1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

― アメリカの衰退に関する論文

機能不全のアメリカ
―― 中露を抑止できるのか

2023年11月号

ロバート・M・ゲーツ 元米国防長官

アメリカは、ひどく危険な状況にある。攻撃的な敵対国に直面しつつも、相手を思いとどまらせるのに必要な団結と強さを結集できずにいる。米市民は内向きになり、議会は言い争い、大統領もアメリカの役割について十分な説明をしていない。習近平やプーチンのような指導者をうまく抑止するには、確固としたコミットメントと一貫した対応を示さなければならない。だが現実には、機能不全がアメリカのパワーを不安定で信頼できないものにしている。リスクを冒しやすい独裁者を、潜在的に壊滅的な事態をもたらす、危険な賭けに向かわせようとしている。・・・

アフリカにおける反欧米感情の台頭
―― ニジェール・クーデターの意味合い

2023年10月号

エベネゼル・オバダレ 米外交問題評議会 シニアフェロー(アフリカ研究)

最近、クーデターが起きたニジェールに限らず、西アフリカの民衆の多くは、「フランスに従属的」と彼らがみなす文民政府に幻滅していたために、必要な是正措置として旧政権を倒した軍事政権を歓迎している。フランスと欧米に批判的である一方で、「欧米に敵対し、かつて植民地とされてきたアフリカ諸国の同盟国を自認するロシア」を歓迎するという見方もセットにされている。そうした反発や敵意は奥深いように思えるが、実際にはそうではない。政治的・経済的停滞に対する怒りのはけ口として、ある程度の反欧米・親ロシア感情は今後も続くだろうが、こうした感情のもっとも強力な部分はいずれ消え去ることになるだろう。

トランプ2・0の時代
―― 同盟国に恐怖を、ライバルに希望を

2023年10月号

ダニエル・W・ドレズナー タフツ大学 フレッチャー法律外交大学院教授(国際政治学)

アメリカの同盟諸国は、ドナルド・トランプが2020年後半のレームダック状況のなかで、世界から米軍を撤退させることを計画していたことを忘れてはならない。彼が敗北することが明らかにならない限り、そして実際にそうなるまでは、トランプがもたらす脅威を軽くみるのは間違っている。ロシアや中国の政府高官は、トランプの再選を望んでいる。ロシアにとっては、トランプの再登板は、ウクライナへの欧米の支援が低下することを意味し、中国にとっては、北京を懸念する日本や韓国といった国々とアメリカの同盟関係に綻びが生じることを意味するからだ。・・・

アメリカは中東をいかに失ったか
―― 米中東戦略の妄想

2023年6月号

リサ・アンダーソン コロンビア大学 名誉教授(国際関係)

ワシントンの中東戦略は「妄想」に過ぎなかった。それは、高潔な意図を抱いた政治家たちが、実際には知識も関心もほとんどない地域に「壮大なアイデアを押し付ける」ことで作り上げられてきた。ワシントンは長年、促進すべき何かではなく、「阻止すべき何か」で、中東をネガティブに定義してきた。現在のアメリカは中東で何を促進したいのか。ワシントンが中東におけるアメリカの国益を定義しない限り、間違ったエンゲージメント政策をとり、再び、何かを阻止することに終始するだけだろう。中国の最近の外交的勝利が示唆するように、そのような阻止戦略で失敗するケースは今後ますます増えていくだろう。

中国と中東
―― 中東における米中の役割

2023年5月号

トリタ・パルシ クインシー研究所上席副会長
ハリド・アルジャブリ 亡命サウジ人心臓専門医

2023年3月のイラン・サウジ国交正常化合意は、中東全域に前向きな衝撃を与えるだろう。中東での外交的仲介をめぐって、今回、中国が主導的役割を果たしたことは注目に値する。ワシントンの戦略的間違いが、イランとサウジの双方に信頼される数少ない大国の一つとして中国の台頭を促した。カーター・ドクトリンを封印したトランプがサウジをイランとの外交に向かわせ、バイデンの人権外交が、中東における仲介役としての中国の台頭に道を開いた。中国の安定性は、イラン、イスラエル、サウジと良好な関係を維持し、この三国間の争いに完全に中立を保っていることによって生まれている。・・・

大国間競争とアセアンモデル
―― グローバルサウスでの中国の優位

2023年4月号

キショール・マブバニ シンガポール国立大学 アジア研究所(特別研究員)

