1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

南米に関する論文

ベネズエラ経済の悪夢
―― ディフォルトか抜本的な
社会・経済改革か

2016年10月号

リサ・ビシディ
インター・アメリカン・ダイアログ(IAD)研究部長

すでにベネズエラ市民の4分の3以上が貧困ライン以下の生活を余儀なくされている。商店の棚から商品が姿を消し、スーパーマーケットには、コメなどの基本物資を求めて、行列ができるようになった。輸出収益の95%以上を石油と天然ガスに依存するこの国にとって、エネルギー輸出が低下すると、生活必需品さえ十分に輸入できなくなる。現在の問題は、原油価格の暴落だけでなく、ベネズエラの政策上の欠陥によって引き起こされている。政府は長年、住宅や医療を無償で提供する社会政策の財源を国営のベネズエラ国営石油公社(PDVSA)の収入に依存する一方、国内ガソリン価格を20年近く1リットル約1セントに維持してきた。しかも、ベネズエラ政府とPDVSAは莫大な借り入れを行っており、例えば、2017年4―6月期末には73億ドルを返済しなくてはならない。中国からの融資返済にも苦慮している。政府とPDVSAはディフォルトの危機に直面しつつある。・・・・

インフラプロジェクトと政治腐敗
―― 新開発銀行は大きな混乱に直面する

2016年10月号

クリストファー・サバティーニ
コロンビア大学国際公共政策大学院 講師(国際関係論)

BRICS諸国の台頭を象徴するかのように、この10年間にわたって中国、ブラジル、インド、南アフリカでは数多くのインフラプロジェクトが進められ、工業団地、高速道路、橋梁、パイプライン、ダム、スポーツ競技場の建設ラッシュが続いた。しかし、彼らはインフラプロジェクトに時間をかけず、これ見よがしの結果ばかりを追い求めた。要するに、クオリティ(品質)に配慮せず、必要なコストを過小評価してきた。しかも、政府契約の受注をめぐる不透明なプロセスが政治腐敗の温床を作り出した。いまや、経済成長ではなく、政治腐敗スキャンダルという別の共通現象がBRICS諸国を集団として束ねている。国内のインフラプロジェクトがこのような状況にある以上、新開発銀行の融資によるプロジェクトも同様の運命を辿ることになるかもしれない。BRICS諸国政府がインフラプロジェクトに関わる説明責任を果たしていないことからみても、新開発銀行は今後大きなコストを伴う失敗を繰り返すことになるだろう。

ドナルド・トランプの台頭
―― ラテンアメリカ化するアメリカ政治

2016年6月号

オマー・G・エンカーナシオン/ バードカレッジ教授(政治学)

それがどこであれ、格差が社会に怒りを充満させる環境のなかでは、デマゴーグたちは、感情と偏見を煽ることで、非現実的で危険な政策の支持へと民衆を向かわせる。そうでなくとも、アメリカの有権者の多くが政治に裏切られ、無視され、取り残されていると感じている。これはラテンアメリカの政治環境と似ている。この地域の独裁的指導者(カウディーリョ)たちは、ヒトラーやムッソリーニ、あるいは、イタリアのベルルスコーニ以上に、トランプ現象を考える上での適切な比較の対象になる。実際、トランプは、かつてのカウディーリョたちと同様に、自分が政治的アウトサイダーであるがゆえに、現在の政治システムを破壊し、それを、取り残された人々を含む、すべての人々に恩恵をもたらすシステムへと置き換えることができると主張している。・・・

論争 ブラジル経済の将来

2014年9月号

シャノン・オニール/米外交問題評議会ラテンアメリカ研究担当 シニア・フェロー
 リチャード・ラッパー/「ブラジル・コンフィデンシャル」発行責任者
 ラリー・ローター/『台頭するブラジル―変革期にある国の物語』の著者
 ロナルド・レモス/プリンストン大学情報技術政策センターフェロー 
ルチール・シャルマ /モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント

<論争の背景>
モルガン・スタンレーのルチール・シャルマがフォーリン・アフェアーズ誌で発表した「ブラジル経済の奇跡の終わり ―― 社会保障か経済成長か」(フォーリン・アフェアーズ・リポート2012年6月号)は世界的に大きな話題となった。誰もが、先進国経済が停滞するなか、今後、グローバル経済を牽引していくのは、ブラジルを含む新興国だと考えていたからだ。 だが、シャルマは「急成長を遂げる中国の資源需要に牽引されてきたブラジル経済は、中国経済の停滞とともに、下降線をたどる」と予測した。 ブラジル経済の成長軌道は、国内の石油、銅、鉄鉱石など、世界の原材料市場における需要の拡大軌道とほぼ重なりあっていると指摘したシャルマは、「経済の停滞を回避するために、ブラジル政府がリスクをとり、経済を開放し、社会的安定と経済拡大のバランスをとる方法を見つけださない限り、未来は切り開けない」と主張し、「新興市場諸国が簡単に成長できた時代、原材料価格の高騰が支えた経済成長の時代、そして社会保障を優先してもブラジルがかろうじて4%の成長を実現できた時代は終わろうとしている」と分析した。「開放と改革を進めない限りブラジルの経済成長も社会的安定も損なわれていくことになる」と。 以下は、シャルマの論文に対する4人の専門家による反論と、シャルマの再反論。(FAJ編集部)

