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に関する論文

暫定合意でパレスチナ国家の樹立を
―― 最終地位合意よりも休戦ラインの暫定合意を優先せよ

2010年5月号

エフード・ヤーリ ワシントン中近東政策研究所国際フェロー

イスラエルとパレスチナの双方にとって、現状での最善の選択肢は、包括的和平合意という野心的な目標を捨てて、停戦ラインを暫定的に決め、パレスチナ国家を樹立することだ。そうすれば、状況も変化し、最終地位合意に向けた交渉の気運も高まる。パレスチナ側は、二国家(共存)解決策にすでに不信感を抱き始めており、政策の賞味期限は切れつつある。イスラエルを除外したアラブ国家の樹立という、イスラエルが受け入れるはずのない代替案もパレスチナでは取りざたされている。イスラエルは、パレスチナ指導層がこれ以上二国家解決策に対する不信を募らせる前に、休戦ラインと国家樹立に関する暫定合意を結ぶ必要がある。

「新しいヨーロッパ」のポテンシャル
―― リスボン条約で欧州の何が変わるのか

2010年5月号

アンソニー・ルザット・ガードナー 元米国家安全保障会議ヨーロッパ担当ディレクター
スチュアート・アイゼンシュタット 元駐EUアメリカ大使

すでにEU加盟国は、国連、全欧安保協力機構その他の国際フォーラムで、同じ投票行動をとっている。この行動パターンは今後も続くだろうし、リスボン条約というEUを束ねる支えができた以上、今後ヨーロッパはますます一貫性のある外交路線をとるようになる可能性がある。だが、「ヨーロッパ」がこれまで外交的ポテンシャルをうまく生かせなかったとすれば、それは、加盟国政府がそう望んだからに他ならない。つまり、リスボン条約によって手続きと制度が改善されたと言っても、加盟国が最小公倍数的な外交政策のコンセンサスしか目指さず、国の特権にしがみつくようであれば、条約の前提は満たされぬままに終わる。だが、長期的には、リスボン条約によって、EUはより一体性、凝集力に富む国際的アクターになり、その言動は、世界の諸国により大きな影響を与えることになるだろう。

核武装後のイランにどう対処するか

2010年4月号

ジェームズ・M・リンゼー 米外交問題評議会研究部長
レイ・タキー 米外交問題評議会シニア・フェロー

核開発プログラムは、今ではイランの国家アイデンティティを規定する重要な要素になりつつあり、テヘランは核兵器の開発をすでに決意している。イランが核武装して以降の悪夢のシナリオを描くのは簡単だ。「イスラエルは直ちに核兵器を発射できるように核の臨戦態勢に入り、イラン、イスラエルの双方が、数分間で破壊されるような状況に置かれる。エジプト、サウジアラビア、トルコが一気に核武装を試み、核不拡散条約は破綻し、世界中で核拡散潮流が起きる」。こうした悪夢のシナリオが現実になる可能性もある。だが、そうなるかどうかは、アメリカとイスラエルを始めとする他の諸国が、イランの核武装にどのように反応するかで左右される。

外交交渉や働きかけに応じることにイランの指導者が無関心であることを考えると、イランが核武装した場合にどうすべきかを考えておく必要がある。核武装したイランに対しては、封じ込め政策を取る必要がある。だが、イラン封じ込めは、軍事力行使の代替策ではない。それどころか、封じ込めの成功は、アメリカがイランに軍事力を用いるつもりがあるか、ワシントンが定義するレッドラインを越えた場合に、軍事力をバックにして恫喝策を取るつもりがあるかどうかで左右される。レッドラインを越えた場合に懲罰策をとるというコミットメントなしで圧力をかけても、失敗するのは目に見えているし、この場合、中東はさらに暴力に満ちた危険な場所になる。

CFR政策メモランダム
もしイスラエルがイランを攻撃すれば

2010年4月号

スティーヴ・サイモン 米外交問題評議会中東担当非常勤シニア・フェロー

「イランの核開発はイスラエルの存在を脅かす実存的脅威であり、イラン空爆作戦を実施してもアメリカとの関係が大きく動揺することはなく、一方で状況を放置すれば、民衆と国家が大きな危険にさらされる」。イスラエルがこう判断すれば、軍事行動をとるべきだという意見が趨勢になる。たしかに、核施設への空爆を実施しても、イランは核開発計画を立て直して再開し、今後は、核開発の多くを地下施設で進めて防衛態勢を強化し、イスラエルはこれに応じて情報収集・軍事能力を高めていかなければならなくなるだけだ、という考えもある。だが、核開発計画の完成を先送りし、時間を稼ぐことの価値も無視できないと考える人もいる。・・・イスラエルに自制を求める上でもっとも必要なのは、イスラエルを安心させ、彼らが一人だと感じさせないことだ。

