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政治・文化・社会に関する論文

シリア内戦と外部パワー
―― アフリンの攻防と勝者なき紛争の行方

2018年4月号

アーロン・ステイン  アトランティックカウンシル レジデント・シニアフェロー

ロシア、イラン、トルコ、アメリカというシリア内戦に介入している外部パワーは、アサド政権同様に、紛争終結を望みつつも、譲歩を拒んでいる。シリアの反政府勢力への影響力をもつトルコは反クルドの立場からアフリンに介入し、クルド人を紛争期のパートナーとしてきたアメリカは軍事的成功を政治目標に結びつけようと、米軍をシリア北東部に当面駐留させるつもりだ。ロシアは内戦を終結へ向かわせるという大きな目的から、紛争終結のカギを握る(反政府勢力への影響力をもつ)トルコの協力を失うような危険は犯したくないと考えている。一方、アサド政権とイランは、トルコの介入は反政府勢力を勢いづけると反発している。この流れを変えない限り、シリア内戦は今後も続き、さらに多くの人の命が奪われることになる。

イスラエルとヒズボラの次なる衝突
―― これまでの紛争と何が違うのか

2018年4月号

マーラ・カーリン ジョンズ・ホプキンス大学准教授

偶発的エスカレーションリスクや双方の長期的な戦略目標を考えると、イスラエルとヒズボラ間でいずれ戦争が起きるのは避けられないだろう。いまや問われているのは紛争が差し迫っているかどうかではなく、いつどのようにしてそれが起き、どこで紛争が戦われるかだ。現実に紛争になれば、忌まわしい戦闘が展開され、好むと好まざるとにかかわらず、外部アクターを巻き込んでいくことになる。しかも、これまでとは違って、戦域はレバノン南部だけでなく、ベイルートとシリアへ拡大していくだろう。レバントの安全保障はさらに揺るがされ、レバノンとシリアは今以上に、外国のアジェンダが入り乱れる場所と化し、民衆たちはより多くを失うことになるだろう。

イランを内包する新中東秩序の構築を
―― 中東の安定を取り戻すには

2018年4月号

バリ・ナスル ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際関係大学院院長

中東を規定してきたこれまでのアラブ秩序は、この7年間の社会的混乱と内戦によってすでに引き裂かれている。ワシントンでは「イランの影響力を押し返せば中東に秩序を取り戻せる」と考えられているが、これは間違っている。むしろ、今後の持続可能な中東秩序にとって、イランが必要不可欠の存在であることを認識しなければならない。イランの対外行動が、イスラム革命の輸出ではなく、国益についての冷徹な計算によって導かれていることも理解すべきだ。現在の中東政策を続けても、イランの影響力を低下させることはなく、むしろ中東におけるロシアの影響力を拡大させるだけだ。紛争に終止符を打ち、平和と安定の枠組みを作るための地域合意を仲介するための国際外交に向けたリーダーシップを発揮しなければならない。この任務をロシアに任せるべきではない。

何が内戦を長期化させているのか
―― テロと外部パワーの介入で変化した内戦の本質

2018年4月号

リセ・M・ハワード ジョージタウン大学准教授
アレクサンドラ・スターク ジョージタウン大学博士候補生

冷戦終結から9・11までは、大半の内戦が交渉によって終結したが、その後、再び国際環境が変化し、内戦の規範も変化した。テロリストとの交渉は選択肢とされず、テロ組織の粉砕が目標とされ、欧米諸国も民主化よりも安定を重視するようになった。紛争当事国政府は、全面的勝利を目指す戦略を正当化し、外部パワーからの支援を確保するために、反政府勢力にテロリストの烙印を押し、しかも外部パワーがそれぞれ対立する勢力を支援するようになった。これが、内戦が長期化している大きな要因だ。現在の内戦は、外部パワーが「こう終わるべきだ」と考える形で終結する。シリア紛争は「内戦がこれまでよりも長期化し、交渉による解決よりも(特定の紛争勢力の)一方的な勝利で終わる可能性が高い」という現在の内戦トレンドを示す具体例に他ならない。

同盟関係と国際機関の価値に目を向けよ
―― 大国間競争で勝利を収めるには

2018年4月号

ベン・ステイル 米外交問題評議会シニアフェロー(国際経済担当)

冷戦初期同様に現在のアメリカは大国間競争の時代に足を踏み入れている。しかし、アメリカファーストを掲げるトランプ政権は、冷戦における勝利を西側にもたらした同盟関係や国際機関を基盤とする秩序に背を向けてしまっている。戦後戦略の中枢は「ヨーロッパとアジアで、権威主義の誘惑と脅威に対抗する力をもつ強固な民主的な同盟関係を築くことだった」。当時のアメリカは、そうすることで、軍事力に過度に依存せずに、自国の経済・安全保障利益を守れるようになると考えた。トランプ政権が大国間競争の時代の幕開けを宣言したタイミングで、アメリカが冷戦という大国間競争に勝利を収めるのを助けたツールを大統領が放棄し、その価値を否定しようとしているのは大きな皮肉としか言いようがない。

