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政治・文化・社会に関する論文

トルコ政府の「国境を越えた抑圧」
―― グローバルパージが法の支配を脅かす

2018年3月号

ネイト・シェンカン フリーダムハウス プロジェクトディレクター

エルドアン大統領は、国内の抑圧体制を強化するだけでなく、外国のトルコ系コミュニティも弾圧の対象にしている。その主要なターゲットはギュレン派だ。2013年にかつての盟友、フェトフッラー・ギュレンと決裂して以降、エルドアンは彼を目の敵にし、国の内外でギュレン派を抑圧する「グローバルパージ」を展開している。すでにアンカラは、外国にいたトルコ人数百名の逮捕と身柄引き渡しを実現し、ギュレン派が運営する各国の学校も閉鎖するように相手国政府に圧力をかけている。この動きを通じて、トルコは、国内での権利や自由の抑圧を国境の外でも強要するシステムへと国際秩序を変貌させつつある。「グローバルパージ」が脅かしているのは、外国のトルコ系コミュニティだけではない。世界の法の秩序に対する脅威を作り出している。

同盟諸国のリスクヘッジ策
―― トランプリスクと同盟諸国の対応

2018年3月号

スチュワート・パトリック 米外交問題評議会シニアフェロー

ナショナリスト的外交政策を展開しようと、トランプ政権が、戦後アメリカが構築してきたシステムに背を向けたために、リベラルな国際秩序はきしみ音をたてている。予想された通り、新政権の路線を前に同盟国やパートナー国はリスクヘッジ策をとっている。現状がアメリカ外交の一時的な逸脱であることを願いつつも、同盟諸国はすでに事態の変化に対応できる計画をまとめつつあるし、アジア諸国のなかには、中国にすり寄ってバランスをとろうとする国もある。経済、軍事領域で各国は自立性を高め、貿易政策や温暖化対策をめぐっても、アメリカ抜きで対策を進めつつある。トランプの大統領就任からたった1年でアメリカのリーダーシップへの国際社会の信頼は劇的に低下している。

ポストアメリカの世界経済
―― リーダーなき秩序の混乱は何を引き起こすか

2018年3月号

アダム・ポーゼン ピーターソン国際経済研究所 所長

ドナルド・トランプは、アメリカが築き上げたグローバルな経済秩序に背を向け、経済と国家安全保障の垣根を取り払い、国際的ルールの順守と履行ではなく、二国間で相手を締め付ける路線への明確なコミットメントを示している。世界貿易機関(WTO)の権威を貶め、いまや、主要同盟諸国でさえ、アメリカ抜きの自由貿易合意や投資協定を模索している。すでに各国は貿易やサプライチェーンの流れ、ビジネス関係を変化させつつある。経済政策の政治化が進み、経済領域の対立が軍事対立にエスカレートする危険も高まっている。アメリカが経済秩序から今後も遠ざかったままであれば、世界経済の成長は鈍化し、その先行きは不透明化する。その結果生じる混乱によって、世界の人々の経済的繁栄は、これまでと比べ、政治略奪や紛争に翻弄されることになるだろう。

ロシア封じ込め政策を提言する
―― もはや攻撃を看過すべきではない

2018年3月号

ロバート・D・ブラックウィル(米外交問題評議会シニアフェロー)
フィリップ・H・ゴードン(米外交問題評議会シニアフェロー)

ロシアが地域的にも世界的にもより大きな役割を果たすには、アメリカのパワーを弱めなければならないとプーチンは判断しているようだ。アメリカ社会を分断させ、すでに存在する亀裂をさらに大きくしようと試み、国家としての一体感と統合そのものを攻撃のターゲットにしている。すでに米政府の最新の国家安全保障戦略も、ロシアは「情報ツールを使って民主主義国家の正統性を傷つけようとしており、アメリカのパワー、影響力、そして国益に挑戦している」と結論づけている。問題は、ロシアの攻撃に対するアメリカのこれまでの対応がひどく不適切なことだ。ワシントンは、モスクワに真のダメージを強いる措置を講じる一方で、未来の攻撃に備えて防衛を強化し、モスクワの路線にもっとも脅かされるヨーロッパ同盟国への軍事的コミットメントを強化しなければならない。

トランプを待ち受ける嵐
―― ドナルド・トランプの本当のコスト

2018年3月号

エリオット・コーエン ジョンズ・ホプキンス大学教授

トランプは就任1年目に偉大なことを成し遂げたと考え、「評論家たちは悪意に満ちているし、間違っていたことが立証された」と感じているようだ。実際には、アメリカの政府機関の志気を大きく低下させ、(就任後に)彼がもっと成熟した政治家になることを期待していた内外のすべての人々を失望させた。任命した高官の多くを疲弊させ、しかも、バックアップ体制を準備していない。最悪なのは「自分は何をしているかを分かっている」と誤認していることだ。外交が嵐に遭遇しなかったのも、本人の成長ではなく、側近たちの抵抗によるものだ。「自分が天才だからだ」と理由づける多くのことは、単に幸運に恵まれた結果にすぎない。早晩、彼の運も使い果たされる。その時がやってくれば、トランプ大統領が強いた本当のコストがはっきりしてくる。