米中間の地政学競争を前にした東南アジア諸国連合(ASEAN)の繊細でプラグマティックなアプローチは、グローバルサウス全体からモデルとみなされつつある。グローバルサウスのほとんどの国にとって、最大の関心は経済発展であり、ASEAN同様に、北京とワシントンのどちらか一方に与することは望んでいない。ゼロサムではなく、政治的な立場の相違を超えて、すべての国と協力するプラグマティックな「ポジティブサム」のアプローチの方が、グローバルサウスでは温かく受け止められる。アメリカが、自国と似た考えをもつ政府としか協力しないのなら、ほとんどの国が異なる世界観をもつグローバルサウスからは締め出されることになる。・・・

東アジアの新戦略環境と同盟関係
―― 同盟国の不安にどう対処するか

2023年3月号

カテリン・フレーザー・カッツ 元米国家安全保障会議ディレクター
クリストファー・ジョンストン 前米国家安全保障会議ディレクター
ビクター・チャ 元米国家安全保障会議ディレクター

「アメリカは、核兵器を含む、あらゆるパワーを用いて、同盟国の領土と主権に対する外からの攻撃を抑止し、必要なら、相手を打倒する」。ワシントンはこの安全保障コミットメントを守れるのか。東京やソウルを守るために(北朝鮮を攻撃して)、アメリカの都市が核攻撃の対象にされるリスクをワシントンは本当に引き受けるのか。同盟諸国は疑念を払拭できずにいる。いまや韓国人の70%以上が核武装を支持し、50%以上が米軍の戦術核の再配備を求めている。日本でも80%以上が中国、北朝鮮、ロシアを軍事的脅威とみなしている。不安を募らす東京とソウルを安心させるために、ワシントンはどのように対処すべきなのか。

国益と自由世界擁護の間
―― ウクライナとアメリカの国益

2023年3月号

ロバート・ケーガン ブルッキングス研究所シニアフェロー

オバマ大統領(当時)は、「ウクライナは、アメリカよりもロシアにとって重要であり、同じことは中国にとっての台湾についても言える」と何度も語っている。一方で、第一次世界大戦、そして第二次世界大戦から今日までの80年間、アメリカがそのパワーと影響力を行使して自由主義の覇権を擁護し、支えてきたのも事実だ。ウクライナの防衛も、アメリカではなく、自由主義の覇権を守ることが目的なのだ。「アメリカはウクライナに死活的に重要な利益をもっている」とみなす米議員たちの発言は、ウクライナが倒れれば、アメリカが直接脅威にさらされるという意味ではない。(関与しなければ)「リベラルな世界秩序が脅かされる」という意味だ。アメリカ人は、再び世界はより危険な場所になったとみなし、紛争と独裁に支配される時代に向かいつつあるとみている。

2023年のトレンドを考える

2023年2月号

マンジャリ・C・ミラー CFRシニアフェロー(インド、パキスタン、南アジア担当)
J・アンドレス・ギャノン CFRシャントン核安全保障フェロー
イヌ・マナク CFRフェロー(貿易政策担当)
エベニーザー・オバダレ CFRシニアフェロー(アフリカ研究)
クリストファー・M・タトル CFRシニアフェロー、ディレクター(リニューイング・アメリカ・イニシアティブ)

グローバルな食糧不安、今後の地政学的変数の一つであるインドとロシアの関係はどう推移するのか。中国の軍事的脅威にアジアの地域諸国は適切に対処しているか、アフリカの経済成長を妨げている頭脳流出の原因は何か。そしてアメリカにおける政治的分裂状況は、今後さらに激化していくのか。地域、イッシューの専門家が分析する2023年のトレンズ。

日独の自主路線と対米協調のバランス
―― ポストアメリカの協調モデル

2022年8月号

マーク・レナード ヨーロッパ外交評議会 ディレクター

ロシアのウクライナ侵攻と米中対立の激化は、戦後秩序の現状とパックス・アメリカーナを根底から覆そうとしている。モスクワのウクライナ侵略を前に、ドイツは外交政策を抜本的に見直し、国防費の大幅増額を約束している。中国の覇権主義を警戒する日本も、同じような変貌を遂げようとしているようだ。短期的には、こうした変化は欧米世界の結束、あるいは復活さえも促すかもしれない。しかし、ドイツが新たに自主路線の道を歩み、日本も同様の道を歩めば、対米依存度は低下し、むしろ、近隣諸国との結びつきが大きくなるだろう。このようなシフトは、ヨーロッパとアジアにおける安全保障秩序だけでなく、欧米世界のダイナミクスを大きく変化させる。ベルリンと東京で進行している変化は、ワシントンが戦後に構築し維持してきたものとは異なる、よりバランスのとれた同盟関係が視野に入ってきていることを意味する。・・・

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