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に関する論文

中韓の関係修復と米韓関係
―― ミサイルと経済制裁と対米バランス

2017年12月号

ボニー・S・グレーサー 戦略問題国際研究所(CSIS) シニア・アドバイザー(アジア担当)
リサ・コリンズ CSIS コリアチェア担当フェロー

2017年10月末、中国外務省の華春瑩報道官は、中国が韓国に対して求めているのは「アメリカのミサイル防衛システムに参加しない。日米韓の安保協力体制を全面的な軍事同盟に進化させない。THAADの追加配備をしない」という三つの「不」へのコミットメントだとコメントした。それにしても、なぜ韓国政府はこのタイミングで対中和解を模索したのだろうか。THAAD導入によって(中国の経済制裁の対象にされ)大きな経済的損失が出ていることについての批判、そして中国とのより緊密な関係を求める国内圧力に配慮したのかもしれない。トランプの無責任な北朝鮮挑発路線を前に、中国との距離を狭め、アメリカから距離を置こうとしたのかもしれない。だがワシントンにとっては、中国との二国間関係の改善による短期的利益のために、韓国が未来の安全保障上のオプションを閉ざしてしまうとすれば、憂慮すべき事態だろう。・・・

民主国家に浸透する権威主義
―― 蝕まれるリベラルな民主主義

2017年11月号

ソーステン・ベナー 独グローバル公共政策研究所  ディレクター

欧米諸国による批判や敵意を前にすると国内が不安定化する傾向があるロシアなどの権威主義国家は、民主国家による民主化促進策、反体制派支援、経済制裁などを阻止するための盾を持ちたいと考えてきた。こうして、欧米の政治に介入したり、プロパガンダ戦略をとったりするだけでなく、資金援助をしている欧米の政党や非政府組織、ビジネス関係にある企業との関係を通じて、民主社会への影響力を行使するようになった。権威主義国家の最終的な目的は、自分たちの影響力を阻止できないほどに欧米の政府を弱体化させることにある。問題は、民主社会が外国の資金や思想の受け入れに開放的で、欧米のビジネスエリートが権威主義国のクライエントたちからも利益を上げようとしていること、しかも民主体制が弱体化しているために、彼らがつけ込みやすい政治環境にあることだ。・・・

クルド住民投票が開けたパンドラの箱
―― クルドとイラクが歩み寄る余地はあるか

2017年11月号

ギャリップ・ダレイ アルジャジーラ研究所  シニアアソシエートフェロー(トルコ・クルド担当)

これまでクルドの独立に曖昧な態度しか示してこなかった近隣諸国とアメリカも、クルドの住民投票に向けたプロセスが進むにつれて、自国の立場を明らかにせざるを得なくなった。トルコとイランはイラクと共に、住民投票に激しく反対した。アメリカも反対だった。一方、イスラエルは周辺地域で唯一、賛成を表明し、ヨルダンは控えめながらも賛同の立場を表明した。各国がこのように立場を明確にしたことで(少なくとも中期的には)クルド側は独立に代わる案を検討するか、あるいは実際の独立までの時間枠を見直すことになるかもしれない。クルドの独立問題を平和的に解決できるかは、明確に定義されたイラクの連邦構造の強化や国家連合という考えを打ち出せるかどうかに左右される。

Interview
グローバルヘルスの課題
―― アダノム新事務局長との対話

2017年10月号

テドロス・アダノム  世界保健機関(WHO)事務局長

世界保健機関(WHO)は、1948年に世界の公衆衛生(グローバルヘルス)の改善を担当する国連専門機関として設立され、感染症対策などの国際的対応の調整にあたってきた。設立以降、WHOは、天然痘の根絶、AIDSとの闘い、そして非感染性(慢性)疾患にいたるまで、公衆衛生の最前線で活動してきた。5月に、WHOメンバー国は、テドロス・アダノムを新しい事務局長に選んだ。マラリアの研究者であるアダノムは、2005―12年にエチオピアの保健相、2012―16年には外相を務めている。聞き手はスチュアート・レイド(フォーリン・アフェアーズ誌副編集長)

クルド人とイラク北部の未来
――ペシュメルガ、シーア派武装集団、スンニ派系住民

2017年10月号

マシュー・フランクリン・カンシャン マサチューセッツ工科大学博士候補生
クリスティン・E・ファッベ ハーバード・ビジネススクール 准教授

クルド人の武装組織・ペシュメルガがイスラム国勢力との戦いで勝利を収めた結果、2014年以降、クルディスタン地域政府(KRG)の支配地域は約40%拡大し、イスラム国後のイラク北部に対するクルドの影響力はかつてなく大きくなっている。これまでイラク・クルディスタンはそれぞれにペシュメルガを擁する二つのクルド系政治勢力によって二分されてきたが、さまざまなクルド人武装組織はこれまでよりも統合度を高めているようだ。問題は今後、かつてのイスラム国勢力を支持したスンニ派系住民の扱いをどうするかだ。イスラム国勢力の支持者たちも受け入れるようなシステマティックで透明性のあるプロセスを実施できるかどうかが問われている。これが実現しなければ、暴力の連鎖はさらにエスカレートしていく。・・・

