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日本に関する論文

衰退する日米欧経済

2013年1月号

ロバート・マッドセン
マサチューセッツ工科大学国際研究センター
シニアフェロー

かつては圧倒的なパフォーマンスを誇った日本経済も、バブル経済の崩壊とともに失速し、いまや成長のために、そして再び金融危機に直面するのを避けるために必要な、経済改革に向けた政治的コンセンサスを構築できるかどうかも分からない状態にある。そして、金融危機後のさまざまな対策を通じて「自分たちは日本の二の舞にはならない」というメッセージを市場に送った欧米諸国も、結局、日本の後追いをしている。欧米経済がこの5年間で経験してきたことは、1990年代の日本の経験と非常に似ている。今後の日米欧にとって、社会契約をいかに再定義するかが最大の政治課題になる。予算を均衡させ、再び金融危機に直面するのを回避するには、税率を引き上げ、社会保障支出を削減するしか方法はないからだ。アメリカ、日本、そしてヨーロッパ諸国は、この困難なプロセスとそれが引き起こす社会的緊張への対応に長期的に追われることになるだろう。地政学バランスはすでに東アジアへと傾斜しつつあるが、主役は日本ではない。うまくいけば傍観者として、最悪の場合にはその犠牲者として、日本は東の台頭を見つめることになるだろう。

論争 日本は衰退しているのか
―― 日本衰退論の不毛

2012年12月

ジェラルド・L・カーチス
コロンビア大学教授

この20年にわたって日本が「停滞」に甘んじてきた時期にも、生活レベルは改善し、失業率は低く抑えられてきた。・・・日本の産業と政府が大胆な政策の見直しを必要としているのは明らかだが、そうした政策の見直しを必要としていない国などどこにもない。・・・日本の内向き志向、特に若者の内向き志向が高まっているという見方もあるが、私のように長く日本に関わってきた者にとって、これほど困惑を禁じ得ない見方もない。むしろ問題は、多くの高齢者層が依然として内向きであるために、若者たちがリスクをとり、何か新しいことを試みるというインセンティブを失っていることだろう。・・・「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という概念は消失している。とはいえ、あなたは、世界第2の経済大国中国と世界第3の経済国家日本のどちらで暮らしたいと考えるだろうか。生活レベル、大気、飲料水、食事の質、医療ケアその他の社会サービスのレベル、そして平均余命など、さまざまな指標からみて、答えははっきりしている。台頭する中国よりも、「衰退途上の」日本で暮らすほうが、はるかにいい。・・・

中国と日本の相互認識
―― 歴史的遺産とイデオロギー的遺産の呪縛
(1972年発表)

2012年11月号

チャーマーズ・ジョンソン
日本政策研究所・所長(論文発表当時)

1885年以降、数多くの中国人が近代世界を学ぼうと、日本に留学してきた。しかし、その後日本が帝国主義国家として台頭していくと、中国人が日本の近代化に抱いた憧憬は、嫌悪感へと変化していく。中国人から見れば、日本はもはやアジアではなかった。日本は、紛れもなく帝国主義国家そのものだった。そして、日中戦争が、より一層の敵意と憎悪を生み出し、それが現在の対日観に影響を与え続けている。だが、戦争の影響を、日本軍の残虐性という観点だけでとらえるのは誤りだろう。戦争は両国の知的・イデオロギー的な枠組みに大きな影響を与えている。日本が封建制から資本主義、帝国主義へと突き進むプロセスが、中国のナショナリストたちのマルクス・レーニン主義イデオロギーへの確信をより深めることになったからだ。

地域的なパワーバランスの変化が進行するなか、日中両国でナショナリズムが台頭し、これが歴史的な確執を蘇らせている。尖閣諸島をめぐって日中間の緊張がかくもエスカレートしているのはこのためだ。・・・国民感情そして野党勢力が作り出す圧力からみても、日本政府にとって、中国に対して立場を後退させることは選択肢にはならない。一方、北京も手を縛られつつある。国内の抗議行動をあまりに手荒に弾圧すれば、対日宥和策をとったとみなされるし、一方で、このまま混乱が続けば、中国の社会的安定が損なわれ、国際的イメージに傷がつく。・・・目先の打開策は存在するし、危機を収束へと向かわせることはできるだろう。だが、日中が抱える未解決の問題を決着させるには、歴史的な虚構に根ざし、東アジアの将来に対する不透明感ゆえに力を得ている排外的なナショナリズムという怪物と正面から対決する必要がある。

