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政治・文化・社会に関する論文

CFRインタビュー
ロシアの権力移行で何がどう変わるのか
 ――水面下で進む派閥間権力抗争

2008年2月号

スティーブン・セスタノビッチ 米外交問題評議会ロシア・ユーラシア担当シニア・フェロー

メドベージェフが大統領に、プーチンが首相になったときの権力バランスの再編に備えて、すでにクレムリンでは水面下で派閥抗争が始まっている。「だが、プーチンが自分の路線に合意していると確信するまでは、メドベージェフは大胆な行動はとれないはずだ」。
 ロシアの現状と今後をこう分析するロシア問題の専門家、スティーブン・セスタノビッチは、メドベージェフは「よりリベラルで民主的なロシア」の統治を思い描いていると指摘する。事実、メドベージェフは「国営企業の役員に政府の役人が名を連ねる理由はない」と表明し、プーチンの側近たちが、こうした企業に巣食っていることを痛烈に批判をしている。ただし、メドベージェフが政策路線を変化させていくとすれば、「プーチン同様に、就任から1年か2年過ぎてからだろう」と同氏は語った。
 聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRメディアブリーフィング
文民指導者の誕生と
パキスタンの将来

2008年2月号

スピーカー ダニエル・マーキー 米外交問題評議会南アジア担当シニア・フェロー
司会 ポール・スタレス 米外交問題評議会予防外交センター・ディレクター

 「旧野党が連帯を組んだとしても、各政党間の反目は根強く、これが消えてなくなることはない。政府ポストの任命の段階になれば、激しく対立するようになる。地方政府レベルでも政治抗争が展開されていくことになるだろう」
 「政府と軍の関係もパキスタン政治の亀裂を深くしていくことになる。文民指導者が台頭していけば、パキスタンで大きな影響力を持つ軍との関係も微妙になってくる。軍に対して現実的なアプローチをとるべきか、それとも反軍部の路線をとるかが問われることになるからだ」
 「(パキスタンでの文民政府の誕生は、政治腐敗がますます増えることを意味すると考えられている)……歴史的に、文民政府が本来の道を踏み外すと、人々は軍が介入することをむしろ歓迎してきた。この悪循環を断つ必要がある」(D・マーキー)

逆転したトルコの政治構図
 ――民主化を促進するイスラム政党と反欧米へと向かう軍部

2007年12月号

オメル・タスピナル ブルッキングズ研究所フェロー

イスラム系政党である公正発展党(AKP)の政治的台頭を前に、トルコのイスラム化への懸念をトルコの世俗派も欧米世界の一部もぬぐい去ることはできずにいる。だが、そうした懸念の多くは誤解に根ざしている。いまやAKPと軍の役割が入れ替わっている。実際には、AKPとその支持者が親欧米路線とグローバル化を支持するようになり、軍部とケマリストの指導者はより内向きとなり、欧州連合(EU)とアメリカへの反発を強めている。現在のトルコが直面している切実な国内問題とは、イスラム化ではなく、ヨーロッパとアメリカに対するナショナリズムからの反発が大きくなりつつあることだ。……トルコ国内の民主改革と欧米志向の外交政策を促進していくには、トルコの政治的現実からみて、AKP以外に支持すべき政治勢力は見あたらない。

CFRインタビュー
コソボの独立宣言は紛争を誘発しかねない

2007年12月号

リチャード・C・ホルブルック 元米国連大使

コソボ自治政府は2008年早々にもセルビアからの独立を宣言し、これによって一気に情勢が流動化するとみる専門家は多い。ボスニア紛争を終結させたデイトン合意をとりまとめた人物として知られるリチャード・ホルブルックは、コソボが独立を宣言しても、「コソボ内のセルビア人地区は、独立したコソボの一部にはならないと宣言するだろうし、その結果、もう一つの分離独立メカニズムが生まれることになる」と警告する。さらに、これまで抑圧されてきたアルバニア人がコソボ内のセルビア人に報復策をとれば、セルビアがコソボに軍隊を派遣する危険もある。「1992年にボスニアが独立を宣言した際も、ボスニア内のセルビア人地域は独立を受け入れることを拒絶し、これによって、非常に凄惨なボスニア紛争が起き、多くの命が奪われた。これと同じことが、今回、コソボの独立をめぐって繰り返される危険がある」と指摘するホルブルックは、こうした事態を回避するには、現在コソボに展開している国際治安部隊(KFOR)を増強して、駐留を継続させる必要があると強調した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

