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米国に関する論文

レビュー・エッセイ
核の存在理由を問い直せ

2001年8月号

ロバート・ジャービス  コロンビア大学国際政治学教授

アメリカの安全保障政策をうまく機能させるには、その政策を国際社会が受け入れて認めることが前提だが、現実には世界の多くの諸国が、(北朝鮮やイラクよりも)むしろアメリカのことをならず者の超大国と見ている。ミサイル防衛構想に関連して、大量破壊兵器、ならず者国家、テロリズムに対する脅威認識が高まっているのは、アメリカの安全保障に対する伝統的な脅威が存在しなくなったためであり、これらが現実上の問題だからではない。外交政策の一手段として核兵器が存在するわけで、その逆ではないことを認識し、核兵器がどのように外交を利するかが、核の論争の基本テーマでなければならない。

いまそこにあるサイバー攻撃という危機

2001年8月号

ジェームズ・アダムズ  米国家安全保障局諮問委員

今日の情報戦争は、ハッカーたちが敵対する相手国のコンピューター・ネットワークを機能不全に陥れるという戦闘形態を特徴とする。これこそが、軍事力ではアメリカに遠く及ばないことを悟った他の諸国がアメリカの弱点であるコンピューター・ネットワークを攻撃するという「非対称戦争」である。しかも、サイバー戦争には、法的境界線もなければ、地理的な境界線も存在せず、一般に入手可能な技術で、アメリカの戦争遂行能力を簡単に機能麻痺に陥れることができる。

国際法は戦争犯罪をどこまで追い込めるか
~国際法と国内法のあいだ~

1999年3月号

ジョン・R・ボルトン アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所 上席副会長

戦争犯罪、大量虐殺、人権弾圧などの、世界の他の地域での「非人道的犯罪」に対するマスコミや市民権運動家たちの関心は高まる一方だ。一部には、「人間性に対する犯罪は、もはや虐待行為が行われた国だけの問題ではない」のだから、国際法をつうじて一律に処罰すべしという声も出てきている。たしかに、民意を代弁できる世界政府(あるいは国際機構)、そして世界憲法(あるいは強制力を伴う国際法)が存在すれば、特定の国家の内部で起きた非人道的事件をグローバルな規模でとりしまり、処罰するのも可能になるかもしれない。しかし、現実にはそのようなものは存在しないし、それが実現する見込みもない。国家は憲法を持ち、その憲法を軸に政府が秩序を維持し、しかも、政府がそうする権限は選挙をつうじた民意に支えられている。これを世界規模へと広げるのは、事実上不可能であることを認識した上で、問題に対応するしかない。だが、われわれはいずれ「憲法」と「国際法」のせめぎ合いの時代が到来する可能性に備えるべきだろう。

米欧対立の行方

2001年8月号

ウィリアム・ウォレス  英自由民主党・防衛問題担当スポークスマン

ヨーロッパ人は重荷を共有するのなら、決定責任も共有すべきだと感じている。自らのリーダーシップを通じて戦略を決めておきながら、そのリスクに伴う代価を支払おうとしないワシントンの姿勢ゆえに、アメリカは同盟諸国の尊敬や支持を失いつつある。アメリカが政治・軍事領域での問題を過度に重視し、特に潜在的な敵勢力探しに躍起になっているのに対して、ヨーロッパ側はもっぱら経済問題を気にかけており、その結果、脅威の認識をめぐる米欧間の考えが明確に違ってきている。EUの拡大という見通しやNATOの拡大によってEUの能力が強化され、北米とヨーロッパ諸国の外交利益が違ってきている以上、米欧パートナーシップを再定義する必要がある。

さらば、アダム・スミス
――貿易指標はもう時代遅れ

2001年8月号

ジョセフ・クインラン モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター上級エコノミスト マーク・チャンドラー メロン・ファイナンシャル・コーポレーション通貨担当チーフ・ストラジスト

世界市場における企業競争の実態は、貿易指標だけでは測りきれなくなってきており、対外直接投資の経済効果をより重視する必要がある。国境を超える輸出入の数字など、グローバルなビジネスのつながりを示すものでもなければ、企業がどのように、どこで競争しているのかを示すものでもない。自国の貿易赤字に過度にこだわれば、保護主義を呼び込むだけである。アダム・スミスによる時代遅れのグローバルな競争の分析枠組みに別れを告げ、アメリカ経済の世界市場との関係についてのより複雑な構図を理解すべき時期にきている。

