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米国に関する論文

北朝鮮の核戦力の現状
―― ICBMによる核ミサイル能力は完成していない

2018年1月号

ジークフリード・S・ヘッカー 前米ロスアラモス国立研究所 所長

核分裂性物質の生産、核爆発装置の製造、そしてさまざまなタイプのミサイル開発をめぐって大きな進展を遂げている以上、北朝鮮はこれらを一つにまとめて核戦力を完成させ、ワシントンに対する抑止力を形成したのだろうかと懸念しても不思議はない。北朝鮮が、韓国や日本に到達可能なミサイルに核弾頭を搭載できることはほぼ間違いない。しかし、ICBMを用いた攻撃に必要とされる核・ミサイル能力をマスターするには、少なくとも後2年間の実験が必要だと私は考えている。一方で、このタイミングで外交交渉の機会が生まれていることを見落としてならない。

金正恩とICBM
―― なぜ必要なのか、完成のタイミングはいつか

2018年1月号

ジェフリー・ルイス ミドルベリ国際問題研究所 スカラー

日韓の駐留米軍に対して核兵器を使用するという恫喝は、北朝鮮に対米直接攻撃能力がなければ信頼できるものにはならない。北朝鮮の核戦略にとって、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発が不可欠なのはこのためだ。すでに北朝鮮はICBMに搭載できる核弾頭の小型化には成功していると考えられ、むしろ、残された課題は宇宙空間に打ち上げられた後に地球の大気圏に再突入する軌道で核弾頭が遭遇する衝撃や振動、極度の高温に耐えられるようにできるかどうかだ。大気圏再突入の際に発生する極度の高温から弾頭を保護する「再突入体」の耐久性が必要になる。この意味では、北朝鮮は依然としてICBMを完成させてはいない。しかし、そう遠くない将来に、北朝鮮がICBMの開発に成功する可能性は高い。

人工知能と中国の軍事パワー
―― 戦場の「技術的特異点」とは

2018年1月号

エルサ・B・カニア 新アメリカ安全保障センター 非常勤フェロー(テクノロジー&国家安全保障担当)

今後数十年もすれば、人工知能(AI)が戦争の概念を変化させるかもしれない。2017年6月に中国電子科技集団は119台のドローンによる編隊飛行を成功させ、世界記録を更新した。紛争になれば、中国軍が安価なドローン編隊で、空母のように高価なアメリカの兵器プラットフォームをターゲットにするかもしれない。AIとロボティクスが戦争で広く応用されるようになれば、AIの急激な技術成長が刺激され、人間の文明に計り知れない変化をもたらす「シンギュラリティ=技術的特異点」が現実になると予測する専門家もいる。この段階になると、AIを導入した戦闘が必要とするスピーディな決断に人間はついていけなくなるかもしれない。軍は人間を戦場から引き揚げ始め、むしろ監視役に据え、無人システムに戦闘の大半を遂行させるようになるかもしれない。

経済戦争時代と制裁
―― 抑止力としての経済制裁に目を向けよ

2018年1月号

エドワード・フィッシュマン 前国務省政策企画本部 経済制裁担当リードエキスパート

一部の諸国は、大国間戦争を引き起こさないように配慮しつつも、リベラルな世界秩序への挑戦を試みるようになり、もはや経済領域での抗争は避けられなくなっている。ワシントンがより多くの制裁措置を発動する政治的動機も高まっている。制裁措置は、イランの核開発など、「すでに存在する問題行動」を見直させる上で一定の成功を収めているが、いまや制裁を通じて「未来の問題行動」を抑止することを考えるべきだ。ここにおける課題は、危機が起きる前に、ワシントンの官僚たちが制裁システムを設計したことはなく、同盟諸国と制裁について事前に交渉したこともないことだ。しかし、いまや国際的軋轢の多くが生じているのは「戦争と平和の間のグレイゾーン」であり、この領域におけるもっともパワフルな「抑止力としての制裁システム」を確立する必要がある。

民主体制を権威主義国家の攻撃からいかに守るか
―― モスクワの策略に立ち向かうには

2018年1月号

ジョセフ・R・バイデン 前米副大統領
マイケル・カーペンター 前米国防副次官補

ロシア政府は政治腐敗まみれの泥棒政治システムを守ろうと、その生存を外から脅かす最大の脅威と彼らがみなす「欧米の民主主義」に対する国境を越えた闘いを挑んでいる。欧米を攻撃することで国内の政治腐敗や経済的停滞に人々が目を向けないようにし、ナショナリズム感情を煽り立てて国内の反体制派を抑え込み、民主主義国家を守勢に立たせることで欧米諸国が国内の分断線対策に専念せざるを得ない状況を作り出そうとしている。この環境なら、モスクワは国内の権力基盤を固めることに専念し、「近い外国」に対して思うままに影響力を行使できる。だが、プーチンとその取り巻きたちは、アメリカの民主主義の最大の強さは市民の政治参加にあることを理解していない。米大統領が対策を拒んでも、われわれが行動を起こす。

