1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

政治・文化・社会に関する論文

世界を分裂させたブッシュのアメリカ

2003年9月号

マドレーン・K・オルブライト 元国務長官

ブッシュ大統領が示した「われわれとともにあるか、テロリストの側にあるか」という二者択一の選択肢は、世界を引き裂いて新たな合従連衡の流れをつくり出し、その結果、イスラム勢力が戦略的優位を確保し、本当の悪であるテロを見えなくし、それを「アメリカの悪魔」に置き換えることを許してしまった。
しかも、質的に異なるテロとならず者国家の脅威をひとまとめにして、イラクとの戦争を正統化しようとした。こうして世界との協調がアメリカの安全をこれまで以上に左右するようになったまさにそのときに、ワシントンは世界を怖がらせ、分裂させてしまったのだ。

米外交問題評議会インタビュー
アメリカに単独行動主義という選択肢はない

2003年8月号

リチャード・ハース 米外交問題評議会会長

レスリー・ゲルブの後任として、七月から米外交問題評議会の会長に就任したリチャード・ハースは、「現在の世界の特徴とは、いかに圧倒的なパワーを持っているにせよ、アメリカ単独では、われわれが直面している課題の多くを解決できない点にある」と指摘し、単独行動主義はワシントンの選択肢にはなり得ないと述べた。六月まで米国務省政策企画部長を務めたハースは、むしろ、今後をめぐる重要なテーマは「単独行動主義か、多国間協調主義かではなく、どのような多国間主義をめざすか」でなければならない、と強調した。
邦訳文は、二〇〇三年七月七日に行われたインタビューからの抜粋・要約。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

米外交問題評議会インタビュー
世界はアメリカをどう見ているのか

2003年7月号

アンドリュー・コート ギャラップ社元代表、ピュー世論調査センターディレクター

イラク戦争によって世界の人々の対米アメリカイメージはますます悪化したと、アンドリュー・コートは語る。ピュー世論調査センターのディレクターであるコートは、多くのイスラム教国家でワシントンに対する反感が広がっており、アメリカを自国に対する脅威とみなす国まで存在する、と指摘した。同センターが行った最新の世論調査によれば、「八カ国のイスラム教国家のうち七カ国において、市民の大多数がアメリカは自国にとって軍事的脅威かもしれないと考えている」ことが示されている。「二〇〇二年の段階でもアメリカはイスラム教徒に嫌われていた。二〇〇三年になると、アメリカは嫌われるだけでなく、恐れられるようになった」と彼は述べている。
イラク戦争によってヨーロッパにおいても反米、反ブッシュ感情が高まっている。ブッシュ大統領は「ヨーロッパのことを理解していないし、気にかけもしない典型的なアメリカ人」とヨーロッパ人の目には映っているようだとコートは分析した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・ディレクター)二〇〇三年六月十八日(邦訳文は、インタビューからの抜粋・要約)。

シーア派とイラクの未来

2003年7月号

イツハク・ナカシュ ブランダイス大学 歴史学助教授

ブッシュ政権が考える新生イラクのビジョンとシーア派が思い描く戦後イラクのビジョンの間には大きな開きがある。ワシントンは親米政権が率いる欧米型の民主的イラクを思い描いているが、シーア派、そして他のイラク人の多くは、自分たちの文化と伝統を反映する独立したイラク、ペルシャ湾における米軍の拠点として利用されないイラクの実現を望んでいる。

アメリカ帝国の虚構
―ソフトパワーを損なう単独行動主義の弊害

2003年7月号

ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授

二十一世紀の最大の問題は、世界でもっともパワフルな国家でも管理できない状況がますます広がりをみせていることだ。
新国家安全保障戦略を成功させられるかどうか、そして、他の諸国がアメリカの優位を背景とする戦略を穏やかな戦略とみなすかどうかは、ワシントンが他国の意見に耳を傾け、グローバル社会の利益も促進できるようにアメリカの国益をより広義に定義できるかどうかに左右される。新戦略をうまく実施していくには、新単独行動主義が必要だと考える以上に、ソフトパワーと多国間協調に気を配る必要がある。

パレスチナの信託統治を検討せよ
―「ロードマップ」以降の解決策は何か

2003年5月号

マーチン・インディク 元駐イスラエル米大使

自爆テロと軍事的報復作戦の悪循環によって、イスラエルとパレスチナは奈落の底へと突き落とされつつある。新たに表明された「ロードマップ」和平案も、いずれ失敗するのは目に見えている。
和平を阻む最大のジレンマは「パレスチナ側に責任ある交渉パートナーを誕生させ、パレスチナ治安部隊がうまく任務を果たせるようにしない限り、イスラエル側の責任ある対応も引き出せない」という点にある。必要なのは、ロードマップではなく、このジレンマを唯一うまく断ち切れる「信託統治」のための見取り図だ。イラク戦争によってワシントンが得た新たな影響力を中東和平の実現に向けて生かすためにも、ロードマップ崩壊後の信託統治案をいまから準備しておく必要がある。

外交における道徳的要因の増大
―道徳主義が主権を侵食する?

2003年6月号

レスリー・H・ゲルブ 米外交問題評議会会長
ジャスティン・A・ローゼンタール 同評議会役員室室長

道徳、価値、倫理、普遍的原則といった、かつては理想主義者や学者だけが唱えた一連の壮大な理念が、いまや外交の中枢に位置づけられつつある。特定国の政府や集団が、国内の民衆を殺戮しているような場合には、「道徳的価値が主権の制約を取り払い」、人道的介入が正統化される、とみなされだしている。
道徳的理念が国益を前にするとあっさりと無視された時代は過ぎ去り、理念と国益が競合するような時代へとわれわれは足を踏み入れている。

米外交問題評議会インタビュー
イラク再建に国連の政治的役割を

2003年5月号

エリック・シュワルツ 米外交問題評議会シニア・フェロー

以下はエリック・シュワルツ米外交問題評議会シニア・フェローへの戦後イラクに関するインタビューからの抜粋。シュワルツは現在、同評議会の戦後イラクに関するタスクフォースのディレクターを務めている。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

民主的なイラクをどう構築するか

2003年5月号

アディード・デウィシャ マイアミ大学政治学教授
カレン・デウィシャ マイアミ大学政治学教授

イラク民主化の試みが成功するか、失敗するかは、新制度をイラク固有の社会構成や特徴をうまく踏まえたものにできるかどうかに左右される。課題は、イラクの社会的・文化的なモザイクをうまく生かせるような政治体制を考案し、そうした多様性をいかに前向きの変化に向けた動力にできるかだ。連邦国家、政治制度、議会をどう設計し、民主的価値が受け入れられるような社会的基盤をどう育んでいくのか。

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