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中国に関する論文

軋みだした中国の統治システム
―― 変化した社会に適応できる政治構造を

2014年1月号

デビッド・M・ランプトン ジョンズ・ホプキンス大学 ポールニッツスクール教授(中国研究)

中国は力強い経済、パワフルな軍隊をもっているかもしれないが、その統治システムは非常に脆い。いまや中国を統治するのは、毛沢東や鄧小平の時代と比べてはるかに難しくなっている。中国の指導者の権力は年を追うごとに弱くなり、中国社会は、経済や官僚組織同様に分裂し、多元化している。しかも、市民社会と民間が大きな力をもちつつある。問題は、政策決定に世論の立場を取り入れつつも、政治構造をそのままに放置していることだ。法の支配への強いコミットメントを示すだけでなく、社会紛争の解決に向けて、司法や立法などの政治制度への信頼性をもっと高める必要がある。優れた政府規制を整備し、より踏み込んだ情報公開を行い、もっと説明責任を果たす必要がある。そうしない限り、今後、中国は過去40数年に経験した以上の大きな政治的混乱に直面することになる。

CFR Briefing
高齢化する中国社会の社会経済・外交的意味合い

2013年12月号

ヤンゾン・ファン/ 米外交問題評議会シニアフェロー(公衆衛生担当)

中国社会は急速に高齢化している。2050年までには、65歳以上の人口が総人口のほぼ4分の1の3億3000万人に達すると考えられている。中国の高齢化は、三つのはっきりとしたトレンズによって促されている。第1は、この数十年における力強い経済成長とともに、平均余命が1981年の68歳から現在の74歳へと延びたこと。第2は、(1950―60年代に生まれた)ベビーブーマー世代が高齢者の仲間入りをしつつあること。そして第3は、1979―1980年代初頭に導入された厳格な人口管理政策によって出生率が大きく低下し、高齢人口の比率を相対的に引き上げていることだ。当然、生産的な労働力の規模が縮小し、その結果、賃金レベルが上昇し、労働集約型産業における中国の競争力は低下する。しかも、年金、医療、社会保障制度はうまく整備されていない。・・・その経済的、外交的意味合いは何か。・・

CFR Meeting
世界経済アップデート
―― アベノミクスと中国経済の行方

2013年11月号

◎スピーカー
ルイス・アレキサンダー
野村ホールディングスアメリカ、チーフエコノミスト
ビンセント・ラインハルト
モルガンスタンレー、チーフエコノミスト
ネマト・シャフィク
国際通貨基金(IMF)副専務理事

◎プレサイダー
セバスチャン・マラビー
米外交問題評議会地政経済学センター所長

アベノミクスは、日本の金融政策を根本的に転換させ、資産市場を刺激することに成功し、その効果はインフレ期待や実質インフレ率に次第に現れ始めている。投資も上向いてきている。これまでのところうまく施策が機能し、経済状況が進展している以上、アベノミクスが上手くいっていないと決めつけることはできない。・・・(問題は構造改革の)非常に多くがアジアとアメリカを結びつける環太平洋パートナーシップ(TPP)の交渉に左右されることだ。非常に多くの日本の国内アジェンダが(今後の交渉に左右される)TPPの交渉と結びつけられている。・・・」(L・アレクサンダー)

「(債務問題を別のアングルから捉えれば)日本政府は貯蓄率の高い高齢者世代に対して、間接的に国債の利払い義務を負っていると同時に、同じ高齢者世代に年金の支払い義務を負っていることになる。当然、何らかの再調整が不可欠となる。・・・最終的に、日本の構造問題は持続不可能な政府債務と不公平な世代間移転の問題に行き当たる。・・・・」(V・ラインハルト)

中国の労働者はどこへ消えた
―― 経済成長至上主義の終わり

2013年11月号

ダミアン・マ
ポールソン研究所フェロー
ウィリアム・アダムス
ピッツバーグ大学アジア研究センターアソシエート

中国の輸出と安価な製品をこれまで支えてきた季節労働者が不足するにつれて、中国経済の成長は鈍化している。市場レベルへと賃金を引き上げなかった工場のオーナーたちは、労働者が工場を後にし、戻ってこないという事態に直面している。「安価な労働力」の時代は終わり、企業は労働者を生産現場につなぎ止めようと賃上げに応じ、よりやる気のある季節労働者を確保できる内陸部へと工場を移転させる企業もある。一方、米企業の一部は生産部門をアメリカ国内に戻すか、メキシコやベトナムに移動させることを検討し始めている。だが、悪いことばかりではない。急速に上昇する賃金レベルが、投資・輸出主導型経済から内需主導型経済モデルへのシフトを促している。中国の指導者がこれまでの流れを維持したいのなら、利益集団としての労働者の集団化を認識し、安定よりも成長を重視する、これまでの社会契約を見直す必要があるだろう。

CFR Update
中国経済と都市化政策
――問われる成長と社会保障のバランス

2013年11月号

エリザベス・エコノミー
米外交問題評議会シニアフェロー
(中国・環境問題担当)

李克強は、中国経済の成長を維持していくには都市化政策を進めることが不可欠だと確信し、都市インフラを整備しつつ、地方で生活する人々を都市へと移住させる政策を最重要アジェンダに定めている。実際、「投資・輸出主導型経済」から「消費主導型経済」へと中国経済をリバランシングさせる上でも、都市住民のほうが地方生活者よりも3・6倍も多く支出するだけに、都市化計画は今後の中国経済の重要な鍵を握っているかもしれない。だが、都市化は資源圧力と汚染も増大させる。地方出身者に都市の戸籍を与え、社会保障の受給資格を与えるだけで、膨大な資金拠出が必要になる。・・・

