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政治・文化・社会に関する論文

資本主義の危機と社会保障
―― どこに均衡を見いだすか

2013年4月号

ジェリー・Z・ミューラー 米カトリック大学歴史学教授

資本主義は人々に恩恵をもたらすだけでなく、不安も生み出すために、これまでも資本主義の進展は常に人々の抵抗を伴ってきた。実際、資本主義社会の政治と制度の歴史は、この不安を和らげるクッションを作り出す歴史だった。資本主義と民主主義が調和して共存できるようになったのは、20世紀半ばに近代的な福祉国家が誕生してからだ。認識すべきは、現状における格差は、機会の不平等よりも、むしろ、機会を生かす能力、人的資本の違いに派生していることだ。この能力の格差は、生まれもつ人的ポテンシャルの違い、そして人的ポテンシャルを育む家族やコミュニティの違いに根ざしている。このために、格差と不安は今後もなくならないだろう。この帰結から市民を守る方法を見出す一方で、これまで大きな経済的、文化的な恩恵をもたらしてきた資本主義のダイナミズムを維持する方法を見つけなければならない。そうしない限り、格差の増大と経済不安が社会秩序を蝕み、資本主義システム全般に対するポピュリストの反動を生み出すことになりかねない。

社会保障改革を考える
―― アメリカの制度を他の先進国と比較すると

2015年3月号

キンバリー・J・モーガン ジョージ・ワシントン大学准教授

アメリカの社会保障制度は、政府がすべての市民を対象とするのではなく、企業が従業員に提供する社会サービスに大きく依存している。このために、一部の所得レベルの高い人々は全般的に手厚い社会保障の対象とされるが、所得レベルが低いか、失業している人々はそうではない。他の豊かな民主主義国と比べて、アメリカの社会保障政策による貧困と格差緩和への貢献度が低いのは、このためだ。他の多くの先進国では、官民の社会保障プログラム、減税策を組み合わせて、社会保障がより平等かつ効率的に提供されている。アメリカとの最大の違いは、他の先進国のシステムは平等と効率を目的にし、広く市民が社会保障にアクセスできるように設計されていることだ。当然、アメリカの社会保障制度の改革に向けて、こうした他の先進国のモデルを真剣に検証する必要がある。

先進民主国家体制の危機
―― 改革と投資を阻む硬直化した政治

2013年2月号

ファリード・ザカリア  国際政治分析者

先進民主世界を悲観主義が覆い尽くしている。ヨーロッパでは、ユーロ圏だけでなく、欧州連合(EU)そのものが解体するのではないかという声も聞かれる。日本の経済も停滞したままだ。だが、もっとも危機的な状況にあるのはアメリカだろう。停滞する先進国が本当に必要としているのは、競争力を高めるための構造改革、そして、将来の成長のための投資に他ならない。問題は政治領域にある。政治が、効率的な改革と投資を阻んでいる。その結果、われわれが直面しているのが民主主義体制の危機だ。予算圧力、政治的膠着、そして人口動態が作り出す圧力という、気の萎えるほどに大きな課題が指し示す未来は低成長と停滞に他ならない。相対的な豊かさは維持できるかもしれないが、先進国はゆっくりとそして着実に世界の周辺へと追いやられていくだろう。今回ばかりは、民主主義の危機を唱える悲観論者が未来を言い当てることになるのかもしれない。

追い込まれた中国共産党
―― 民主改革か革命か

2013年1月号

ヤシェン・フアン マサチューセッツ工科大学教授

これまでのところ、中国が民主体制へと近づいていくのを阻んできたのは、それを求める声(需要)が存在しなかったからではなく、政府がそれに応じなかった(供給しなかった)からだ。今後10年間で、この需給ギャップが埋められていく可能性は十分ある。一人あたりGDPが4000―6000ドルのレベルに達すると、多くの社会は必然的に民主化へと向かうとされるが、すでに中国はこのレベルを超えている。さらに、今後、中国経済がスローダウンしていくのは避けられず、社会紛争がますます多発するようになると考えられる。さらに、中国の政治・経済的未来へのコンフィデンスが低下していくのも避けられなくなり、資本逃避が加速することになる。この流れを食い止めなければ、相当規模の金融危機に行き着く危険もある。政治改革に今着手するか、壊滅的な危機に直面した後にそうするかが、今後、中国政治の非常に重要なポイントになるだろう。

論争 日本は衰退しているのか
―― 日本衰退論の不毛

2012年12月

ジェラルド・L・カーチス
コロンビア大学教授

この20年にわたって日本が「停滞」に甘んじてきた時期にも、生活レベルは改善し、失業率は低く抑えられてきた。・・・日本の産業と政府が大胆な政策の見直しを必要としているのは明らかだが、そうした政策の見直しを必要としていない国などどこにもない。・・・日本の内向き志向、特に若者の内向き志向が高まっているという見方もあるが、私のように長く日本に関わってきた者にとって、これほど困惑を禁じ得ない見方もない。むしろ問題は、多くの高齢者層が依然として内向きであるために、若者たちがリスクをとり、何か新しいことを試みるというインセンティブを失っていることだろう。・・・「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という概念は消失している。とはいえ、あなたは、世界第2の経済大国中国と世界第3の経済国家日本のどちらで暮らしたいと考えるだろうか。生活レベル、大気、飲料水、食事の質、医療ケアその他の社会サービスのレベル、そして平均余命など、さまざまな指標からみて、答えははっきりしている。台頭する中国よりも、「衰退途上の」日本で暮らすほうが、はるかにいい。・・・

