1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

― 中国経済の成長とリスクに関する論文

中国経済はなぜ失速したか
―― 新常態を説明する二つの要因

2015年4月号

サルバトーレ・バボネス
シドニー大学上級講師

中国経済の成長率鈍化を説明する要因は二つある。一つは出生率の低下、もう一つは都市への移住ペースの鈍化だ。たしかに、1970年代の出生率の低下は経済成長の追い風を作り出した。一人っ子政策で、扶養すべき子供が1人しかいない親たちはより多くの時間を労働に充てることができた。だが40年後の現在、いまや年老いた親たちは引退の年を迎えつつあり、しかも子供が親を支えていくのは不可能な状態にある。都市への移住ペースの鈍化も中国の経済成長率を抑え込んでいる。1980年当時は、総人口の5分の1を下回っていた中国の都市人口も、いまや全体の過半数を超え、しかも主要都市の空室率が上昇していることからみても、都市化はいまや上限に達している。要するに、中国の経済ブーム・高度成長の時代は終わったのだ。今後成長率はますます鈍化し、2020年代には中国の成長率は横ばいを辿るようになるだろう。

中国の次なる経済モデル
―― デジタル革命と創造的破壊

2015年1月号

ジョナサン・ウォツェル マッキンゼー・グローバル・インスティチュート ディレクター
ジョンミン・セオン マッキンゼー・グローバル・インスティチュート シニアフェロー

中国経済のデジタル化への移行は始まったばかりで、今後数年で、テクノロジーが中国経済のビジネススタイルを劇的に変化させていくだろう。インターネットを利用したデジタル化は新しい巨大市場を誕生させるが、それによって古い市場は破壊され、中国企業はかつてなく厳しい市場競争を受け入れざるを得なくなる。数十年にわたって中国経済は大規模な資本投入と労働力の拡大に依存してきたが、いまやこのモデルで動く成長のエンジンは力を失いつつある。デジタル経済の拡大という次のステージは間違いなくリスクと混乱をもたらすが、企業の生産性向上のポテンシャルを解き放つことになる。経済のデジタル化は、中国の国家目標である「持続可能な経済発展モデル」の実現に大きく貢献することになるだろう。・・・・

中国の労働者はどこへ消えた
―― 経済成長至上主義の終わり

2013年11月号

ダミアン・マ
ポールソン研究所フェロー
ウィリアム・アダムス
ピッツバーグ大学アジア研究センターアソシエート

中国の輸出と安価な製品をこれまで支えてきた季節労働者が不足するにつれて、中国経済の成長は鈍化している。市場レベルへと賃金を引き上げなかった工場のオーナーたちは、労働者が工場を後にし、戻ってこないという事態に直面している。「安価な労働力」の時代は終わり、企業は労働者を生産現場につなぎ止めようと賃上げに応じ、よりやる気のある季節労働者を確保できる内陸部へと工場を移転させる企業もある。一方、米企業の一部は生産部門をアメリカ国内に戻すか、メキシコやベトナムに移動させることを検討し始めている。だが、悪いことばかりではない。急速に上昇する賃金レベルが、投資・輸出主導型経済から内需主導型経済モデルへのシフトを促している。中国の指導者がこれまでの流れを維持したいのなら、利益集団としての労働者の集団化を認識し、安定よりも成長を重視する、これまでの社会契約を見直す必要があるだろう。

CFR Update
中国経済と都市化政策
――問われる成長と社会保障のバランス

2013年11月号

エリザベス・エコノミー
米外交問題評議会シニアフェロー
(中国・環境問題担当)

李克強は、中国経済の成長を維持していくには都市化政策を進めることが不可欠だと確信し、都市インフラを整備しつつ、地方で生活する人々を都市へと移住させる政策を最重要アジェンダに定めている。実際、「投資・輸出主導型経済」から「消費主導型経済」へと中国経済をリバランシングさせる上でも、都市住民のほうが地方生活者よりも3・6倍も多く支出するだけに、都市化計画は今後の中国経済の重要な鍵を握っているかもしれない。だが、都市化は資源圧力と汚染も増大させる。地方出身者に都市の戸籍を与え、社会保障の受給資格を与えるだけで、膨大な資金拠出が必要になる。・・・

CFR Interview
上海自由貿易区は第2の改革開放路線になるか

2013年11月号

ダニエル・H・ローゼン
ローディアムグループ ファウンディングパートナー

多くの意味で、上海自由貿易区構想を鄧小平の改革開放路線と重ね合わせて考えてもおかしくはない。1970年代末、鄧小平はルールと条件を変えない限り、中国沿海部の経済成長を加速できないこと、そして、改革を適用する地域を広げていく必要があることを理解していた。さらに彼は、国内の政治・経済領域の既得権益層が、そうしたルールの変更を中国の利益を損なうと批判することも事前に織り込んでいた。改革の価値を特定の経済特区で立証した上で、全土へと広げていく必要があると彼が考えたのはこのためだ。・・・1980年代の経済特別区では製造業投資の自由化が重視されたが、上海自由貿易区では金融の自由化が重視されている。今回も、国レベルでの改革を一か八かで実行するのではなく、地域的に改革を導入して、自由化への流れを作り出すという手法がとられている。いまや中国は、市場経済に準じた制度ではなく、効率的な市場経済そのものを完全に導入したいと考えている。

