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資本主義と民主主義の後退に関する論文

リベラルな民主主義の奇妙な勝利そして停滞

2012年2月号

シュロモ・アヴィネリ ヘブライ大学政治学教授

なぜ20世紀に民主主義が生き残り、ファシズムも共産主義も淘汰されてしまったのか。1930年代から21世紀初頭にいたるまで、ヨーロッパ全域が民主化すると考えるのは現実離れしていたし、リベラルな民主主義が勝利を収める必然性はどこにもなかった。なぜ、社会に提示できるものをもち、圧倒的な力をもっていたマルクス主義がリベラルな民主主義に敗れ去ったのか。そしていまや、多くの人が(民主主義を支える経済制度である)資本主義が経済利益を広く社会に行き渡らせる永続的な流れをもっているかどうか、疑問に感じ始めている。ヨーロッパとアメリカの昨今の現実をみると、民主的政府は危機に適切に対応できず、大衆の要望を満たす行動がとれなくなっている。現在、世界が直面する危機によって、市場原理主義、急激な民営化、新自由主義では、「近代的でグローバル化した経済秩序をどうすれば持続できるか」という問いの完全な答えにはなり得ないことがすでに明らかになりつつある。・・・

歴史の未来
―― 中間層を支える思想・イデオロギーの構築を

2012年2月号

フランシス・フクヤマ
スタンフォード大学シニアフェロー

社会格差の増大に象徴される現在の厄介な経済、社会トレンズが今後も続くようであれば、現代のリベラルな民主社会の安定も、リベラルな民主主義の優位も損なわれていく。マルキストが共産主義ユートピアを実現できなかったのは、成熟した資本主義社会が、労働者階級ではなく、中産階級を作り出したからだ。しかし、技術的進化とグローバル化が中産階級の基盤をさらに蝕み、先進国社会の中産階級の規模が少数派を下回るレベルへと小さくなっていけば、民主主義の未来はどうなるだろうか。問題は、社会民主主義モデルがすでに破綻しているにも関わらず、左派が新たな思想を打ち出せずにいることだ。先進国社会が高齢化しているために、富を再分配するための福祉国家モデルはもはや財政的に維持できない。古い社会主義がいまも健在であるかのように状況を誤認して、資本主義批判をしても進化は期待できない。問われているのは、資本主義の形態であり、社会が変化に適応していくのを政府がどの程度助けるかという点にある。

漂流する先進民主国家
―― なぜ日米欧は危機と問題に対応できなくなったか

2012年1月号

チャールズ・クプチャン
米外交問題評議会シニア・フェロー

グローバル化が「有権者が政府に対して望むもの」と「政府が提供できるもの」の間のギャップをますます広げ、政府は人々の要望に応えられなくなっている。これこそ、アメリカ、日本、ヨーロッパという先進民主世界が現在直面しているもっとも深刻な問題だ。先進民主諸国が統治危機に直面する一方で、台頭する「その他」の諸国が新たな政治力を発揮しているのは偶然ではない。グローバル化した世界への統合を進めていくにつれて、先進民主国家が問題への対応・管理手段の喪失という事態に直面しているのに対して、中国のような非自由主義国家の政府は、一元化された中央の政策決定、メディアに対する検閲、国家管理型の経済を通じて、社会の掌握度を高めている。必要とされているのは、民主主義、資本主義、グローバル化の相互作用が作り出している大きな緊張をいかに解決するかという設問に対する21世紀型の力強い答えを示すことだ。政府の行動を、グローバル市場の現実、恩恵をより公平に分配することを求める大衆社会の要望に適合させるとともに、痛みと犠牲を分かち合えるものへと変化させていく必要がある。

ウォール街デモが示す新しい民主主義の可能性
――市民の苦境を無視する政治への反乱

2011年11月号

マイケル・ハート/デューク大学政治学教授
アントニオ・ネグリ/前パリ第8大学政治学教授

ウォール街デモの政治的側面を理解するには、これを2011年に世界で起きた一連の抗議行動の流れのなかに位置づける必要がある。ウォール街での抗議行動は、5月15日以降、マドリードの中央広場で展開された抗議行動、そして、それに先立つカイロのタハリール広場での民衆デモに触発されている。デモの根底にあるのは、自分たちの民意が配慮されない現実に対する人々の不満と反発だ。問われているのは、代議制民主主義の危機に他ならない。「われわれの目の前にある民主主義が大多数の人々の考えと利益を代弁していく力を失っているのなら、現状の民主主義はもはや時代遅れなのではないか」。デモが問いかけ、求めているのは「真の民主主義」の再確立だ。

ブロークン・コントラクト
―― 不平等と格差、そしてアメリカンドリームの終焉

2011年11月号

ジョージ・パッカー
ニューヨーカー誌スタッフライター

第二次世界大戦後のアメリカの経済的繁栄の恩恵は、人類の歴史のいかなる時期と比べても、より広範な社会層へと分配されていた。税制によって、個人が手にできる富には限界があり、多くの資金を次の世代に残せないように制度設計されていたために、極端な富裕階級が誕生することはあり得なかった。だが、1978年を境に流れは変化した。その後の30年にわたって、政治の主流派は、中産階級のための社会保障ツールを解体し、政府の権限を小さくしようと試みた。組織マネーと保守派はこの瞬間をとらえ、アメリカの富裕層への富の移転という流れを作り出した。実際、この30年にわたって、政府は一貫して富裕層を優遇する政策をとってきた。その結果、いまや、あらゆる問題が格差と不平等という病によって引き起こされ、民主主義のメカニズムまでもが抑え込まれつつある。