中国は北朝鮮を見限っている
―― 半島有事における米中協調を

2018年1月号

オリアナ・スカイラー・マストロ ジョージタウン大学外交大学院 アシスタント・プロフェッサー(安全保障研究)

この20年間で、中国と北朝鮮の関係は大きく悪化し、かつての朝鮮半島有事をめぐるシナリオはもはや時代遅れになっている。米軍の大規模な作戦行動を伴う戦争が差し迫った事態になれば、恐らく、米軍よりもはるかに早いタイミングで、中国軍が半島に介入して北朝鮮の核サイトを管理下におくだろう。認識すべきは、(中国軍が核サイトを確保すれば)崩壊途上の平壌がアメリカやその同盟国に対して核攻撃を試みるリスクを低下させることだ。いまや北京と北朝鮮とのつながりは弱く、中国の介入目的が「自国の利益を確保すること」にあるとしても、米中は共有基盤を見いだせるかもしれない。前向きに考えれば、アメリカは中国の介入を利用して、第二次朝鮮戦争のコストと期間をむしろ低下させられるかもしれない。

対北朝鮮経済制裁を検証する
―― 制裁に意味はあるのか

2017年12月号

エレノア・アルバート www.CFR.org ライター

北朝鮮に対する経済制裁が強化されているが、望むような結果を手にできるかどうか、疑問視されているのも事実だ。実際、2016年に北朝鮮経済は4%の成長をみせ、過去17年間でもっとも急速な成長を遂げている。制裁は、平壌を非核化交渉のテーブルに引き戻すことを目的としているが、交渉では非核化は実現しないと考える専門家は多い。北朝鮮は、いかなるコストを支払ってでも核の兵器庫を維持していくつもりだ。こうなると、経済制裁に意味はあるのかという考えも浮上する。一方で、北朝鮮を核武装国として実質的に認めるのも、軍事攻撃するのも完全な選択肢にはなり得ない。結局、北朝鮮を平和的に非核化する上での残された唯一の希望は、武装解除し改革をしない限り、滅亡が待ち受けていることを平壌に納得させることだが、問題はいかにしてそれを実現するかにある。

民主国家を脅かす 権威主義国家のシャープパワー
―― 中ロによる情報操作の目的は何か

2017年12月号

クリストファー・ウォーカー 全米民主主義基金 副会長(分析・研究担当)
ジェシカ・ルドウィッグ 全米民主主義基金 リサーチオフィサー

民主国家をターゲットにするロシアの情報操作の目的は、アメリカやヨーロッパの主要国を中心とする民主国家の名声そして民主的システムの根底にある思想を多面的にかつ容赦なく攻撃することで、自国をまともにみせることにある。一方、中国の情報操作は、問題のある国内政策や抑圧を覆い隠し、外国における中国共産党に批判的な声を可能な限り抑え込むことを目的にしている。権威主義国家の対外的世論操作プロジェクトは、ソフトパワー強化を目指した広報外交ではない。これをシャープパワーと呼べば、それが悪意に満ちた、攻撃的な試みであることを直感できるだろう。その目的は民主国家の報道機関に(自国に不都合な情報の)自己規制(検閲)を強制し、情報を操作することにある。

イスラム国後のイラクと中東
―― イラク国家の再建で中東秩序の再建を

2017年12月号

エマ・スカイ イェール大学グローバル問題研究所 シニアフェロー

トランプだけでなく、アメリカ人の誰もが、イラクへの関与を終わらせたいと考えているだろう。しかし、かつてイラクの崩壊が現在の中東秩序の解体をもたらしたように、イラクで起きることが中東全体に大きな余波をもたらすことを忘れてはならない。逆に言えば、中東のパワーバランスを回復する上でもっとも重要な要因は、イラクの安定化ということになる。地域諸国が依然として混乱のなかにあるイラクの権力の空白を埋めていくのを阻止するには、この国を強くしなければならないし、そのためには依然としてアメリカの支援が必要だろう。

シリア内戦後を考える
―― アメリカに何ができるのか

2017年12月号

ロバート・S・フォード 元駐シリア米大使

イスラム国勢力の衰退によってシリア内戦が終わりに近づいても、アサド政権と反政府勢力やクルド人勢力との新しい紛争が待ち受けている。特に、西部からデリゾールにかけての「イランとロシアが支援するシリア政府軍」と、デリゾール東部を支配している「アメリカが支援するシリア民主軍」がいずれ戦火を交えることになるかもしれない。ワシントンも決断を迫られる。撤退すべきかどうか、撤退するとすれば、いつどのように撤退するかを決めなければならない。アサド政権を支援するイランがシリアでの影響力を高め、ロシアもプレゼンスを確立している。ここでシリア民主軍、クルド人勢力を助ければ、アメリカは新しい紛争に巻き込まれることになる。・・・

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