Focal Points

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2022.4.19. Tue

経済制裁から経済戦争へ
―― 対ロ制裁の余波に世界は持ち堪えられるか

歴史的にみても、侵略者が国際秩序を破壊しようとするときは毅然と対決しなければならないが、一方で、非常に大きな経済国家に対するペナルティは、制裁の余波を被る諸国への支援策なしには遂行は難しくなっていく。家庭の物質的な豊かさが維持されない限り、制裁に対する政治的支持は時の経過とともに崩壊していくからだ。経済制裁の目的が国内経済の混乱を最小限に抑えて、政治的反発のリスクを管理しつつ、ロシアに最大の圧力をかけることなら、現在の圧力レベルが政治的に実現可能な最大限の圧力なのかもしれない。だが、欧米とロシアの経済戦争がこの強度でさらに長期化するようなら、世界は経済制裁が誘発する不況に陥っていく危険がある。(モルダー)

中国とロシアは、アメリカの経済制裁の縛りから逃れようと、国際通貨としての米ドルの地位を脅かす代替的な金融制度や構造の構築を試みている。ロシアの主要エネルギー企業はすでに米ドルの使用を中止し、中ロ貿易の主要な決済通貨としてはすでにユーロがドルに取って代わっている。ロシアはドルを迂回する手段として、国が支援する暗号通貨を立ち上げる準備も進めている。バイデン政権は経済制裁をデザインする上で、制裁の予期せぬ結果を認識し、ロシアと中国による脱ドル化に向けた連携を抑え込む方法をみいださない限り、アメリカは世界の指導者としての責任を放棄することになりかねない。(リュー、パパ)

ウクライナの都市を砲撃するなど、軍事面でロシアが自制心を失っているのは事実だろう。一方、バイデン政権は、紛争に直接介入する意思はないと表明している。つまり、一方はエスカレートするのもやむを得ないと考え、他方はエスカレーションの回避を望んでいる。しかし、スパイラルとは、直接対決を望んでいない国同士でも、結局はライバル関係が激化し、戦争のリスクを冒すという悲劇性をもっている。しかも、ロシアの侵攻が続くなか、双方とも、さらに圧力を強めるつもりでいる。こうなると、一つの火種が大火へエスカレートしかねない。(アッシュフォード、シフリンソン)

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