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年度別傑作選に関する論文

中国は市場改革路線をすでに放棄している
―― GDP成長に取り憑かれ、改革を忘れた中国

2009年6月号

デレク・シザーズ ヘリテージ財団アジア経済担当リサーチ・フェロー

胡錦涛と温家宝は2002~2008年に、経済が停滞していなかったにも関わらず、国の経済への介入路線を強めていった。……市場改革の要である価格の自由化は部分的に覆されているし、当初から緩慢なペースでしか実行されていなかった民営化はすでに放棄されている。企業間の競争を促す構想も帳消しにされている。中国政府は、外国からの投資を制限し、輸出に課税することで、比較的開かれていた貿易部門への介入さえも強めつつある。中国で市場改革路線が放棄されたのは、一つには、指導層が他の全てを犠牲にしてでもGDPの成長を実現しようと試みているからだ。

日本の歴史認識と東アジアの和解を考える
――反動を誘発する謝罪路線の危うさ

2009年5月号

ジェニファー・リンド  ダートマス・カレッジ助教授

いかなる国であっても、多くの人が家族や家を失い、都市そのものが消失してしまうような凄惨な戦争の余波のなかで、自国の過去の行動を謝罪すべきだという提案が出てくると、国内で反動が起き、国論は二分される。戦後の西ドイツで謝罪路線への反動が「例外的に」小さかったのは、ドイツの統一とソビエトからの防衛という二つの外交上の大目標を実現する必要があったからだ。日本、あるいは日本と同様の立場にあるその他の国は、「謝罪」と(過去の歴史を正当化し)「謝罪を否定する反動」の間の中道路線、つまり、アデナウアーがとったように、(謝罪ではなく)、過去の間違いを認め、一方で、未来志向のビジョンを示し、これらを自国の戦後の成果に対する誇りへと結びつける路線をとるべきだろう。この路線で東アジアの緊張が緩和されれば、自国だけでなく、世界が利益を得られるようなリーダーシップを日本は発揮できるようになる。

2008年前半まではサブプライムローン危機が実体経済に影響を与えるかどうか、リセッションがどのくらい長引くかを争点に考えられていた危機が、いまや大恐慌以降、もっとも深刻なグローバル経済・金融の危機と化している。危機は、各国の経済・貿易構造の再編を強いるだけでなく、経済モデルもドル基軸通貨体制も変化させるかもしれない。景気刺激策の後には、インフレとドル危機が待ち受けている危険もある。しかも、危機は、経済・金融領域だけでなく、地政学秩序さえも動揺させる恐れがある。また危機を緩和させ、再発を防ぐという目的からの国際協調が、国や地域を単位とする政治対立や保護主義の台頭によって行く手を阻まれる危険もある。危機のなかで世界の知性は何を考え、今後をどのように見通しているか。未曾有の危機のなかで将来を見通すための必読の書 。

CFRミーティング
中国は内需を拡大し、為替操作を止めよ
――金融危機と米・アジア関係

2009年4月

パネリスト
セバスチャン・マラビー /外交問題評議会地政経済学研究センター所長
エドワード・アルデン /外交問題評議会シニア・フェロー
エリザベス・C・エコノミー/外交問題評議会アジア研究ディレクター
プレサイダー
ケイ・キング/外交問題評議会ワシントン・プログラム・バイスプレジデント

「米中双方にとって必要なのは、中国がもっと内需主導型の経済へとシフトしていくことだ。中国はこれまでの20年間、輸出主導型の経済成長戦略をとり、その結果、膨大な外貨準備を積み上げ、グローバルなインバランス(グローバル経済の不均衡)を作り出してしまった。これが、米中双方を苦しめている。」(E・アルデン)

「金融部門を規制し、銀行を適切に監督していれば、問題はここまで深刻にはならなかったかもしれない。だが、……規制でどうにかなるとは私は考えていない。膨大な資本が経済システムに流入すると、バブルが発生し、そのバブルが崩壊し、大きな経済的打撃を引き起こすことは避けられないと私はみている。 この意味において、アメリカにとって中国の輸出主導型の経済成長モデルは好ましくないし、中国にとっても好ましくない」。(S・マラビー)

