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新・中東危機に関する論文

米イスラエル関係の未来
―― 特別な関係の終わり?

2024年7月号

ダリア・シャインドリン ハーレツ紙コラムニスト

米イスラエル間の反目の高まりが、ガザ戦争をきっかけに生じたわけではない。両国の社会的・政治的軌道をみると、長く2カ国の関係を支えてきた「価値の共有」はすでに大きく揺るがされていた。この問題が、今回の戦争が引き起こした緊張そして党派政治によって、さらに大きな圧力にさらされている。両国が衝突コースにあるわけではない。だが、この状況は、今後の同盟関係について重要な問題を提起している。戦略的利害を共有することで、両国が同盟国であり続けることは可能でも、今後、これまで互いに信頼してきた「特別な関係」は失われるのかもしれない。

イスラエルの次なる戦線?
―― レバノンをめぐるイラン、ヒズボラとの戦争

2024年6月号

マハ・ヤヒヤ カーネギー中東センター所長

ガガザの破壊が中東民衆のイスラエルに対する反発を高めるなか、イスラエルがレバノン攻撃すれば、イランとその非国家的パートナー(武装集団)への民衆の支持はさらに強化されるだろう。それでも、政治的に負いこまれたネタニヤフ首相は、国内での立場を強化しようと、レバノンに紛争を拡大するかもしれない。実際、イスラエルは、ハマスとヒズボラをともに壊滅させることで、安全保障環境を変化させることを望んでいる。これまでのところ、アメリカの外交圧力もあって、ガザ紛争がレバノンとの全面戦争に拡大するのは回避されているが、それでも「イスラエルがレバノンを攻撃するかどうか」ではなく、「いつ攻撃するか」が問われている状況にある。

アラブストリートの反乱
―― 民衆の怒りが米外交を揺るがす

2024年6月号

マーク・リンチ ジョージ・ワシントン大学 教授(政治学)

「ガザへの爆撃がついに終わり、人々が家に帰れば、怒りの矛先は違う何かに向けられ、中東の地域政治は平常に復帰する」。ワシントンではこう考えられている。しかし、この仮説は、中東で世論がいかに重要になっているか、2011年の「アラブの春」の騒乱以降、何が本当に変わったのかを理解していない。アラブ民衆の怒りのタイプと激しさ、アメリカの優位の低下と正統性の崩壊、アラブ諸国の政権が地域間競争だけでなく国内体制の存続を優先していることから考えても、新しい地域秩序ではアラブの世論がより重視され、配慮されるようになるだろう。ワシントンがアラブの世論を今後も無視し続けるようなら、ガザ戦争後の計画を台無しにすることになる。

中東に忍び寄るドラッグの脅威
―― カプタゴンからメタンフェタミンへ

2024年6月号

バンダ・フェルバブ=ブラウン ブルッキングス研究所 シニアフェロー

カプタゴン(フェネチリン)が中東にまん延している。いまや、シリアが世界のカプタゴンのほとんどを生産し、これが、ダマスカスの重要な収入源とされている。内戦によって無政府状態に陥ったシリアで、イスラム国勢力やヌスラ戦線などのテロ集団が資金集めのためにカプタゴンを生産するようになった。最終的に、これらのイスラム過激派グループをアサド政権は粉砕したが、それは、シリア政府が薬物生産の主導権を握ったことを意味した。アラブ諸国は、カプタゴンのまん延を食い止めるためにアサド政権との交渉を試みてきたが、これまでのところ、シリアが生産量を減少させた証拠はない。それどころか、中東は、カプタゴンよりも作用の強いメタンフェタミンまん延の脅威にいまやさらされつつある。

イランの戦略目的は何か
―― 混乱と変動から利益を引き出せる理由

2024年5月号

スザンヌ・マロニー ブルッキングス研究所 ディレクター(外交政策プログラム担当)

テヘランは混乱のなかにチャンスをみいだしている。イランの指導者たちは、ガザ戦争を利用し、エスカレートさせることで、イスラエルを弱体化させてその正統性を失墜させ、アメリカの利益を損ない、地域秩序を自国に有利なものへ変化させようとしている。混沌とした状況から自国の利益を導き出すイランの能力を侮るべきではない。攻撃によってアメリカを刺激し、テヘランとその同盟国が有利になるようなミスを犯させたいとテヘランは考えている。だが、イランを含む関係勢力のいずれかが誤算を犯せば、中東全域でより激しい紛争が発生し、中東の安定とグローバル経済に大きなダメージが生じる恐れがある。

