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政治・文化・社会に関する論文

メドベージェフ露大統領が語る
全ヨーロッパ安全保障フォーラムとは
――オルブライト vs. メドベージェフ

2008年12月号

スピーカー
ドミトリー・メドベージェフ  ロシア連邦大統領
司会
マドレーン・オルブライト  元米国務長官

「ヨーロッパ的な機構・制度に参加していないわれわれにとって、ロシアの声をヨーロッパに聞いてもらうことは大きな利益になる。実際、われわれはNATOにもEUにも参加していない。われわれは、すべての問題を話し合えるようなプラットフォームを持ちたいと考えている。……われわれはヨーロッパ諸国が一つにまとまるだけでなく、ヨーロッパを形づくっているNATO、EU、CIS、CSTOというすべての組織がまとまって、さまざまな問題の解決に向けた試みに参加できればと考えている。そうした汎ヨーロッパ的なフォーラムを形成できれば、前向きの役割を果たせるはずだ。……こうしたフォーラムをつくれば、ロシアだけでなく、(NATOやEUなどの)組織に参加しておらず、忌憚なき意見を表明する機会を持たない諸国にその機会を提供できる。このフォーラムがあれば、……8月に起きたグルジアの南オセチア侵略のような危機を今後回避できるようになると思う」

ロシアはなぜ新路線へと転じたか
――もはや合理的取引では問題は解決しない

2008年12月号

スティーブン・セスタノビッチ 米外交問題評議会ロシア担当シニア・フェロー

2008年8月にロシアの戦車がグルジアに攻め入るはるか前から、ワシントンとモスクワを互いに遠ざける対立案件の数はますます増えていたし、より重要なのは、これらの対立を両国の価値観の違いだけではすでに説明できなくなっていたことだ。米ロ関係が悪化しているのは、「そうした対立をロシアの指導者がどう理解し、とらえるか」の認識が変化したことに大いに関係がある。「ロシアとアメリカ(そして欧米世界)との関係は本質的に不平等で相容れない部分があり、独自の道を歩んだほうがロシアの利益をよりうまく確保できる」とモスクワはいまや考えている。
グルジア戦争の余波のなか、もっと厄介な現実が形づくられていくかもしれない。それは、ロシアのパワーがますます強大化し、この国の野望を支えていくことだ。そうしたロシアの影響力の復活が好ましくないのは、工業センターとしてのウクライナ、エネルギーセンターとしてのカザフスタンを含む旧ソビエト地域をロシアが支配するようになれば、世界の主要国のすべてが、国家安全保障概念の見直しを迫られることになるからだ。

世界大国への道を歩み始めたブラジル

2008年12月号

フアン・デ・オニス ジャーナリスト

かつては「コーヒー大国」としてしか認知されていなかったブラジルも、いまや石油資源の開発ブームに沸き返り、農業生産性を飛躍的に向上させ、バイオ燃料生産でも世界の先端をいく国に成長した。インフレも低く抑え込まれ、市場経済型の施策に徹し、資本市場を整備したことで、世界から巨額の資金が流入している。国内の貧困と社会格差の問題にも対応策がとられ、いまやブラジルの人々は、「経済の地平線が国境を越えて広がった」という感覚を広く共有している。事実、ブラジルの国内総生産(GDP)の規模は1兆5800億ドルと世界10位にまで拡大した。過去の過ちを繰り返さないためには、未解決の問題への新たな処方箋をみつけていかなければならない。安定と成長を今後も維持していくことが前提になるが、今後、腐敗・汚職の横行、税制改革および労働市場改革の停滞、低い貯蓄率、効率に欠ける公教育制度、高度なスキルを持つ労働者不足という一連の問題をうまく克服していけば、長い間さほど重要な国とみられていなかったブラジルも、ついに「グローバル・プレイヤー」としての地位を手に入れることができるだろう。

有志同盟、民主国家連盟、 それとも国連常設戦力か
――世界は人道的危機にどう対処する

2008年10月号

モートン・I・アブラモウィッツ センチュリー財団シニア・フェロー
トーマス・R・ピカリング ヒルズ&カンパニー副理事長

現状のシステムでは、世界の人道上の悲劇にうまく対処できない。国際社会は、人道的悲劇に迅速に対応し、紛争が制御不能になっていくのを回避するための「限られた戦力」を国連の常設戦力として整備するべきだろう。……当初は小規模な緊急展開部隊として、被災地に対する後方支援、医療支援、設備復旧、治安活動を担うだけかもしれない。だが、こうした復興支援型チームであれば、政治的に受け入れやすいし、これまでの経験を生かすこともできる。これを成功させれば、人道的危機を緩和するために他の領域へと活動を広げていくこともできる。もちろん、その道は容易ではない。この論文の提言によって、「切実に必要とされつつも、これまでないがしろにされてきた(国連常設戦力についての)議論が刺激されることを大いに期待したい」。