独立を求めるスコットランドの真意は

2012年11月号

チャールズ・キング ジョージタウン大学教授

スコットランドは1997年の住民投票で独自の行政府を持つことを選択し、2014年末には分離独立を問う住民投票が実施される。スコットランド議会の多数派であるスコットランド民族党(SNP)は、イギリスからの分離独立を明確に政治目標に掲げている。現代のスコットランドのナショナリストたちは、「スコットランド人の政治的・社会的価値観はイングランド、ウェールズ、北アイルランドのそれとは異なる」という理由で独立を模索している。世論調査によれば、実際に住民投票が行われても分離・独立派が勝利する可能性は低い。より「高度な地方分権」を認められるのなら、それで人々は満足なのかもしれない。しかし、地方の特質、統合された統治、そして民主的プラクティスは共存できるし、相互に補強しあうという理念を具現する存在だったスコットランドが、今後、力強い地域主義を分離独立主義に変貌させるモデルになっていくとすれば、非常に残念な事態だ。

統合の危機とヨーロッパの衰退

2012年10月号

ティモシー・ガートン・アッシュ
オックスフォード大学歴史学教授

戦後のドイツにとって、ヨーロッパ諸国の信頼を取り戻すことが、ドイツ統一という長期的目的を実現する唯一の道筋だった。財政同盟という支えを持たない通貨同盟が構造的な問題と崩壊の火種をはらんでいることを理解した上で、西ドイツはドイツ統一のためにあえてユーロを受け入れた。そしていまやヨーロッパはユーロ危機に覆い尽くされ、漂流している。かつてこの大陸を統合へと向かわせた戦争の記憶もソビエトの脅威も希薄化するか、消失している。瓦礫のなかから統合を目指し繁栄を手にした戦後世代とは違って、現代の若者たちは繁栄から失業へ、希望から恐れへと、まったく逆の変化を経験している。統合の維持に向けた新しい源流、エリートと市民たちを統合の維持へと駆り立てる新たな流れが生じない限り、ヨーロッパは、かつての神聖ローマ帝国同様に、ゆっくりとその効率と価値を失い、衰退していくことになるだろう。

マフィア国家の台頭
―― 融合する政府と犯罪組織

2012年7月号

モイセス・ナイーム
カーネギー国際平和財団
シニアアソシエート

もっとも多くの利益をもたらす違法行為に手を染めているのは、犯罪のプロだけではない。いまや政府高官、政治家、情報機関や警察のトップ、軍人、そして極端なケースでは国家元首やその家族たちも違法活動に関わっている。世界各地で、犯罪者がこれまでにないレベルで政府に食い込み始める一方で、パワフルな犯罪組織を取り締まるどころか、政府が犯罪組織に代わって違法活動を行っている国もある。こうして犯罪組織と政府が融合した「マフィア国家」が誕生している。実際、ブルガリア、ギニアビサウ、モンテネグロ、ミャンマー(ビルマ)、ウクライナ、ベネズエラなどでは、国益と犯罪組織の利益が結びついてしまっている。犯罪組織が最初に狙うのは、腐敗した政治システムだ。中国とロシアは言うまでもなく、アフリカや東ヨーロッパ、そしてラテンアメリカ諸国の犯罪者たちは、従来の犯罪組織では考えられなかったような政治的影響力を手にしている。もちろん、政府そのものが犯罪行為を行う北朝鮮のような国もある。

教育と国家を考える

2012年5月号

◎スピーカー
ジョエル・I・クライン ニューズコーポレーション教育部門最高経営責任者
コンドリーザ・ライス 前米国務長官および国家安全保障問題担当大統領補佐官
◎プレサイダー
テリー・モーラン ABCニュースナイトライン アンカー

政治から離れ、宗教へ回帰する米宗教界
―― 宗教右派台頭の一方で進む宗教離れ

2012年4月号

デヴィッド・E・キャンベル ノートルダム大学准教授
ロバート・D・パットナム ハーバード大学教授

この20年にわたって「教会のミサに参加するかどうか」が、共和党と民主党の有権者を分ける大きな指標とされてきた。現状では、宗教がアメリカ政治、特に右派勢力の立場に与える影響が非常に大きくなっているが、この現実に対する反発も大きくなっている。保守的価値、宗教的価値が否定された1960年代の反動として、その後、福音派を含む、伝統的な宗教が復活したが、いまや、この20年間で組織化され、政治的な影響力を増した宗教組織に対する反発が若者を中心に大きな広がりをみせている。特にアメリカの若者たちは、「宗教心をもつことがたんに保守政治を支持することを意味するのなら、宗教にはかかわらない」と考えている。宗教右派の台頭と宗教の政治化を前に、多くの人が宗教そのものに背を向け始めている。共和党指導者にとって頭が痛いのは、支持層の一部が強く支持する政治と宗教の融合というテーマに対して、一般有権者がますます嫌悪感を示し始めていることだ。

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