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に関する論文

Foreign Affairs Update
サイバー諜報とネットワーク破壊の垣根はない
―― バーチャル諜報から物理的破壊へ

2013年6月号

リチャード・ベイトリック/マンディアント チーフセキュリティオフィサー

それがいかなるものであれ、諜報活動は深刻な問題を伴うが、サイバー空間での諜報活動が、現実世界におけるそれとは違っていることを理解していない人もいる。侵入者が、サイバー諜報に必要とされるのと同じツールで「デジタルな破壊」をなし得ることを理解している人はほとんどいない。要するに、敵がコンピュータシステムに入り込んだ場合、そのダメージがどの程度のものになるかは、敵の意図次第なのだ。これまでのところ、サイバー戦争の具体例として広く受け入れられているのは、イランの核施設に対する「スタックスネット」による攻撃だけだが、サイバー諜報がサイバー戦争に迅速に姿を変えることを理解する必要がある。自分のネットワークへの侵入を速やかに突き止め、それが何であれ、侵入者が目的を果たす前にシステムから排除しなければならない。もはや、「それがサイバー諜報である限り、侵入者の活動は許容できる」という虚構に逃げ込むことはできない。

最近、ウィキペディアは、ブラジルのリオデジャネイロの3人の研究者が開発したプログラミング言語「ルア」をシステムとして採用した。IT技術を支える「エコシステム」を国内にもたない途上国発のIT言語が、ウィキペディアという世界的組織に採用されたのは画期的な展開だが、そこにいたる道程をみると、途上国の技術者が直面する障害が浮かび上がってくる。途上国の技術者が世界で成功するには、技術開発と市場化の「エコシステム」をもたない国内から巣立ち、まず世界で成功を収める必要がある。外国に出るのは危険な坂道に足を踏み入れるようなもので、不利な場所に住み、不利な言語を使い、不利な制度のなかで開発を続けなければならない。それでも、彼らは外国に目を向け、世界中で使われている同じテクノロジーを用いて問題を解決しようとした。そうするしか成功する方法はなかったからだ。・・・

Foreign Affairs Update
北京は近く経済改革に着手する
―― 改革の必要性が障害を克服する

2013年6月号

エバン・A・フェイゲンバーム/シカゴ大学ポールソン研究所副所長
ダミアン・マ/シカゴ大学ポールソン研究所フェロー

「経済改革に踏み切れば、パワフルな既得権益層の抵抗と反発はさけられなくなる。環境汚染問題や土地接収問題を前に民衆の不満が高まりをみせていることも改革を難しくしている。改革は短期的には経済を不安定化させ、社会不安をさらに高める危険を伴うからだ」。多くの専門家がこう考え、中国における経済改革の可能性を否定的にとらえている。だが、90年代末に中国が経済改革を実施していることを思いだすべきだ。朱鎔基が手がけた改革のケースからみても、「政治への信頼性の危機、世界の経済・金融危機に対する脆さへの認識、そして変革の必要性を認識する指導層の存在」という三つの条件が揃えば、中国は大胆な改革に踏み切る可能性があるし、いまやこれらの条件が満たされつつある。習近平と李克強は改革が必要であることをすでに明確に認めている。おそらく、2013年秋の中央委員会第3回総会で改革アジェンダが公表されることになるだろう。

なぜインドは大国とみなされるのを嫌がるか
―― 戦略なき新興大国の苦悩

2013年6月号

マンジャリ・チャタジー・ミラー/ボストン大学アシスタントプロフェッサー(国際関係論)

大国の地位を手にいれたいと望む国は、戦術的な課題を越えて、自国の利益にもっともフィットする世界をイメージし、そのビジョンを現実にしようと試みるものだ。だがインドの外交指導者たちはそうした大国へのビジョンをいまだに描いていない。その理由は、「影響力が拡大すれば、そのパワーに応じた責任を果たさなければならなくなる」と警戒しているからだ。大国になれば大きな責任を引き受けなければならなくなることをインドは嫌がっている。この状況が続く限り、多くの人が期待するような国際舞台での役割をインドが果たすようになることはない。自国の具体的な利益がかかわる狭い領域での国際的役割程度なら受け入れるかもしれないが、よりグローバルな役割を果たすように求める抽象的な呼びかけに、インドが耳を貸すことは現状ではあり得ない。