日本の電力危機とアジア・スーパーグリッド構想

2012年9月号

田中伸男 日本エネルギー経済研究所 特別顧問

石油が安価で供給が安定し、世界経済の繁栄を支えた時代はすでに終わっており、将来のエネルギー安全保障のためには多様なエネルギーミックスが必要である。石油以外にも、天然ガス、原子力、石炭、再生可能エネルギーで電力を生産できる。特に、天然ガスによる発電はゲームチェンジャーとみなされている。だが、原発が稼働停止に追い込まれている日本にとって、原子力発電所を再稼働できなければ、毎年400-500億ドルの資金を投入して石油や天然ガスを調達しなければならなくなる。これは、日本の経常黒字の半分が石油や天然ガスの輸入によって消し飛ぶことを意味する。事故の教訓を踏まえて安全対策を強化した原子力を日本のエネルギーミックスの一部として当面維持していくことを選択肢から排除すべきではないだろう。一方で、ロシアの天然ガス資源を基盤に、アジア地域の経済成長と安定にとって不可欠なエネルギーアクセスを確保するための多国間協調枠組を形作っていく必要がある。

CFRアップデート
東アジア安全保障の進化を阻む日韓の歴史問題
―― 竹島訪問前、韓国で何が起きていたか

2012年9月号

ラルフ・A・コッサ
CSIS・パシフィックフォーラム会長

日韓関係の緊張と言っても、それが、関係の本質を脅かすことのないたんなる政治ショーにすぎないこともある。だが、最近の展開は違う。韓国政府は6月29日に、世論、野党勢力、メディアの反対に屈し、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の調印を先送りし、さらに、物品役務相互提供協定(ACSA)の締結の検討も棚上げすると表明した(その後も、韓国大統領が竹島を訪問し、日韓関係は紛糾している)。結局、(北朝鮮の脅威を含む)「安全保障課題を共有する(日韓という)二つの民主国家の関係強化に向けた前向きで現実主義的な試み」が、またしても「政治と歴史の複雑な遺産の犠牲にされてしまった」。・・・過去を克服するために、日本と韓国は切実に(未来志向で現実主義的な)政治家のリーダーシップを必要としている。ワシントンも日韓の歴史問題を解決するか、少なくとも非政治化できるような「日韓がともに受け入れられるような宣言」をまとめる公正な仲介者の役目を引き受けるべきだろう。

CFR Update
なぜ日中ハッカー戦争は起きていないのか
――領有権対立とサイバー戦争

2012年9月号

アダム・シーガル 米外交問題評議会中国担当シニア・フェロー

中国とフィリピン、ベトナムの領有権をめぐる対立は、相手国のウェブサイトの改ざんなどのハッカー戦争へとエスカレートしていった。これを前提にすれば、尖閣問題をめぐって、日本との対立で中国のハッカーたちがより激しい攻撃をしてくると考えてもおかしくはなかったが、これまでのところ、大がかりな攻撃は起きていない。なぜだろうか。おそらく、二つの理由が考えられる。・・・

ベビー・ギャップ
―― 出生率を向上させる方法はあるのか

2012年5月号

スティーブン・フィリップ・クレーマー 米国防産業大学教授

少子化によって課税できる労働人口が少なくなるにつれて、政府は困難な決定を下さざるを得なくなる。社会保障手当を切り捨てて引退年齢を引き上げるか、税率を大きく引き上げるしかなくなるからだ。さらに厄介なのは、労働人口が高齢化していくにつれて、経済成長を実現するのが難しくなっていくことだ。・・・低い出生率は、先進世界の福祉国家体制だけでなく、国の存続そのものを脅かすことになる・・・男女間の差別解消に真剣に取り組まず、女性のための適切な社会サービスの提供に熱心でなかったイタリアや日本のような国は出生率を上昇させられずにいる。これに対して、GDP(国内総生産)の約4%程度を、子育ての支援プログラムにあてているフランスやスウェーデンは出生率の低下を覆すことに何とか成功している。出産奨励プログラムには大きなコストがかかるし、伝統的な家族の価値を支持する人々の怒りを買う恐れもある。だが、低出生率の罠にはまってしまえば、これまでとは不気味なまでに異なる人口減少という未知の時代へと足を踏み入れることになる。

Foreign Affairs Update
フクシマ危機を前にホワイトハウスはどう動いたか
―米市民の保護か日米関係への配慮か

2012年3月号

ジェフリー・A・ベーダー 前米国家情報会議東アジア担当シニアディレクター

われわれはフクシマ第1原発で何が起きているかの情報収集に奔走した。「日本政府は分かっていることのすべてをわれわれに伝えるつもりはなく、状況を取り繕っているのではないか」と考える者もいた。だが、大統領の科学技術担当顧問を務めるジョン・ホルドレンは、「原子炉内の状態を把握するための装置がどれも機能していない以上、大枠の情報しか入手できないのは無理もない」と日本側の対応に一定の理解を示した。・・・だが、フクシマの事態が容易ならざるものであることは明らかだった。・・・われわれは、日本からの避難を求める米大使館や軍関係者のアメリカ人家族(配偶者や子供)の意向を尊重したかった。しかし、われわれは日本の社会をパニックに陥れることは望んでいなかったし・・・将来の日米関係にダメージが出ないようにする必要もあった。・・・

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