
国際社会の支援をバックに治安能力の整備を進めていたファタハに危機感を募らせたハマスは、「ファタハが力をつける前に相手を粉砕しておく必要があると考え、その結果、ガザでハマスとファタハ間の内戦が起きてしまった。ハマスは、ファタハを攻撃するとともに、ガザ地区からのロケット弾によるイスラエル攻撃を激化させ、一方ではガザの民衆にイスラエルという敵対勢力に対して団結することを呼びかけている」。現在のイスラエルとガザの間で起きていることをこう分析する中東問題の専門家、マーチン・インディクは、ハマスによるイスラエル攻撃は、「本当の問題に目がいかないようにするためのハマスの陽動作戦だった」と指摘する。だが、こうした危機のさなかに、中東和平の機運が高まっている。「イラクの混迷が続いているためにイランが強大化することへの懸念が高まり、その結果、中東和平への機運が高まっている部分がある」。サウジアラビア、エジプト、ヨルダン、その他のスンニ派国家は、イランの強大化に対抗するためにも、イスラエルとの関係を修復していくのは、自分たちの利益になると考えだしたからだ。インディクは、中東和平に向けたすぐれた戦略環境が存在すると指摘しつつも、「パレスチナ側に、信頼でき、力を持つパートナーが誕生しない限り、こうした戦略的好機を生かすこともできない」と語った。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。