暗闇では銃を発射できないように、世界がどのように機能するかについてのビジョンなしに、政策を決めることはできない。だからこそ、現実主義者は、この世にいない経済学者か、政治理論家の奴隷となるしかない。政策決定者が、世界を間違った方向ではなく、正しい方向へと動かす可能性を高めるような、情報と知識に裏付けられた思想的な基盤とビジョンをわれわれは常に必要としている。冷戦末期以降、『文明の衝突』、『歴史の終わり』、『大国政治の悲劇」』という三つの壮大なビジョンが表明された。ベルリンの壁が崩壊した段階ではフクヤマは真実の鐘をならし、9・11以降の世界政治についてはハンチントンの予測は現実を言い当てていた。中国パワーが今後開花していけば、ミアシャイマーも現実を言い当てることになるのかもしれない。だが、ハンチントン、フクヤマ、ミアシャイマーは未来の何を言い当てて、どこを読み誤ったのか。それを理解することが、世界が必要とする第4のビジョンを描く鍵となる。

「西洋は民主主義のソースコードを持っており、このコードへのアクセスを認めるだけで、権威主義国家は崩壊する」。このような見方は間違っている。ソーシャルメディアは民主化に向けた環境整備のためのツールにすぎない。ウェブ上の公共空間で思想や意見が拡散され、市民社会形成への流れが生じない限り、政治的変化はほとんど起きない。つまり、外部情報へのアクセスを持つことは、相互に会話できる環境を持つことに比べれば、それほど重要ではない。特定の意見が最初はメディアによって伝えられ、その後、それを読んだ人々の友人、家族、同僚たちへと広がっていき、ここで、政治的意見が形作られる。インターネット、特にソーシャルメディアが大きな違いをもたらすのも、この第2段階においてだ。ソーシャルメディアが社会や公共空間での人々の運動を加速する効果があるのは事実としても、その結果が出るまでには、数週間、数カ月ではなく、数年から数十年の時間がかかる。

インターネットは自由も統制も促進する
――政治的諸刃の剣としてのインターネット

2010年12月号

イアン・ブレマー
ユーラシア・グループ代表

インターネットテクノロジーはメガホンであり、拡散機能を持っているが、この機能は、国境を越えた情報拡散の促進を望む人々だけでなく、この流れを遮断し、悪用する人々も利用できる。メディアとしてのインターネットが、民主主義を求める声を増幅させるのは、すでに、民主主義への希求が存在する場所においてだけだ。一方、権威主義国家は、彼らにとって好ましくない情報の自由な流れをブロックするために、そして、政府の立場や考えを拡散するために、情報テクノロジーを利用している。最終的には、世界のあらゆるインターネットがさまざまな政府による詳細な監視の対象にされるようになるだろう。事実、欧米のハイテク通信企業は、いまや自らを軍需企業のように考えだしている。インターネットが消失することはない。だが欧米諸国が使用し、一方で、権威主義国家の意向を満たすような一つのインターネットが存在すると考えるのは現実的ではないだろう。

インターネットと相互接続権力の台頭

2010年12月号

エリック・シュミット グーグル最高経営責任者
ジャレッド・コーエン グーグル・アイデアズ・ディレクター

インターネットの登場で、政府の力を弱め、市民の力を強めるバーチャル・コミュニティー(相互接続権力)が誕生し、人々を結びつけるコネクションテクノロジーが、世界各国の社会を変化させている。だが、この流れは、世界中の民衆と政府に困難な新課題を突きつけることになる。低開発社会ではよりオープンで透明性の高い社会を実現するように求める民衆の圧力が作りだされ、政治的緊張を高めるだろう。一方で政府も反政府勢力を封じ込める新たな技術ツールを手に入れることになり、より閉鎖的で抑圧的な社会が出現するかもしれない。民主国家政府はこの機会を見逃さずに連帯する義務があるし、変革をもたらす原動力である企業や非政府組織をプレイヤーとして尊重しなければならない。パワーを分かち合う新時代では、政府といえども、自分だけでは物事をすすめていくことはできないのだから。

経済危機の長期化は避けられない
――市場経済モデルの衰退は地政学秩序をどう変えるか

2009年7月号

ロジャー・アルトマン 元米財務副長官(1993~1994)

「現在の経済危機は秩序を揺るがすグローバルな事件だ。世界経済の今後は全般的にきわめて憂鬱な状況にあり、状況を不安定化させるような深刻なリセッションが世界中を覆い尽くしている。しかも、この30年にわたって地球を席巻してきた市場経済資本主義、グローバル化、規制緩和というアングロ・サクソンモデルの時代が終わりつつある。・・・(今後を考える上で)重要なのは「深刻なグローバル・リセッションが長期化する」と考えられ、金融危機によって受けた大きなダメージゆえに世界の3大経済であるアメリカ、EU、日本が循環的な回復を遂げることはおそらくあり得ないこと、そして中国が明らかな勝者として台頭しつつあることだ」

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