自由貿易協定、20年後の現実 ―― NAFTAとメキシコ

2014年2月号

ホルヘ・G・カスタニェーダ 元メキシコ外相

NAFTA(北米自由貿易協定)が発効してから20年後の現在、おそらくあらゆる人が唯一同意できるのは、「あらゆる議論・主張が誇張されていたこと」だろう。貿易合意としては、NAFTAはメキシコにとって否定しようのないサクセスストーリーであり、輸出の劇的な増大をもたらすきっかけとなった。しかし、NAFTAの目的が経済成長を刺激し、雇用を創出し、生産性を改善し、所得水準を引き上げ、移民流出を減らすことだったとすればどうだろうか。判断は分かれるはずだ。一人当たりGDPもこの20年で2倍になった程度で、年平均成長率でみれば1・2%にすぎない。この時期にNAFTAに参加していないブラジル、チリ、コロンビア、ペルー、ウルグアイは、メキシコよりもはるかに高い一人当たりGDPの成長を実現している。しかし、だからといって、NAFTAは失敗だったと決めつけることもできない。むしろ、メキシコは、エネルギー、移民、インフラ、教育、安全保障など、1994年の交渉テーブルに置き去りにしてきたアジェンダに今後取り組んでいくべきだろう。NAFTAは失望を禁じ得ない結果しか残せていないが、メキシコは、さらなるNAFTA的な路線、つまり、地域的経済統合路線を必要としている。

最近、ウィキペディアは、ブラジルのリオデジャネイロの3人の研究者が開発したプログラミング言語「ルア」をシステムとして採用した。IT技術を支える「エコシステム」を国内にもたない途上国発のIT言語が、ウィキペディアという世界的組織に採用されたのは画期的な展開だが、そこにいたる道程をみると、途上国の技術者が直面する障害が浮かび上がってくる。途上国の技術者が世界で成功するには、技術開発と市場化の「エコシステム」をもたない国内から巣立ち、まず世界で成功を収める必要がある。外国に出るのは危険な坂道に足を踏み入れるようなもので、不利な場所に住み、不利な言語を使い、不利な制度のなかで開発を続けなければならない。それでも、彼らは外国に目を向け、世界中で使われている同じテクノロジーを用いて問題を解決しようとした。そうするしか成功する方法はなかったからだ。・・・

BRICsの黄昏
―― なぜ新興国ブームは終わりつつあるのか

2012年12月号

ルチール・シャルマ
モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント
新興市場・グローバルマクロ担当ディレクター

これまで「途上国経済は先進国の経済レベルに近づきつつある」と考えられてきた。この現象と概念を支える主要なプレイヤーがBRICsとして知られるブラジル、ロシア、インド、中国という新興国の経済的台頭だった。だが、途上国と先進国の間で広範なコンバージェンスが起きているという認識は幻想にすぎなかった。新興国台頭の予測は、90年代半ば以降の新興国の高い成長率をそのまま将来に直線的に当てはめ、これを、アメリカその他の先進国の低成長予測と対比させることで導き出されていた。いまや新興国の経済ブームは終わり、BRICs経済は迷走している。「その他」は今後も台頭を続けることになるかもしれないが、多くの専門家が予想するよりもゆっくりとした、国毎にばらつきの多い成長になるだろう。

マフィア国家の台頭
―― 融合する政府と犯罪組織

2012年7月号

モイセス・ナイーム
カーネギー国際平和財団
シニアアソシエート

もっとも多くの利益をもたらす違法行為に手を染めているのは、犯罪のプロだけではない。いまや政府高官、政治家、情報機関や警察のトップ、軍人、そして極端なケースでは国家元首やその家族たちも違法活動に関わっている。世界各地で、犯罪者がこれまでにないレベルで政府に食い込み始める一方で、パワフルな犯罪組織を取り締まるどころか、政府が犯罪組織に代わって違法活動を行っている国もある。こうして犯罪組織と政府が融合した「マフィア国家」が誕生している。実際、ブルガリア、ギニアビサウ、モンテネグロ、ミャンマー(ビルマ)、ウクライナ、ベネズエラなどでは、国益と犯罪組織の利益が結びついてしまっている。犯罪組織が最初に狙うのは、腐敗した政治システムだ。中国とロシアは言うまでもなく、アフリカや東ヨーロッパ、そしてラテンアメリカ諸国の犯罪者たちは、従来の犯罪組織では考えられなかったような政治的影響力を手にしている。もちろん、政府そのものが犯罪行為を行う北朝鮮のような国もある。

「ブラジル経済の奇跡」の終わり
―― 社会保障か経済成長か

2012年6月号

ルチール・シャルマ モルガン・スタンレー投資管理 マネージングディレクター

ブラジル経済の成長軌道は、国内の石油、銅、鉄鉱石など、市場の資源需要の拡大軌道とほぼ重なりあっている。問題は、中国経済の減速によって、これらの原材料に対する世界需要が減少し始めていることだ。新興市場諸国が簡単に成長できた時代、原材料価格の高騰が支えた経済成長の時代、そして社会保障を優先してもブラジルがかろうじて4%の成長を実現できた時代は終わろうとしている。経済の停滞を回避するために、リスクをとり、経済を開放し、社会的安定と経済拡大のバランスをとる方法をブラジルが見つけださない限り、未来は切り開けない。改革に失敗し、原材料輸出主導路線に固執すれば、いずれ、ブラジルの経済成長も社会的安定も損なわれていく。

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