CFR スペシャル・リポート
グローバル・インバランスと金融危機

2009年4月号

スティーブン・デュナウェイ 米外交問題評議会国際経済担当非常勤シニア・フェロー

金融規制を強化し、厳格な金融政策を実施すれば、グローバル・インバランス(世界経済におえる経常収支の不均衡)が誘発しがちな金融の暴走をゆっくりと押さえ込めるかもしれないという議論も耳にする。しかし、これらは世界経済の成長率を鈍化させることによってのみ実現できる次善の策に過ぎない。……現在の議論では、こうしたインバランスを増大させ、各国がその対策を先送りするのを許した「国際金融システムの基本的特質」に関する検証が行われていない。……ヘンリー・ポールソンが適切に指摘したように、現在の危機が解決しても、インバランスとそれが伴うリスクが再び問題を作り出すことになる。

金融危機と戦略問題
――R・ハースの米下院軍事委員会における証言から

2009年4月号

リチャード・N・ハース/米外交問題評議会会長

金融危機が民衆の政府に対する不満を高め、これが、中国やロシアでの政治的抑圧の強化へとつながっていく恐れもある。途上国への投資が先細りとなるなか、先進国がさらに途上国への対外援助を削減するようになれば、破綻国家の数は増える一方になるかもしれないし、その余波は深刻なものになる。各国が、短期的な経済成長に目を向けるあまり、長期的な温暖化対策に後ろ向きになる危険もある。すでに各国では保護主義が台頭しており、「G20諸国のうちの約17カ国が、2008年11月の金融サミット以降に何らかの形で貿易障壁を引き上げている」。そして、大規模な景気刺激策の後には、インフレやドル危機が待ち受けているかもしれない。今回の危機が次なる危機を引き起こさないようにするには、何をどうすればよいか・・・

CFRインタビュー
保護主義の台頭と地政学リスクを考える

2009年3月号

ウォルター・ラッセル・ミード 米外交問題評議会アメリカ外交担当シニア・フェロー

「中国のアメリカへのアプローチはより手堅くなり、われわれが世界における目的とみなすものの多くを共有しだしている。しかし、これは『開放的な貿易システムと国際協調は、中国が豊かさと大きな成果を手にする機会をもたらしてくれる』という中国側の認識を前提としている。危機を前にわれわれが門戸を閉ざすか、そうでなくても、『アメリカやフランスは貿易の門戸を閉ざしつつある』と中国が考えるようになれば、これは、ジョージ・ブッシュの路線よりも、はるかに大きな危険を伴う外交的大失策となる。アジアと中国を疎外し、その結果、相手の反発やライバル意識をかき立てるとすれば、その後数十年にわたって世界はその禍根から逃れられなくなる。中国に対して門戸を閉ざすことは、現状においてもっとも大きな危険を伴う選択肢だ」。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

グローバル金融危機が途上国に与える影響

2009年2月号

スピーカー
ナンシー・バードサール  グローバル開発センター会長
ダニー・M・ライプチガー  世界銀行・貧困削減・経済管理担当副総裁
司会
ジェラルド・セイブ ウォールストリート・ジャーナル紙 エグゼクティブ・エディター

公的債務の返済期限を延長できた国の多くは、現時点では融資を強く求めているわけではないが、2009年の夏か秋には返済期限を迎え、再ファイナンスをしなければならなくなる。このときに、どのようなことが起きるかを考える必要がある。……再ファイナンスを迫られた債務国が国際金融機関に融資を求めて殺到する危険は大きい。(バードサール)

減少しつつあるインフラ投資のための外資を呼び込むために、途上国は何ができるだろうか。リセッションの影響を受ける人々へのセーフティネット(社会保障策)を強化するために、2009年に途上国は何ができるだろうか。しかし、社会保障策をとれば、必ず財政コストが増大する。途上国の多くの財務大臣は2009年をどうやって乗り切るか、頭を悩ませている。(ライプチガー)

Classic Selection 2009
21世紀の国家パワーはいかに ネットワークを形成するかで決まる
――新時代におけるアメリカ優位の源泉

2009年2月号

アン=マリー・スローター  プリンストン大学ウッドロー・ウィルソン公共・ 国際問題大学院学院長

問題を前にして、誰と連帯してどのような措置をとるべきか。この点を理解していることが21世紀における外交の要諦である。現在の世界では、いかに他とつながっているかでパワーが左右される。しかも21世紀のネットワーク化した世界は国家の上にも下にも存在し、また国家と国家の間にも存在する。そのような世界で中心的プレーヤーとなり、グローバルなアジェンダを設定し、イノベーションと持続可能な成長の中核を担うのは、最大のネットワークをもつ国である。どれだけネットワークを持っているかによってパワーが決まるとすれば、リーダーシップの本質は共有する問題を解決するために、いかにネットワークを形作っていくかにある。ネットワーク化された世界で重要なのは、(国家の)相対的パワーではなく、濃密なグローバルウェブのどれだけ中心に身を置けるかにある。

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