1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

米国に関する論文

世界を分裂させたブッシュのアメリカ

2003年9月号

マドレーン・K・オルブライト 元国務長官

ブッシュ大統領が示した「われわれとともにあるか、テロリストの側にあるか」という二者択一の選択肢は、世界を引き裂いて新たな合従連衡の流れをつくり出し、その結果、イスラム勢力が戦略的優位を確保し、本当の悪であるテロを見えなくし、それを「アメリカの悪魔」に置き換えることを許してしまった。
しかも、質的に異なるテロとならず者国家の脅威をひとまとめにして、イラクとの戦争を正統化しようとした。こうして世界との協調がアメリカの安全をこれまで以上に左右するようになったまさにそのときに、ワシントンは世界を怖がらせ、分裂させてしまったのだ。

地域的自由貿易構想という危険な妄想
―― アジアとアメリカを隔てる分断線の形成を回避せよ

2003年9月号

バーナード・ゴードン ニューハンプシャー大学名誉教授

この論文は、まだドーハラウンドラウンド決着への期待が存在した2003年に発表されている。当時は、アメリカが南北アメリカ大陸での自由貿易圏を模索し、アジアでは、アメリカ抜きのアジア自由貿易圏構想が議論されていた(FAJ編集部)
アメリカとアジアがそれぞれに推進する一連の自由貿易構想は、結局は地域的貿易ブロックを乱立させ、太平洋を隔てる分断線を生み出すことになる。一九三〇年代の世界の貿易ブロック化が、大きな悲劇を呼び込んだことを忘れてはならない。

「一連の地域的自由貿易合意によってグローバルな自由貿易体制の基盤が積み上げられていく」とする認識の根拠は疑わしい。逆に、特定地域での貿易ブロックの形成が、他の地域での貿易ブロックの形成を誘発することはすでに明らかだ。貿易ブロックが形成されれば、必然的に政治的なライバル関係が貿易ブロック内、ブロック間で生じ、それをどのような名称で呼ぶにせよ、保護主義が貿易ブロックを支配するようになる。

米外交問題評議会インタビュー
先の読めない六者協議
――北朝鮮の「経済改革なくして、核問題の解決なし」

2003年8月号

マイケル・E・オハンロン ブルッキングス研究所シニア・フェロー

北朝鮮はなぜ際限なく危機を演出しようとするのか。マイケル・E・オハンロンは、「貨幣を偽造し、麻薬取引を行い、ゆすりたかり紛いの行動をとるのは、ひとえにキャッシュが欲しいからだ」と指摘する。「平壌は問題を作り出しては他の諸国からキャッシュをゆすり取ろうとする。国際社会に核開発計画を買い上げさせようとしている」と。「経済改革の実施に合意させ、北朝鮮の経済的崩壊という基層問題への対応を試みない限り、今後も危機は起きる」とオハンロンは、語った。
邦訳文は、二〇〇三年八月十九日に行われたインタビューからの抜粋・要約。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

米外交問題評議会インタビュー
アメリカに単独行動主義という選択肢はない

2003年8月号

リチャード・ハース 米外交問題評議会会長

レスリー・ゲルブの後任として、七月から米外交問題評議会の会長に就任したリチャード・ハースは、「現在の世界の特徴とは、いかに圧倒的なパワーを持っているにせよ、アメリカ単独では、われわれが直面している課題の多くを解決できない点にある」と指摘し、単独行動主義はワシントンの選択肢にはなり得ないと述べた。六月まで米国務省政策企画部長を務めたハースは、むしろ、今後をめぐる重要なテーマは「単独行動主義か、多国間協調主義かではなく、どのような多国間主義をめざすか」でなければならない、と強調した。
邦訳文は、二〇〇三年七月七日に行われたインタビューからの抜粋・要約。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

米外交問題評議会リポート
戦後イラクで平和を勝ち取るには

2003年8月号

タスクフォース共同議長
トマス・ピカリング 元国連米大使
ジェームズ・シュレジンジャー 元米国防長官

戦後イラクに関するタスクフォースは二〇〇三年三月に「イラク――ザ・デイ・アフター」と題したリポートをすでに発表している(「戦後イラクの改革をやり遂げるには」フォーリン・アフェアーズ日本語版二〇〇三年四月号)。二〇〇三年六月に発表された今回の議長報告は、前掲リポート及びその後のイラクでの事態の展開を踏まえたタスクフォースでの討論を基にしている。今回の議長報告についても、前回のリポート同様、エリック・シュワルツ米外交問題評議会シニア・フェロー(前国家安全保障会議=NSC=スタッフ)がディレクターを務めた。以下は議長アップデートからの要約・抜粋。全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

