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米国に関する論文

漂流する日本の政治と日米同盟

2011年9月号

エリック・ヘジンボサム ランド研究所シニア・ポリティカルサイエンティスト
エレイ・ラトナー ランド研究所アソシエート・ポリティカルサイエンティスト
リチャード・サミュエルズ マサチューセッツ工科大学教授

もはや日米関係が未来を明確に共有しているとは言い難い。改革によって(官僚主導から政治主導への)制度上の明確な権限移譲が実現するどころか、むしろ政治家の抗争、政治家と官僚の抗争が誘発され、その結果、権力の空白が生じ、政府の政策決定能力が損なわれている。これが日米関係、日米同盟にとって何を意味するかを考えなければならない。アメリカは日本に国益を有しているし、日本が困難な状況に陥った場合には、手を差し伸べる道義的な責任も負っている。だが、日本の先行きは依然として不透明で、しかも、いまや国防予算削減の時代にある。ワシントンはアジアにおける重要な目標を定義し、それに応じて資源を振り分けていくことを考えるべきだ。日米同盟を守っていくのが最優先課題でなければならないが、ワシントンは他の地域的なパートナーとより緊密に協力していく態勢を整えておくべきだろう。

米財政を左右する医療保険制度改革

2011年9月号

ピーター・R・オルザック シティグループグローバルバンキング担当副会長

現在から2050年までに、連邦政府の医療関連支出はGDPの5・5%から12%以上にまで増大し、財政を大きく圧迫する。国際社会におけるアメリカのポジションは、この医療コストの爆発的な増大をうまく管理できるかどうかに左右される。この問題をうまく管理できなければ、アメリカは厳しい財政危機に直面するか、医療部門以外への投資能力を失う事態に追い込まれる。医療制度を根本的に見直し、エビデンスと医療の質に基づき、医師を含む医療プロバイダーがより良いツールを患者に提供し、医療の価値と質を高めるインセンティブを持つような医療制度を形作る必要がある。現在の医療保険制度改革がうまく機能すれば、2028年以降は医療改革法によって連邦政府の医療支出全体が少しずつ減少し始める。だが、そこにたどり着くには、非常に困難で複雑なプロセスをクリアしていかなければならない。

CFRミーティング
アジアの米軍基地再編と沖縄
―― 普天間移設問題に関する米議会の立場

2011年8月号

ジム・ウェッブ 米上院外交委員会東アジア・太平洋小委員会 委員長、元米海軍省長官

何年もかけてまとめた外交合意を変更するには、具体的な代替策が必要になる。そこで、私とレビン上院議員が(普天間の移設問題に)介入した。われわれはグアム、沖縄、東京で、米軍及び相手国・現地の関係者から意見を聞いた。その後、まとめた提言では、普天間の海兵航空隊機能を嘉手納空軍基地に移して統合すれば、手詰まり状況を打開し、よりタイムリーにコスト面でもより効率的に問題に対応できると指摘した。われわれは嘉手納空軍基地の規模の削減も提言したが、この点は日本のメディアではほとんど報道されなかったようだ。嘉手納基地から削減される戦力を、日本における他の空軍基地、現状では機能の半分も使用されていないグアムのアンダーソン空軍基地に移すこともできる。(ジム・ウェッブ)

Review Essay
都市設計を考える
―― 都市と郊外の対立と融和

2011年8月号

サンディー・ホーニック ニューヨーク市都市計画局戦略コンサルタント

歴史的に都市開発にはさまざまな思想があった。19世紀には都市の美化運動と田園都市運動が大きな流れを作り出した。建物のデザイン、彫刻に芸術的要素を取り入れることを求めた都市の美化運動は公共建築部門で大きな流れを作り出したが、住民が都市にいながら田園生活を送れるようにすることを目的とする田園都市運動は定着せず、結局、郊外という概念が形成された。ここに都市と郊外という複雑な関係が生じた。ときに対立しつつも、いまや、ほとんどの人々が郊外の好きな場所に住みながら、仕事をし、食事をし、買い物をする場所についてこれまでよりも豊かな選択肢を持てるようになり、都市の中枢と郊外は相互補完的な存在になりつつある。だが、ここにいたるまでには伝統的な都市を再開発する必要があると考えたフランク・ロイド・ライトを始めとする偉大な都市開発の理論家、また、都市は完璧ではないからこそ面白いと考える専門家など、都市計画はさまざまな思想的変遷を経験している。

CFRインタビュー
米格付け引き下げは何を引き起こすか
―― さらなる新興国の台頭か、米経済の再生か

2011年8月号

ケント・ヒューズ ウッドロー・ウィルソン・センター プログラムディレクター

一定の対策は採られたが、ヨーロッパの主要銀行が問題に関与しない限り、ギリシャのソブリン債務の解決はあり得ないと多くの専門家はみている。中国はインフレ問題を抱え、対応に追われている。一部地域では住宅バブルが生じ、生活コストが上昇している。ブラジル経済は中国と比べれば安定しているが、同様にインフレリスクを抱えている。アメリカ経済は、赤字削減をどう進めていくかについて大きな不確実性が残されているとはいえ、依然としてその金融市場は奥深く、力強いと考えられている。格付けが引き下げられても、米国債の魅力が大きく色あせることはない。最終的には、議会もアメリカが直面している長期的な財政・債務問題に対処していくだろう。むしろ、格付け引き下げによって、財政赤字・債務問題への政治的対応が刺激される可能性が高い。すでに格付け会社は米議会の関係者に対して、なぜ格付けを引き下げる可能性があるかについて話をしている。当面は、ドルが最善の投資対象とみなされるはずだ。(K・ヒューズ)

