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に関する論文

コペンハーゲン・コンセンサス
――デンマークでアダム・スミスを読む

2008年4月号

ロバート・カットナー
アメリカン・プロスペクト誌共同編集長

現在のデンマークモデルの中核は、労働市場の柔軟性(フレキシビリティー)と雇用保障(ジョブ・セキュリティー)のバランスをうまく組み合わせた「フレキシキュリティー」という概念、つまり、労働市場の柔軟性と雇用保障を両立させていることにある。労使協調路線がとられ、極端に高い課税率も結局は、社会サービスとして市民に還元されている。世界でもっとも平等で社会格差が小さく、それでもきわめてリバタリアンな思想を持つこの国は、どのようにして平等と効率、社会的正義と自由貿易を両立させているのか。グローバル化がつくりだす問題に対処するために、資本主義国がデンマークモデルを取り入れる余地はあるのか。

独裁体制と経済成長に因果関係はあるのか
――ロシア権威主義経済モデルの虚構

2008年3月号

マイケル・マクフォール   スタンフォード大学民主主義・開発・法治センター所長
キャサリン・ストーナー=ウェイス  スタンフォード大学民主主義・開発・法治センター副所長

1990年代のロシアでは民主化が進められたものの経済が低迷し、逆にこの10年は独裁体制が強化されたのに経済は大きく改善している。 しかし、現在のロシア政府のパフォーマンスはきわめて低く、治安、公衆衛生、腐敗、財産権の保障という面でみれば、現在のロシアの暮らし向きは、10年前よりも相対的に悪くなっている。ロシアの国際的な経済競争力、進出先あるいは取引先としての経済環境も悪化し、情報公開は進まず、政治的腐敗も深刻になっている。原油、天然ガスなど、原材料価格の高騰がロシア経済の大きな追い風となっているのは事実だが、それだけの話だ。ロシアの独裁体制と経済成長の間に何らかの因果関係があるとすれば、独裁制が成長に悪影響を及ぼしているということだ。

北極の海氷後退と資源争奪競争
――地球温暖化の経済・安全保障的意味合い

2008年3月号

スコット・G・ボルガーソン 外交問題評議会国際関係フェロー

地球温暖化が進むなか、北極の海氷の後退が速いペースで進んでおり、いまや北極海の航行ルートが開けるかどうかではなく、いつそのルートが定期的な海洋運輸のためのシーレーンとして確立されるか、石油や天然ガスなどの魅力的な北極の天然資源の開発がどの段階で正式に可能になるかが注目されている。これほど権利関係が曖昧で、劇的に変化し、限りなき経済的ポテンシャルを秘めている海域はかつて存在しなかった。手つかずの資源と大きな経済的ポテンシャルを持つ北極地方が、大西洋と太平洋を結び、これまでよりも距離の短い航路で結ばれるとなれば、今後、この地域が国際政治の大きな争点とされることは間違いない。

「うまく経営されている企業が利害を有し、その本質を理解しているアジェンダに莫大な資源、専門知識、技能、マネジメントのスキルを投入すれば、他の組織や慈善団体よりもはるかに大きな社会的利益を導き出すことができる」。気候変動や水不足、感染症その他の地球の将来に大きな影響を与える問題に対処するうえで企業が応分の役割を果たすこと。これがグローバル・コーポレート・シチズンシップと呼ばれる概念の本質だ。たしかにグローバルアジェンダに対処するおもな責任は今も政府や国際機関にある。だが企業は、政府や市民社会グループと適切なバランスのパートナーシップを組んで、問題解決に大いに貢献できるはずだ。…グローバル・コーポレート・シチズンシップは社会における企業の前向きな役割を強化し、長期的な利益を高める企業の社会的関与の一形態であり、いずれ、企業をおもなステークホルダーに組み込んだ、新しいグローバル統治のモデルを示すこともできるようになる可能性を秘めている。

政府系ファンドとグローバル金融市場
――政府系ファンドは脅威なのか

2008年2月号

ロバート・M・キミット/米財務副長官

政府系ファンドが多くの注目を集めているのは、政府系ファンドの活動がグローバル経済を構造的に変化させる可能性を秘めているからだ。実際、投資を通じて他国の安全保障インフラや民間企業の経営に対して大きな影響力を持つようになる可能性もある。だが、これまでの行動から判断すると、政府系ファンドは政治的な論争を誘発するような行動を慎んでいる。政府系ファンドの投資活動が自由で公正な活動である限り、政府系ファンドからの投資に対して開放的な路線をとり、国内および外国での成長と繁栄を促進すべきだろう。むしろ、必要なのは、政府系ファンドとファンドの受け入れ国が適用できる一連の政策原則を国際的に確立することだ。逆に、最大の脅威は「投資保護主義」の台頭だろう。

Review Essay
エルサレム・シンドローム
――イスラエル・ロビーの力はなぜ過大評価されるのか

2008年1月

ウォルター・ラッセル・ミード 米外交問題評議会 シニア・フェロー

「アメリカがイスラエルに尋常でない物的援助と外交支援を行っているのはおもにイスラエル・ロビーの働きかけの結果であり、このように漫然と無条件の支援を行うのは、アメリカの国益に合致しない」。両国共通の戦略的利益や価値観が形骸化してきているにもかかわらず、アメリカがイスラエルと同盟関係を維持しているのは、そうした空白をイスラエル・ロビーが埋めているからに違いない。これがミアシャイマーとウォルトが『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』で言いたかったことなのかもしれない。だが二人は、ワシントンの特定の路線が、イスラエル寄りの政治活動の結果なのか、アメリカの政策や戦略的利益の関係を考慮した結果なのかを区別せず、間違った判断を下しているし、そもそも「イスラエル・ロビー」とは何かを明確に定義していない。

