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日本に関する論文

中国はクアッドの何を警戒しているか
―― 北京の野心とクアッドの目的

2021年11月号

ケビン・ラッド   アジア・ソサエティ会長

「中国が支配的優位を確立するのが必然である以上、中国の要求を譲歩して受け入れる以外に選択肢はない」。北京は各国をこのように納得させたいと考えている。それだけに、日米豪印戦略対話(クアッド)が中国への対抗バランスを形成できるような十分な規模、一貫性、包括性をもつフォーラムへ進化し、それによってアジアまたは世界的における中国の支配的優位が損なわれるのが避けられない事態になるのは、北京にとって大きな問題だ。中国がクアッドの進歩を抑え込めるような戦略を特定できるかが、一触即発の危険な時代における米中競争、中国のグローバルな野望を左右する重要な要因の一つになる。

CFR in Brief
気候変動と原子力発電

2021年4月号

リンジー・メイズランド CFR.org ライター

2011年、日本の福島第一原子力発電所の原子炉3基がメルトダウンし、1986年のチェルノブイリ原発事故以降、最悪の事態が引き起こされた。日本を含む一部の国はその後原子力エネルギーの使用を見直した。しかし、他の多くの諸国は、原子力への立場を変えなかった。今後、気候変動問題への対策から、各国は原子力発電の利用を考慮に入れざるを得なくなるとする見方もある。米エネルギー情報局(USEIA)は、途上国における原子力発電は今後30年間で3倍近くに増えると予測している。だがそれでも、エネルギーミックスでみると原子力エネルギーは比較的小さなシェアに留まると考えられる。

アジアでは日本に従え
―― 日米逆転はなぜ起きたか

2021年4月号

チャン・チェ 在上海ライター

中国が敵対性を増し、パンデミックが猛威を振るうなかで、日本は静かに地域リーダーへの台頭を遂げ、アジアにおけるアメリカの信用を回復するための鍵を握る国家に浮上している。多くのアジア諸国はアメリカをリベラルな秩序の擁護者、信頼できるパートナーとはもはやみていない。むしろ、バイデン政権は日本との関係を強化し、地域の多国間イニシアチブも日本と密接に連携して進めるなど、よりきめ細かなアプローチをとるべきだ。この4年間、日本はアジア諸国との間で信頼関係と善意の貯水池を築いてきた。アメリカがそうした好ましい環境にアクセスできるとすれば、長年の同盟国である日本の意見に耳を傾け、そのリーダーシップに従った場合だろう。

インド太平洋戦略の幻想
―― 東アジアを重視すべき理由

2021年4月号

ヴァン・ジャクソン ビクトリア大学ウェリントン 国際関係論教授

「インド太平洋」という概念が、アジアの代替表現、中国への対抗バランス形成という視点で捉えられている。「自由で開かれたインド太平洋」の目標は高貴なものに思えるかもしれないが、それを模索すれば、アメリカはおそらく道に迷う。実際には、アジアにおけるアメリカのパワーと影響力にとっての中核地域は東アジアと太平洋だからだ。世界でもっとも豊かで、軍事化され、人口の多い東アジアでの戦争を防ぐこと以上に大切なアジェンダがあるだろうか。最新の地政学的流行語のためにこの地域を見放せば、壮大な失敗を招き入れることになる。

日はまた昇る
―― 日本のパワーは過小評価されている

2020年11月号

ミレヤ・ソリス  ブルッキングス研究所  東アジア研究所ディレクター

「日本は、経済的繁栄を中国に、安全保障をアメリカに依存しすぎている」と悲観する見方が市民の間で大きくなっている。さらに、2020年9月の安倍首相の突然の辞任によって、国内の安定した指導体制や先を見据えた外交の時代が終わるかもしれないという懸念も浮上しつつある。地政学的ライバルが大きな流れを、そしてパンデミックが混乱を作り出すなか、ワシントンは、再び、日本のポテンシャルをまともに捉えず(この国を無視する)誘惑に駆られるかもしれない。しかし、日本の戦略的選択は、日本の将来だけでなく、米中間の激しい大国間競争の行方にも影響を与える。日本の時代は終わったとみなすこれまでの見方が、時期尚早だったことはすでに明らかだ。