CFR Update
世界経済を左右する中国における成長と改革の行方

2013年10月号

ロバート・カーン
米外交問題評議会シニアフェロー(国際経済担当)

市場プレイヤーの多くは、中国経済の成長率は今後急激に減速していくと考えている。2013年と2014年の成長率は6%台へと落ち込み、悪くすると5%を割り込む可能性もあると予測している。だが、こうした経済成長の減速は、中国が経済構造のリバランスを試み、現在の輸出・投資主導型経済から、消費主導型経済に移行するための改革を実施することを織り込んでいる。これを別にしても、IMF(国際通貨基金)が指摘する通り、労働力人口の減少が労働市場ダイナミクスを根本的に変化させる。つまり、中国は、労働力の過剰供給の時代が終わり、相対的な賃金が上昇する「ルイスの転換点」にさしかかりつつある。だが一方でIMFは、経済成長の停滞を理由に中国は改革(経済構造のリバランシング)を先送りするのではないかと懸念している。中国が野心的な改革を実行し、経済のリバランシングを実現して短期的な低成長のリスクを受け入れるか、あるいは、経済成長を維持しようと改革プロセスを先送りするかで、グローバルな経済成長の見通しは大きく変わってくる。

中国の経済成長モデル見直しとエネルギー価格の自由化

2013年7月号

ダミアン・マ
ポールソン研究所フェロー

相対的に貧困な国で経済が急拡大した場合、インフレを警戒する必要がある。外国からの原材料輸入とともにインフレも輸入してしまうリスクがあるからだ。中国政府はこのリスクを回避しようと重工業を中心とする基幹産業のために人為的にエネルギー価格を抑え込む価格統制策をとってきた。低めに抑えられたエネルギー価格は、低く抑えられた為替レート同様に輸出競争力を支え、(インフレの抑制と)輸出主導型の経済成長モデルに貢献した。だがその結果、エネルギーの利用効率の改善や環境問題への配慮は二の次とされ、深刻な環境汚染と社会不満が広がりをみせ、いまや経済モデルを見直さざるを得なくなっている。すでに北京の新体制は中国の経済モデル移行に向けた重要な一部として、エネルギーの価格改革に高い優先順位を与えているようだ。現実にそうなれば、中央統制経済のもっとも頑迷な遺産を中国が取り払おうとしていることへの明確なメッセージになる。

BRICsの黄昏
―― なぜ新興国ブームは終わりつつあるのか

2012年12月号

ルチール・シャルマ
モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント
新興市場・グローバルマクロ担当ディレクター

これまで「途上国経済は先進国の経済レベルに近づきつつある」と考えられてきた。この現象と概念を支える主要なプレイヤーがBRICsとして知られるブラジル、ロシア、インド、中国という新興国の経済的台頭だった。だが、途上国と先進国の間で広範なコンバージェンスが起きているという認識は幻想にすぎなかった。新興国台頭の予測は、90年代半ば以降の新興国の高い成長率をそのまま将来に直線的に当てはめ、これを、アメリカその他の先進国の低成長予測と対比させることで導き出されていた。いまや新興国の経済ブームは終わり、BRICs経済は迷走している。「その他」は今後も台頭を続けることになるかもしれないが、多くの専門家が予想するよりもゆっくりとした、国毎にばらつきの多い成長になるだろう。

CFR Interview
投資バブルの崩壊で中国経済は長期停滞へ

2012年9月号

パトリック・チョバネック
清華大学経済・マネジメント大学院准教授

この数年来の中国経済の成長は、グローバル経済危機対策として北京が実施した景気刺激策が作り出した投資ブームによって牽引されてきた。当然、これは持続可能な成長ではなかった。今や投資バブルははじけ、不良債権が増大し、中国経済の成長率は、2009年以降、最低のレベルへと抑え込まれている。・・・すでに、中国の地方政府が不動産開発業者を、そして中央政府が国有企業や地方政府をベイルアウトし始めている。・・・中国政府は成長戦略の見直し、つまり、輸出・投資主導型モデルから内需主導型モデルに向けた調整を迫られている。中国経済をリバランスするには、為替政策、金利政策、課税策を見直して、資金が家計(預金者と消費者)へと流れるようにしなければならない。・・・有意義な調整プロセスによって中国経済がよりバランスのとれたものへと進化していけば、中国により多くの輸出をしたい国や企業、中国との貿易バランスを均衡させたい国に大きな恩恵がもたらされる。問題は、この調整が痛みを伴うために、成長戦略の見直しに対する政治的抵抗が避けられないことだ。

Page Top