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中東に関する論文

CFRインタビュー
アフガニスタンは混乱の極みにある

2007年10月号

ジョン・キリアコウ 元米中央情報局テロ対策担当官

首都カブールでは社会が崩壊しつつある。伝統的にカブールでは紛争の解決や交渉をめぐって部族が大きな役割を果たしてきたが、いまや犯罪が蔓延し、誘拐、銃撃戦、武装集団による窃盗、強盗が横行し、路上での暴力が日常化している。米中央情報局(CIA)でテロ対策を担当し、1998年から2004年までパキスタンで活動したジョン・キリアコウによれば、「タリバーンとアルカイダがアフガニスタン南部のヘルマンド州とカンダハル州で台頭しているだけでなく、カンダハル出身の東部のパシュトゥン人たちは政府を全く信頼しておらず、武器をとり、すでにタリバーンとして活動している。アフガニスタン内にタリバーンとアルカイダが聖域を確保し、米軍の戦力がイラクに奪われ、北大西洋条約機構(NATO)部隊が、再建活動にあたる国際機関や非政府組織(NGO)スタッフの安全確保だけで身動きができずにいることが、治安を乱し、タリバーンの台頭を招いていると指摘した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
拡大・激化するパキスタンの過激主義

2007年10月号

リチャード・N・ハース 米外交問題評議会会長

「パキスタンは軍人が支配する国から、元軍人が支配する国へと変貌しようとしており、ムシャラフ大統領が次の任期において軍服を身につけることはないはずだ。……逆説めいた言い方だが、今後も軍部がパキスタン社会の中枢勢力であり続けると考えられる以上、(軍の反発がなければ)政治体制の移行がかなり進むのではないかと思う」。パキスタンの政治改革の行方をこのように前向きに評価しつつも、いまやパキスタンは「タリバーン化」という現象に直面していると米外交問題評議会(CFR)のリチャード・ハース会長は警告する。過激派とテロリストはすでにパキスタン西部と北西辺境州に深く根を下ろしている。心配なのは、パキスタンの中核である都市部へとこうした過激主義が拡大していることで、宗教施設「ラール・マスジード」での占拠事件や、最近におけるカラチでのテロ事件はその具体例だと指摘した同氏は、「パキスタンの現実は、かつてのイラクやアフガニスタンを想起させるものへとしだいに変化しつつある」とコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
イラク内戦を終わらせるには
連邦制度導入のほか道はない

2007年10月号

レスリー・H・ゲルブ 米外交問題評議会名誉会長

9月26日に、米上院はイラク政府の権限を地域に移譲し、連邦制を実現することを求める決議案を採択したが、イラク政府はこれに反発している。イラク連邦化構想をかねて提言してきたレスリー・ゲルブは、「現在、イラクの権力が分散しているのは事実だが、それは、内戦と民族浄化作戦を前に人々が安全な地域を求めて移動した結果であり、異なる集団間の調和を保つために必要な政府をいかにして形作るかについての政治的合意に基づくものではない」と指摘し、改めて連邦制を整備していくことこそ、イラクの各集団間の政治的和解を進める唯一の方法だと言う。そのためには、各地域が軍隊を持つことを認めるとともに、石油とガスの生産、およびそうした資源からの歳入を中央政府が一元管理し、人口比率に応じて地域政府へと分配される方式をとるべきだとし、クルド地域政府(KRG)が外国企業と交わした資源開発計画は反故にする必要があると語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

「トルコ政府は、クルド労働者党(PKK)の問題を解決するには(イラク北部に対する)軍事作戦をとるしかないと考えているようだ。しかし、こうした問題を軍事力だけでは解決できないことは、これまでの歴史と経験からはっきりしている」。PKKの掃討作戦としてイラク北部への越境攻撃をトルコ議会が認めたことに対して、イラクのクルド地域政府(KRG)の外交部長であるファラ・ムスタファ・バキルは「トルコにとってもKRGにとっても、この問題に政治的に対応することが肝要である」と述べ、むしろ、KRGはトルコとの経済関係の強化を希望しているとコメントした。また、イラクの連邦制を支持しているKRGは、民主的で多元主義的なイラクの連邦制の一部としてクルド地域が存在することが好ましいと判断しており、「イラクが憲法を順守する限り」、われわれはイラクの一部であり続けると同氏は述べ、連邦制を支持し、分離独立は望んでいないこと、さらに、KRGは、クルド地域を「イラクの安定と経済発展のモデル地域とすること」を目指していると強調した。聞き手はグレッグ・ブルーノ(www.cfr.org のスタッフ・ライター)。

CFRミーティング
核戦争の危険を低下させるには
――他国と協調して脅威を抑え込むか、
それとも壊滅的事態に直面するか

2007年10月号

スピーカー
サム・ナン/元米上院議員
司会
ジェームス・ホーグ/フォーリン・アフェアーズ誌編集長

60年間、核戦争が起きなかったからといって、われわれが安心する理由はどこにもない。今後も、一度や二度、幸運に恵まれる程度では、核戦争を回避するのは難しいかもしれない。核の惨劇を回避できるとすれば、すべての核保有国が核管理をめぐってきわめて慎重な態度をとり、賢明で合理的な判断をするだけでなく、幸運に恵まれる必要がある。……われわれが現在直面する最大の脅威は、壊滅的なテロ、核保有国の数の増大、そして核の偶発使用であり、これらの脅威に対処していくには、モスクワ、北京、その他と協調していかなければならない。他国と協調して脅威を抑え込むか、それとも壊滅的事態に直面するかという選択肢にわれわれは直面している。(S・ナン)

