中東における2011年革命のルーツと行方
―― スルタン体制の終焉
2011年5月号
ムバラク、ベンアリのような中東におけるスルタン主義の独裁者は、個人の権力と権限を維持していくことにしか関心はない。従順な支持者を主要ポストに据え、制度の頭越しに政治を行う。水面下で富を蓄え、この資金を用いて指導者への忠誠を買う。いかなる形で国に資金が流れ込もうと、そのほとんどは、スルタンとその仲間内の懐へと流れ込む。軍を分裂させて、軍事エリートを自分の管理下に置く。だが、スルタン主義独裁制の下で、経済が成長し、教育制度が整備されてくると、状況に不満を抱き、「こうあるべきだ」と考える人が増え、警察による監視体制や権力乱用に対する反発も大きくなる。民衆を手なずけることを目的に体制側が実施してきた補助金その他のプログラムのコストが上昇すれば、大衆を政治から遠ざけておくのは難しくなり、軍の一部も状況への不信感を強める。これが中東革命の背景だった。これからどうなるか。スルタン体制の歴史をひもとけば、今後の展開が、考えられているよりも明るくも暗くもないことがわかるだろう。