次期大統領が直面する遠大な課題

2008年9月号

リチャード・ホルブルック  元米国連大使

「マケインは自分のことを『リアリスト』、また最近では『理想主義的なリアリスト』と呼ぶことを好むが、彼の各問題に対する立場をみると、マケインといわゆるネオコンの立場が似ていることを無視することはできない。(一方)オバマの政策の特徴は、あらゆる課題を前向きに進化させていくとしている点にある。彼は、変化し続ける新しい現実に適応できるように、古い、硬直化した政策を調整していくとし、アメリカのパワーと影響力を強化する手段としては外交が最善であると強調している。……二人の立場の違いに目を向ければ、オバマとマケインが、……『世界におけるアメリカの役割』についての二つのビジョン、そして外交に対する異なる二つの態度を示していることがわかるはずだ」

なぜアメリカのキリスト教徒は ユダヤ国家を支持するのか
――旧約聖書がつなぐアメリカとイスラエル

2008年9月号

ウォルター・ラッセル・ミード 米外交問題評議会シニア・フェロー(米外交政策担当)

アメリカのユダヤ系コミュニティーがまだ大きくも強くもなく、イスラエルロビーなど存在もしなかった19世紀末に、アメリカにおけるキリスト教系の各界指導者たちは、すでに、「聖書の地」にユダヤ人国家を建設する外交努力を支持する態度を明確にしていた。……孤立し疎外された民であり国であるユダヤ人とイスラエルを支援することが、しばしばアメリカの評判を落とし、別の問題をつくることになっても、アメリカ人は気にしない。アメリカがイスラエルの保護者、ユダヤ人の友人という役割を引き受けたのは、神が特有の運命を与えられた国という自らの地位を正当化するためでもあった。……アメリカの親イスラエル路線は、小規模なロビイストが世論の意図に反して勝ち取ったものではない。むしろこれは、専門家の懸念にもかかわらず、外交政策を形成する世論のパワーを物語っている

「私はアメリカの相対的地位が低下する一方で、ヨーロッパやアジアが台頭するといったとらえ方はしていない。アメリカの相対的な立場が低下し、他の多くの諸国が混乱のなかで競い合うようになる。これが現実に起きていることだ」。むしろ、国がパワーを独占した時代は終わっていることを認識する必要があるとR・ハース米外交問題評議会(CFR)会長は強調している。「ドルの流れという点ではシティ・グループやメリルリンチなどがより大きな役割を果たしていくようになるし、政府系ファンド領域ではアブダビ投資庁(ADIA)、グローバルな公衆衛生領域ではゲイツ財団などのプレーヤーが台頭している。中東の武装集団も、パキスタン西部に隠れているテロ集団も無視できない存在になる」。もはや、脅威やアジェンダがかつてのようにはっきりとしたものでない以上、国だけでは問題に対処できないし、京都合意のような包括的な国際合意の形成も、もはや期待できないとハースはみる。必要なのは、かつてのような同盟関係ではなく、是々非々の多国間主義であり、これまでの多国間主義とは異なる協調のスタイルを考えていく必要があると指摘した。邦訳文は5月にワシントンで開かれたCFRミーティングの質疑応答からの抜粋。

アジアの世紀の到来と 欧米秩序の運命
――秩序の進化を阻む欧米のダブルスタンダード

2008年6月号

キショール・マブバニ  国立シンガポール大学公共政策大学院長

自分たちが主導する時代が終わりつつあること、そして、アジアの時代が到来しつつあることを欧米の指導者はなかなか受け入れられずにいる。国連安保理、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、主要8カ国(G8)などの主要なグローバルフォーラムにおける特権的な立場にしがみつき、いかに自分たちがアジアの世紀に対応していくべきなのかを考えようとはしない。アジアの目標はアメリカとヨーロッパが成し遂げた成果に続くことだ。欧米の成功を自分たちが再現したいと望みこそすれ、アジアは欧米を支配したいとは望んでいない。アジア諸国が地域レベル、グローバルレベルの課題への対応能力を強めつつあることを欧米世界は歓迎し、受け入れるべきだろう。

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