米欧関係修復の試金石としてのイラク再建

2003年8月号

アンドリュー・モラブシック ハーバード大学政治学教授

ヨーロッパはアメリカの軍事パワーを必要とし、アメリカはヨーロッパのシビリアン・パワーを必要としている。相互補完的な関係にあるこれらのパワーをうまく組み合わせて共通の目的に向かわせ、新たな安全保障上の脅威に対抗できるようにすることが重要だ。
ワシントンは介入には多国間協調が必要なことを認め、一方、ヨーロッパはアメリカのパワーに対する反発を抑え、紛争の予防や戦後復興への関与に伴う重荷の多くを引き受けなければならない。

GPS VS. ガリレオ
―― 米欧が競う衛星ナビゲーションの覇権

2003年8月号

デビッド・ブレオーンシュビッグ/米外交問題評議会準シニア・フェロー
リチャード・L・ガーウィン/米外交問題評議会シニア・フェロー
ジェレミー・C・マーウェル/米外交問題評議会リサーチ・アソシエート

正確な位置の割り出し(測位)、ナビゲーション(行路)、そしてタイミング・インフォメーション(リアルタイムの情報分析)を提供するGPSは、軍事領域だけでなく、商業、レジャー面でも大いに利用されている。だが、この便利な軍民共用の応用技術も、判断を間違えると、最終的には利用できなくなるかもしれない。GPSは、米国が管理する戦略的な軍事インフラであるとともに、経済的に大きな潜在力を持つ民間のグローバルなインフラでもあるという事実によって、いまや大きな矛盾を抱えこんでしまっている。ヨーロッパが開発をめざすガリレオは、こうしたパラドックスを正面から見据えてGPSに挑戦しようとしている。

米外交問題評議会インタビュー
世界はアメリカをどう見ているのか

2003年7月号

アンドリュー・コート ギャラップ社元代表、ピュー世論調査センターディレクター

イラク戦争によって世界の人々の対米アメリカイメージはますます悪化したと、アンドリュー・コートは語る。ピュー世論調査センターのディレクターであるコートは、多くのイスラム教国家でワシントンに対する反感が広がっており、アメリカを自国に対する脅威とみなす国まで存在する、と指摘した。同センターが行った最新の世論調査によれば、「八カ国のイスラム教国家のうち七カ国において、市民の大多数がアメリカは自国にとって軍事的脅威かもしれないと考えている」ことが示されている。「二〇〇二年の段階でもアメリカはイスラム教徒に嫌われていた。二〇〇三年になると、アメリカは嫌われるだけでなく、恐れられるようになった」と彼は述べている。
イラク戦争によってヨーロッパにおいても反米、反ブッシュ感情が高まっている。ブッシュ大統領は「ヨーロッパのことを理解していないし、気にかけもしない典型的なアメリカ人」とヨーロッパ人の目には映っているようだとコートは分析した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・ディレクター)二〇〇三年六月十八日(邦訳文は、インタビューからの抜粋・要約)。

アメリカ帝国の虚構
―ソフトパワーを損なう単独行動主義の弊害

2003年7月号

ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授

二十一世紀の最大の問題は、世界でもっともパワフルな国家でも管理できない状況がますます広がりをみせていることだ。
新国家安全保障戦略を成功させられるかどうか、そして、他の諸国がアメリカの優位を背景とする戦略を穏やかな戦略とみなすかどうかは、ワシントンが他国の意見に耳を傾け、グローバル社会の利益も促進できるようにアメリカの国益をより広義に定義できるかどうかに左右される。新戦略をうまく実施していくには、新単独行動主義が必要だと考える以上に、ソフトパワーと多国間協調に気を配る必要がある。

北朝鮮危機とアメリカの東アジア戦略の大転換
―米戦略の重心は日本から中国へ?

2003年7月号

モートン・アブラモウィッツ 元カーネギー国際平和財団会長
スティーブン・ボスワース 元駐韓米大使

中国の経済的・地政学的台頭、日本の地域的影響力の低下、自主路線を強める韓国、そしてアメリカの対テロ戦略。北朝鮮危機の背後で展開するこれら一連のトレンドは、アメリカの東アジア戦略を大きく変化させ、アジアの安全保障地図を大きく塗り替えることになるだろう。
すでにアメリカは中国とより緊密な関係を築き始め、アメリカにとっての日本の戦略価値は大きく低下している。北朝鮮危機、中台問題はどうなるのか。韓国、日本の駐留米軍は撤退するのか。

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