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― 北東アジア安全保障に関する論文

北朝鮮崩壊後の危機に備えよ
―― 飢饉と難民流出を回避するには

2018年3月号

ジョーンバム・バエ ホバート&ウィリアム・スミスカレッジ 客員アシスタント・プロフェッサー
アンドリュー・ナチオス テキサスA&M大学 教授

北朝鮮の体制崩壊は、北朝鮮民衆が25年にわたって耐えてきた慢性的な食糧不足を一気に悪化させ、感染病や公衆衛生上の問題をさらに深刻にするはずだ。これによって、大規模な北朝鮮難民が中国に押し寄せる危険が生じる。このシナリオを回避するには、米韓は北朝鮮に食糧を供給し、北朝鮮民衆が中国との国境地帯に向かうのではなく、国内に留まるように仕向ける必要がある。そのためには食糧や医療物資を迅速に届け、感染症による犠牲を引きおこす汚染水対策をとる必要がある。治安を安定させ、人道支援団体の安全を確保し、食糧・医療物資を人々に届けるには、北朝鮮内に11万5000人から40万人の部隊を展開させる必要がある。問題は、38度線以北での米・韓国軍の活動が必要になるこのミッションを、中国が受け入れるかどうかだ。

中国が支配するアジアを受け入れるのか
―― 中国の覇権と日本の安全保障政策

2018年3月号

ジェニファー・リンド ダートマス大学准教授(政治学)

現在のトレンドが続けば、そう遠くない将来に、中国はアメリカに代わって、東アジアの経済・軍事・政治を支配する覇権国になるだろう。そして、地域覇権国は近隣諸国の内政にかなり干渉することを歴史は教えている。中国に対抗できるポテンシャルをもつ唯一の国・日本は、特に重要な選択に直面している。日本人は軍備増強には懐疑的で、むしろ、経済の停滞と高齢社会のコストを懸念しており、引き続き、銃よりもパンを優先する決断を下すかもしれない。だが実際にそうした選択をする前に、中国が支配するアジアにおける自分たちの生活がどのようなものになるかについて日本人はよく考えるべきだろう。北京は尖閣諸島の支配権を握り、日米関係を弱体化させ、中国の利益を促進するために、さらに軍事的・経済的強制力をとり、日本の政治に干渉してくるかもしれない。

北朝鮮危機に外交で対処するには
―― 非核化は棚上げし、核武装国家の脅威削減を

2018年2月号

マイケル・フックス 前米国務副次官補(東アジア・太平洋担当)

北朝鮮は、対米抑止に必要な態勢を整えたと確信するまで、交渉には関心を示さないかもしれない。しかし、平壌がミサイルと核実験を停止することに応じ、ワシントンが韓国との合同軍事演習を停止することを受け入れれば、双方が交渉テーブルに着く道も空けてくる。北朝鮮が報復攻撃を試み、大規模な犠牲者が出ると考えられる以上、アメリカの先制攻撃を前提とする受け入れ可能な軍事オプションは存在しないし、(外交交渉を通じて)北朝鮮が核兵器を近い将来に手放すこともあり得ない。それでも、平和を維持するには外交を機能させる必要がある。少なくとも現状では、非核化は(交渉を実現するためにも)棚上げにせざるを得ない。むしろ、交渉を通じて、核武装した北朝鮮が突きつける脅威を低下させることを短期的目的に据えるべきだ。・・・

北朝鮮限定攻撃論の悪夢
―― 結局は全面戦争になる

2018年2月号

アブラハム・M・デンマーク 前米国防副次官補(東アジア担当)

取り沙汰されている「北朝鮮に対する限定攻撃」の目的は、「アメリカの軍事対応というリスクを伴わずに、核・ミサイル実験を続けることはできない」と平壌にメッセージを送ることにあるようだ。しかし、この戦略の問題は「アメリカの圧倒的な通常戦力と核戦力ゆえに、北朝鮮の最高指導者・金正恩は、攻撃されても報復攻撃を思いとどまる」と想定されていることだろう。攻撃が計画どおりに機能する可能性は低い。北朝鮮の核・ミサイル能力をうまく破壊できる保証はなく、平壌は限定的な攻撃に対しても反撃せざるを得ないと判断するかもしれない。いかなる攻撃も朝鮮半島における全面戦争へのエスカレーションを辿るリスクがあり、数百万の命が危険にさらされる。北朝鮮との戦争は、アメリカが第二次世界大戦以降に経験したいかなる紛争よりも破滅的なものになる危険がある。日韓との同盟関係も大きく揺るがされ、最終的にはアメリカの影響力も大きく形骸化する恐れがある。

中国は北朝鮮を見限っている
―― 半島有事における米中協調を

2018年1月号

オリアナ・スカイラー・マストロ ジョージタウン大学外交大学院 アシスタント・プロフェッサー(安全保障研究)

この20年間で、中国と北朝鮮の関係は大きく悪化し、かつての朝鮮半島有事をめぐるシナリオはもはや時代遅れになっている。米軍の大規模な作戦行動を伴う戦争が差し迫った事態になれば、恐らく、米軍よりもはるかに早いタイミングで、中国軍が半島に介入して北朝鮮の核サイトを管理下におくだろう。認識すべきは、(中国軍が核サイトを確保すれば)崩壊途上の平壌がアメリカやその同盟国に対して核攻撃を試みるリスクを低下させることだ。いまや北京と北朝鮮とのつながりは弱く、中国の介入目的が「自国の利益を確保すること」にあるとしても、米中は共有基盤を見いだせるかもしれない。前向きに考えれば、アメリカは中国の介入を利用して、第二次朝鮮戦争のコストと期間をむしろ低下させられるかもしれない。