CFRブリーフィング
「リスクフリー」の輝きを失った米国債

2011年8月号

フランシス・E・ウォーノック 米外交問題評議会国際金融担当非常勤シニアフェロー

世界の準備通貨としてのドルが地位を失っていくには、いくつかのステップが必要になるが、その一部が現実になるのをわれわれは近く目の当たりにすることになるかもしれない。世界のリスクフリーな資産を危険にさらした政府が、今後も赤字と債務の削減に向けた実体を伴う対策をとらなければ、ドルへの信頼が回復することはあり得ない。ドルへの信頼が低下すれば、投資家は、価値を蓄えておくどこか別の場所を探し始め、価値を創造してくれる他の借り手を探し始めるはずだ。・・・

サイバー防衛の柔軟性とアクティブ・ディフェンス
――ペンタゴンの新サイバー戦略とは

2011年7月号

アダム・シーガル 米外交問題評議会・対テロ・国家安全保障担当シニアフェロー

米政府のネットワークをターゲットにした洗練されたサイバー攻撃に対する人々の懸念が高まるなか、ペンタゴンは7月中旬に「サイバー空間における作戦計画に関する新戦略」を発表した。だが、公開された戦略には目新しい部分はほとんどない。サイバー防衛面での同盟諸国との国際合意、国際協調、パートナーシップについてははっきりと指摘されているが、これらを別にすれば、新しい要素はない。ウィリアム・リン国防副長官が2010年9月にフォーリン・アフェアーズで発表した論文で、これらのほぼすべては指摘されていたし、そうでないものについては、事前にプレスリリースされていた。つまり、戦略をリリースしたのは「アメリカはサイバー空間を軍事化するのではないかという諸外国の懸念」を低下させることが大きな狙いだったようだ。これを別にすれば、サイバー攻撃を受けて劣化したコミュニケーション環境でも活動を継続する柔軟性を確保するという重要な概念が示されている。だが、「アクティブ・ディフェンス」という概念が、ハッカーにとっての攻撃コストを引き上げることになるかどうかは、わからない。・・・・

「カダフィを権力ポストから追放するというアメリカの政策目的」と「それを実現するために進んで何をするか」の間に大きなギャップが存在する。このため、アメリカ政府は大きな混乱に直面している。短期的には目的を引き下げて、状況を安定化させるしかない。停戦を強く求めるべきだし、これ以上多くの人命が失われないように手をつくす必要がある。このためなら、当面、カダフィが権力ポストに居座り続けるのを認め、この間、リビアが短期的に二つに分断されることになっても仕方がないだろう」(R・ハース)

中国の現状と米中関係
―― 外交強硬路線と国内での人権弾圧

2011年6月号

ジョン・ポムフレット
米外交問題評議会
中国担当非常勤シニアフェロー

新指導層への権力移行プロセスがすでに始まっていることと、おそらく関係があるかもしれないが、中国はなぜ2年ほど前から対外的な強硬路線に転じたのか、その理由はいまもはっきりしない。だが、その悪影響が北東アジアのパワーバランスを微妙に変化させている。北朝鮮がチョンアン号を撃沈したときも、ヨンピョン島を砲撃したときも、中国が北朝鮮の行動を批判しなかったために、中韓関係は大きく冷え込んでいるし、日本との関係、ベトナムとの関係も依然として緊張している。一方で、クリントン長官が批判したように、中国は国内での人権弾圧を強めている。次期国家主席と広くみなされている習近平は、年内にワシントンを訪問する予定だが、ナショナリズム志向が強いと警戒されている部分もある。米中の軍事関係も経済関係もスムーズとは言えない。・・・「米中関係はすばらしく良好になることは決してあり得ないが、崩壊することもない」という朱鎔基の発言は、いまも現実を言い当てている。

米ポピュリズムの歴史と今日的意味合い
―― ティーパーティー運動が揺るがすアメリカの政治と外交

2011年5月号

ウォルター・ラッセル・ミード アメリカン・インタレスト誌コントリビューティング・エディター

ポピュリストの政治的エネルギーが高まる一方で、主流派メディア、外交エスタブリッシュメントに始まり、金融企業、一般企業の経営陣、そして政府にいたるまでの確立されたアメリカの組織への信頼が失墜しつつある。現在のポピュリスト運動の代名詞であるティーパーティー運動は、彼らが「憶測を間違え、腐敗している」とみなす各分野の専門家に対する反乱とみなせる。しかも、2010年3月にアメリカで実施された世論調査では、回答者の37%がティーパーティー派を支持すると答えており、これは、少なくとも1億1500万のアメリカ人がティーパーティー運動になんらかの共感を示していることを意味する。アメリカの政策決定者、そして外国政府の高官たちは、アメリカ政治における主要な勢力であるポピュリストを十分に理解せずして、もはや米外交に関する適切な判断を下すことができなくなっていることを認識する必要がある。

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