安倍政権の遺産
―― なぜ長期政権が実現したのか

2020年11月号

トバイアス・ハリス テネオ・インテリジェンス  副会長

安倍晋三は、2012年12月に首相に再選された後の7年8カ月にわたって政治的に生き残っただけでなく、6回にわたって選挙で党を勝利に導き、最後の数カ月まで一貫して高い支持率を維持し、日本の政治システムをこれまで誰もなしえなかった形で統治してきた。彼は有権者の多くが望んでいた安定を提供した。他の民主国家の多くがポピュリズム政治の抵抗に遭い、政治基盤が不安定化し、民主主義そのものが後退していた時期に、安定を提供してみせた。後継者に選ばれた菅義偉は、安倍政治を変化させるのではなく、踏襲していくと約束している。しかし、彼は前任者ほど幸運ではないかもしれない。・・・

パンデミック後の日本
―― 世界の労働者と留学生は日本を目指す

2020年9月号

ファーラー・グラシア 早稲田大学教授(社会学)

アメリカへの移民の流れは今後か細くなっていくかもしれないが、一方で、移民を受け入れ、多様性、ダイナミクス、新しい才能という移民がもたらす社会的恩恵を引き出す国も出てくるだろう。そして日本ほどこの流れから大きな恩恵を引き出せる国もない。社会的に安全で安定しているし、失業率も低く、より多くの労働者を必要としている。いまや欧米へのコスト高の留学に前向きでなくなった世界の学生を魅了できる優れた大学もある。パンデミックが経済を破壊し、欧米の大学がかつてのようなアクセスも魅力も失うにつれて、移民や学生の目的地としての日本の魅力と優位はますます際だってくる。この流れが根付けば日本企業だけでなく、日本社会もいずれ世界の一部として統合されていくはずだ。

アフター・キム・ジョンウン
―― 北朝鮮の後継危機に備えよ

2020年6月号

カトリン・フレイザー・カッツ  元アメリカ国家安全保障会議スタッフ ビクター・チャ  ジョージタウン大学教授

肥満、ヘビースモーキング、飲酒に加えて、腎臓や心疾患などの家族歴を抱えていることからみても、金正恩が4月に一時的に姿を消したのは、重大な健康問題のせいだった考えてもおかしくはない。彼が後継者を指名せずに急死したり、支配権を確立できない後継者を指名したりすれば、半島情勢が大きく不安定化する恐れがある。核兵器の管理、人道危機、難民危機を回避するための対応計画を準備しておくべきだし、状況を安定させようとする試みが侵略と誤解されないように配慮する必要もある。厄介なのは、米韓、日韓、米中と、それぞれが外交課題を抱え、しかも、北朝鮮をどう捉えるかに関するセンシティビティとプライオリティに違いがあることだ。・・・・

各国は、あたかも2020年夏まで経済生産がゼロの状態が続くかのような財政支出を約束している。ニューディールを含めて、このレベルの政府支出には歴史的先例がない。つまり、これは「ハイパーケインズ主義」の実験のようなものだ。有事であると平時であると、先例はない。このような試みがアメリカ経済、ヨーロッパ経済、世界経済を救えるかどうかは誰にもわからない。希望をもてるとすれば、パンデミック前の段階で対GDP比債務がすでに230%近くに達していたにもかかわらず、日本の金利とインフレ率が引き続き安定していたことだ。多額の借入と財政出動がジンバブエよりも日本のような状況を作り出すのなら、楽観的になれる根拠はある。しかし、政府支出で永遠に現実世界の経済活動を代替することはできない。

鎖につながれたグローバル化
―― サプライチェーン、ネットワークと経済制裁

2020年2月号

ヘンリー・ファレル  ジョージ・ワシントン大学 教授(政治学) アブラハム・L・ニューマン  ジョージタウン大学 教授(政治学)

デジタルネットワーク、金融フロー、サプライチェーンが世界中に拡大し、アメリカを中心とする各国は、これを、他国を捕獲する蜘蛛の巣とみなすようになった。米国家安全保障局はあらゆる種類のコミュニケーションを傍受し、米財務省は国際金融ネットワークを利用して、無法な国家と金融機関に制裁を課している。一方、ファーウェイが5Gをグローバルレベルで支配すれば、北京もファーウェイをゲートウェイにして世界の通信に侵入し、これまでアメリカが中国に対して試みてきたことを、アメリカに対して実施できるようになる。日本も重要な産業用化学製品の流通を制限することで、韓国のエレクトロニクス産業を狙い撃ちにした。鎖につながれたグローバル化の現実を受け入れ、理解することが、これらのリスクを抑えるために必要不可欠な最初のステップになる。

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