CFR Interview
上海自由貿易区は第2の改革開放路線になるか

2013年11月号

ダニエル・H・ローゼン
ローディアムグループ ファウンディングパートナー

多くの意味で、上海自由貿易区構想を鄧小平の改革開放路線と重ね合わせて考えてもおかしくはない。1970年代末、鄧小平はルールと条件を変えない限り、中国沿海部の経済成長を加速できないこと、そして、改革を適用する地域を広げていく必要があることを理解していた。さらに彼は、国内の政治・経済領域の既得権益層が、そうしたルールの変更を中国の利益を損なうと批判することも事前に織り込んでいた。改革の価値を特定の経済特区で立証した上で、全土へと広げていく必要があると彼が考えたのはこのためだ。・・・1980年代の経済特別区では製造業投資の自由化が重視されたが、上海自由貿易区では金融の自由化が重視されている。今回も、国レベルでの改革を一か八かで実行するのではなく、地域的に改革を導入して、自由化への流れを作り出すという手法がとられている。いまや中国は、市場経済に準じた制度ではなく、効率的な市場経済そのものを完全に導入したいと考えている。

アメリカのアジア重視戦略は安全保障領域を重視しすぎており、外交・経済領域を軽視している。TPP(環太平洋パートナーシップ)がこのギャップの一部を埋めてくれるかもしれないが、中国に対してもっと積極策をとるべきで、二国間投資協定(BIT)を交渉していくべきだろう。今後の中国における改革の試金石とみなされる上海自由貿易区を開設したことからも明らかなように、中国はこれまでの投資主導型の輸出経済モデルを見直す必要があることを理解している。BITは米中の通商関係を加速する大きな触媒の役割を果たし、両国の経済バランスに二つの大きな変化をもたらす助けになる。一つは、人民元が市場価値に即したレベルへと引き上げられていけば、アメリカの対中輸出が増大する。そして、もう一つは中国から相当規模の対米投資が行われるようになることだ。すでに2013年9月、上海インターナショナルは米豚肉加工大手のスミスフィールドフーズを71億ドルで買収し、これは、至上最大の中国企業による米企業の買収となった。・・・

CFR Update
世界経済を左右する中国における成長と改革の行方

2013年10月号

ロバート・カーン
米外交問題評議会シニアフェロー(国際経済担当)

市場プレイヤーの多くは、中国経済の成長率は今後急激に減速していくと考えている。2013年と2014年の成長率は6%台へと落ち込み、悪くすると5%を割り込む可能性もあると予測している。だが、こうした経済成長の減速は、中国が経済構造のリバランスを試み、現在の輸出・投資主導型経済から、消費主導型経済に移行するための改革を実施することを織り込んでいる。これを別にしても、IMF(国際通貨基金)が指摘する通り、労働力人口の減少が労働市場ダイナミクスを根本的に変化させる。つまり、中国は、労働力の過剰供給の時代が終わり、相対的な賃金が上昇する「ルイスの転換点」にさしかかりつつある。だが一方でIMFは、経済成長の停滞を理由に中国は改革(経済構造のリバランシング)を先送りするのではないかと懸念している。中国が野心的な改革を実行し、経済のリバランシングを実現して短期的な低成長のリスクを受け入れるか、あるいは、経済成長を維持しようと改革プロセスを先送りするかで、グローバルな経済成長の見通しは大きく変わってくる。

CFR Update
中国の水資源不足と環境汚染問題
――米議会における証言から

2013年9月号

エリザベス・C・エコノミー
米外交問題評議会アジア研究担当シニア・フェロー

中国の一人当たりの水資源量は世界平均の4分の1程度でしかない。しかも、経済が好調で個人が豊かになってきたこの10年をみると、生活用水と工業用水の需要が急増しており、今後も都市化が進むにつれて、この傾向は一層顕著になっていくと考えられる。2012年には水資源が不足した都市が400を超えている。しかも環境汚染が水資源問題をさらに深刻にしている。地下水の90%は汚染され、河川水の40%、地下水の55%が飲料に適さないと考えられている。癌の発生率が通常よりも著しく高い「癌の村」が459存在すると報告されているし、そのほとんどは、政府の水質汚染評価5段階のなかで最低とされた河川の周囲に集中している。中国政府と民衆にとってもっとも重要なのは、水問題が健康、経済、そして社会の安定にどのような影響を与えるかだ。2013年には社会不安を引き起こす最大の要因として環境問題が土地接収問題に取って代わっている。さらに、経済成長を維持し、食料生産のための水資源を確保する中国の試みは、いまや地域的・世界的な余波を生じさせている。・・・

米中戦争という今そこにある脅威
―― なぜ冷戦期の米ソ対立以上に危険なのか

2013年9月号

アヴェリー・ゴールドシュタイン
ペンシルバニア大学教授
(グローバル政治、国際関係論)

近年では、米中の東アジアにおける軍事戦略を規定してきた台湾という火薬庫の大きさは小さくなってきているが、中国と近隣諸国は、東シナ海や南シナ海における島や海洋境界線をめぐる領有権論争を抱えている。アメリカは、日本とフィリピンという二つの同盟国を守る条約上のコミットメントを何度も表明し、アジア・リバランシング戦略も、アジアで地域紛争が起きた場合にアメリカがそれを放置することはないというシグナルを中国に送っている。こうした現状における最大の問題は、米中が相手の死活的利益が何であるかについての了解を共有しておらず、しかも、危機管理のための信頼できるメカニズムも整備できていないことだ。紛争のリスクを高める、踏み外してはならないレッドラインが何であるかが曖昧なために、安全だと考える行動をとった場合でも、それが予想外に相手を挑発し、紛争のエスカレーションが起きかねない状況にある。

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