レビュー・エッセイ
キッシンジャーの思想と保守主義の本懐

2001年7月号

マイケル・マンデルバーム ジョンズ・ホプキンス大学

キッシンジャーは人道的介入策を突き動かす動機には共感を示し、そうした行動を求めるアメリカの経験に深く根ざす価値も理解している。しかし彼は、これまでの人道介入政策の実施のされ方ゆえに、この政策の背後にある大義名分や価値がむしろ損なわれていると指摘する。また彼は、アジアと中東という、平和、繁栄、民主主義がまだ広く確実には根づいていない二つの重要な地域に対しては、アメリカの政策決定者は保守的な「パワー・バランス」(勢力均衡)路線を目指すべきで、(内側の改革を強硬に求めるべきではない)と指摘している。

現実味を帯びてきた台湾海峡危機

2001年7月号

カート・M・キャンベル  戦略国際問題研究所上席副会長 デレク・J・ミッチェル 戦略国際問題研究所上席研究員

北京と台北の間の軍事・政治上のコミュニケーションラインが存在しないために、理解不足からの誤算が生じる危険が近年とみに高まっている。これまで北京は、台湾が現状の変革を試みるのであれば、武力行使も辞さないという態度をとってきたが、いまや「台湾が現状の姿勢を維持するようであれば、武力行使を検討する」としている。アメリカの台湾海峡政策の本質は、問題の最終的解決を永遠に先送りし、この地域での平和と安定を維持することにあったが、このままでは、これまでに先送りしようとしてきた問題が目の前にあることをいずれ思い知ることになるかもしれない。

米外交問題評議会リポート
朝鮮半島政策に関する提言

2001年7月号

モートン・I・アブラモウィッツ 米外交問題評議会・朝鮮半島問題タスクフォース共同議長 ジェームス・T・レイニー 同タスクフォース共同議長  ロバート・A・マニング  同タスクフォース・ディレクター

以下は二〇〇一年六月十一日に公開された朝鮮半島問題に関する米外問題評議会タスクフォース・リポートの要約。同タスクフォースは、今年三月に朝鮮半島政策に関する提言をブッシュ大統領への公開書簡としてすでに発表している(「論座」二〇〇一年六月号)。リポート全文も近く公開される予定。

日米企業の再逆転の真相

2001年6月号

クレイトン・クリステンセン ハーバード大学ビジネススクール教授  トーマス・クレイグ モニター・グループ ディレクター  スチュアート・ハート ノースカロライナ大学ビジネススクール教授

日本企業の経営陣は経営の金科玉条に従って、消費者のニーズに敏感に対応し、最大の利益を上げる新製品やサービスに集中的な投資を行った。だが、もはやそれだけでは成長は望めない。企業が市場の最上位に達し、成長を持続させるのに必要な市場規模を見いだせなくなると、痛みを伴う合併がゲームの「上がり」として待ち受けている。アメリカ経済が近年好調なのは、日本式経営の信用が落ちてアメリカ式経営のパラダイムが急に優勢になったからではなく、アメリカでは日本と違って既存市場へのディスラプティブ(下からの挑戦)・サイクルが繰り返されているからだ。

米外交問題評議会ミーティング
オルブライトVS.キッシンジャー
――米中・北朝鮮、ミサイル防衛、人道的介入の将来

2001年6月号

ジョージ・シュルツ ウォーレン・クリストファー  マドレーン・オルブライト ヘンリー・A・キッシンジャー

私が懸念しているのは、偵察機接触事故が、権力移行期に突入した中国において強硬派の立場を有利にしはしないか、一方でわれわれが中国を新たな敵対勢力と決めつける動きにつながりはしないかということだ。(オルブライト)

われわれがなすべきこと、われわれにできること、われわれが望むこと、そしてわれわれにはできないこと、これらを区別して理解しなければならないし、国益概念にはこれらのすべてがかかわってくる。(キッシンジャー)

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