1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

― 分裂するヨーロッパに関する論文

右派の台頭とヨーロッパの未来
―― 仏独の政治的混乱と欧州連合

2024年7月号

マティアス・マタイス 米外交問題評議会 シニアフェロー(ヨーロッパ担当)

最近の欧州議会選挙ではリベラル派政党への支持が落ち込み、はっきりとした右傾化がみられたが、それでも、欧州連合の政策に右派が直接的な影響を与える政治連合を形成できるほどの勝利ではなかった。議会では依然として親ヨーロッパの中道勢力が多数派を占めている。むしろ、最大の衝撃はメンバー国の国内政治レベルに認められる。特に独仏で極右政党、中道右派政党が台頭したために、マクロンもショルツも国内政治に足をとられ、ヨーロッパでこれまでのようなリーダーシップを発揮できなくなるかもしれない。ヨーロッパは、今後の統合の方向性について不確実で不安定な時代を迎えるのかもしれない。

ヨーロッパの社会分裂
―― 都市と農村の格差と政治

2024年7月号

マリー・ハイランド 欧州生活労働条件改善財団 リサーチ・オフィサー
マッシミリアーノ・マスケリーニ 欧州生活労働条件改善財団 社会政策ユニット長
ミシェル・ラモン ハーバード大学教授

農村住民は、政策立案はトップダウンで「政府は自分たちのニーズを認識していない」と不満を強めている。この10年で農村と都市部の所得・雇用格差が拡大したこと、さらには、食料品や燃料など多くの必需品価格を上昇させている最近の生活コスト危機も農村部の不満を助長している。これがヨーロッパ各国の社会的結束を弱め、極右ポピュリズムが支持される肥沃な土壌を提供している。農村部住民の要求や必要性に配慮し、意思決定プロセスにこうした住民を参加させる必要がある。農村と都市の分裂を有意義な形で埋めれば、欧米の多くの社会が現在抱えている社会的緊張を和らげる助けになる。

ヨーロッパが備える脅威の本質
―― ドナルド・トランプと米欧関係の崩壊

2024年5月号

リアナ・フィックス 米外交問題評議会 欧州担当フェロー
マイケル・キマージ 米カトリック大学 歴史学教授

トランプは、北大西洋条約機構(NATO)からの離脱を決断し、ウクライナを見捨て、プーチンとのパートナーシップを模索するかもしれない。だが、彼は決意に乏しく、無謀なアイデアを実行に移すことはめったにない。むしろ、大混乱をもたらす危険があるのは、トランプのビジョンよりも、気まぐれな性格だろう。道徳観念がひどく乏しく、世間の注目を集め、金儲けをし、あるいは権力と地位を高めるためなら何でもする。トランプは瞬く間に大西洋関係を破壊してしまうかもしれない。実際、アメリカのヨーロッパとの歴史的なつながりを破壊することを「勝利」として売り込めるのなら、トランプはそうするだろう。戦争をあまりにもよく知る大陸が、恒久的な平和でも、鉄のカーテンでもなく、再びカオスに包まれる未来は、決して幻想ではない。・・・

ドイツ経済の試練
―― 改革を阻む構造的要因

2024年4月号

スダ・デービッド=ウィルプ 米ジャーマン・マーシャル・ファンド ドイツ地域ディレクター兼シニアフェロー
ヤコブ・キルケガード ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー

ドイツ経済の強さの歴史的源泉が、エネルギー集約的で化石燃料を使用する産業にあることを考えれば、経済構造の移行には官民双方での大規模な投資も、すぐれた労働力も必要になる。だが、現状では、投資を阻む「債務ブレーキ」の制約が行く手を阻み、移民を嫌う右派ポピュリズムが台頭している。経済が停滞しているにも関わらず、厳しい財政ルールと連立政権内の分裂が、ドイツが必要とする規模の改革を阻んでいる。それでも、軍需産業を強化するだけでなく、脱炭素化を加速するグリーン産業、世界経済の未来を形作る新技術に国の資源を投入しなければならない。そして、経済成長を支える移民政策を守る政治的意志を結集する必要がある。・・・

次期米大統領と欧州
―― なぜ欧州の自立が必要なのか

2024年3月号

アランチャ・ゴンサレス・ラヤ
カミーユ・グランド
カタジナ・ピサルスカ
ナタリー・トッチ
グントラム・ヴォルフ

ヨーロッパの指導者たちは、バイデンなら、大西洋の絆を守り、混乱する大陸と近隣諸国にヨーロッパがより大きな責任を果たすための時間と支援を与えてくれると考えている。だが今後、そうした配慮は彼からも得られないかもしれない。もちろん、トランプ大統領が誕生すれば、2期目には、ヨーロッパが直面する不安定な状況はさらに悪化するかもしれない。だが、安全保障と経済を守るために行動を起こし、具体的な措置を講じることは、ヨーロッパの手に委ねられている。誰がワシントンで政権を担おうと、一貫したパートナーとしてアメリカを頼ることはもはやできないかもしれない。ヨーロッパの指導者たちは自分たちが成長しなければならないこと、つまり、アメリカへの依存度を低下させるべきことを理解している。