ベネズエラが内戦に陥るのを阻止するには
―― 危機に対するラテンアメリカ流解決策を

2017年10月号

アドリアナ・エルタール・アブデヌール ポンティフィカル・カトリック大学教授
ロバート・マガー イガラッペ研究所 共同設立者

ベネズエラのマドゥロ大統領は権威主義体制をさらに強化し、いまやこの国の民主体制そのものが脅かされている。2017年には、最高裁が、野党が支配する国会の権限を奪い取ろうと試みた。その後、マドゥロは憲法改正を実現するための制憲議会招集のために、その是非を国民投票で問うと表明した。だが、その投票結果は改ざんされていたようだ。いまや数万のベネズエラ市民が、近隣のブラジルやコロンビアへと難を逃れるような危機的な社会状況にある。軍や警察内部の反政府派が、政府に対するクーデターへと向かっていることを示す兆候もある。地域内での緊張状態を自ら解決してきた経験を豊富に持つラテンアメリカにとって、いまや地域内の問題にラテンアメリカ流の解決策を用いるべきタイミングではないか。そうしないことの帰結は、ラテンアメリカにとって非常に大きなものになる。

ドライバーレスカーが経済と社会を変える
―― ユートピアかディストピアか

2017年10月号

ジョナサン・マスターズ CFR.org 副編集長

車に数万ドルもの金をかけて所有し、90%以上の時間は乗らずに置きっぱなしにするよりも、今後、多くの人は、必要な時にモバイルアプリで車を呼ぶやり方を選ぶようになるだろう。勝者となるのは、自律走行車によって時間と金を節約できるようになる普通のドライバーたちだ。特に、公共交通機関へのアクセスがない郊外や地方で暮らす高齢者や障害者は、自由に移動できるようになり、自立性を取り戻せる。交通事故や大気汚染に派生する問題や犠牲も抑え込めるようになる。世界最大でもっとも迅速な成長を遂げる自動車市場をもつ中国は、この側面で最大の恩恵を引き出すことができる。だがドイツ、日本、韓国、アメリカなどの、主要な自動車輸出国、そして産油国は大きなリスクにさらされる。・・・・

米天然ガス輸出が変える欧州の地政学
―― ロシア対アメリカ

2017年10月号

アグニア・グリガス アトランティック・カウンシル  シニアフェロー

2014年末にLNG輸入インフラを建設するまで、リトアニアはロシアからパイプラインで供給される天然ガス資源に完全に依存してきた。ロシアは、この状況につけ込み、政治的緊張が高まると、東中欧諸国向けの天然ガス価格を引き上げ、資源を政治ツールとして用いてきた。だが、いまやアメリカのLNGがヨーロッパ市場に流れ込み始めた。8月に実現したテキサス州からリトアニアへのLNG輸出は、アメリカが天然ガスをめぐるパワフルなグローバルサプライヤーとなりつつあることを示しているし、米企業はガスプロムの伝統的市場でも市場競争を積極的に展開していくつもりだ。これによって、米ロ間の地政学に新たな変数が持ち込まれる。ロシアというサプライヤーへ依存し続けることを長く心配してきたヨーロッパの資源輸入国は、その不安から解放されることになるだろう。

何が賃金レベルを停滞させているのか
―― ロボット税では問題は解決しない

2017年10月号

サヒル・マタニ ドイツ銀行バイスプレジデント
クリス・ミラー タフト大学フレッチャースクール准教授(国際史)

低賃金や失業をもたらすと言われているロボットに対して課税するというビル・ゲイツの提言に現実味はあるのか。ロボットに課税すれば、「オートメーション導入のペースを鈍化させ」、労働者の失業問題を社会的に管理できるようになると彼は主張した。だが、どのようなロボットに課税するかを事前に判断するのも、ロボット税の体系を決め、監督していくのもおよそ不可能だ。しかも、それはあらゆる国が奨励しているテクノロジー投資に対してペナルティを科すことになる。結局のところ、賃金レベルの停滞は、労働組合の衰退やアウトソーシング、そしてロボットが原因ではない。最近のマクロ経済の研究は、賃金レベルの停滞はロボットよりも、不動産価格の高騰や(独占や取引制限、競争制限などの)市場支配力に関係していることを示している。

トランプが日本に突きつけた課題
―― トランプ制御策を超えて

2017年10月号

彦谷貴子 コロンビア大学准教授(日本政治・外交)

これまで日本政府は「ドナルド・トランプを制御すること」に努め、市民もそうした政府のやり方を現実主義的な視点から支持してきた。だが、そのアプローチにも限界がみえ始めている。トランプが日本に突きつけているもっとも根本的な課題は、日本のこれまでの成長に大きな役割を果たしてきた「リベラルな民主的秩序がどうなっていくか」という側面にある。当然、日本は自由貿易体制を含む、リベラルな民主的秩序を維持していくための試みを強化していく必要がある。今後の日本は、アメリカが主導するリベラルな秩序の受益者としてではなく、むしろ、秩序を守るために全力を尽くし、アメリカをこの秩序につなぎとめる必要がある。

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