Focal Points

Serhii Mykhalchuk / Shutterstock.com

2022.5.5. Thu

<5月号プレビュー>
ロシアのウクライナ侵略
―― 戦争と市民

すでに欧州連合(EU)はウクライナ難民に一定の保護を与え、少なくとも3年間はEU圏に滞在できる措置をとっている。こうした大きな連帯意識は、ヨーロッパの指導者たちが、難民や移民によりうまく対処する、より公平な難民政策を導入する機会をもたらしている。シリア紛争などの戦争で荒廃した国からヨーロッパに数百万の難民が押し寄せたとき、当初の歓迎が結局は激しい反発とナショナリズムの高まりにとってかわられたことを忘れてはならない。同じような流れが起きるのを避けるための施策が必要になる。(ベッツ)

ウクライナが国内への国際刑事裁判所(ICC)の管轄権を受け入れ、一方で加盟40カ国がウクライナにおける事態の調査を要請したことで、ICCは戦争犯罪(や人道に対する罪)の大規模な調査をすでに開始している。継続的な報道がリアルタイムの記録となっているため、ロシアの指導者はウクライナで起きている残虐な犯罪について知らなかったと主張するのは難しい状態にある。(ロシアはICCの締約国ではないため、その指導者を平和に対する罪では裁けないかもしれないが)特別法廷があれば、ICCが管轄をもっていないロシアの指導者に対しても侵略犯罪で訴追できるようになる。バイデン政権は、特別法廷を設置する合意をまとめるための、国連総会でのイニシアティブを主導できるだろう。(シェーファー)

世界の他の地域での「非人道的犯罪」に対する関心は高まる一方だ。民意を代弁できる世界政府(あるいは国際機構)、そして世界憲法(あるいは強制力を伴う国際法)が存在すれば、特定の国家の内部で起きた非人道的事件をグローバルな規模でとりしまり、処罰するのも可能になるかもしれない。しかし、現実にはそのようなものは存在しないし、それが実現する見込みもない。国家は憲法を持ち、その憲法を軸に政府が秩序を維持し、しかも、政府がそうする権限は選挙をつうじた民意に支えられている。これを世界規模へと広げるのは、事実上不可能であることを認識した上で、問題に対応するしかない。だが、われわれはいずれ「憲法」と「国際法」のせめぎ合いの時代が到来する可能性に備えるべきだろう。(ボルトン)

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