対北朝鮮経済制裁を検証する
―― 制裁に意味はあるのか

2017年12月号

エレノア・アルバート www.CFR.org ライター

北朝鮮に対する経済制裁が強化されているが、望むような結果を手にできるかどうか、疑問視されているのも事実だ。実際、2016年に北朝鮮経済は4%の成長をみせ、過去17年間でもっとも急速な成長を遂げている。制裁は、平壌を非核化交渉のテーブルに引き戻すことを目的としているが、交渉では非核化は実現しないと考える専門家は多い。北朝鮮は、いかなるコストを支払ってでも核の兵器庫を維持していくつもりだ。こうなると、経済制裁に意味はあるのかという考えも浮上する。一方で、北朝鮮を核武装国として実質的に認めるのも、軍事攻撃するのも完全な選択肢にはなり得ない。結局、北朝鮮を平和的に非核化する上での残された唯一の希望は、武装解除し改革をしない限り、滅亡が待ち受けていることを平壌に納得させることだが、問題はいかにしてそれを実現するかにある。

中韓の関係修復と米韓関係
―― ミサイルと経済制裁と対米バランス

2017年12月号

ボニー・S・グレーサー 戦略問題国際研究所(CSIS) シニア・アドバイザー(アジア担当)
リサ・コリンズ CSIS コリアチェア担当フェロー

2017年10月末、中国外務省の華春瑩報道官は、中国が韓国に対して求めているのは「アメリカのミサイル防衛システムに参加しない。日米韓の安保協力体制を全面的な軍事同盟に進化させない。THAADの追加配備をしない」という三つの「不」へのコミットメントだとコメントした。それにしても、なぜ韓国政府はこのタイミングで対中和解を模索したのだろうか。THAAD導入によって(中国の経済制裁の対象にされ)大きな経済的損失が出ていることについての批判、そして中国とのより緊密な関係を求める国内圧力に配慮したのかもしれない。トランプの無責任な北朝鮮挑発路線を前に、中国との距離を狭め、アメリカから距離を置こうとしたのかもしれない。だがワシントンにとっては、中国との二国間関係の改善による短期的利益のために、韓国が未来の安全保障上のオプションを閉ざしてしまうとすれば、憂慮すべき事態だろう。・・・

なぜTHAADが必要なのか

2017年10月号

アズリエル・ベルマント テルアビブ大学国際関係講師
イゴル・スチャーギン 英国王立防衛安全保障研究所 シニアリサーチフェロー

THAAD防衛システムは、アジアに展開する米軍と同盟国である韓国と日本を防衛することを意図している。しかし、韓国民衆は防衛システムの配備に反対してきたし、中国もTHAADのレーダーシステムは中国の領土を監視できるために、軍事的な脅威になると強く反発している。とはいえ、THAADミサイル防衛システムは、抑止状況が崩れた場合の保険として捉えるべきだろう。ミサイル防衛は、北朝鮮のようなリビジョニスト国家による攻撃を抑止する効果がある。平壌は、防衛システムの存在によって韓国の反撃能力が温存されるシナリオを検討せざるを得なくなるからだ。これが「拒否的抑止」として知られる機能だ。THAADが完璧な防衛を提供できるわけではないが、平壌に対して、韓国の都市部に対するミサイル攻撃の成功は保証されないというメッセージを送ることができる。

北朝鮮のもう一つの脅威
―― 日韓の原発施設に対する攻撃に備えよ

2017年10月号

ベネット・ランバーグ 元国務省分析官

北朝鮮が日韓の原子力施設を攻撃すれば、何が起きるか。両国の政府はそれに備え、態勢を整えておかなければならない。これは想定外のシナリオではない。中東では建設中の原子炉をターゲットとする攻撃が起きているし、ボスニア紛争でも、インド・パキスタンの対立状況のなかでも、原子炉攻撃のリスクは意識されていた。原子力施設に対する北朝鮮のミサイル攻撃の帰結よりも、数十万人が犠牲になるかもしれない(人口密集地帯への)通常ミサイル攻撃による脅威の方が深刻だと考える者もいるだろう。しかし、原子炉が攻撃され、炉心や使用済み核燃料のプールにダメージが及べば、原子炉は、殺戮兵器ではないにしても、実質的にテロ攻撃や大量破壊兵器と同じ作用をする。日韓はアメリカとともに防衛計画をまとめていく上で、原子力発電施設の脆弱性を無視してはならない。・・・

中国の覇権確立を阻止するには
―― 南シナ海とアメリカの対中抑止策

2017年8月号

イーライ・ラトナー 米外交問題評議会シニアフェロー(中国研究)

南シナ海における米中衝突を回避しようとするあまり、ワシントンは、中国による国際法を無視した南シナ海における行動を前にしても、緊張緩和措置をとり、結果的に、中国がじわじわと既成事実を作り上げるのを許してしまった。アメリカの軍事力と同盟関係には、米中の軍事衝突を抑止する効果はあっても、中国の勢力圏拡大を抑止する作用は期待できない。このために、中国による覇権確立がアメリカのアジアにおける最大の脅威シナリオとして浮上してきている。「中国が人工島の建設を続け、あるいはすでに建設した人工島に長距離ミサイルや戦闘機など強力な軍事資産を配置し続けるようなら、アメリカは中立を捨てて、領有権を主張する他の諸国が中国に対抗する能力を獲得することを支援する」と表明すべきだ。外交を抑止策で支え、「中国が覇権を握ることは容認できない」と、ワシントンは態度を明らかにすべきだろう。

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