女性を経済活動に参加させよ
―― 女性が経済成長を支える

2018年2月号

レイチェル・ボーゲルシュタイン 米外交問題評議会シニアフェロー

女性の権利向上を目指す活動家たちは、長年にわたって、男女平等を道徳的な問題として訴えてきた。しかし現在のグローバル経済において、女性の経済参加を妨げる障壁を取り除くことは、経済戦略からみても合理性がある。実際、女性の労働力への参加と経済成長の間に相関関係があると指摘する研究の数は増えている。2013年に経済協力開発機構(OECD)は、少なくとも先進諸国で労働力人口上の男女間バランスが形成されれば、国内総生産(GDP)は12%上昇するとの予測を示した。しかし、世界銀行によると、世界155カ国で女性の経済活動は依然として何らかの形で制限されている。例えば、財産権の制限、就業への同意を配偶者から得る義務、契約や融資契約の締結禁止などだ。この現状を変えていくことが、社会と経済を変える大きなきっかけとなる。

ポーランドにおける急進右派勢力の台頭
―― 主流派イデオロギーとなった排外主義思想

2018年2月号

ボルハ・チャーニッシュ プリンストン大学フェロー

ポーランドではカトリックのキリスト教根本主義と結びつく形で急進右派が台頭し、排外主義感情が高まり、超国家主義やファシズムへの流れが生じている。「経済的な不満と難民の流入」というヨーロッパにおける急進右派の復活を促している全般的要素が作用しているのは事実としても、それだけではこの現象を説明できない。実際には、ポーランドの排外主義とキリスト教根本主義には、奥深い歴史的ルーツがある。「カトリック教徒のみが良きポーランド人だ」というこの国の排外主義的思想は戦間期に遡ることができる。宗教保守主義とポーランドのナショナリズムが融合し、これを、極右の政治運動が利用している。しかも、こうした右派的信条をいまや政権党となった「法と正義」が取り込んでいる。・・・

ロシアが歴史に向き合わぬ理由
―― 国内的抑圧と対外的膨張主義を正当化するために

2018年2月号

ニキータ・ペトロフ 「メモリアル」研究教育センター副理事長

最近のロシアでは、スターリン時代の怪物たちが歴史的復権を果たしつつあり、プーチン大統領はスターリン時代のイデオロギーを都合よく利用している。実際、ロシア政府にとって、歴史は客観的に扱われるべきものではなく、国家イデオロギーを推進するためのツールなのだ。政府は常に正しく、たとえ過去の政策が多大な犠牲を民衆に強いたとしても、それは、政府が選んだ特別な道を歩み続けるためには必要だったとされる。現在のロシア政府は、強権政府のカルトを民衆の意識に植え付け、ロシア民衆と国の歴史的例外性、世界のロシア系住民を統合していくことの特別な価値を訴えるプロパガンダを唱えている。そうすることで、ロシアの対外的膨張主義と国内での抑圧を正当化しようとしている。

欧州ポピュリストが演出する「文明の衝突」
―― 文明論を語り始めたポピュリストたち

2018年2月号

ロジャーズ・ブルベーカー カリフォルニア大学ロサンゼルス校 社会学教授

現在のヨーロッパのポピュリストを移民排斥論者、ナショナリスト、極右と言うこれまでの言葉で語るのは適切ではない。彼らはナショナリズムではなく、ヨーロッパを包み込む文明を「キリスト教」という言葉で表現し、それをイスラム文明と対比させている。彼らがキリスト教を引き合いに出すのは、(他者と区別するための文明的)帰属を示すためだ。そこでは、ユダヤ人もヨーロッパの一部を構成する仲間とみなされている。右派ポピュリストが女性の権利やゲイの権利を擁護しているのも、イスラム文明との違いを際立たせるためだ。こうしたヨーロッパの文明論的ポピュリズムが問題なのは、そもそもイスラム世界の一部に存在する過激な反西洋姿勢を、イスラム教徒にとってより信頼できる魅力的な思想にしてしまう恐れがあることだ。・・・

イラン民衆の本当の不満
―― 保守派を見限り、改革を求める若者たち

2018年2月号

アレックス・バタンカ 米中東研究所シニアフェロー

なぜ2017年末に、イラン民衆は街頭デモに繰り出し、不満の声を上げたのか。経済的苦境をその理由に挙げるメディアは多い。しかし、改革路線を示唆してきたロウハニが逆に保守・強硬派にすり寄る事態を前に、民衆が失望し、怒りを募らせていることを忘れてはならない。最高指導者の地位を得たいロウハニの個人的思惑もあるのかもしれない。しかし、民衆がデモに繰り出したのは、選挙で選ばれた大統領と議会の立場を、ハメネイや革命防衛隊など選挙を経ない保守強硬派が無視するか、覆している現状に、もはや我慢できなくなったからだと考えることもできる。「ハメネイに死を」、「聖職者たちを政治から追い出せ」というデモ隊のスローガンは、いまやイランの民衆が、1979年のイラン革命以降、もっとも過激な変革を求めていることを意味する。

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