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2018.1.19 Fri
民主体制を権威主義国家の攻撃からいかに守るか
―― モスクワの策略に立ち向かうには
ロシア政府は政治腐敗まみれの泥棒政治システムを守ろうと、その生存を外から脅かす最大の脅威と彼らがみなす「欧米の民主主義」に対する国境を越えた闘いを挑んでいる。欧米を攻撃することで国内の政治腐敗や経済的停滞に人々が目を向けないようにし、ナショナリズム感情を煽り立てて国内の反体制派を抑え込み、民主主義国家を守勢に立たせることで欧米諸国が国内の分断線対策に専念せざるを得ない状況を作り出そうとしている。だが、プーチンとその取り巻きたちは、アメリカの民主主義の最大の強さは市民の政治参加にあることを理解していない。米大統領が対策を拒んでも、われわれが行動を起こす。(バイデン、カーペンター )
軍備を増強し、軍事態勢を刷新したモスクワは「ロシアは再び重要な国となり、国際社会が無視できない存在になった」と、新たに自信をもち始めている。プーチンは「今後もロシア人と、外国で暮らすロシア系住民の権利を積極的に守り続ける」と主張し、「私が対象としているのは、自分を幅広いロシア・コミュニティーの一員と考えている人々だ」とさえ語ってい。プーチンは、近隣諸国を脅かし、北大西洋条約機構(NATO)を弱体化させようと、ロシア軍の近代化を大がかりに実施し、公然と軍事力を使って既成事実を作り上げつつある。しかも、この行動はヨーロッパとの境界線に留まるものではない。北は北極海から、南は地中海までの広い地域へロシアは軍事的影響力を拡大している。(ダールダー )
シリアに介入したことで、ロシアはポスト・アサドのシリアでも影響力を行使できるだけでなく、地域プレイヤーたちに「アメリカとは違って、ロシアは民衆蜂起から中東の指導者と政府を守り、反政府勢力が権力を奪取しようとしても、政府を見捨てることはない」というメッセージを送ったことになる。すでに2015年後半には、エジプト、イスラエル、ヨルダン、クウェート、サウジアラビア、アラブ首長国連邦の指導者たちが相次いでモスクワを訪問している。・・・すでにサウジは100億ドルを、主にロシアの農業プロジェクトのために投資することを約束し、・・・イラクはイスラム国との戦いにロシアの力を借りるかもしれないと示唆している。・・・(ステント)
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民主体制を権威主義国家の攻撃からいかに守るか
―― モスクワの策略に立ち向かうには2018年1月号 ジョセフ・R・バイデン 前米副大統領、マイケル・カーペンター 前米国防副次官補
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ロシアの軍事的復活と地政学的野望
―― 偶発戦争を回避するには2017年12月号 アイボ・H・ダールダー 元米NATO大使
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プーチンの中東地政学戦略
―― ロシアを新戦略へ駆り立てた反発と不満2016年1月号 アンジェラ・ステント ジョージタウン大学教授(政治学)
2018年1月号
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中国は北朝鮮を見限っている
―― 半島有事における米中協調をこの20年間で、中国と北朝鮮の関係は大きく悪化し、かつての朝鮮半島有事をめぐるシナリオはもはや時代遅れになっている。いまや北京と北朝鮮とのつながりは弱く、中国の介入目的が「自国の利益を確保すること」にあるとしても、米中は共有基盤を見いだせるかもしれない。前向きに考えれば、アメリカは中国の介入を利用して、第二次朝鮮戦争のコストと期間をむしろ低下させられるかもしれない。
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経済戦争時代と制裁
―― 抑止力としての経済制裁に目を向けよ一部の諸国は、大国間戦争を引き起こさないように配慮しつつも、リベラルな世界秩序への挑戦を試みるようになり、もはや経済領域での抗争は避けられなくなっている。ワシントンがより多くの制裁措置を発動する政治的動機も高まっている。ここにおける課題は、危機が起きる前に、ワシントンの官僚たちが制裁システムを設計したことはなく、同盟諸国と制裁について事前に交渉したこともないことだ。しかし、いまや国際的軋轢の多くが生じているのは「戦争と平和の間のグレイゾーン」であり、この領域におけるもっともパワフルな「抑止力としての制裁システム」を確立する必要がある。
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サウジのイラン戦略とレバノン
―― レバノンを代理戦争の舞台にしてはならない今後、サウジは、ヒズボラを弱体化させようと、レバノンの銀行にある預金を全額引き出し、サウジ領内で暮らすレバノン人を国外に追放してレバノン財政の安定を脅かすことで、ヒズボラに対する圧力を強化しようとするかもしれない。レバノンの政治・経済を壊滅的な状況に追い込むことは誰の利益にもならないにも関わらず、サウジはそうすることを決意しているようにみえる。レバノン全体を苦しめることなくヒズボラを弱体化させるには、別のより優れた方法がある。