欧州の戦争疲れ
―― ウクライナへの支持低下をいかに覆すか

2024年2月号

スージー・デニソン 欧州外交問題評議会 シニア・ポリシーフェロー
パヴェル・ゼルカ 欧州外交問題評議会 シニア・ポリシーフェロー

欧州市民の多く、特にウクライナから遠く離れた国の人々は、戦争を、もはや緊急事態とはみなしていない。ヨーロッパ人の多くは、ウクライナ戦争を遠くの地域の戦争、アルメニアやガザでの紛争と同じくらい遠く、抽象的なものとみなしている。欧州の全般的なウクライナ支持は、依然として揺らいでいないが、近いうちに状況は変わるかもしれない。そのような事態を避けるには、欧州の指導者たちは、どうすればウクライナは戦争に勝てるか、なぜウクライナの勝利が欧州の将来にとって不可欠なのかについて、説得力のある理論を有権者に示す必要がある。だが、そうできなければ、キーウは今後数週間、数カ月で重要な支持を失うことになるかもしれない。・・・

欧州における右派の台頭
―― 移民と法の秩序

2024年1月号

マティアス・マタイス 米外交問題評議会シニアフェロー

右派が台頭しているフランス、ドイツ、ポーランドに続いて、オランダでもゲルト・ウィルダースが率いる(右派ポピュリストの)自由党が、オランダ議会下院の最大勢力となった。ベルギーでも、民族主義政党「フランダースの利益」が2024年の国政選挙で最大政党に躍り出ようとしている。フィンランド、ハンガリー、イタリア、スロバキアではすでに極右勢力が政権を握っており、スウェーデンでも極右政党が少数派政権を支えている。ヨーロッパにおける中道左派が支持を失い、中道右派政党が極右政党のレトリックや、時には政策さえも模倣するようになってきたために、中道の左派政党が右派政党との共有基盤を見いだすのが難しくなっている。

BBCとイギリスのソフトパワー
―― 政府と国際放送の関係を考える

2023年10月号

サイモン・J・ポッター ブリストル大学教授(現代史)

1927年に開始されたBBC(英国放送協会)ワールド・サービス(国際放送)は、現在も、短波ラジオをデジタルメディアやソーシャルメディア・チャンネルと組み合わせて提供している。だが、BBCが国内で政治的に敵視されているために、イギリスのソフトパワーを長く形作ってきたワールド・サービスは財政危機に直面し、すでに、アジアの言語やアラビア語での放送を打ち切っている。解決策は、ワールド・サービスを国家が直接出資する別組織としてBBCから切り離すことかもしれないが、国営の国際放送など、世界のリスナーにとって魅力的なはずはない。BBCを敵視する国内保守派は、イギリスの重要なソフトパワーツールを危険にさらしていることになる。

イギリスは統一を維持できるのか
―― 構成地域ナショナリズムと連合王国

2023年5月号

フィンタン・オトゥール プリンストン大学教授

ウェールズ、スコットランド、北アイルランドだけではない。イングランドの有権者も、これまで、イギリスのアイデンティティに埋もれていたイングランド・ナショナリズムを主張するようになった。一方で、イングランドの政治家と有権者が推進したブレグジットは、北アイルランドとスコットランドでのイギリスに対する不満を増幅した。こうして、スコットランドでは、住民の過半数(52%)が独立を支持し、北アイルランドでも、イギリスを離脱してアイルランドに加わりたいという人が劇的に増えている。重層的な課題が表面化するなか、イギリスは国際秩序における位置づけだけでなく、今後も一体性をもつ国とみなされ続けるかどうかもはっきりしなくなっている。かつて世界を形作った国家は、もはや自国の形態さえ保つことができないのかもしれない。

ウクライナ難民を支えるヨーロッパ
―― 人道的支援と難民疲れの間

2023年4月号

ダイアナ・ロイ ライター@www.cfr.org

欧州連合(EU)は、ロシアによる侵攻直後の2022年3月上旬に、ウクライナ難民のためにEUの一時保護指令を発動した。これは、難民申請がなくても、ウクライナ難民に最長3年間、EU諸国で生活・労働する権利を認める措置で、現在、480万人以上のウクライナ人がEUの一時保護プログラムまたは同様のプログラムに登録している。これはウクライナ難民全体の60%に相当する。一方、米政府関係者によると、ロシア軍は2022年9月時点で最大160万人のウクライナ難民をロシア領に強制移住させている。強制移住は国際法では戦争犯罪だが、ロシアはその行為を人道的避難と位置づけている。専門家は、戦争が続き、ヨーロッパはエネルギー価格の高騰、住宅不足、雇用難、財政難に直面しているために、今後1年間で「難民疲れ」が進むのではないかと懸念している。すでに反移民感情の高まりもみられる。・・・

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