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国防と安全保障に関する論文

関税が揺るがした同盟関係
―― サプライチェーンの混乱と米防衛産業の衰退

2026年1月号

シャノン・K・オニール 米外交問題評議会 上席副会長(研究担当)

必要とされているのは、国内価格を押し上げ、外国のパートナーを遠ざける包括関税ではない。ワシントンが、同盟国に配慮し、戦略的産業に焦点を当てた限定的な関税へと移行すれば、重要なサプライチェーンを守り、国家安全保障にとって重要な製造業を促進できるようになる。だが、信頼できる国々への関税を縮小あるいは撤廃し、主要産業を再生させる包括戦略に立ち返らない限り、アメリカの防衛産業は衰退していくだろう。実際、自国の防衛産業の強化を望み、もはや、対米貿易を信用できなくなった同盟諸国は、アメリカ製の兵器購入を躊躇し始めている。

戦争とストーリーの力
―― ホメロスとヘロドトス

2025年12月号

エリザベス・D・サメット 米陸軍士官学校 教授(英文学)

ストーリーはいまや社会的、政治的、歴史的な真実を広める最大の手段となり、合理的な議論をしのぐようになった。文学理論家のピーター・ブルックスが指摘するように、最高のストーリーは、神話的な地位を獲得し、その時点で、「それがフィクションであることは忘れられ、それが本当に世界を説明しているとみなされる」。特に戦争のストーリーがもてはやされるのは、人間にとって、自らの内面に目を向けるよりも敵と対比して自らを定義するほうがずっと簡単だからだ。競合するストーリーが、人間や国家を戦争に導くこともある。ひとたび大きな紛争が起きると、参加者も傍観者も、暴力のうねりと自分の関係を理解しようと、ますます多くのストーリーを受け入れるようになる。

相互主義と同盟関係
―― 帝国から共和国へ

2025年12月号

オレン・キャス アメリカン・コンパス チーフ・エコノミスト

冷戦後には、世界各国がワシントンの気前のよさにつけ込む世界経済秩序が出現した。しかし、グローバル化と市場経済が政治経済の境界をなくすという賭けは失敗に終わり、いまは新たな賭けが必要とされている。持続可能な貿易・安全保障ブロックを構築する最善の方法は相互主義の大戦略だろう。これは、同等の条件で互いに関与することを約束する諸国との同盟で、同じ義務を果たそうとしない国は排除される。例えば、貿易不均衡の是正に取り組むことを拒否する国は、共通市場から追放し、高関税策の対象とされる。安全保障領域では、アメリカの同盟関係とパートナーシップをゆっくりと蝕んできた「ただ乗り」を制限する。覇権も世界秩序も必要ではなく、アメリカは世界から後退することもできる。

兵器化された相互依存
―― 経済強制時代をいかに生き抜くか

2025年12月号

ヘンリー・ファレル ジョンズ・ホプキンス大学 アゴラ研究所 教授
エイブラハム・ニューマン ジョージタウン大学外交学院 教授(政治学)

ワシントンは、相互依存状況を、どのように兵器として利用するのが最善かをこれまでも考えてきた。一方、多くの国は、法の支配と同盟国の利益を考慮するアメリカは、ある程度は私利私欲を抑えると考え、リスクがあるとしても、アメリカの技術と金融インフラに依存することを躊躇しなかった。だが、いまやアメリカは経済強制策を乱発し、中国などの他の大国も相互依存状況を兵器化するようになった。当然、敵対国も同盟国も相互依存を兵器化できる世界における新しい経済安全保障概念が必要とされている。いまや、経済的・技術的統合は、成長のポテンシャルから、脅威へと変化している。

民間インフラへのサイバー攻撃に備えよ
―― 中国の攻撃を阻む戦略とは

2025年10月号

アン・ニューバーガー フーバー研究所 特別客員研究員

中国のサイバー支配は、テレコミュニケーション部門の諜報活動にとどまらない。アメリカのエネルギー、水道、パイプライン、交通の制御システムから中国のマルウェアが発見されている。目的は、米市民の日常生活や米軍の作戦行動を妨害するための破壊工作にあるようだ。動員を遅らせたり、航空管制システムを妨害したりできる。実際、台湾危機のタイミングで、中国が、アメリカの鉄道網を寸断したり、東海岸全域で停電を引き起こしたりすれば、どうなるだろうか。中国が優位にあるサイバー空間で、防衛を強化していくカギは、現実世界をサイバー空間に忠実に再現できるデジタルツインを応用することかもしれない。