中国の台頭と欧米秩序の将来

2008年1月号

G・ジョン・アイケンベリー プリンストン大学ウッドロー・ウィルソン 公共・国際問題大学院教授

台頭途上にある大国は、新たに手にしたパワーを基に、自国の国益に即したものへと国際的なルールと制度を書き換え、グローバルシステムにおける、より大きな権限を手にしようと模索し、一方、衰退途上にある国は、影響力の低下を懸念し、それが、自国の安全保障にとってどのような意味合いを持つかを心配し始める。この瞬間に、大きな危険が待ち受けている。だが、新興大国が秩序に挑戦するか、それとも、自らを秩序に織り込んでいこうとするか、その選択は、目の前にある国際秩序の性格で大きく左右される。重要なポイントは、相手がアメリカだけなら、中国が(覇権国としての)アメリカに取って代わる可能性も排除できないが、相手が欧米秩序であれば、中国がそれを凌駕し、取って代わる可能性は大きく低下するということだ。ワシントンがそうした環境づくりに向けてリーダーシップを発揮するつもりなら、現在の秩序を支えているルールと制度の強化に努め、この秩序をより参加しやすく、覆しにくいものにしなければならない。

ミャンマー軍事政権への多国間アプローチを調整せよ

2008年1月号

マイケル・グリーン 戦略国際問題研究所日本部長
デレク・ミッチェル 戦略国際問題研究所上級研究員

麻薬・武器の密輸、HIVの拡散など、ミャンマーの軍事政権は国内の人権問題や抑圧だけでなく、国境地帯を不安定化させて近隣諸国も脅かしている。これまで、アメリカはミャンマーとの外交関係を制限し、ヨーロッパも政治改革の断行を強く求めてきたが、アジア諸国の多くは、軍事政権との貿易、援助、外交関係を拡大してきた。幸い、こうした国際社会の矛盾したアプローチも変化しつつある。東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本はすでにミャンマーへの建設的関与路線を見直しつつある。内政不干渉の原則を固持し、資源調達がらみの思惑からミャンマーを支援してきた中国とインドにも再考を促す必要がある。各国がそれぞれ一定の譲歩を示し、政策を調整することによって、共通の目標に向けて状況を進めていかなければならない。ミャンマー制裁を他の関与策とバランスよく組み合わせて包括的に実行しなければならない。ミャンマーがさらに孤立して自暴自棄に陥り、失われた世代が生まれるのを傍観するわけにはいかない。人道的な理由もさることながら、ミャンマーは東南アジアの安全保障と統合を阻む未解決の深刻な課題なのだから。

ロシアとの新冷戦を回避するには
―― なぜロシアは対米不信に陥ったか

2008年1月号

ディミトリ・K・サイメス ニクソンセンター所長

アメリカが犯した最大の間違いは、ロシアを「敗北したかつての敵」として扱ってしまったことだ。だが、ロシアは変貌を遂げた国ではあっても敗戦国ではなかった。ロナルド・レーガンがクレムリンへの圧力を強化することで、解体プロセスを後押ししたのは事実だが、ソビエト帝国の歴史に終止符を打ったのは、ホワイトハウスではなく、ゴルバチョフだった。この点を理解しなかったワシントンは、ロシアのことを潜在的なパートナーとしてではなく、財政力に欠け、機能不全に陥った弱体な国家とみなし、ソビエトの新生国家を可能な限りアメリカ側に取り込むことで、ソビエトの解体というトレンドをさらに間違いのないものにしようと考えてしまった。そしていまや、再生したロシアがアメリカの敵対勢力になるリスクは現実味を帯びてきている。そうした現実に直面するのを回避するには、ワシントンは何が問題だったのかを理解すべきだし、関係悪化という流れを覆すための適切な措置をとる必要がある。

CFRミーティング
ワールド・エネルギー・アウトルック
――石油の安定供給と地球温暖化対策

2007年12月号

スピーカー
ファティ・ビロル/国際エネルギー機関チーフエコノミスト
司会
デビッド・G・ビクター/米外交問題評議会 科学技術担当非常勤シニア・フェロー

現在のエネルギー消費路線を各国が変えなければ、2030年の二酸化炭素排出量は42ギガトンになり、この場合、地球の気温は6度上昇する。これでは人類社会はもたない。一方で、エネルギー利用効率が改善され、再生可能エネルギーや原子力エネルギーがより多く利用されるようになれば、二酸化炭素排出量は34ギガトンへと減少するが、この場合でも地球の気温は3度上昇する。一方、世界の指導者は排出量をもっと低下させたいと考えているし、何とか気温の上昇を2度に抑えたいと考えている。この場合、排出量を23ギガトンに抑え込まなければならないが、そのためには、2012年以降に建設される発電施設のすべてを二酸化炭素を排出しない施設にし、利用効率の改善レベルを2倍に引き上げ、排出削減を実現するための政治的意思と理解を世界規模でとりまとめる必要がある。これはいずれも非常に実現するのが難しい課題だ。(ファティ・ビロル)

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