さらなる台頭を目指すインドが克服すべきハードルとは
―― 政治、経済的台頭と対米関係

2010年4月号

エバン・A・フェイゲンバーム
米外交問題評議会アジア担当シニア・フェロー

インドは、経済成長を持続させるための国内改革への政治的支持を得ようと、格差対策として、社会保障制度の充実を試み、さらなる成長の基盤を整備するために、インフラ投資も増やしている。台頭したインドは、混乱の絶えない近隣地域よりも、むしろ、東アジアに目を向けるようになった。パキスタン以上に、中国を警戒するインドは、オーストラリア、日本、シンガポール、ベトナムという、同様に中国の台頭を警戒する諸国との関係を重視している。中国の強大化を警戒する東アジア諸国も、大きくて豊かなインドのことを、地域的なパワー・バランスの支えとみなしている。しかし、経済であれ、外交であれ、インドが今後のさらなる台頭を確実なものにしていくには、国内の教育・労働・治安問題を改善し、アメリカとの立場の違いを克服していく必要がある。米印は、アフガニスタン、パキスタン、中国をめぐって次第に明らかになりつつある立場の違いをうまく調整し、管理していく必要がある。

複雑系の崩壊は突然、急速に起きる
―― グローバル経済とアメリカという複雑系の将来

2010年4月号

ニーアル・ファーガソン ハーバード大学歴史学教授

歴史は循環的で、その流れはゆっくりとしか変化しないという考えがもし間違っていたら。周期性がなく、静的であるとともに、スポーツカーのように、急発進するとしたら。崩壊プロセスが数世紀という時間枠で進むのではなく、夜の泥棒のように、突然にやってくるとしたら。複雑系には一定の特徴がある。小さな刺激で非常に大きな、そして、しばしば予期せぬ変化が急激に起きることだ。グローバル経済はまさしく複雑系だ。格付け会社による米債券の格付けの引き下げといった、突然の悪い知らせが、緊急ニュースとしてヘッドラインを飾る日がやってくるかもしれない。今後を考える上で、非常に重要な鍵を握るのは、こうした突然の変化だ。過去の帝国や現在のグローバル経済のような複雑適応系では、それを構成する一部の有効性に対する信頼がなくなっただけでも、システム全体が非常に大きな問題に直面する。

CFRインタビュー
輸出を増やすのは為替か貿易自由化か
――環太平洋パートナーシップの実現を

2010年4月号

ゲリー・C・ハフバウアー 国際経済研究所シニアフェロー

オバマ大統領は2010年の年頭教書演説で、5年間でアメリカの輸出を倍増させることを目標にすると表明し、3月には関係閣僚会議、財界指導者による大統領輸出評議会の設置も決め、中国の人民元の切り上げの必要性にも言及している。確かに、1970年代に5年という時間枠で輸出が倍増したことはあるが、この時期にはインフレが起きていたし、実質為替相場が低下していた。したがって、輸出倍増目標を実現するには、かなりのインフレかドル安、あるいはその双方が必要になる。「為替の見直しをせずに、輸出を倍増できると考えるのはナンセンスだが」、中国が人民元の切り上げに応じるかどうかはっきりしないし、インフレにはなりそうにはない。むしろ、「自由貿易路線を進めることこそ、輸出入のバランスをとる最善の策だ」。各国との自由貿易協定を実現し、ドーハ・ラウンドを決着させるとともに、(アジア・太平洋自由貿易圏への道を開く)「環太平洋(戦略的経済)パートナーシップ」のような優れたプロジェクトを現実に立ち上げる必要がある。

ワシントンは、鳩山政権が普天間問題をめぐる結論を出すのに、もっと時間を与えるべきだ。より全般的には、民主党が選挙で勝利を収めたことを、アメリカが手助けをして蒔いた民主主義の種が日本で根を張ったことの証しとして、もっとも祝福して評価すべきだ。この点での認識ができれば、日本がペンタゴンの要請に対してこれまでのようにおとなしく従うと期待すべきではないこと、そして、日本の政党が安全保障問題をめぐって独自の見解をもつ権利を持っていることを理解できるようになるはずだ。・・・日本における米軍部隊と基地のプレゼンスを小さくしていく代わりに、日本政府は相互安全保障と世界の平和のためにより大きな貢献をしなければならないし、集団的自衛のための活動に参加する権利を持っているとはっきりと表明すべきだろう。

オバマ政権は「金融機関によるヘッジファンドなどへの危険な投資を許してはならない」と金融機関への規制強化案を発表し、米議会でも、金融規制法案の整備が続けられている。だが、CFRのエコノミスト、マーク・レビンソンは、現在の規制案では、システミックリスクの大きな要因を取り除けないと言う。システミックリスクの根っこは「証券に組み込まれた住宅ローンのデフォルトが増えてくると、証券そのものが焦げ付き始め、債券保険会社に巨額の保険金を支払う十分な資金がないのではないかとの懸念が広がり始めた」ことにある、とレビンソンは指摘する。そして「政府の危機管理担当者が遅ればせながら債券保証会社が問題に直面していることを認識した時、別の問題が出てきた。連邦政府はこの問題に関する情報をほとんど持っておらず、対応しようにもその手段を欠いていた。債券保証会社は州政府の監督下にあり、連邦政府は権限を持っていないからだ」。当然、規制案を見直して、保険産業への米連邦政府の監督権限を明確に確立しないことには、システミックリスクを取り除けず、米政府は「今後も危機に対応できないままだろう」と同氏は警鐘を鳴らしている。

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