イスラエルはどこに向かうのか
―― ネタニヤフとの決別を

2024年4月号

エフード・バラク イスラエル元首相

ガザの戦後をめぐって、ネタニヤフがワシントンの計画を受け入れれば、極右の連立パートナーの支持を失い、政権は崩壊するだろう。一方、バイデンの計画を拒否し続ければ、ガザの泥沼に深く引きずり込まれる。この場合、西岸で第3次インティファーダが誘発され、イランが支援するレバノンのヒズボラと再び戦争に突入するだろう。しかも、アメリカとの関係が大きく損なわれる危険がある「アブラハム合意」も不安定化し、サウジアラビアがこの合意に参加することへの期待も遠のく。ネタニヤフがイスラエルを長い地域戦争へ導き、おそらく米政権とイスラエル市民を欺くのを防ぐには、総選挙を実施するしかない。われわれはどこに向かっているのか、誰がわれわれをそこに導くのかを市民が決められるようにする必要がある。・・・

ネタニヤフが示した司法改革法案によって、ガザ戦争前の段階で、イスラエル国家は分裂しかねない状況に追い込まれていた。戦争が終われば、この国内状況が再び出現するだろう。パレスチナをめぐっては、ネタニヤフのように「パレスチナを永遠に占領できる」と考えるのか、それとも「共存が必要」とみなすかが、今後問われることになる。「紛争管理」と「草刈り」が今後もパレスチナ問題に対処する政策であるなら、占領、入植政策、強制退去がさらに続く。しかし、このやり方は、さらなる大惨事を招き入れるだけだ。安心して生活し、尊重し合える共存を望むのなら、イスラエルはパレスチナ人に手を差し伸べ、ともに協力していかなければならない。

紛争の一方で進む中東の和解と協調
―― ポストアメリカの中東秩序へ

2024年3月号

ダリア・ダッサ・ケイ カリフォルニア大学ロサンジェルス校 バークル・センター シニアフェロー
サナム・ヴァキル 英王立国際問題研究所 中東・北アフリカプログラム ディレクター

アラブ世界の主要国は、トルコのような地域大国とともに、ガザ戦争前に存在した和解の流れとその後誕生した協調の機運を固定化するために、この瞬間を生かし、この地域に安定をもたらせる力強い安全保障メカニズムの確立をめざすべきだ。中東は清算の時を迎えている。ガザ戦争からみても、いまや中東におけるアメリカパワーに限界が生じていることは明らかであり、今後の中東の和平と安全保障をめぐって主導権をとるのは、地域の指導者や外交官たちでなければならない。危機と紛争にさらに陥っていく危険もある。だが、別の未来を築き始めることもできる。中東の指導者たちが暴力のスパイラルを食い止め、この地域をより前向きな方向へと導ける可能性は存在する。

戦後のガザ統治に備えよ
―― 自治政府をどう改革するか

2024年3月号

ダニエル・バイマン ジョージタウン大学 外交政策大学院教授

アフガニスタンやイラクなどの紛争から得た教訓の一つは、敵対的な体制を排除することはそれほど難しくなくても、現地における民衆の暮らしを立て直し、長期的な平和を確保できる新政府を構築することは、はるかに難しいということだ。ハマスという選択肢もイスラエルという選択肢もない。アラブ諸国も戦後ガザへの関与は嫌がるだろう。国際的テクノクラートによる統治は、政治基盤をもたないという大きな欠陥がある。自治政府は、西岸においてさえ、イスラエルのかなりの支援がなければ、ハマスを抑え込み、暴力を阻止することもできずにいるが、それでも、ガザの統治という任務を担う上でもっともましな選択肢だ。しかし、現在の自治政府を改革していく必要がある。・・・

抵抗の枢軸という新脅威
―― ミサイルとSNSで戦う敵の目的は

2024年3月号

ナルゲス・バジョグリ ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学院 アシスタント・プロフェサー(中東研究)
バリ・ナスル ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学院 教授(中東研究)

イラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニが設計し、シリア紛争で具体的なつながりをもち、ガザ戦争で一気に連帯を深めた「抵抗の枢軸」とは、いかなる軍事ネットワークなのか。欧米は、イランが(ハマス、ヒズボラ、フーシ派などを含む)「抵抗の枢軸」の黒幕だとみているが、実際には、それぞれが自立した、より緩やかなネットワークだ。それでも、メンバーたちは、イスラエル、そして間接的にはアメリカに対する同じ戦争を戦っていると信じている。それだけに、抵抗の枢軸を簡単に解体することも、それを生み出した思想を粉砕することもできない。ガザの銃声が静まり、住民への圧力が緩和され、パレスチナの主権と自決への確かな道筋が描かれない限り、アメリカは危険なエスカレーション・スパイラルから抜け出すことはできないだろう。

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