追い込まれたエルドアン首相
―― もはやトルコ大統領への夢は潰えたか

2013年06月

ハリル・カラベリ
ジョンズホプキンス大学ポールニッツ・スクール附属
中央アジア・カフカス研究所シニアフェロー

多くの人が指摘するとおり、トルコ政府が発表したイスタンブール中心部の再開発計画をきっかけに起きた反政府デモをイスタンブールやその他の都市で主導しているのは世俗派リベラルの中間層だ。だが、この運動の背景にはエルドアンの強引な権威主義路線、イスラム化路線の高まりに対する反発がある。こうした路線に反発しているのはリベラル派だけではない。AKPの主要な支持基盤である宗教保守派も、中道右派も彼に反発している。最近、エルドアン政権は 飲酒やアルコール飲料の販売や宣伝に関する規制を新たに強化し、その後、今回のデモが起きている。憲法を修正し、大統領により大きな権限をもたせるというエルドアンの計画は、ほぼすべての権限を、彼が手に入れたいと考えている大統領ポストに集中させ、他の政治ポジションの力を去勢するのが狙いだった。だが、数多くの大統領選挙に関する世論調査をみても、すでにギュルがエルドアンをリードしている。タクシム広場の騒ぎのなかから、最終的な勝者として姿を現すのはギュル現大統領とおそらくは再生したAKPになるだろう。

ビッグデータの台頭

2013年6月号

ケネス・クキエル
ビクター・メイヤー=ションバーガー
エコノミスト誌データ・エディター
オックスフォード・インターネット研究所教授

歴史のほとんどの時期を通じて、われわれは比較的限られたデータを前提にものを考えてきた。そのような時代に重視されたのがサンプリングだ。ランダムに抽出されている限り、選挙の出口調査のように、サンプリングで全体を推し量ることができた。だがビッグデータの台頭によって、かつては量的に計測できなかった世界をデータ化できるようになった。これによってわかるのは、なぜ現象が起きているかの因果関係ではなく、あくまで相関関係だ。例えば、カナダの医療チームは、未熟児の心臓の鼓動、血圧、呼吸、血中酸素のレベルを含む16の重要な兆候をデータ化し、病気の発症を予見することに成功している。誰が法に触れる行為を行いそうなのか、どのビルで火災が起きそうなのかも、ビッグデータで量的に計測されつつある。ビッグデータは政府の機能、そして政治の本質も変化させることになるかもしれない。だが、それが社会を監視する政府の力を強め、ビッグデータ権威主義を出現させる恐れもある。・・・

なぜアメリカの教育は失敗したか
―― 諸外国の成功例に学ぶ

2013年6月号

ジャル・メータ
ハーバード大学教育大学院アシスタントプロフェッサー

アメリカの小・中・高校生の3分の2以上は読解力や情報の暗記といった基本的スキルは身につけているが、情報の応用や分析をうまくこなせるのは、その3分の1にすぎない。世界的に見ても、高度な思考力という指標では、アメリカの生徒は中レベルの評価に甘んじている。問題は、(生徒の学力について)教師と学校の説明責任を政府が問うことで、子供の学力を高めようとしていることだ。これに対して、実際に子供の学力が高い諸国は、現場に投資することで、教育体制の「品質管理」を実現している。こうした諸国では生徒の学力が高まると、政府の教育投資への世論の支持が高まり、教師という仕事の魅力も高まるという好循環が存在する。工場労働が全盛期の時代に作られたアメリカの学校制度は、21世紀の経済が要求する複雑な学習と批判的思考を生徒たちに身につけさせる内容と体制になっていない。ゼロから新しいシステムを構築し、教師の仕事を高度な専門職として位置づけて、教職を再確立する必要がある。

アフリカの経済ブーム
―― なぜ楽観論と悲観論が共存しているか

2013年6月号

シャンタ・デバラジャン
世界銀行チーフエコノミスト(アフリカ担当)ウォルフガング・フェングラー
世界銀行リードエコノミスト
(エリトリア・ケニア・ルワンダ担当)

力強いマクロ経済政策を導入したアフリカ諸国は、グローバル経済危機前にピークを迎えていた資源ビジネスブームを追い風に成長を続け、ブーム崩壊後も、失速を逃れた。楽観主義者は、このトレンズに注目して、アフリカの経済ブームは今後も続くと考えている。だが、経済成長の多くが政治改革によって刺激されているのは事実としても、より永続的なアフリカ経済の変革を妨げる障害も政治領域にある。こうして悲観論者は、資源輸出が低調になったときに経済を支えるような抜本的な改革をアフリカ各国が実施していないこと、そして、政治腐敗がインフラ、教育、医療面での改善を阻んでいることを問題視している。楽観論、悲観論のいずれも、すべての側面は見通せていない。だが、今後数十年のアフリカを言い当てているのはむしろ楽観論のほうかもしれない。情報とコミュニケーション技術の進化が促す社会的開放によって、アフリカが経済成長を持続し、貧困層の削減に今後も成功する可能性は十分にある。

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