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政治・文化・社会に関する論文

知識革命の南北間格差を是正せよ

2001年4月号

アヴィナシュ・パサード ステート・ストリート銀行調査部長

グローバリゼーションはゼロサム・ゲームではなく、万人がそこから利益を引き出すことができる。問題は貧困諸国が、グローバリゼーションという機会の拡大をうまく利用するのに必要な知識や技術をもっておらず、制度が整っていないために、投資も呼び込めず、それを活かせずにいることだ。必要なのは、途上諸国側が投資を呼び込めるような制度を確立し、教育を充実させ、一方で先進諸国がこれまでのダブルスタンダードを改めることだ。先進国は自分達が圧倒的優位にある部門については自由貿易を主張し、一方で、貧しい国からの農産物輸入の関税引き下げをためらってきた。富裕国が今後知的所有権を盾に、このような態度をくずさなければ、発展途上国はグローバル経済に関わっていく気力をなくしてしまい、世界の平和と繁栄も脅かされかねない。

ネットワーク経済における新貿易政策
──知的所有権、電子商取引、電子通信産業の将来

2001年4月号

シャリーン・バーシェフスキ 前アメリカ通商代表部代表

関税、輸入割当などの貿易障壁の引き下げがアジェンダとされた時代は遠のき、いまや、貿易政策の目的は、自由競争に基づく、開放的で規制の行きとどいたインフォメーション・エコノミーを保障することにある。電子商取引はまだ新しい形態で、これを規定している自由貿易合意は、世界を見渡してもアメリカ・ヨルダン自由貿易協定だけだし、一九九八年のサイバースペースの免税合意を別にすれば、WTOもこの領域においてほとんど無力である。今後、WTOの基本理念である非差別主義、内国民待遇、最恵国待遇を、貿易に加えて電子商取引にも適用してゆくべきである。一連のハイテク関連合意やアメリカの「ネットワーク化世界」構想は、今後の方向性をすでに描き出しており、この道筋をたどっていけば、非常に洗練度の高い、自由競争に基づく革新的なインフォメーシ
ョン・エコノミーへとたどり着けるだろう。

経済改革を阻むアジアの社会環境

2001年4月号

ヒルトン・L・ルート ミルケン・インスティチュート グローバル経済担当ディレクター

アジア企業が欧米流の改革を断行していないとすれば、それは欧米の改革を理解していないからではなく、単に彼らが置かれている状況下で改革を行うことが意味をなさないからだ。欧米の批評家たちは、アジアの企業が、この地域の社会、制度面での特異性に合理的に対応してきたことを見落としている。こうしたやり方が過去における成長を呼び込み、今でも、短期的な成長の基盤を提供している可能性がある。 だが、資金を調達できない状況が続けば、アジア企業も資本市場にアクセスするために自己変革を余儀なくされる。グローバル経済にむけた自己変革に成功した企業が収益と生産性の伸びを示すことこそ、改革の妥当性を示す根拠となり、改革を促進する刺激となるだろう。

グローバル議会の設立を提唱する

2001年3月号

リチャード・フォーク プリンストン大学教授 アンドリュー・ストラウス ワイドナー大学教授

人々のグローバリズムに対する不満が高まっているのは、世界の指導者たちが民主的統治へのコミットメントを示しつつも、民衆生活に影響を与えるようなグローバルレベルでの決定に対して市民が発言権を持っていないからである。グローバルな民主的フォーラム(グローバル議会)が誕生して初めて、環境・労働基準について討議したり、南北両方の観点から経済的公正さについて考えたりできるようになる。社会正義や人道的な世界秩序の形成に関心のある人々にとって、グローバル議会を中核とする民主的なグローバル統治が持つ魅力はこれまでになく高まっている。

米中衝突を避けるには

2001年2月号 

デービッド・シャンボー

アメリカの将来にとって中国ほど重要な国はない。それだけに、中国との対立をもくろむ勢力がアメリカの政策立案過程を牛耳ることになれば、世界は大きく不安定化するだろう。朝鮮半島の情勢変化は、中国が受け入れるような形で、東アジア諸国とのアメリカの安全保障同盟を再定義・強化し、アメリカ軍の前方展開を維持できるような地域安全保障枠組みを構築する必要を高めている。新大統領は、対中政策を政治的論争から外すことの重要性を訴え、北京と台北に関するアメリカの死活的な利益が何であるかを明確にし、こうした複雑な関係を取り扱うための明確なビジョンを表明すべきである。

ジョナサン・シェル論文によせて
核兵器は平和のための道具である

2001年1月号

アーネスト・W・レフィーバー

核兵器はグローバルな舞台のドラマにおけるアクターではなく、間違いを犯す人間が、うまく利用することも、あるいは間違った使い方をすることもできる道具にすぎない。潜在的な危険を秘めているとはいえ、これまでのところ核兵器は平和を維持する手段として機能してきている。

冷戦期の核ドクトリンは、今となっては意図とは反対の結末しかもたらさない。すでに相互確証破壊に基づく抑止の時代は過ぎ去っており、むしろアメリカは「相互確証安全」という新概念を生みだす機会を手にしている。

「核廃絶か 止めどない核拡散か」(「フォーリン・アフェアーズ」、二〇〇〇年九/十月号、「論座」二〇〇〇年十月号)のなかで、ジョナサン・シェルは、いつもどおり歴史の流れを踏まえた知的な見解を示し、核保有国がともに核廃絶のための計画を立ち上げて、それを実行に移さない限り、国際社会の流れが核拡散へと向かいかねないと警鐘を鳴らした。ワシントンによる(核不拡散と抑止を抱き合わせた)戦略は、世界の核トレンドを拡散容認という方向へと向かわせかねない、と。さらに、シェルは、大統領が(核廃絶、あるいは核の削減についての)現状の政策の改革案を示さないかぎり、

核政策をめぐる世論を巻き込んだ広範な議論が実現したとしても、そうした機会が無為に費やされかねないと指摘した。ホワイトハウスが現行の戦略を見直し、官僚機構内の抵抗を克服するには、まず核の専門家たちが政府に、詳細を押さえた賢明な政策構想を示すべきだろう。

コンドリーザ・ライス、ブッシュを語る

2000年12月号

コンドリーザ・ライス  ジョージ・ブッシュ外交アドバイザー

ブッシュ政権が誕生した場合、国家安全保障問題大統領補佐官への就任がひろく取りざたされるコンドリーザ・ライスが語る、次期政権のNMD(米本土ミサイル防衛)、貿易政策、国連、人道介入へのアプローチ。新政権が、「対中強硬策」をとり、「平和維持活動を紛争近隣諸国に委ねる」とすれば、北東アジアでの紛争に日本はどのような対応を余儀なくされるのか。ブッシュの人柄と政策、そしてリーダーシップを浮き彫りにする外交問題評議会でのディベート。

グローバル時代の外交政策

2000年11月号

サミュエル・R・バーガー  米国家安全保障問題担当大統領補佐官

アメリカの圧倒的なパワー自体には何も問題はないが、相手に何かを強制する「パワー」と、他を導く能力である「権威」とのバランスをうまくとらなければ、世界の反発を買う危険がある。われわれが友人の怒りを買うような方法でパワーを行使し、自らのコミットメントを尊重せず、他を支えることに積極的でなければ、「権威」は失墜し、そのような環境ではパワーもそれほど大きな力とはなり得ない。パワーを強化しつつその権威を高めるような形で、よりよい世界に向けてリーダーシップを発揮することこそ新大統領の課題である。

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