権し、12カ国は無投票を選んでいる。棄権した中国、インド、パキスタン、バングラデシュ、南アフリカの人口を合わせると世界の2分の1近くに達する。欧米の政策決定者がこの瞬間を、「リベラルな秩序の危機の終わり」や「欧米のグローバルな優位の復活」と読み違えれば、厄介な問題が作り出されることになる。(クーリー、ネクソン)

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