何が米戦略の立案を阻んでいるのか
―― ホワイトハウスとペンタゴンの対立

2018年4月号

ジュリアン・スミス 前米副大統領副補佐官 (国家安全保障問題担当)
ローレン・デヨング・シュルマン 前米国家安全保障会議ディレクター (国防政策担当)

北朝鮮軍事戦略の策定を阻んでいるのはホワイトハウスや米国家安全保障会議(NSC)とペンタゴンの確執なのか。おそらくそうではない。ホワイトハウスが戦略をもっていないこと、数日毎に新たな戦略の条件を示し続けていることが問題だ。さらに、機能する省庁間調整プロセス、政府の方針を維持する閣僚、高官ポストが空席でない国務省、駐韓アメリカ大使、さらにはアメリカの政策や大統領のツイートを解読するのに次第に苛立ちを感じているかにみえる同盟諸国との開放的なコミュニケーションチャンネルも必要とされている。国務省、ソウル、あるいは平壌、どこにいようと、ホワイトハウスが本当に望んでいるものが何なのかを理解できない状態にある。

CFR Blog
ティラーソンからポンペオへ
―― 米国務省を救うには

2018年4月号

スチュワート・パトリック 米外交問題評議会シニアフェロー

ティラーソンは、スティーブ・バノン(首席戦略官)やスティーブン・ミラー(政策担当上級顧問)のような、トランプ大統領を取り巻く保守・ナショナリスト系のイデオローグたちによる攻撃から国務省を守ることができなかった。こうした自称「反グローバリスト」たちは、国務省のことを、勤勉なアメリカの愛国者ではなく、アメリカの主権を価値のない合意と引き換えに売り渡す国際主義者たちが埋め尽くす、敵に乗っ取られた組織とみなした。・・・後任のポンペオは、その忠誠ゆえにトランプに好ましく思われているが、大統領が外交的カオスを作り出そうとしたり、無謀にもアメリカを脅かす脅威を無視しようとしたりしたときに、大統領の前に立ちはだかれるだろうか。ポンペオのCIAでの記録をみれば、楽観は許されない。・・・

対中幻想に決別した新アプローチを
―― 中国の変化に期待するのは止めよ

2018年4月号

カート・キャンベル 前米国務次官補(東アジア・太平洋担当)
イーライ・ラトナー 前米副大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)

中国を孤立させ、弱体化させようと試みるべきではないし、よりよい方向へと変化させようとすべきでもない。これをアジア戦略の道標とすべきだ。外交や通商面でのエンゲージメントも、軍事力もアジアリバランシング戦略も効果はなかった。リベラルな国際秩序も、期待されたように中国を惹きつけることも、つなぎ止めることもできなかった。中国はむしろ独自の道を歩むことで、アメリカの多方面での期待が間違っていることを示した。さまざまな働きかけで中国が好ましい方向へ進化していくという期待に基づく政策をとるのはもう止めるべきだ。中国を変化させるアメリカの力をもっと謙虚に見据える必要がある。

イスラム教徒と欧州左派政党の未来

2018年3月号

ラファエラ・ダンシガー プリンストン大学准教授(政治学)

「どうすれば労働者階級の支持をつなぎ止めつつ、難民・移民問題に対処し、移民有権者にアプローチできるか」。ヨーロッパの難民・移民危機は欧州政治を右傾化させただけでなく、左派政党の政治戦略上の課題も露わにした。労働者階級の多くは、イスラム教徒が多数派の国からの難民や移民を拒絶している。しかし、その濃密な社会ネットワークゆえに、イマームなどのリーダーとの関係を築き、立場の違いに目をつむれば、イスラム系コミュニティの選挙での支持を期待できる。問題は、こうしたイスラム系移民の政治的取り込み策を続ければ、左派の支持基盤である進歩主義的なコスモポリタンたちを遠ざける一方で、(排外主義の立場をとる)右派ポピュリズムをさらに煽りたててしまうことだ。

中国とロシアは、権威主義国家の閉鎖性と民主国家の開放性という非対称性につけ込んで、「世界における自国のイメージを形作り、自国に対する民主国家の行動を枠にはめるための」キャンペーンに巨額の資金を注ぎ込み、その余波は世界に及んでいる。しかし、民主社会が権威主義国家のシャープパワーに対抗していく上で留意すべきことがある。それは、権威主義と同じやり方で相手のシャープパワーに対抗措置をとってはならないということだ。そのような過剰反応を示せば、自らのソフトパワーを傷つけることになる。アメリカ社会へのアクセスを閉ざしたり、その開放性を無くしたりすれば、ソフトパワーという大切な資産を損なうことになる。

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