CFRインタビュー
イラクからの撤退か、増派策の遂行か

2007年9月号

スティーブン・ビドル 米外交問題評議会シニア・フェロー

多くの議会指導者は、大統領が想定する増派路線よりも少ない戦力で活動し、完全な撤退はしないという中道路線を重視している。……その理由は、彼らが、大統領の増派路線が不評であること、そして一方で、犠牲を引き受けるのをやめて撤退するのも政治的に敗北を認めることにつながることを理解しているからだ。だが、この程度の戦力では、任務上の有意義な成果を上げることは期待できない。数万人の兵士を残留させても、米軍がテロ集団のターゲットにされるだけの話だ。つまり、何か有意義なことをするにも、犠牲者を少なくするにも規模が小さすぎる。論争されている路線の両極端に位置する二つの選択肢、つまり増派か完全撤退策のほうが、その間に位置する路線よりも合理性がある。(スティーブン・ビドル)

CFRインタビュー
米軍増派とスンニ派との協調でイラクは安定化へと向かいだした

2007年9月号

マイケル・J・ミース 米陸軍士官学校政治学教

スンニ派の部族が米軍との協調を求めてきたのは、アルカイダのイデオロギーがシャリア(イスラム法)を基盤とする過度に厳格なものであることにスンニ派も気づきだし、最終的にタリバーン流のイデオロギーを拒絶したからだ。地方における治安の安定化をもたらしている米軍とスンニ派の協調がなぜ実現したかについて、ウエスト・ポイント(米陸軍士官学校)の政治学教授で、イラク駐留米軍のペトレイアス司令官の顧問を務めるマイケル・ミース大佐は、こう指摘する。「イラク・アルカイダ機構は、組織に忠誠を尽くす人物の結婚相手に部族長の娘を差し出すように強要し、気に入らぬ者の首をはねることも気にかけなかった」。スンニ派が嫌がることをアルカイダが無理強いし、大量虐殺を行うなか、スンニ派部族も「もうたくさんだ」と考えるようになった、と。邦訳文は英文からの抜粋・要約。ミースの意見は彼個人のもので、ペンタゴンの公的立場とは関係ない。聞き手はグレッグ・ブルーノ(www.cfr.orgのスタッフ・ライター)。

CFRミーティング
S・ハドレー大統領補佐官が語るイラクの行方
―― 増派策の成功を拡大し、政治的和解を進めるには

2007年9月号

スピーカー スティーブン・ハドレー 米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)
司会 トマス・R・ピカリング 元米国連大使

イラクのスンニ派部族がアルカイダに立ち向かうために、米軍やイラク政府と協調するようになったように、シーア派の部族が、イランの支援を受けたマフディ軍団に立ち向かうような環境を作る手助けができればと思う。そして、バグダッドのイラク政府が、こうした二つの流れを、脅威としてではなく、うまく生かすべき機会として捉えるようにわれわれは強く働きかける必要がある。スンニ派、シーア派の部族集団が米軍やイラク政府と協力するように働きかけ、治安の確保に向けた流れを作り出し、人々が安心して暮らせるような環境を作る必要がある。これを、われわれはボトムアップ型の政治的和解プロセスと呼んでいる。……今後政治的に必要なのは、イラクの連邦制がどのような形態のものになるか、それがいかに機能するかについて、(シーア派、クルド人、スンニ派)三つのグループが共有できるビジョンを形作ることだ。……われわれが、破綻したイラクを(アメリカの)次期政権に委ねることはない。成功を収めつつあり、継続する価値のある路線を新政権に託すことになるだろう。

CFRミーティング
エネルギーに関する真実に目を向けよ

2007年9月号

スピーカー
リー・R・レイモンド 全米石油審議会(NPC)理事長
司会
ジョン・ダッチ マサチューセッツ工科大学(MIT)教授

「湾岸諸国の原油増産に世界経済はますます多くを依存していくことになる。サウジの場合は、資源や資源開発の資金だけでなく、サウジ・アラムコという石油企業を持っており、原油の増産は可能だろう。一方、クウェートに増産能力があるかどうかは疑問だ。イラクとイランは、資源開発とは別の次元で問題を抱えている。とはいえ、イラクの場合、サダム・フセインが、当時イラクで活動していた石油開発コンソシアムを国外追放処分にした1971年以降、本格的な石油資源の探索は行われていない。つまり、石油資源という面でイラクはかなりの潜在力を秘めている」

「奇妙なポイントは、車の燃費がよくなればよくなるほど、人々がドライブする走行距離が伸びており、結局、ガソリン消費量には変化が出ないということだ。こうした状況をいかに管理していくかは、政治的に非常に難しい問題だ」(リー・レイモンド)

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