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2017.2.02Thu
トランプの保護主義路線に中国が報復すれば
―― 勝者なき重商主義と貿易戦争
「中国を為替操作国のリストに入れ、世界貿易機関(WTO)に提訴し、中国製品の輸入関税を引き上げる」とトランプはこれまで何度も繰り返してきた。彼は中国からの輸入を抑えることで公正な競争基盤を取り戻せば、アメリカ国内の製造業は復活すると主張しているが、それは妄想にすぎない。アメリカの製造業雇用はかつてなく減少しているが、一方で工業生産量が歴史的な高水準に達していることの意味合いを考える必要がある。(カンパネッラ)
トランプがすでに表明している外交路線の見直しを受け入れない限り、ロシア、シリア、イランの独裁政権が強化され、(関税引上げで中国を激怒させ)貿易戦争が起きる(それによって中国とアメリカの同盟諸国の関係も不安定化する)。(アメリカの資金と戦力の貢献を削減することで)北大西洋条約機構(NATO)にダメージを与え、NATO条約第5条の集団防衛へのアメリカの関与は揺らぎ、(シリアがさらに混乱することで)難民流入の新たな波でヨーロッパはさらに大きな圧力にさらされる。(ステーシー)
トランプは、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)という複雑な多国間貿易協定を批判しつつも、「私なら必要になれば再交渉できるような、透明性があり、よりシンプルで合理化されたアメリカの労働者にダメージを与えない二国間合意をまとめる」と約束している。(多国間貿易合意であるTPPへの反対をもって)トランプのことを「自由貿易に反対する重商主義者だ」と考える評論家は、彼が現実には自由貿易政策を模索するかもしれないことを無視している。(オースリン)
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トランプの保護主義路線に中国が報復すれば
―― 勝者なき重商主義と貿易戦争2017年2月号 エドアルド・カンパネッラ ウニクレディト銀行ユーロ圏エコノミスト
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トランプ・ドクトリンの悪夢
―― 独裁国家は勢いづき、国際秩序は大混乱に陥る2017年1月号 ジェフリー・ステーシー 元米国務省官僚
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日米自由貿易協定の交渉を
―― 日米関係の戦略基盤を強化するには2017年2月号 マイケル・オースリン アメリカン・エンタープライズ研究所 日本研究担当ディレクター
2017年2月号
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世界の現実に気づきだした北朝鮮民衆
―― 流入するデジタル情報と平壌の闘い世界でも指折りの外交交渉者が数十年にわたって金日成、金正日、そして金正恩を取り込んで魅了するか、あるいは(平壌の立場の見直しを)強制しようと手を尽くしてきたが、その全てがうまくいかず、クーデターを促す秘密工作も失敗した。
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中国とアジアの新しい現実
―― アジアを求めるアジア世界でもっとも急速に成長している国々を取り込まなければ、国際システムは機能しない。中国やインドといった新興国をきちんと仲間に入れなければ、これらの国はよそに目を向けるだけだ。逆に言えば、今後ほとんどの国際機関で、新興国の発言力が強化されるにつれて、自由主義的な価値をもつヨーロッパ諸国の発言力は低下していく。
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原油供給とアメリカの軍事戦略
―― ペルシャ湾岸からの米軍撤退を湾岸石油の供給混乱を阻止するために必要なコストは、いまや軍事関与によって得られる恩恵を上回りつつある。冷戦期には国家安全保障と経済的繁栄の二つがペルシャ湾岸に関与する目的だったが、いまや重視されているのは経済的繁栄だけだ。