パキスタン軍部とその情報機関である軍統合情報部(ISI)は、クーデター、武装勢力への支援、近隣国の内政への介入などを通じて、建国以来、一貫してこの国の政策決定の中枢を担ってきた。だが、これまでイスラム武装勢力を外交ツールとして利用してきた軍とISIも、こうした武装勢力を抑え込まない限り、地域的な混乱と不安定化をめぐって国際的にますます批判されかねない状況へと追い込まれている。こうしたなか、軍の支配構図も少しずつ変化しだしているし、ムシャラフの軍参謀長辞任によって、さらに流れが変わる可能性もある。また、チョードリ判事解任の顛末からも明らかなように、裁判所も政治からの独立性をいまや主張するようになった。だが、最大の変化はメディアが力をつけてきていることだ。「すでにニュース情報が、この国の民主化運動のバックボーンを提供している」とみる専門家もいる。また、2003年以降、パキスタン経済は年平均で6・5%の成長を遂げており、こうした経済の拡大もパキスタンにおける政治制度の移行を促すことになるかもしれない。とはいえ、軍の影響力は依然として大きいし、政党も分裂している。来年早々に予定されている議会選挙でこれらの社会変数の何がどう変わるか、パキスタンの政治体制の移行が実現するかどうかが大いに注目されている。

CFRインタビュー
ムシャラフは選挙実施に向けた
ロードマップを早急に示すべきだ

2007年11月号

ダニエル・マーキー 米外交問題評議会シニア・フェロー (インド、パキスタン、南アジア担当)

ムシャラフ大統領が「不本意ながら」、今回の非常事態宣言の発令という措置をとったのは真実かもしれない。実際、文民大統領となり、軍の職を辞任し、軍参謀長に信頼できる人物を据えた上で、ベナジル・ブットのパキスタン人民党(PPP)も含めた諸政党が参加する国政選挙を行うことを視野に入れた長期的な計画をムシャラフは用意していた。「だが、これを困難にするような事態が重なって起きた」とダニエル・マーキーは指摘する。「連邦直轄部族地域(FATA)とその境界地域で紛争が起きるとともに、全国レベルで暴力事件が多発するようになった」ことに加えて、パキスタン最高裁判所がムシャラフ大統領の再選の正統性を否定する判断を下すという見通しも、今回の非常事態宣言の発令を誘発した原因となったと同氏は言う。だが、混乱のなかにあるとはいえ、選挙までのロードマップを示せば、パキスタンの政治勢力も希望を見いだすようになり、「イスラム過激派と手を組んで反政府行動に出るより、議会選挙に参加するほうを選ぶようになる」とみる同氏は、選挙の実施こそ、イスラム過激派と反政府政治勢力を分断し、パキスタンが混沌へと陥っていくのを回避する唯一の方法だと強調した。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
アフガニスタンは混乱の極みにある

2007年10月号

ジョン・キリアコウ 元米中央情報局テロ対策担当官

首都カブールでは社会が崩壊しつつある。伝統的にカブールでは紛争の解決や交渉をめぐって部族が大きな役割を果たしてきたが、いまや犯罪が蔓延し、誘拐、銃撃戦、武装集団による窃盗、強盗が横行し、路上での暴力が日常化している。米中央情報局(CIA)でテロ対策を担当し、1998年から2004年までパキスタンで活動したジョン・キリアコウによれば、「タリバーンとアルカイダがアフガニスタン南部のヘルマンド州とカンダハル州で台頭しているだけでなく、カンダハル出身の東部のパシュトゥン人たちは政府を全く信頼しておらず、武器をとり、すでにタリバーンとして活動している。アフガニスタン内にタリバーンとアルカイダが聖域を確保し、米軍の戦力がイラクに奪われ、北大西洋条約機構(NATO)部隊が、再建活動にあたる国際機関や非政府組織(NGO)スタッフの安全確保だけで身動きができずにいることが、治安を乱し、タリバーンの台頭を招いていると指摘した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

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