自律型戦争の夜明け
―― ドローンを制御するAI

2025年10月号

エリック・シュミット 元グーグルCEO兼会長
グレッグ・グラント 新アメリカ安全保障センター 非常勤シニアフェロー

ロシアもウクライナも、ハードウエア、ソフトウエアそして戦術をよどみなく改良し続けているために、この戦争は息を呑むようなスピードで進化している。膨大な数の監視用ドローンを飛ばすことで、ほぼすべての部隊の動きが可視化され、前線付近で動くものは、それがなんであれ、数分以内に攻撃される。ドローンが敵のドローンと戦うケースも増えている。自律型ドローンスウォーム(大編隊)の攻撃を調整できるAIの開発がいまや焦点とされている。戦争の第1段階はハードウエアの有無が戦況を左右し、双方が新しいタイプのドローン、ペイロード、弾薬に投資したが、次の段階はソフトウエアが焦点になるだろう。

大陸国家と海洋国家
―― アメリカの混乱と世界秩序

2025年10月号

S・C・M・ペイン 米海軍大学校 名誉教授(歴史、大戦略)

中国やロシアのような大陸覇権国は、国際システムを巨大な勢力圏に分割すべきだと考える。一方、海洋で守られ、侵略される危険が小さい海洋国家は、争うのではなく、富を蓄積することに専念する。領土ではなく富にパワーは根ざすとみているからだ。だが、現在のアメリカは、まるで大陸国家のように振る舞っている。あまりにも多くのアメリカ人が、海洋国家秩序の恩恵を当然視し、その欠点ばかりを指摘し、その過程で、地理的・歴史的な優位を無駄に浪費している。貿易障壁を築き、近隣諸国を脅し、国際機関を弱体化させるといった大陸国家のパラダイムに回帰すれば、アメリカは再起不能に陥るかもしれない。

北極圏のグレートゲーム
―― 米中ロの大国間競争

2025年9月号

ヘザー・A・コンリー 元米国務次官補(ヨーロッパ担当)

トランプは大統領就任後、北極圏における領土獲得の可能性に照準を合わせ、カナダを「51番目の州」と呼び、デンマーク領のグリーンランドについては「いずれにせよ」アメリカが「獲得する」と宣言した。今後の展開がどうなろうと、北極圏の重要鉱物、海上航路、漁業、天然資源、海底採掘、衛星通信をめぐる大国間の争いが発生するのは避けられない。ロシアと中国に比べて、アメリカは大きく出遅れている。北極圏戦略の欠陥と矛盾を早急に解決する必要がある。

高齢化が支える世界の平和
―― 少子高齢化で戦争は減少する

2025年9月号

マーク・L・ハース デュケイン大学 教授(政治学)

人口動態は、国にとって経済的・軍事的に可能なことを大きく左右する。この意味で、高齢化は、平和へのかつてない原動力になる可能性がある。高齢化は戦争をする能力も、戦争への社会的許容度も低い社会を誕生させると考えられるからだ。実際、高齢社会への対応を含む、社会保障への政府支出が国の予算に占める割合が25%を超えると、その国が軍事的紛争を起こす可能性は大きく低下する。高齢化した国の多くは、この閾値を超えようとしているか、すでに超えている。21世紀は「人口減少の時代」になると広く予測されているが、「より平和な時代」になるかもしれない。

驚異的なドローン革命
―― ウクライナからいかに学ぶか

2025年9月号

ジョン・ファイナー 元米大統領副補佐官(国家安全保障担当)
デイヴィッド・シャイマー 元米国家安全保障会議(NSC)部長

ウクライナ軍の前線部隊は、ドローンの戦場におけるパフォーマンスを軍需企業に伝え、企業側はこれを基にシステムを常に改善し続けている。アメリカを含む世界のほとんどの国々は、兵器のフィードバックと改善という領域でウクライナに大きな後れをとっている。すでにウクライナとロシアは、ドローンなどの防衛技術にAIを徐々に組み込むことで、イノベーションをさらに進化させている。もしアメリカがウクライナ支援から手を引けば、実績のある防衛技術や戦場における知見、ロシアの軍事パフォーマンスに関するデータへのアクセスを失う危険がある。

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